破壊力:C スピード:C 射程距離:C 持続力:A 精密動作性:C 成長性:C
磁力で地面や湧き水など鉄分を含む様々な場所から鉄分を引き寄せて操るスタンド。その磁力は身に纏わせることで一種の透明化を引き起こすことができる。
スタンドはスタンド使いにしか見えない迫力が存在する。エンジン熱のような、身体の芯から発する微細な震えを可視化したものだ。武者震いの具現化とも言えるその力は、たびたび『スタンドパワー』として彼ら個人の才能を示す客観点を醸し出している。
リゾットが感知し、ディアボロが発したスタンドパワーはまさしく別格の領域だった。工事現場のプレス機が稼働しているかの如き迫力がリゾットの体内に染み渡り、彼の身体を無意識に動かそうとする。鋼の意志で冷や汗ひとつでそれを抑えた彼は、零れ落ちる雫を手を振る形でディアボロの背後へ飛ばした。
「キング・クリムゾン」
「……!!」
ぎゅごり。生物が暮らす上で発しようも無い音と併せて地面に到達する筈の汗が消し飛ばされる。メタリカの能力である磁力の操作、その発展形として極めた迷彩技術が解けた瞬間の事象だった。
「(やはり、
ハイパワーな破壊力とスタンドによる強化なしでは到底見切れないスピード。リゾットのメタリカには射程距離では劣るものの、能力は圧倒的に汎用性に長けている。少なくとも、防御に関しては。
リゾットのスタンドは自身の体内に寄生する形で顕現する群体型のスタンドである。パワー、スピードはリゾット自身の能力に依存し、大抵は一人一身となるスタンドが繰り出す
先手を取り続けるしかないとリゾットは結論した。彼が懐から取り出したのは、金に任せて作られた
「ボォオスゥゥウ!!」
「チッ」
ディアボロの周囲三百六十度から放たれたスタンドによる叫び声に、予知していたディアボロも舌打ちを鳴らした。ディアボロはスタンドを土台に宙へ飛んで叫び声を解析するが、叫ぶのは血に染まった地面だけだ。血を媒介にしたスタンドだと気が付いたディアボロは迫り来る何かに対してスーツの上着を盾にそれを弾き飛ばした。
「ロォォォドォォオ」
「血に混じるスタンド…浮かぶ砂、そしてカフスに吸引する尋常ならないパワー!『磁力』か!血液を『磁石』のようにッ!
幽霊のように不気味に人型の上着がディアボロの首を絞めにかかるのを容易く切り裂き、ディアボロはスタンドの拳で地面を砕いて土塊を盾として浮かせた。音もなく飛ばされた銃弾は四発。血に染まる土から湧き出たまち針のショットガンを上着の切れ端で防ぎ、ディアボロは岩の上へ着地した。
攻撃は止まらない。地面に溢れ落ちたまち針は医療用メスへと変形し、一部は手裏剣となってディアボロの背後へと回り込み始める。
「
ディアボロはスタンド能力の一部分である予知能力を全力で稼働させた。停止して三十秒後に首からナイフが噴き出して死ぬ未来。後方へ飛び出して右足首が地面に喰い散らかされる未来。前方へ這い寄って血液の弾丸に襲われる未来。会話して喉を破壊される未来。ディアボロは前方へ走り出した。
発砲元はグロック17の口径9mmパラベラム弾。先程占い師ごとディアボロを撃った拳銃だとディアボロは推測した。リゾットが浴びる筈の硝煙はご丁寧なことに黒い砂の塊─砂鉄を集積したもので傘のようにカバーされている。どのみち鼻の優れないディアボロには猟犬の働きなど行えない。銃弾が埋め込まれないように宙へ弾き飛ばしながら、ディアボロは考察を続けた。
「(奴の能力は磁力で間違いない。操れる対象はおそらく十メートル前後。近距離になるほど強力になる。俺の血…鉄分だろう…それを
足元に生える鐡杭を避け、
だが、予知にも限界があることをリゾットは理解した。
リゾットは血液弾に被せるようにディアボロへ三発撃ち込む。当然、擦りすらせずスタンドによって弾かれるが、足元に転がる薬莢がその靴に当たるのを感知してリゾットはほくそ笑んだ。ディアボロのスタンドの射程距離は二メートル前後。グロックをリロードし、ワンマガジンを使い切る勢いでリゾットは弾丸を全弾発射した。
「(予知。未来を知る無敵の力。対抗には完璧完全を極めなければならず!間違いを犯す人間には決して不可能な領域!俺が生きているのは、俺の位置が分からないからだ。つまり、
至近距離からの散弾は防げても反撃は出来ず、撒き散らした血の地雷は対処できても利用できない。リゾットの透明化はスタンドを応用した鉄分の透明化である。群体と物質の両方の性質を持つスタンドを身に纏わせることでスタンド共通能力である非スタンド使いにスタンドが知覚できない特徴を再現した形だ。
拳銃の音で近付いたリゾットの射程距離に、ディアボロは気付かない。ばら撒かれた薬莢にメタリカが含まれていることも、彼のメタリカが粉塵に混じってディアボロの体内に侵入していることも、メタリカのパワーが
「─チッ」
予知を受け取ったディアボロは猛烈な勢いでスタンドで虚空にラッシュを繰り出したが、当たらない。数十秒の未来でリゾットのメタリカを排除する術はディアボロに残されていない。リゾットは喧しく吠えた。
「メタリカッ!!」
ディアボロの眼球が顔からこぼれ落ち、首と足首から大量の鉄鋏がまろびでた。動脈から噴き出る血液は鉄分を失ったことにより汚濁に混ざった黄色を彩り、ディアボロの高級なワイシャツを染め上げる。リゾットは歓喜の笑みを浮かべたままに今までの習慣として本能に刻まれた無言での我が身の移動を行い。
「「!!??」」
互いに勝利を確信した一撃が外れたことに瞬きの間だけ呆けた二人は、砕けた地面からばたばたと砕け散った蛙の残骸を見て咄嗟に距離を取った。スタンドを解除出来ないディアボロはスタンドに付着した血液を執拗にハンカチで拭き取り、リゾットは流れ出る冷や汗をこぼさないように袖口で拭った。
「(人である以上、奴は呼吸が必要だ。辺りに散らばらせた微細な砂は俺だけに見える
「(ボスの予知を飽和させることで俺はメタリカを使った。手ごたえはあった。寄生したメタリカも地面に埋もれている。間違いなくボスを殺せた。俺は、勘違いしていた…!俺がスタンドを拡張したようにッ!奴も能力を鍛え上げていたッ!)」
どれほど狼狽していても二人は酸素を脳へ行き渡らせることを止めることはない。思考を高速で回転させ、鋭敏となった五感全てを稼働する。生きるために、勝つために、誇りのために。
「(
「(
「「
互いに全てを曝け出した二人に、先程までの決闘じみた清廉さは存在しない。
時刻は十一時三十分。トリッシュとの再会がすぐそこまで迫っていた。
無敵チートvs透明化チートの争い