運命は絶対的で在るべきか   作:ややや

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感想は見てますのでそのうち返します。


ボスからの『啓示』

WAAAAAAAANNABEEEEEEEEEE!!

「「うぉおおお!?」」

 

ディアボロがアバッキオを連れてトリッシュと再会した時の反応は、アバッキオごと巻き込む全力でのスタンドラッシュだった。

 

「トリッシュ!よすんだ、我が娘よ!」

「俺は関係ねぇだろ!?」

「ヒトが!ショック受けて!なんとか受け入れようとした矢先に!ビジネスを優先するんじゃないわよ!!」

 

 トリッシュは偽装とはいえ一般家庭で育った常識人である?高級ホテルの一室で近距離パワー型のスタンドが暴れる危険性を熟知しながらも拳を叩き込めれるのは、彼女の能力が非破壊に優れたモノだからだ。ディアボロ達が避けた先にある壁は防音設備ごとぐにゃりと柔らかくなり、傷ひとつ付くことはない。物体の軟体化。この旅路でトリッシュが鍛えた能力は、眼を見張るモノがあった。

 

「強くなったな」

「〜〜〜〜ハァ〜〜〜もう、いいわ。…母さんに感謝することね」

「いつもしてるさ」

 

 今までの威厳を無くした父そのものの言動にトリッシュは長いため息をついて父を許した。トリッシュは自身が思う以上に安堵していることに気が付いた。父は父のままだった。船に乗ると出て行った時の彼が嘘ではないことが嬉しかったのだと知った。嘘はついていたが。

 

「先ずは…護衛任務ご苦労だった」

 

 むくれたトリッシュを横にソファーへ腰掛けたディアボロがいつもの声で労った。

 

「継承派『ブチャラティ』。お前を幹部に任命する。正式な業務は後日。儀式はこれから説明するが、ポルポから何か引き継がなかったのか?」

「…。……ジョルノ」

「い、いえ。あの遺言だけでした」

 

 ディアボロは盛大に溜息を吐いた。あからさまに馬鹿を知った顔でブチャラティを見た後、その後にジョルノに対して侮蔑的な眼差しでジョルノの丸まった髪を伸ばした。ナランチャとフーゴはわかりやすく咳き込んだ。

 

「…あの…」

「お前らを私は過大評価していたようだ…」

「何故僕の髪型を」

「予定日に不参加を表明していたポルポが死に。『継承派』を主張していたお前が幹部昇格を果たした時、俺はその野心と意気込みに感動したのだが。まさか、まさか偶然の極みとは思わなかったぞ」

 

 ブチャラティが別の意味で死にそうな顔をした。

 

「その…大変申し訳無く」

「まあ、いい。どちらにせよ、貴様達は参加を表明した。今更抜け出すことは許さん」

「この殺し合いは意図したモノだったのですね」

 

 崩れた髪型を直しながらジョルノはディアボロに問いかけた。

 

「そうだ。ジョルノ・ジョバァーナという()()()を創り上げるために嫌々拵えた死肉の餌場だ」

「ジョルノが…!?」

「順を追って話そう」

 

 人には運命が存在するとディアボロは言った。

 

「ヒトが持つ魂は唯一無二の代物だが、世界に存在する構成物質には変わりない。流れる水の一雫のように、生涯に浮かび上がる経歴はある程度予想されてしまう。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。精神を強固にするスタンド使いほど、その運命は固定されていく」

 

 ブチャラティチームの全員がジョルノを見た。ディアボロが作り上げたパッショーネという揺籠に微睡んでいたブチャラティ達を引っ張り上げた神の如きスタンドを持つ、惚れ惚れする男。その意思は黄金の光として輝き、世界を牽引する。新たな川を作り上げるのが特異点だとディアボロは語った。

 

「運命から逃れる方法は二つ。無力となるか、無敵となるか。そして或る時ひとりの馬鹿の極みが考えた。()()()()()()()()()。まともな頭を持てばとうの昔に幸せになれた筈の愚かなヒトモドキは『天国へ行く方法』を創り上げた」

 

「そいつの名は、ディエゴ・ブランドーといった」

 

 ジョルノはその名前に聞き覚えがあった。幼い頃、母親から聞かされた神の名前。数百年を生きる伝説の吸血鬼。今なお信奉者が復活を目論む、邪悪の化身の存在であり、ジョルノの父親だと。

 

「俺はそいつを見捨てた。単純にクソカスだったのもあるが、コイツが敵対した存在は、俺が見た中でも最高に運命力の高い最強の男だったからだ。事実、その男─空条承太郎は当然のように世界中のスタンド使いを蹴散らし、DIOを殺した。誤算だったのは、DIOが何処までも臆病であり、無関係を決め込んでいたディアボロ(オレ)を警戒して『矢』を携帯し、()()()()にたどり着いたことだった」

「『矢』はスタンドを引き出すだけではないと…!?」

 

 厳かに頷くディアボロに、ジョルノは大義を果たす『大統領』の姿を見た。パッショーネが()()()()()()()()()()()()()()()()()ポルポの試練。兵隊として約束事(規律)を守れるか、それを無視して()()()()()()()()()()()()()()()。精神を発揮させるのが『矢』の力であり、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「問題なのは、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()。人の枠を超えた神の力。それを手に入れるまでの道程を記載した『天国へ行く方法(オーバーヘブン)』。今まで戯言だった、世界を支配する能力。その道筋が具体化された事実が、世界中に広まった」

「つまり、ボスの目的はDIOを殺すことだと」

いやそいつは自力で覚醒した承太郎が道連れにした

「さ、最強すぎるぅ…!」

 

 ナランチャの呟きは全員が同意した。何をどうすれば神の力に独力で対抗できるのか。ディアボロが語る『最強』は彼を完全なる事実として端的に表したモノだった。

 

「『矢』によって進化したDIOは、全人類にひとつの運命を確定させた。2()0()1()2()()3()()2()1()()D()I()O()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 (DIO)が定めた運命を破壊するには、同じく誰かが神として対峙しなければならない。『矢』の力はそれだけ強大であり、ディアボロはその進化への道筋を作れる存在だった。

 

「ブチャラティ、貴様は運命の軛を外しかけている」

「ですが、ボス。俺の身体は…」

「その程度で『魂』は死なん。心臓は動き、脳波は停止せず、食事も排泄も可能なら、死こそありえない。貴様が死にかけているのは、魂を知覚し、操作しているからだ」

「魂を…」

極めれば頭部をかち割られて手足を三本失った上で腹部が半分以上消し飛び数十メートルの崖から岩に叩きつけられても死なないような事象を実現出来る

ボス。それは人間では無いかと思いますが

人間だから困ってるんだよ

 

 アバッキオはディアボロの口調が事実を元にした歴史を語っているのを理解した。アバッキオは自身の腹に穴が空いた状態を想像し、ナランチャ・フーゴ達と共に不合格の烙印が押された理由を何となくわかってしまった。DIOが狂わせた運命は、人間を幾つか規格外にしてしまっていた。

 

「運命を壊し、全てを支配したものだけが、パッショーネ(せかい)の救世主となる。本戦は『ローマのコロッセオ』。もう一度言おう。()()()()()()()()()()()

 

 トリッシュを名残惜しげに一撫した後、ディアボロは部屋のクローゼットから古ぼけたバックパックを取り出した。トリッシュの母が手作りで作ったボロボロのそれから財布を出したディアボロは、トリッシュに手渡しながら膝をついた。

 

「トリッシュ。決着は如何あれ、ここにいれば無事に生きて帰れる。一週間は掛からないだろうが、バカンスを─」

「そうして、一人で抱え込むんですか、貴方は」

「ジョルノ…?」

「『矢』は、貴方が管理しているなら、僕に打ち込めばそれで本戦は終わりだ。運命だというなら尚更に。何故犠牲を増やすのですか?」

 

 ディアボロは答えなかった。答えないこと、それこそが彼の回答だった。ジョルノはポルポの試験があからさまに失敗するように仕組まれた理由を理解した。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

「貴方は僕にずっと、入団した頃から今の今まで、常に『矢』の進化を窺っている。スタンド使いに矢の選別者(ポルポ)を嗾け、トリッシュの護衛に裏で付き従い、そしてローマのコロッセオ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 

 犯罪を行なっているディアボロが支配下としている場所で開催する必要は存在しない。それなのにわざわざ問い合わせる意図を、『矢』の仕組みをジョルノはその頭脳で見抜き始めていた。そしてそれは、ある意味でディアボロ自身が望む、ジョルノ・ジョバーナの運命を変える目論みの結果であった。

 

「僕の性根が分かるにつれて随分と大胆に動いてくる。『矢の進化』も、『天国への行き方』も、貴方なら成功の未来を予知出来たのに、それをしなかった。DIOが行え、貴方が行わない…結論はひとつだ」

「…進化には、『生贄』が必要だと言うのか。ジョルノ」

 

 察したブチャラティが唇を噛み切らんと歯を食いしばった。イタリアを救い切った男の凶行の真実に、自身の間抜けさを悔やんだ。子供のような泣きそうな顔で、ブチャラティはディアボロに祈るように懇願した。

 

「ボス、もう辞めましょう。これ以上の殺戮は無意味です!十年あればパッショーネだってもっともっと力を持てる…!だから、だから…ッ!!」

「『運命』は、いつだって理不尽だ。()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()、誰もが信じない」

「そして、()()()()()()()()()()()()

 

 衆人環視の中、ディアボロは姿を消した。未来予知とは異なる、彼の能力に全員が驚愕した。部屋の出口から少しだけ扉を開けたディアボロの声は、不思議とジョルノ達の心に響いた。

 

「『矢』に選ばれない者が死ぬように、進化できない存在は『矢』に殺される。ポルポのスタンド能力の発動条件は『約束を破ること』。俺は万一の為に捕らえていたスタンド囚人の管理を奴に任せていた」

「…!!」

「『罪』は『無知』故に。『英雄の友』『スタンド囚人』『反対派』『継承派』、そして俺。賽は投げられた。後は、神に祈るだけだ」

 

 ドアが閉められた。彼を追う者は誰もいなかった。ジョルノはブチャラティを見れば、今までに死に向かっていた彼の面影はそこには無かった。尊敬している存在の真意を知り、不甲斐なさを理解した男は、この局面で本当の意味で運命を打破する精神力を身につけた。

 

「ボスを、止めよう」

「ええ」

 

 ジョルノはブチャラティの決意を聞かなかった。言葉は必要ないと魂で通じ合ったからだ。ディアボロの行動により、彼もまた変わり始めていた。




ボス「肉の芽はないよな(不安)…?」
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