金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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前回の騒動中、不動高校での出来事です
これを以て、章の終わりとします

誤字報告により修正修正しました。ありがとうございます


32休 幽霊客船に気を取られて

 ツアー旅行は中止、バイトも休み。

 ともなれば、(いち)は部活動だ。

 演劇部の部室から稽古に励む声が聞こえ、遠慮なく戸を開く。台詞合わせの真っ最中、台本を見ていた視線が一気にこちらへ向けられた。

 

「金田~、来られたんだ~」

「新学期に来るんじゃなかったのかよ、金田」

「仙道君、神矢君、おはようございます。来られるようになりました」

 

 仙道(せんどう)神矢(かみや)達から喜ばれ、(いち)は低姿勢にご挨拶。今月はもう部に顔を出さないと宣言した為、少しだけ恥ずかしい。

 まさか、事件でツアー旅行が中止になったとは言えぬ。絶対に。

 

「金田も来たし……ワンシーン、通すか。仙道、有森の代わりにこの部分を読んでくれ」

「はい~」

 

 布施(ふせ)先輩のひと言に役者達はそれぞれ台本を置き、(いち)も配置に就く。

 ワンシーンと言っておきながら、太宰(だざい) (おさむ)の『春の枯れ葉』を演じ始めれば、自分達の心に火が灯る。声高らかに言葉を発し、体を動かせば、目配せで「もう少し、もう少し」とお互いの視線が訴え合う。

 結局、最後まで通した。

 終わった後の達成感に誰かが息を吐く。それは物足りさ、(いち)も同じ気持ちだ。

 

「やっぱ、台詞足すか。こことここ、んで、ここも」

「はい、尺の調整は……」

 

 タオルで汗を拭い、布施先輩は神矢と音響係を呼び、台本に書き加えていた。9月のコンクールへ向け、取り組む姿に

 

「おはようございます。あっ、もう一稽古終えた雰囲気!!」

「有森君、おはようございます」

「有森、おっせえ」

「オレ、有森の台詞。読んどいたよ~」

 

 ドアを開けた有森(ありもり)は冗談っぽく、残念がる。(いち)達は親しみを込め、からかった。

 そんな彼の後ろから、ひょっこりと人影が現れる。

 

「失礼します、金田君いる?」

げえ、桜樹君!!

 

 桜樹(さくらぎ)先輩が黒髪を靡かせ、布施先輩は冗談抜きの悲鳴。ミス研の女王もとい、会長の登場に全員、蜘蛛の子を散らすように逃げ出し、机の下、カーテンの後ろ、ロッカーの中、大道具の物陰へ隠れた。

 完全に慣れた動き、出遅れた(いち)は狼狽えた。

 

「皆さん……練習とか、していましたか?」

「あら、金田君は初めて見るのね。私が来るといつも、こんな感じよ♪ さあ、いらっしゃい」

 

 クスクス笑う桜樹先輩は楽しんでおり、嫌な慣れ方。

 断る隙も与えられず、(いち)はミス研の部室へ拉致される。心当たりはある為、ゲンナリ。

 

「……金田ぁ、秋の演劇部大会~。ウチの学校、10月の日程になったからな。そのつもりでいろよ~」

「……っ」

 

 布施先輩は他の部員と一緒に部室のドアへ張り付き、重要な連絡事項を叫ぶ。更にゲンナリし、手振りで了解を伝えた。

 ミステリー研究会の部室がこちらへ移されてから、(いち)の初訪問。

 

「やあ、金田。お手柄だったそうだねえ、僕には敵わないがよくやったよ」

「真壁先輩、鷹島先輩、おはようございます」

「おはよう」

 

 真壁(まかべ)先輩が前髪をウネらせ、嫌味ったらしく挨拶してくる。(いち)は無視をせず、寡黙な鷹島(たかしま) 友代(ともよ)先輩にも挨拶した。

 

「金田先輩。どうぞ、麦茶です」

「ありがとうございます……1年生の京谷君ですね」

 

 1年4組・京谷(きょうたに) 雅彦(まさひこ)は麦茶を差し出し、親切に椅子も勧めてくれた。

 遠慮せず、(いち)は腰かける。

 空き教室の利用とは言え、置かれた備品のチェック。部活動内容に則る使用を守っているか、生徒会執行部として気になる。資料棚は良いとして、パソコン室にあるはずのパソコン1台、堂々と置かれていた。

 

「……このパソコン、いつからここにあるのですか?」

「白神さんに頂いたの。新型に買い替えたらしくて、本当……助かるわ」

 

 呆気に取られて、(いち)は興味本位に問う。桜樹先輩今は得意げに答え、持つべきものはミス研講師。お下がりでも部活でパソコンを独り占めとはちょっとだけ、羨ましい。

 

「金田先輩、この事件……先輩が警察に協力したって本当なんですか? あ、お茶のお代わりです」

「京谷君、お茶をありがとうございます。……若輩の身ながら、意見を言わせて頂いただけです」

 

 勉強机を繋げた合体テーブルには新聞、週刊誌、タブロイド紙がズラリと並ぶ。

 一面は全て、3年前の真相スキャンダル。

 若王子(わかおうじ)水崎(みずさき)、オリエンタル号の元乗組員たる2人が会社側の許可もなく、群がる報道陣に証言した内容は事態を騒然とさせた。

 裏金による偽証、明かされた隠蔽工作、汚名を着せられた竜王丸の遺族への誹謗中傷。

 日曜日の通報から3日経ち、ワイドショーの朝はこの話題で持ちきりだ。おそらく、日本国内にも留まらず、海外にも広がるだろう。

 これで鹿島(かしま)船長の濡れ衣は晴れる。つまり、一人娘の香取(かとり)は大手を振って歩ける。そんな未来が確約された。彼女の経歴詐称を問う程、東太平洋汽船も非情ではないと明智(あけち)警視に聞いた。

 

(……水崎さんは……香取さんの為に、このやり方を取ったんだろうな……)

「まさか……タイタニック号の映画が上映される年に、オリエンタル号沈没の真実が明らかにされるなんて……まさに運命ってヤツですね」

 

 感傷に浸っていれば、京谷は感動に打ち震える。どちらも豪華客船であり、衝突による悲惨な結末を迎えた。だが、決して同じ悲劇ではない。

 少なくとも、片方に竜王丸はいない。

 だが、事件と関わりのない大衆は他人事として、京谷と似たり寄ったりの感想を抱くだろう。

 お気楽で何より。

 

「……しかし……情報、広がり過ぎではありませんか? 宇治木さんの週刊誌なんて……裏金の話まで載っています」

「僕が宇治木さんに情報を渡しました。香取さん……と言うより、白神さんにOKもらったんで」

 

 (いち)は週刊誌に目を向け、振り返った先に竜太(りゅうた)がいる。突然のハンディカムは未だに慣れない。ビビりながら、彼が香取から何らかの情報を受け取っていたと察した。

 

「岡持君と鷹杉さんはどちらに?」

「岡持君は事情聴取よ。最近、彼の店に来るお客さんも連れて行ってあげるんだって、電話で張り切ってたわ」

「ああ、あのホームレスさんですね(……警察沙汰になるような相談かあ、家出?)」

「あら、金田君も知ってる人? そう言われたら、興味持っちゃう♪」

 

 今この瞬間、警視庁では大騒動になっている。しかも、金田家に関わる重大な事実が発覚したなど知る由もない。 

 

「そっちはさておき、鷹杉さんは写真部にいるわ。今頃、幽霊客船の話で盛り上がってるはずよ。それで金田君、警察に事情聴取されたんでしょ。何を聞かれたの?」

 

 不動高校の高嶺の花に見つめられても、嬉しくない。

 

 ――正直、勘弁して欲しい。

 昨日は金田家と残間家に緊急招集がかかり、警視庁へ訪問。加納(かのう)へ面通しして来た。

 マジックミラー越しに見る取調室の男、(いち)以外は誰も面識なかった。

 明智警視曰く、加納は失踪前のにいみと会っている供述を始めたかと思えば、突然に言い淀む。その繰り返しだそうだ。

 ブチ切れた大人達は己の手で吐かせると意気込み出し、子供達は大慌て。ストッパーのさとみが仕事の都合で来られず、従兄弟達と必死に宥めた。

 しかも、帰宅後は学校からのお電話。校長先生並びに担任の先生に事情説明を求められ、ゲンナリ。

 ――本当、散々だった。

 救いは『異人館ホテル・ミステリーナイト』の申し込み結果。1枚だけだが、当選した。

 何も解決していなくても、絶対に行こう。後の問題は金田祖父母の目をどう、誤魔化すかだ。

 先ず、目の前のミス研達をかわそう。

 

「佐木君、竜二君から聞いてご存知でしょう? 彼が話した内容はほとんど変わりませんよ」

「……いえ、金田先輩の口から聞きたいので……」

 

 竜太へ話を投げようとしたが、鋭い視線に疑問する。睨まれたような感覚だ。

 

「佐木君、何か……自分に怒っていますか?」

「……気付いてもらえないなら、イイデス」

 

 恐る恐る問えば、プイッと顔を背かれた。

 

「金田君、佐木君から小笠原諸島の船旅……断ったんでしょう? それなのにちゃっかり、ツアーに参加してるんだもの」

「断るだなんて……、興味があるか聞かれた程度で……ねえ、佐木君?」

「金田先輩、……そういうところデスヨ。じゃなくて! 桜樹先輩、誤解しないでください。僕はツアーがご一緒出来なくて、怒っているんじゃアリマセン!」

 

 桜樹先輩がクスクス笑っても、(いち)は竜太の怒りに困惑するだけだ。

 夏休み前、竜太と雑談した。旅行の誘いではなかったと断言しよう。それが違うと言われれば 益々、分からん。

 

(((……怒ってんじゃん)))

「フフフ……」

 

 真壁先輩達の心の声が聞こえ、桜樹先輩は溢れる笑いを堪えた。

 

 結局、竜二(りゅうじ)と行動した出来事に絞り、事件概要を語った。

 当事者は警察が調査中の事件内容を語っては行けない。明智警視にバレたら、素直に謝ろう。

 

「流石、七瀬先輩と同じ生徒会執行部! 金田先輩はとても話上手ですね」

「僕としてはちょっと物足りないけど、まあ……小説のネタにくらいは出来そうだね」

(……褒められた気がせん)

 

 京谷と真壁先輩は目を瞑り、気取ったポーズ。どうやら、似た者同士らしい。

 鷹島先輩からの感想はなく、メモに書き留めていた。彼女の方が余程、小説家の風格がある。

 

「……ふうん、腑に落ちない点もあるけど……面白かったわ」

「竜二から聞いた話と、ほとんど変わらないです。はい……」

(……全部は言ってないし、当然か)

 

 桜樹先輩と竜太の2人から、普段の表情で見つめられる。(いち)の語りに不満ではないが、情報の秘匿を疑われている。本当である為、煩い。

 

「『幽霊船長』が……その香取って人だとしても……結局、コバルトマリン号の幽霊船騒動は何だったんだ?」

本物の(・・・)……亡くなった前の船長がやったのかも、しれませんよ」

 

 真壁先輩の素朴な疑問に竜太は考えを巡らせ、真剣に答えた。

 香取改め、鹿島 洋子が父親直伝の操縦技術を持ち、無人船徘徊の犯人だと誰も知らぬ(・・・・・)。彼女もまた、無資格操縦の件を自ら暴露しなかった。

 誰も彼も、今回の騒動に追われ、幽霊船の噂話は後回し。

 その為、コバルトマリン号の深夜徘徊は父島の怪談話として――後世に語り継がれるのであった。

 

「それじゃあ、今度は桜樹先輩があの萬屋病院の件に取り組んでいた話! 聞かせて下さいよ」

「金田君の後だと……面白味はないわ。警察的には上々でしょうねえ。私としては……もっと関わりたかったのだけれどもっ」

「桜樹君。ドラ息子のやらかした轢き逃げなんて、僕らの頭脳は不要だよ」

 

 京谷が次の話題を急かせば、桜樹先輩は意味深に笑う。珍しく真壁先輩が彼女を諫めた。

 

「……佐木君、何があったのですか?」

「いえ、僕は知りません。別件に掛かりっきりでした」

「金田先輩と佐木君、知らないんですか。これですよ、これ」

 

 竜太に代わり、京谷は新聞の裏を捲る。【優蘭女子大生、轢き逃げにより死亡。逮捕された2名は共に大病院の跡取り!!】と痛ましい記事、萬屋病院跡取り・萬屋(よろずや) (とおる)が逮捕された件だった。同乗者も不動山市にある記念病院の跡取りと曖昧だが、ほとんど身元を特定出来る書き方だ。

 

「……亡くなった小峰さん、アナウンサー志望だったらしいぜ。また、TV局関係者って言うのもなあ。萬屋の坊ちゃん、狙ってんのかね?」

「真壁君、そっちはまだ裏付け取れてないでしょ」

 

 真壁先輩は萬屋の記事を指でなぞり、煩わしそうに呟く。今度は桜樹先輩が、とても静かな声で咎めた。

 (いち)はそのやり取りを見て、嫌な予感がする。

 

「え? 何ですが、先輩方。教えて下さいよ」

「京谷君、すぐ記事になるわ。それまで待ちなさい」

「イイじゃないか、桜樹君。萬屋の奴らに弄ばれた患者の中に……かの

 

 京谷の好奇心を阻止せんと、桜樹先輩が普段の笑みを浮かべる。しかし、真壁先輩の口は語ろうとした。

 途端、部室のドアが乱暴に開かれる。

 ミス研顧問の歴史担当・須貝(ずがい)先生が血相を変え、部室内を見渡す。誰かを探している様子ではなく、人数を確かめている。そんな目付きだ。

 物々しい雰囲気にギョッとし、桜樹先輩も怪訝そうに声をかけた。

 

「須貝先生、どうしましたか?」

「……今すぐ、帰りなさい。部活動は全て中止、新学期まで学校へ来ないようにっ」

 

 生徒に帰宅を促し、更に校舎への立ち入りを禁じる。

 コバルトマリン号の騒動に不動高校の生徒あり、それが真っ先に思い当たる。

 

「須貝先生……もしかして、こちらの記事が原因でしょうか?」

「いや、違う……。そっちじゃない。とにかく、全員……帰宅してくれ」

 

 (いち)が新聞を見せたが、須貝先生は頭を振るう。眼鏡の蝶番を指で押し、己の動揺を抑え込んでいた。

 その仕草に嫌な予感、(いち)の背筋に寒気が走った。

 

(そっちじゃない。……他に理由、海難事故の真相より……重大な……事件

 

 段々と首筋の後ろに不愉快な感覚が纏わり付き、(いち)は原因を必死に記憶を辿る。過去の真相より重視されるのは現在、不動高校の教師、職員、生徒が事件に遭遇した。

 この場にいる誰もが、その考えに行きつく。

 

「また、ですか?」

 

 思わず、呟いた京谷の顔色が青褪めている。須貝先生が否定しなかった為、部室の空気も重くなった。

 

「誰が巻き込まれたんですか?」

「佐木君、そこまでよ。須貝先生、ありがとうございます。すぐに解散します」

「ああ……頼む。施錠はこっちで……おい、金田! どこに行く!?」

 

 竜太の素朴な疑問を桜樹先輩が咎め、須貝先生はホッとする。その隙を突き、(いち)は廊下を走り出した。

 行先は職員室、TVがある。

 それでニュースを観よう。早く確かめ、強くなっていく不安を拭い去りたかった。

 開いたドアから職員室へ飛び込めば、数人の先生方が緊張した面持ちでTV画面に釘付けとなっている。誰も一に気付かず、コッソリと覗き見た。

 

《……長野県赤根山中のキャンプ場にて……4人が死亡……1人が軽傷、すぐに病院へ搬送されました》

 

 放送されたニュースの内容に愕然。

 小林(こばやし)画伯が向かった旅行先も同じ地名。彼は観月旅行株式会社からモニターツアーに選ばれ、この瞬間にも旅行を楽しんでいるはずだ。

 偶然にも、3年前のオリエンタル号処女航海ツアーを企画した旅行会社だ。

 

(……このタイミングで……)

 

 息苦しく、目の奥が痛い。

 (いち)達が航海中の船上にいる間にも、小林画伯は山奥のキャンプ場で再び恐ろしい体験をしてしまった。

 

「金田君、何をしているの……帰りなさい」

「あっ、金田! 何やっとる……」

 

 演劇部顧問の緒方(おがた)先生に声を掛けられたが、返事も出来ない。三谷(みたに)教頭にも気付かれ、咎められかけた瞬間、アナウンサーの声はハッキリと聞こえた。

 

《殺害されたのは大学生・倉田 壮一、橘川 茂、社長業・香山 三郎、画家・小林 星二……いずれも……》

 

 たった1人の名前を聞き、耳を疑う。

 毛穴すらも神経を無くしたように、四肢の感覚が無くなった。

 (いち)はその場に崩れ落ち、床へ座り込む。見慣れない位置から天井を見上げ、自分が小さくなった気分だ。

 緒方先生や校長先生、担任の先生が必死に呼び掛けてくれるが、その声は聞こえない。

 

〝僕は竜王丸の船長さんを恨んでないよ〟

 

 穏やかな声が脳髄の奥で再生され、(いち)は目を閉じる。彼は真相も知らず、そう優しく答えた。それは正しくて(・・・・)、それが証明されて(・・・・・)、早く伝えたかった。

 ツアーから帰って来たら、伝えよう。そうやって、のんびりと構えていた。

 胸に痛みが襲う。まさに大切な人を奪われた痛みだ。

 小林画伯に招待状を見せてもらった時、是が非でも止めなかった自分を呪った。

 TVの音だけが無情にも、耳を打つ。

 

《容疑者は湖にてボートを爆破させ、自ら命を絶ったモノと思われます。現在、湖を捜索中ですが、遺体は未だ発見されておりません》

(……なんで、容疑者の名は報道されない?)

 

 そんな疑問に意識が戻り、脳髄は冷静に情報を整理している。小林画伯と一緒に殺害された「香山(かやま) 三郎(さぶろう)」の名前に覚えがあった。

 

(……オリエンタル号の生存者……)

 

 幽霊客船と呼ばれたコバルトマリン号にも乗組員、乗客と3年前の当事者がいた。

 同じ当事者達がキャンプ場に集まり、殺害される。絶対に偶然ではない。

 (いち)は知らねばならない。否、知るべきだ(・・・・・)

 

〝気付いて……どうしても放置出来なかった〟

 

 この場にいない金田一(きんだいち)の声が胸の奥で反響する。

 指先に力が戻り、一気に手足の感覚が蘇る。偶然にも傍に居た執行部顧問の先生の肩を掴み、勢いよく立ち上がった。

 突然の行動に先生方からギョッとされたが、構わない。(いち)は前を進めばならないと決意した。

 自分を呪うのは、後回しだ。

 

「金田君、待ちなさい!!」

「金田!!」

 

 引き留める教師陣の手を振り払い、学校の公衆電話へ走った。

 こんな時、頼れるのは週刊誌記者の宇治木(うじき) 政宗(まさむね)

 受話器を手にした拍子、頬が濡れる。涙か、汗か、判断出来ない。それが不可能な程に思考が鈍っている時点で、(いち)は電話をかけるべきではなかった。

 何故、教師陣が長野のニュースに注目し、生徒を自宅待機させたか、他に気付くべき要素は多かった。

 否、そこに気付いたとしても、(いち)は宇治木を頼っていた。彼なら、正確に教えてくれると信じた。

 

 悲恋湖を血で赤く染めた殺人事件。

 その当事者に名探偵の孫、生徒会長、そして、前生徒会長がいたと知り、変える事の出来ない現実を突き付けられるのは、間近だ。




金田一「……次回、『悲恋湖伝説殺人事件の余波‐七瀬』……」

鷹島 友代
学園七不思議殺人事件より登場

京谷 雅彦
瞬間消失の謎ゲストキャラ

歴史担当・須貝
天草財宝伝説殺人事件モブキャラ。作中にて、ミス研の顧問

週刊誌記者の宇治木 政宗
鬼戸・墓獅子伝説殺人事件ゲストキャラ
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