金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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一方その頃、東京では……と言う話です


Q34 指輪よ、さようなら

 結果だけ言えば、地区大会は3位入賞(・・・・)にて幕を下ろす。

 都大会進出は2位まで、つまりは落選(・・)。不動高校演劇部は来年の夏を逃した。

 部員一同、胸が伽藍の洞であろうと、手は他校への拍手を忘れない。

 バスへ向かい、駐車場を歩く頃には陽が暮れており、夜空はただ暗いだけ。

 月島(つきしま) 冬子(ふゆこ)もおらず、月島(つきしま) 亮二(りょうじ)先生もいない。ピアニスト志望な後輩の伴奏もなく、3位は寧ろ重畳。

 前向きに、楽観的に、肯定的に考えてみたが、慚愧の念に耐えかねる。

 微かに割れたコンクリートの花壇には、枯れた彼岸花の茎が折れ、土に頭を垂れていた。それは自分の姿だった。

 稽古に取り組む段階が遅く、練習量は圧倒的に足りなかった。

 

「……金田君、金田君ってば!!」

「何でしょうか? 七瀬さん。トイレなら、まだ平気です」

 

 七瀬(ななせ)に肩をバシバシ叩かれ、反射的に問う。驚く程、(いち)は普段通りの声を出せた。

 学校へ戻る前のトイレ時間、まだ部員の何名かは建物にいる。

 そんな思考を基に口を開けば、彼女は内緒話と言わんばかりに顔を寄せた。

 

「黒沢さんが来てるの。金田君と話したいって、ちょっと個人的に聞きたいそうよ」

「……黒沢オーナーが?」

「金田君、黒沢さんはもうオーナーじゃないのよ」

「……七瀬さんは知っていたかもしれませんが、自分達は寝耳に水なのです」

 

 リゾートホテル『オペラ座館』のオーナー・黒沢(くろさわ) 和馬(かずわ)

 数年前に引退した演出家本人、今日のゲスト審査員として最前列へ座わる姿に誰も彼も心臓が飛び跳ねる。緒方(おがた)先生さえも知らず、愕然とした。

 七瀬はあくまでも、演出家である事実を知るのみ。審査員姿には動揺を隠さず、ここにいないハジメの名を連呼していた。

 その黒沢先生に呼ばれた。

 (いち)は理由を聞かず、七瀬に引っ張られるままに駐車場の死角になる部分へ連れ込まれた。

 

「こんばんは、金田さん。こんな格好ですみません。ちょっと油断したら、色んな人が追いかけてくるもんでね」

「本日の審査、ありがとうございました。自分にお話と言うのは?」

 

 サングラスにマスク、パーカーフード。怪しさ満点の出で立ちだが、頬の傷は黒沢先生に間違いない。(いち)は再会の喜びと不審者への警戒心が混合し、お辞儀を繰り返した。

 

「七瀬さん、こちらに誰も来てないか……見張りをお願いします」

 

 黒沢先生に頼まれ、七瀬は指ポーズにて了解を示す。姿は見えるが、声の届かない位置まで離れた。

 2人だけで話す内容、緊張した心臓の脈が騒がしい。

 

「率直にお伺いします。水沼と名乗る男性(・・・・・・・・)に、お心当たりございませんか?」

……――っ

 

 予想しない名前。

 黒沢先生の声は弾み、期待に胸を躍らせている。それに反して、(いち)は血潮さえ、凍り付かせた。早すぎる冬が訪れ、吹雪が舞い込む。

 動じるなと脳髄の奥から、誰かに囁かれた気がする。

 

「――どういった方でしょうか? ――」

「『遊民蜂起』の出資者の代理と言えば、変ですが……要は我々の恩人なんです。私、今はそこの劇団を任されましてね。連絡先が分からず、アナタならと思いまして」

 

 そんな人、知らない。

 そう演じながら、(いち)は困ったように悩んだ仕草を繰り返す。黒沢先生が丁寧に経緯を説明してくれる度、足が竦んだ。

 

「――思い付きませんね。そもそも、その方と自分に何の関係性があるのですか? ――」

「私とした事が、気が逸ってしまいました。実はですね……その水沼さんから、中学生の金田さんを紹介されたんです写真付きでね。実際は静……響先生ですが、目に適うなら入団させて欲しい。そう、話していたそうです」

 

 黒沢先生から繋がりを聞かされ、(いち)はゾッとしても表情に出さない。

 有り得ない。在り得ない。

 否定の文字が幻覚となって、視界を防ぐ。実際、水沼(みずぬま) 貴雄(たかお)の顔写真は背氷村の事件で報道された。

 黒沢先生が彼の人相を知らない可能性もあるが、確かめたくない。

 

「――すみません、黒沢先生。親戚ではありません――」

「そうですか、ありがとうございます。

 

 本当の関係性を告げ、黒沢先生はふうっと息を吐く。残念そうだが、こちらの言い分を受け入れてくれた。

 

「金田君、集合~っ」

「はい、七瀬さん。黒沢先生、またお会いしましょう」

「金田さん、今日は本当にお疲れ様でした。お気を付けてっ」

 

 七瀬の呼び声を救いに感じ、(いち)と黒沢先生と別れた。

 バスの車内は沈黙ではなく、静粛。

 発進前に、部長の布施(ふせ)先輩が厳しい表情で部員全員の顔を見渡す。彼の眼は充血し、涙の跡を隠さない。文字通りに最後の大会、その悔しさが伝わってきた。

 

「今日の結果、俺は納得してない。もっと演れたはずだ。それを忘れず、1月の大会に励んでくれ。俺を含めた3年生は……出演しない。でも、観に行くからな」

「はいっ」

 

 布施先輩の声は力強く、叱咤激励にしか聞こえない。反省点を責めるよりも、課題として後輩へ託す。

 その意思を汲んだのは、有森(ありもり)だ。真っ先に答え、次々とそれに続く声。

 

「はい……」

 

 (いち)の返事はか細くて、自分の耳でも聞き取りにくい。布施先輩が部長である内に、部活で関われば良かったと後悔した。

 バスの車内は疲労感に満ち、無言。

 その為、(いち)の思考に隙間が生まれる。入り込むのは、黒沢先生に『水沼』と名乗った男。

 

(……中学生って『遊民蜂起』が設立した頃?)

 

 何か、おかしいと必死に記憶を辿る。

 水沼は持っていた

 (いち)が出した年賀ハガキ(・・・・・)を、3歳の七五三祝いの写真(・・)を、氷室伯父の日記(・・)を、缶箱へ隠し持っていた(・・・・・・・)

 年賀ハガキの住所は東京の金田家か、宮城の長屋アパート。つまり、水沼に神奈川のマンションを特定されていた。

 理解した瞬間、身の毛がよだつ恐怖に襲われる。

 見張られていた。監視されていた。あろう事か、『遊民蜂起』へ根回しされていた。

 他の3人に氷室画伯の血縁を伝えず、それを行った意味とは何だ?

 奴の目的が分からず、気味が悪い

 最早、狂気だ。

 

「金田、着いたぞ。どうした?」

「……神矢君、ああ……どうも」

 

 心配してくれた神矢(かみや)に肩を掴まれ、到着を知る。

 ほとんどの部員がバスを降り、部室へ運ぶ作業に取り掛かっていた。

 

「明日は休みですが、来週の中間テストを忘れない様に」

 

 緒方先生から学生の本分を叩きつけられ、解散。

 24時間営業のファミレスで打ち上げ、カラオケに興じる者など皆の行動はバラバラになる。

 (いち)は帰りたくなかった。行きたい場所があった。

 

「神矢君、桐生さんの家に行きませんか?」

!? いやいや、せめて明日にしようぜ。……どうしたんだよ、急に……」

 

 するりと申し入れれば、神矢は慌てふためく。周囲を見渡し、汗だくになっても断らない。本当に人が良いクラスメイト。

 

「今日の結果を……桐生さんに、報せたいのです」

「……そう、だな。尚の事、明日だ。折角だから言っとくが、女子の家を夜に訪ねるもんじゃねえぞ」

 

 伝えたい想いが込み上げ、素直に事情を話す。神矢に指摘され、(いち)は忘れがちになる礼儀を思い出す。

 骨壺に納まろうと、桐生(きりゅう) 春美(はるみ)は年頃の女子高生。

 本当なら、夕食の時間帯。約束もなく訪問するなど、非常識にも程がある。

 

「素晴らしきご助言、ありがとうございます、神矢君。明日、一緒に行きましょう」

「……ああ、それは勿論……。俺、あいつらとファミレス行くけど、どうする?」

 

 良識ある神矢に感謝し、(いち)は明日を約束。彼は戸惑いながら、打ち上げに誘ってくれた。

 即、乗った。

 

 ファミレスに行き、コンビニへ溜まり、金田家へ帰宅した時には夜9時。

 玄関に男性物の革靴が並び、胸騒ぎが起こる。

 

「こんばんは、剣持さん」

「よお、(いち)君。遅かったな」

 

 居間を覗き込めば、剣持(けんもち)警部が金田祖父母と卓袱台を囲む。普段なら、彼の訪問を喜ぶだろう。しかし、水沼の件が尾を引き、今は恐怖しかない。

 心なしか、金田祖父母の表情も硬い。虚勢を張ってはいるが、ひと仕事終えた孫を労わる雰囲気ではない。

 

「今日の舞台、観られたぞ。桜樹君が隣にいてくれて、劇の解説してもらいながらだったが……良かったよ」

「……え!? 観に来てくれたのですが……気付きませんでした」

 

 観客席を気にかける余裕がなく、素直に嬉しい。(いち)の弾んだ心は無防備だった。

 

(いち)っ、……にいみから連絡があったわ。長野よ」

 

 金田祖母の落ち着き払った声が、文字通りに時を止める。(いち)の肉体は現実と乖離し、瞬きさえも止めていた。

 母・にいみが日本へ帰り、長野にいる。

 瞬時に悲恋湖キャンプ場を連想してしまい、吐き気を催す。気を落ち着かせようと、氷室(ひむろ)伯父の仏壇に手を合わせた。

 騒がしい心臓の脈拍が、徐々に静まり返っていく。自分の心を惑わせていた問題は、脳髄に浮かぶ想像の缶箱へ押し込んだ。

 

 ――後にしてくれと祈った。

 

 金田祖母が起立し、足音もなく居間を去る気配に振り返った。

 

(いち)も支度せえ、長野行くで。剣持さん、わざわざワシらを待ってくれたんや。詳しゅうは車ン中……」

「行きません」

 

 金田祖父に言われ、ようやく剣持警部の訪問理由を察する。だから、安心して口は開いた。

 (いち)の返事が意外だったらしく、場の空気が凍り付く。

 

「……!? (いち)君……もしかして、変な誤解していないか? お母さんは無事……」

「母は、良い歳をした大人なのです。自分達が迎えに行く必要はありません。母に伝えて下さい。帰りたいなら、自力で帰って来いとっ

 

 座布団へ正座したまま、(いち)は毅然とした態度で剣持警部へ懇願する。自分は誤解などしていない。にいみの存在を拒むのではなく、迎えに行かない。ただ、それだけだ。

 剣持警部は目を丸くしたが、(いち)の気持ちを汲もうと口を噤む。

 だが、金田祖父は違う。

 

「お前、何言うとん! にいみは帰って来れん奴や! 罰が悪うて、合わす顔ない思うたら、帰るに帰れんのや。ワシらが引き摺ってでも、連れ戻さなアカンねん!!」

「だからこそ、都合よく迎えに来てもらおうなんて……烏滸がましいのです」

 

 まくし立てる姿は、にいみの父親として当然だろう。ならば、(いち)は息子の立場で反論した。

 息子を置いていなくなる母親を迎え行くなど、お断りだ。

 

「あなた、剣持さんの前です。お控えなさい」

「せやかて、婆さん……」

 

 金田祖母はオボンを手に戻り、金田祖父を諫める。湯吞みをそのまま、(いち)へ差し出した。

 

(いち)の言う通りです。にいみは先ず、自力で私達の前に現れなければなりません。あなたが言う様に、合わせる顔がないなら……それもまた別離でしょう。剣持さん、お時間を使わせて申し訳ございません。私達はこの家で、娘を待ちます」

「お祖母ちゃん……」

 

 厳粛な物言いから、一転。娘を想う母親となり、深々と頭を下げる。シワだらけの指先が、微かに震えている。彼女は今すぐにでも、長野へ発ちたいのだ。

 己が娘の無事をその目で確認しない限り、生きた心地がしない。そんな不安に駆られた気持ちと、闘うつもりだ。

 

「分かりました。詳細は追って、連絡致します」

「……こんな時間や、途中まで送りますわ」

 

 一家の決意を受け入れ、剣持警部も雄々しくどこか大雑把に頭を下げた。善は急げと、彼は玄関に向かう。納得し切れず、反対もしない金田祖父が車の鍵を手に、追いかけた。

 束の間の静けさ。

 (いち)はよろめきながら、自室へ急ぐ。お茶は、飲まない。喉を潤せば、もう何も話せなくなるからだ。

 机の上に置いたままの携帯電話を手に取り、着信履歴を見やる。父・残間(ざんま)からの着信がエグかった。

 演劇真っ最中、結果発表の時間帯。会場に携帯電話を持ち込んでいたとしても、出られない。今日が地区大会だと、残間は忘れたのかもしれない。取り敢えず、そっちのけ。

 (いち)は脳髄に刻まれた電話番号を押す。電話帳の項目を開くより、早い。

 コール音が鳴る中、クローゼット式の押し入れを開く。氷室伯父の学ランを肩にかけ、学帽を被った。

 

〈……はい、こちら銭形〉

(いち)です。夜分遅くに、すみません」

 

 銭形(ぜにがた)警部補の声は眠そう或いは、寝ていた口調。挨拶した瞬間、向こう側が居住まいを正す気配がした。

 

(いち)君、何があった? 今、どこ?〉

「東京の家です。銭形さん……母が、見つかりました。……長野にいると、祖母が連絡を受けました」

 

 前例から、(いち)の居場所を求められる。先ずはそれに答え、ゆっくりと要点を告げた。

 誤解されない様、その生存も語った。

 自分達は迎えに行かず、剣持警部を送り出した部分まで知らせた。

 

〈……それから?〉

「……っ」

 

 銭形警部補は否定も肯定もせず、(いち)を労わる声調が聴覚に染み込む。とても安心させられたからこそ、切なさに胸が痞える。

 背氷村の事件から、始まった縁。

 言葉を交わした時間は正直、ハジメ達よりも少ない。けれども、(いち)は自分の口から銭形警部補へ伝えたかった。

 

 ――だって、にいみを探そうと最初に動き出したのは、彼なのだ。

 

 まだ事件性を確認できず、只の家出人扱いだったにも関わらず、横浜に出向いてくれた。されど金田家の誰にも、それを悟らせなかった。

 (いち)もハジメに聞かされなければ、ずっと知らずにいただろう。

 刑事だからと言う理由で、出来るはずがない。

 

「……母を探してくれて……ありがとうっ」

〈……どういたしまして、(いち)君〉

 

 感謝が涙と共に、溢れ出る。言葉だけはどうか、しっかりと発音した。

 電話を通したせいか、誠実で実直な声が野太くて逞しい。服の擦れる音から、今度は敬礼の気配がする。

 こちらも敬礼を返した。

 お互いに見えないが、フッと吐く息は確かな意思疎通伝を教えてくれた。

 

 

 普段通りの日課を済ませ、桐生家へ電話連絡。在宅を確認しておく。

 受話器向こうから、意味深な口調で好都合だと呟かれた。

 お言葉に甘え、神矢と合流した後に訪問。

 喪服を纏ったご両親に歓迎され、高校生2人は素直にビビる。

 桐生へ焼香し終えてから、詳細を知らされた。本日の午後、彼女は都内の墓地へ納骨されると言う。

 どうやら、百日に定めていたらしい。

 先月、皆に内緒で焼香を上げへ訪れたが、知らなかった。

 四十九日はとっくに過ぎていた為、このままの状態だと勝手に思い込んでいた。いつまでも、変わらないはずはない。桐生のご両親も前へ進もうと、努力している。

 

「春美さんが、眠られる場所を教えてください」

「!?」

 

 (いち)の願いに神矢もギョッとしたが、桐生のご両親の手前であり、動揺を隠し通した。

 お2人は顔を見合わせ、「キミならそう言うだろうと思った」と複雑そうに笑う。決して良い意味ではなく、これを機に『不動高校生(元凶)』と縁を切るタイミングを逃した。

 そんな悲痛な想いを、肌で感じた。

 

 見送りを受け、近くの公園に足を運んだ。

 祝日の為、老若男女問わず人が多い。ようやく神矢の緊張は解け、深いため息が聞こえた。

 

「金田はこれからも、桐生さんへ会いに行くんだな」

「はい、会いたい気持ちが……ある限り……」

 

 神矢の賛同しかねる視線を受けようが、(いち)は誠実に向き合った。

 ひとつの劇を終えると、無性に会いたくなる。

 桐生の返事が聞こえなくても、演じた舞台の話がしたい。この気持ちは決して、恋じゃない。

 聞かれてもいない言い訳を、心に留めた。

 

「……無理はするなよ、ヤバいと思ったら……俺が止める」

「はいっ」

 

 神矢は感嘆の息を吐く。感心したような、呆れたような。それでいて、「しょうがないなあ」と認める想いが込められていた。

 (いち)へ味方してくれる。心強い吐息に思わず、口元が緩んだ。

 

「神矢く~ん! 金田く~ん!」

「……あれ、美雪さん?」

「げぇ、七瀬さんっ」

 

 聞き慣れた呼び声は遊んでいる子供達に負けず、耳に届く。

 神矢は純粋に疑問したが、(いち)はゾッとする。彼女の慌てた様子、穏やかな日常に破壊を齎すトラブルが舞い込んだと、誰だって分かる。

 (いち)はそっと後退り。

 

「神矢君、捕まえて!」

「え?」

え!?

 

 七瀬の指示通り、神矢は迷いなく、(いち)の腕をガシッと掴む。ほとんど無意識の反応、怖すぎる。

 

「はあ、はあ……ありがとう、神矢君。もう金田君ったら、携帯電話! 電源切ってるでしょう? 金田君のお父さん、連絡付かなくて困ってたわよっ」

(知らんがな)

 

 肩で息をしながら、七瀬は文句タラタラ。残間は最終手段として、息子の同級生を利用しやがった。

 厳密に言えば、ハジメからの連絡だとこの時は知る由もない。

 

「……着信が鬱陶しかったので、一応……持ってはいますが……」

「意味ないじゃない、そんなの!」

「金田、携帯電話持ってんのか、良いなあ」

 

 ウェストポーチから、携帯電話を取り出す。案の定、七瀬はお冠だ。

 こんな時でも、神矢は純粋に羨ましがる。彼の目が輝き、ちょっと得意げになった。

 

「ほら、行きましょう。はじめちゃんと軽井沢で、待ち合わせてるからっ」

「は? 嫌ですよ、あ~!! 神矢君、押さないで~!」

「こうなっちまったら、美雪さんは手に負えないぜ。金田、悪い事は言わん。覚悟決めちまえ」

 

 七瀬は本当に当たり前の如く、(いち)の腕を引っ張る。振り払おうとしたが、まさかの神矢の裏切りに悲鳴を上げた。

 

「大丈夫、佐木君もいるし、桜樹先輩も一緒よ。何なら、宇治木さんもね」

「馬鹿言うな、行ぎだぐねぁ~!!」

 

 駄々っ子を宥めるような七瀬の言い分。顔触れに安心要素など、ありはしない。スリルとサスペンスの予感だ。

 

「バイクっ、バイクで来ていますから!」

「残念、金田のお祖父ちゃんに電車だって聞いてます~♪」

 

 遠慮のない彼女の動き、軽井沢行きは金田祖父母の了解も得ていると確信した。

 否、金田祖父に売られた。せめてもの意趣返しと、彼の腹立つせせら笑いが脳裏に浮かんだ。

 

「助けて、神矢く~ん!」

「駅まで送ったらいい?」

「うん、お願い」

 

 人々の好奇の視線に晒されながら、(いち)は無情にも公園から連れ出される。金木犀の香りが鼻に付き、振り返ったのは現実逃避だ。

 気のせいだろうか、桐生のクスクスとした笑い声が聞こえた気がする。

 

(ハッ!? 『邪宗館』の皆さん……荒木君へ会いに行けるチャンスでは?)

 

 結論として言えば、軽井沢に行くべきではなかった。

 後にも先にも、後悔しかない。




狭山「狭山です。何か、強い視線を感じるから……僕の意見は控えさせてもらうよ。それでも言わせてもらえるなら、あの高校生達はいる限り……ゆかりは、もう大丈夫さ。さて、次回は『○○の殺人?』!! 他人の作った暗号ゲームに、興味ないね」

銭形 ケンタロウ
私立探偵、作中では道警に変更。名俳優・内野さんが演じている
イベントでにいみと出会い、事件後にオリ主と再会させる流れにしたかったのに、不破警視の後始末でそれどころじゃないじゃんと今回は不参加(マジ、ゴメン)
決め台詞は「ご先祖様の名の下に」だが、作中で言わせるタイミングが掴めず(難問)

金田 にいみ
穴埋めオリキャラ、オリ主の母親、氷室画伯の妹
マットペインター。兄程ではないにしても、仕事に出来る程の画力はある
背氷村にいる『氷室』は『兄ではない』と気付き、亡き父の弟分だった・山之内を頼った
人の名前に関して覚えるのが不得意、油断すると兄の名前も忘れるレベル。オリ主の名前が兄と被っていたと出生届を出した後に気付き、覚えるように努力した
狭山の名前は強烈過ぎて、忘れられなかった
『保科』については現時点では、うろ覚え。「狭山のガールフレンドだった気もするけど……曖昧な事を言って、捜査をかく乱させたと難癖付けられたくない」と言う理由から、沈黙
バルト城イベントに割り込み参加だった為、マリアと肖像画は見えていなかった

残間 青完
穴埋めオリキャラ、オリ主の父親、さとみと同じ顔
元マジシャン、現在はデザイン事務所の広報担当
最初は「まどろっこしい!暴力で決めようぜ(意訳)」とミステリーナイトを物理的に進める展開にしたかったんですが、収集付かなくてやめました
代理参加だった為、にいみと同じくマリアと肖像画が見えず。参加者は主催者から、役割を振られていると思い込んでいた
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