金田少年の生徒会日誌 作:珍明
天井に吊り下がるシャンデリアを横目で見上げ、カチャカチャと食器の触れ合う音を聞く。眠気が通り過ぎた脳髄は覚醒状態になり、眼球も渇いた。
跪く姿勢を20分近く、結構ツライ。
「金田……お前、野郎の膝枕でよく寝れんな」
「寝てないです。ハジメちゃんがボルシチを盛大に啜る音も全部、聞こえています」
ハジメは物好きを見る目で見下ろし、
「はじめちゃん……静かに啜って。金田君もいつまで、佐木君に甘えてるの? みっともないっ」
「ご心配なく、七瀬先輩。金田先輩を乗せた左足は、とっくに太股の感覚ありません」
「竜太君……養子縁組して、ウチの子になりましょう」
「そんなに暇なら、金田君。何かマジックやってみせて♪ ちょうどローゼスさんもいるし、腕前を見て頂けるじゃない」
「……無茶を言いよる、コイツ。七瀬さん、自分にも自尊心があります。本物の刑事がいる前で、素人推理を披露する恥知らずのパンピーにはなれません」
「……プッ! ……言われてるじゃん、犬飼君」
「……そうとは限りませんよ。梅園先生」
七瀬の無茶振りをかわす筈が、余計な火種が引火した。
「わあ~、5百円玉が生物みたいに動いてる~♪ ええ!! 上に吸い込まれたわ。あ、帽子に消えた……きゃ~、違うトコから出てきた! はじめちゃん、見て見て♪」
「はいはい、すごいすごい」
自分を含めても10人いる食堂に、七瀬の歓声だけが響く。ちょっと虚しい。
「お、おお……お見事っ。ウチでもマジック関係の書籍を扱っています。どうです、金田さん……インタビューなど……」
「宝田さん、媚びが丸分かり」
「マッスルパスくらい、僕でも出来ますよ」
「お上手じゃない、金田君。ねえ、ローゼスさん?」
「さあて、どうでしょう。良きマジックには、良き観客も必要ですので」
「金田様、流石にございます。どうぞ、レモンティーです」
「ありがとうございます……田代さん」
同じ型眼鏡の
「金田先輩、やっぱり上手いですね。どうして、その道……」
「あら、もう11時の鐘が鳴ったわ。何だが変な感じ……」
竜太の称賛へ被せるように、鐘が鳴る。七瀬の感覚は正常だ。
「神明のオッサン、結局……朝まで爆睡なんかね」
「きっと酔い潰れてるんですよ。最近、お酒の量も増えておられるみたいで」
「我々の定例会も顔を出さず、最近は実質、
「全くよね~、犬飼君。ありゃあ、奥さんも愛想尽かすわ」
ハジメが空席を一瞥し、ポツリと呟く。
宝田、梅園先生、犬飼が仲間内の愚痴を溢し出す。流石に、黙っていられない。
「いいえ、自分達と話した時は酔いから醒めていました。ね、竜太君っ」
「はい。神明先生は、面白い話を聞かせてくれました」
「金田君、ローゼスさんも色々と不思議な話をご存じよ。この後にでも……」
「……」
「ローゼスさん、日本でのショーをご予定でしたら……絶対に教えてください。自分、観に行きますっ」
「……ええ、それは是非とも」
割と本音だったのだが、ローゼスの視線が更に下がった。
フードカバーを被せた状態のまま、
「桐江君、どうだったね? 神明先生のご様子は……」
「田代さん……それが、どんなにノックしてもお返事がなく……。あまり煩くしたら、怒られるかもって」
「田代さん」
2人の会話に聞き耳を立てていれば、ハジメの声に真剣さが宿った。
「この中2階の上って、何があるんですか? あの天井の位置が……シミになってて」
「皆様のお部屋でございますが……あそこは、ええと」
ハジメの視線につられ、皆も天井を見上げる。天井の豪華さに不釣り合いなシミ、水漏れで汚れたと一目で分かった。
ゾッとする寒気は、虫の報せ。
「桐江さん! 本当に、神明先生から返事はなかったのですか!」
「え……ええ、何も」
「!! 田代さん、神明先生の部屋に案内を!」
「は、はい!」
ハジメは瞬時に察し、走り出す。田代執事も急いで続いた。
たかだが、上の階。これ程までに、遠く感じた事はない。
自分の息遣いが騒がしく、視界と肉体がまた離れてしまった。
田代執事のノックに応じず、鍵の開いたままの扉、暗闇の部屋、バスルームからシャワー音。
「金田様!」
ブラウン管に映ったゲーム画面、プレイヤーとなった心地で進んだ。
――違う、違う
ドアノブを回した瞬間、湯気が出迎えた。
赤い湯船に浮かんだ胴体と、見知った顔の首。生気を亡くした瞳孔と、
「きゃああ!!」
「く、首が……!!」
後ろからの悲鳴はまるでストーリーイベント、実感なんてない。
ハジメがすっと手を伸ばし、湯船からチャプチャプと漂う『何か』を取り出す。
「ロシア人形……」
「『イワン』ですね、コントラバスの……」
「田代さん、救急車を呼んでください」
「……金田様?」
ローゼスと囁き合う彼らを無視し、
思い出した。
この館は如何なる通信手段も取り外し、外部と連絡取れない。自分が持ち込んだ携帯電話は、有頭弁護士の手の中だ。
「有頭さん……すぐに救急車を」
「……金田さん」
「金田君……無理よ」
今度は有頭弁護士へ頼んでみるが、狼狽える返事のみ。七瀬は震えながら、こちらへ訴えてきた。
他の皆も同じ怯えた眼差し。ハジメも息を呑み、言葉に詰まっていた。
「なんですか、まさか……律儀に守るつもりですか? ゲーム中は外部との連絡を絶つなんて……馬鹿げています。有頭さん、早く救急車を……」
「金田君」
視線の意味が分からずとも、ローゼスのあやすような声はしっかりと聴覚へ届いた。
「もう、死んでる」
仮面に穿たれた穴から、こちらを覗いて来る。否、覗いたのは自分。哲学者の格言に則り、深淵を覗いた先は人の死だった。
神明先生の遺体を湯船から出し、タイルの上へ寝かせる。ベッドへ運ぼうと提案したが、有頭弁護士にやんわりと止められた。
本来なら、現場保存の為に動かしてはならない。この場合は、水による遺体損壊を防ぐ意味もあるそうだ。刑事ドラマで、聞いた気もする。
「金田君の携帯、今は電波が届かないみたい」
「仕方ありません。非常事態ですので、私が検死を行います」
「私は皆様に飲み物を……桐江君」
「はい、田代さん」
残念そうな七瀬に報告され、有頭弁護士とふうっと緊張気味に息を吐く。田代執事は桐江といなくなり、
(……これは、後ろから殴られた傷?)
「金田先輩。僕が記録していますから、皆さんと居てください」
竜太に急かされ、
神明先生の後頭部にある傷は「殺害」を示し、思い悩む。
「金田君、携帯電話……返すね」
(もしも、
七瀬からコッソリと携帯電話を返されても、無意識に無言を貫く。彼女の心配そうな視線に気付かず、時計の塔の応接間へ辿り着いた。
椅子へ座り、壁にもたれかかりと体勢は様々だが、皆は沈黙に支配されていた。
そこへ妙な違和感。
「あれ? ロシア人形がないわ」
流石、七瀬。可憐な指をマントルピースへ向け、異変を教えてくれる。5体の音楽隊、イワンはバスルームで発見された。
(……ライトスタンド、こんな柄だったか?)
心底どうでもいい筈が、妙に引っ掛かった。
「恐らく、犯人が持ち去ったんだ……。美雪、警察に連絡付いたか?」
「はじめちゃん、ダメだったの。全然、電波が立たなくて……」
「この辺りは、霧の影響で電波も入りにくい。昼間なら、まだ可能性ある」
2人の会話へ助言する犬飼は、怯えを堪えている。
「……犬飼君、詳しいですね」
「ああ、ここには何度も来て……桐……山之内先生とそう言う話もしたから……」
「そ、それより……警察が来ないって……こ、これから……どうするんだ。神明先生、あれはどう見ても……うう」
犬飼を遮り、宝田は惨状を思い返して縮こまる。梅園先生と幽月先生も似た様子だ。
霧に覆われ、
「ハジメちゃん、宇治木さんへ報せるにしても、今は……」
「ああ、人が多すぎる……」
「何を、コソコソと話してるの? ハッキリ言ったら?」
「ロシア人形……なんで、犯人は盗んだのかなって……」
耳聡い梅園先生から責められ、七瀬が咄嗟に合わせてくれた。
「そんなの……決まってる。ここにある暗号文、
「!! 『楽団は朝礼で前から順に首を刈られた』……まさかっ」
「犬飼君、ちょっと借りる」
眉間にシワを寄せ、犬飼が懐から暗号文を取り出す。ハジメはハッとして、一行目の文章を声に出した。
(次は数合わせ……2番の子の首を5番目の子の首の右に並べ、楽しいリズムの……)
最後の部分、『楽しいリズム』は楽器を示す。5人の候補者、5つの楽器、5つの塔。でも、
「犬飼君、神明先生があんな姿で見付かったからって……いくらなんでも、大袈裟過ぎない?」
「……いえ、死体と共にバスタブへ放り込まれていたロシア人形は、5体の中で1番背の低いコントラバスのイワンでした」
「ああ……! 学校の朝礼は、背の低い順に並んで……だとしたら、次は2番目に低い……チェロのエミールと同じ楽器の……私!」
「宝田さん、相変わらず……気の弱い」
梅園先生が否定すれば、ローゼスの補足が入り、宝田は震え上がり、幽月先生は苦笑する。それらを劇伴の如く聞き流し、
「ローゼスさん、ちょっといいですか?」
「
「どうした、金田っ。何が分かった?」
ローゼスへ声を掛けた瞬間、ハジメに強い口調で咎められてビビる。皆にも注目されてしまい、困った。
「……トイレに行きたくて、付き添いを……」
「今!? それくらい、俺が付き合うって」
「ハジメちゃんは、七瀬さんの傍に居てください」
「せめて、佐木1号が戻るまで我慢してくれっ」
咄嗟に誤魔化したが、ハジメは容赦ない。
「分かりました……ローゼスさんと竜太君を呼びに行って、そこからトイレへ行きます。自分、膀胱が限界なのです」
「金田……(嘘吐けよ)」
切れ気味の口調は、後で後悔した。
「金田先輩、物は言いようだと思います。それで、僕はどうしたら? 言っときますが、ローゼスさんと2人きりは許しませんよ」
「一緒に、お願いします……」
迎えに行った竜太からも小言を頂き、目的地へ向かう。有頭弁護士は検死の後片付けに、まだ時間がかかりそうだ。
「ローゼスさん、答えなくてもいいので聞いてください。ここから、逃げ出す準備をしていますか?」
「……そうか、脱出の専門家の原則ですねっ。金田先輩」
「……」
マジシャンのショーはひとつのミスが命取り、舞台となる会場の下調べ、安全確認は必須の常識。そして、万一の避難経路も確保しておかねばならない。
竜太の補足にも、ローゼスの口元さえ反応が無い。肯定と捉えよう。
「……はい、ローゼスさんはここがユーリ・イワノフの建てた館と、事前にリサーチしていました。抜け穴なんて最初から、当てにしていなかった方法があるはずです」
「成程……だからこそ、分からないな。アナタは何故……
ローゼスは不敵に笑うが、その質問自体には深い意味がない様に思えた。
なればこそ、しっかりと答えなければならない。
「……いいえ、自分は
「……! ええ、聞きましょう。金田君」
仮面の穴から覗いた瞳が、歓喜に揺らいでいた。
凡そ15分かけ、
田代執事と桐江が淹れたての飲み物をそれぞれに配っていた。
「金田様、ロシアンティーをお持ちしました」
「田代さん、ありがとう」
「ふう……終わりました。ああ、田代さん……どうも」
「有頭さん、神明先生は……」
「死因はおそらく撲殺です。あの出血量だと……死んでから、首を切られてますね。私に分かるのは、ここまでです」
「じゃあ、やっぱり……これは
タオルで体を拭った有頭弁護士は、ティーカップを遠慮なく受け取る。犬飼から質問され、くたびれた様子で語る姿は恐怖を振り切り、疲労感が勝っていた。
【露西亜館人形殺人事件】に則り、架空の殺人鬼・
「有頭さん、ひとつ……確認させてください。自分が死んだら、『第2の遺言状』は効力を失いますか?」
――!?
「はい、その通りです。金田さんが途中で死亡された場合、不参加の扱いとなります」
「言い切ったな……この人」
「でも、どの道……中止でしょう? あんな事が遭ったんだから……」
「この遺産相続レースは
「そんなの、続ける意味だってないじゃない!」
「ああ、どうしてこんなコトに……」
「「……」」
有頭弁護士は相続人候補にとって重要な部分を淡々と語り、梅園先生は絶叫。宝田はとうとう、絨毯へ座り込んだ。幽月先生と犬飼の煩い視線を感じながら、ひとつ確信を持つ。
(……誰も『第3の遺言状』を知らない)
「金田、おい……金田!」
ハジメに声を掛けられても、敢えて無視する。
「神明先生を殺した方に告げます。明日の朝8時までに、名乗り出て下さい」
――?
ローゼスと竜太以外の困惑が手に取る様に分かり、
「名乗り出なかった場合、トリックノートを燃やします」
「……は!?」
「ちょっとお!! あれはあたし……山之内先生の物よ、アンタが勝手にしていいはずないでしょう!!」
「流石に言い過ぎだぞ!」
「……っ」
非難轟々の嵐を受けようとも、
有頭弁護士は迷惑そうに口元を歪め、田代執事は困惑するも空になったティーカップを片付ける。桐江は知らん顔だった。
「金田、さっきから何なんだ!」
「今回の惨劇! もしも……トリックノートに動機があるなら……そんな
「!? ……金田君。それ、アナタが犯人に狙われるんじゃあ……」
ハジメに問い詰められ、
「自分は今夜、この部屋から動きません。朝の8時までに、名乗り出て下さい」
重ねて告げた瞬間、深夜0時の鐘が鳴り響いた。
「さて、もう0時ですし……皆さんは部屋へ戻りましょうか。金田さん、降りて下さい」
(……なんだ、こいつ)
緊迫した雰囲気の中、有頭弁護士は手にしたイワン人形をマントルピースへ置く。平然と解散を告げる彼が犯人だったとしても、納得しかない。
「私は先に休ませてもらいますか……
「……」
ローゼスは軽やかに振り返り、就寝のご挨拶。その視線の先は、ハジメだった。
「こんな状況で寝られるかっ」
怯え切った宝田の反応が、新鮮に思えた。
「桐江さん、どうぞ」
「え? いえ……あたしは……」
「自分はこの時間、飲まないと忘れていました。桐江さん、どうぞ」
「あたし、この後も片付けが……」
「そうですか……」
押し問答の末に断られたティーカップをテーブルへ置き、
「田代さん。こちらは、飲みたくなったら飲みます。ここへ置いて行って下さい」
「畏まりました。その様に」
「竜太君、お2人が無事に休まれるまで見送って下さい」
「はい、金田先輩」
1人、1人と応接間からいなくなり、ハジメ達だけが残った。
「金田、説明してくれるんだろうな」
「この部屋に残ったのは、モールス信号を送る為です」
「あ……対岸に来てるかもって言う……宇治木さんにね。あたしがやるわ」
ハッとした七瀬はすぐに電灯スイッチへ駆け寄り、パチパチパチ、パッパッパッ、パチパチパチを繰り返す。思いの外、煩わしい。
「なんで、ノートを脅しに使った? 美雪の言う通り、犯人に狙われるぞ」
「……そこが狙いです。指揮者はゲーム続行を望むのか、それともトリックノートを守るのか……。前者なら、殺害動機は遺産相続にあります。後者なら……神明先生はアイデアを奪った報復を受けたのか、奪う為に消されたのか……更に後者なら、宝田さんと梅園先生は確実に危険です」
ハジメの切なそうな表情に堪えられず、
「……分かった、そこまで状況を読んでるなら……俺もここで犯人を待つよ。けど、ひとつハッキリさせてくれ。ローゼスの仮面の下、誰か見抜いてるか?」
「さあ? 一体……何者なのでしょうね」
重要だと言わんばかりに詰め寄られたが、
「戻りました。金田先輩、田代さんと桐江さんの部屋……チラッとですが、撮れましたよ」
「……え? あ、はい。そうです、流石は竜太君です。早速、映像を見せてください」
(コイツ、本当に二重人格じゃなかろうか……)
(金田君、いつもこんな感じよ)
気の利き過ぎた竜太に報告され、
「でも、金田先輩。ノートを燃やすは、やり過ぎじゃないですか? 囮と言うより、標的になっちゃってますよ」
「佐木君、すごい……テープの数ね」
「どうなってんだ、その服……」
竜太は服に仕込んだビデオテープから、ここへ到着した順番に並べ出した。
「……標的……そうですね、自分は真犯人の
「金田、お前……」
「ハジメちゃん、誤解しないで下さい。敵は味方と同じ、相手を対等の立場に置いて初めて成立する関係です。
「……敵と味方が同じ……」
〈これからは、私がキミをメイドとして……〉
〈良かったですねえ、神明先生! 好きなブランデー浴びる程、飲めて♡〉
ハジメ達の視点から物事を俯瞰する。神明先生が酒臭かった理由は、ここにあった。
〈第1ヴァイオリンのコンスタンチン、第2ヴァイオリンのターニャ、ヴィオラのオリガ……〉
午後2時頃のビデオメッセージ、同じ場所の出来事。
〈あたしも部屋へ帰ろ、10時半の夕食……〉
〈僕も気分転換に……〉
午後10時頃のビデオメッセージ、ここではない東の塔の応接間。鐘の音とビデオの時刻表示が、5分ズレていた。
〈桐江さんの部屋、お面があるんですね〉
〈……ええ、そうなの〉
〈田代さん、おやすみなさい〉
〈ありがとうございます、佐木様。お先に失礼致します〉
〈うお……キミは佐木君だっけ?〉
〈犬飼さん……実は……〉
――判断材料が概ね揃い、鳥肌が立った。
「ハジメちゃん、竜太君、七瀬さん。暗号文、解けていますか?」
「……いや、全然……」
「あたしも、第2のヒントはイワンだけになっちゃったし……」
「……え~と、暗号文は生憎……。ただ……
度肝を抜かれ、拘ってない質問が口から飛び出る。ハジメと七瀬は竜太の発言にギョッとし、お互いの顔を見合わせた。
「金田先輩も気付いてるんでしょ? 今回の暗号ゲーム、橘先生の時と同じだって」
「自分は、つい先程です。――アイデアなんて、どっかで被るんだから――」
竜太に微笑まれ、
「……あ! 分かった、時計の中ね♪」
「美雪まで……そうか! 最後の楽しいリズム……嘘だろ」
そう、軽井沢の暗号ゲームは『大時計の中』に景品があった。
どこぞのフリーライターの依頼、出版社関係の助っ人、著名人の別荘、集められた参加者達、応接間の立派な時計。類似点は多く、必然的に連想してしまったのだ。
「単純に……名前の頭文字を取るんじゃねえんだろうなあ」
「はじめちゃん、それカタカナじゃない。ロシア人形なんだから、名前のスペルはロシア語に決まってるでしょ。それでも『TOKEI』にならないけど……ロシアンティー貰うね」
ハジメと七瀬は急いで己のメモ帳と暗号文を見比べ、謎解き開始。
「ハジメちゃん、朝までにお願いします」
「ジッチャンの名にかけてっ」
「佐木1号が言うんかい!! ああ、美雪……寝るな、美雪!!」
「……ZZZ」
丑三つ時の午前2時頃には、七瀬が脱落。夜明けまでには――謎は全て解けた。
宇治木「宇治木です、……閲覧ありがとうございます。ごめん……モールス信号、見えてるんだけど……地元警察に電話しても取り合ってくれない。まあ、当然だよなあ。さて、次回は『露西亜人形殺人事件・霧、晴れて』!! まだ霧深いけど、このゴムボートで湖を渡れば……!? き、気球!?」
神明 忠治
ミステリー評論家、酒が入ると性格が変わるタイプ。妻との離婚で酒が増え、素人楽団定例会にも参加していなかった
ドラマ版は、そのまんま東が演じる。離婚の慰謝料2千万(何をしたら、そんなに高いん?)
作中にて、多岐川を通して、にいみと交友関係にあった
梅園 薫
山之内の弟子にして、愛人?竜二曰く、ビジュアル系作家。部屋の仕掛けは隠し金庫。ドラマ版は着物姿、自損事故の内容も詳しく描写されていた