金田少年の生徒会日誌 作:珍明
誤字報告により修正しました。ありがとうございます
「白神と言います。地方医師の実態調査に来ました」
普段は怪奇現象や未確認生物、迷宮入りした事件を調査し、ルポにして纏めているそうだ。都会の人ならではの雰囲気、綾花達のような子供は勿論、大人も魅了された。
男子は冗談半分で余所者を見る目付きをしながら、興味深々が隠せない。
「どんな事件を調べるんだべ? やっぱ、アガサ・クリスティーの【そして誰もいなくなった】みてえな……」
「都、失礼よ。今、桜雪祭を開催しております。3百年続く伝統でして……」
ミステリーファンの
「ええ、その話……岬町の今井さんから伺いました。こちらの雪影中学校へ来られたら、皆さんが色々と教えてくれるとも……」
「え~……誰だろうなあ。この辺でも、今井って苗字……多いし」
白神の話に
でも、今は言いたくない。
「……っ、あたしのお父さんも……今井って言うんです。顔……ほっぺたに傷とか、ありませんでした?」
「いいえ、眼鏡の方です。それに……随分と会っていない息子さんがいるような、言い方でした」
「んじゃあ、島津の親父じゃねえか? お前が乳飲み子時、離別したっつう……」
「かもなあ、眼鏡で今井なら。春菜の親父も「今井」かよ、偶然だな」
「島津、確認しとけよ」
「え? なんで……立石君。島津君、今のお父さんと上手くいってるじゃない。本当の親子より、仲良いなっていつも思ってたし……」
「島津は野球部のエースになる男だぞ。有名になってから、『お前は俺の息子だあ』って来るかもしんねえべ」
「そんな方には見えませんが、確認は必要です。血液型は勿論ですが、先天性心疾患の心配もされた方がよいでしょう」
「遺伝子性の病気ってヤツね。島津君、お父さんと血液型の相性は? 型によっては万一、輸血出来ないかもよ」
「……都……んな、大げさな……。分かった、分かった。立石も親御さんの血液型とか、調べといてくれよ」
立石の冗談めかした言い方に、白神は優雅に提案する。都のミステリー魂に火を点け、島津は離れ離れに暮らす実父について、調べる事にした。
――そして、春菜の実父と偶然の
綾花と冬美は知っていた。
島津の事ならば、家庭環境から足のサイズまで知り尽くしている。抜け駆けしないように、大好きな彼の情報は全て共有した。
「あたし達で……言いたかったね、冬美」
「しょうがないわ、白神さんの言う通り……先天性疾患は調べておかないとね。実は、野球に向かない体質だったら、洒落にならないもの」
悔しい気持ちを抑え、2人で納得する。
白神は他にも、過度な練習による野球肩への対策。歌島のオペラ座館に住む怪人の話を聞かせてくれた。
「白神さん、もっともっと~」
「都!! 本当に失礼だって! 綾花も手伝って~」
「はいはい、都ってば……」
都はすっかり物珍しい話の虜になり、何度も話をせがむ。冬美と綾花で引き離すのは、大変だ。
「太刀川さん、その好奇心を大事になさってください。探偵の素質があります」
「ホントだべか~、やった~♪ 推理作家、目指している甲斐あっただ~」
「白神さん、お世辞いらねえって……」
服をどんなに引っ張られても、白神はクール。都は社交辞令を真に受け、魚住はやれやれと肩を竦めた。
桜雪祭が終わる頃、彼も去ってしまう。
かつての7人目との別れに似て、寂しい気持ちが強かった。
春菜はあまり口を利かなかったけれども、スケッチブックに彼の絵をコッソリと描いているのを見た。
「あたし、いずれ……東京へ行く。ついでに白神さんにも会うわ」
「お~ガンバレ~」
「応援してるぞ~」
「お土産、東京バナナでよろしく」
冬美の固い決意を、男子3人はからかった。
雪影高等学校へ入学した早々、悲しい報せがひとつ。
綾花達の卒業を機に、廃校が決まった。
元々、人が減り続ける中、岬町に新しく大きな港の完成がトドメを刺す。隣近所も引っ越しで空き家が目立ち、都の実家アパートはついに入居者がゼロになった。
都のご両親は仕方ないと笑う。
島津は立石とのバッテリーで、野球部を必死に盛り上げる。なんと夏の甲子園出場に、雪影高校の名を連ねた。
結果、1回戦敗退。
それが島津を焦らせてしまい、練習量を増やした。無理をした。とっくに肩は限界だった。
――春を迎える前に、野球部は廃部となった。
落ち込んだ島津を慰めようと、綾花は何度も思った。その度、冬美の視線が怖かった。
お互い平等に、恋を実らせよう。
などと言っている内に、春菜に先を越された。
本人達は隠し通しているつもりなのが、呆れた。
出かけた服のコーディネートも、半日あれば井戸端会議で広がる狭い田舎。どうして、バレないと思ったのだろう。
もっと真剣に、隠して欲しかった。
魚住がひと月程、家出騒動を起こしたが、失恋の痛みに心配する余裕なし。彼はスッキリした顔で戻り、あんなに好きだったギターも辞めた。
綾花もテニスに未練があり、中学校の元テニス部の部室へ何度も足を運んだ。
そこで気付く。
もう夢を追っているのは、冬美と都だけ。
しかし、春菜の夢は何だろう。スケッチブックやイーゼルに絵を描く姿は知っている。その心の内は、語られない。
聞いてみようと思った。
「……あたしの夢?」
「うん、あたし……ウインブルドンが夢だったの……知ってるよね? 春菜の夢、ちゃんと聞いてないなあって」
春菜はゆっくりと周囲を見渡し、コソコソッと綾花へ耳打ちする。
「……雪を、描きたい……」
囁かれた夢。
聞いた瞬間、何て美しいのだろうと羨んだ。
「叶うよ、きっと……」
「うん……」
綾花は応援というより、確信を持つ。春菜の照れくさそうな表情は同性から見ても、愛らしかった。
高校2年生の夏休み、綾花は高校演劇コンクールの放送に興味なんてない。
でも、冬美は違う。
「これよ、私の求める乙女はっ」
「うわ……ビックリした!」
「この高校……確か、金田一君の通っているトコだわ。前に、都のお母さんが言ってたもの」
「冬美……?」
一緒にTVを観ていた綾花に構わず、冬美は叫ぶ。
「あたし……、不動高校へ転校する!!」
「え~!?」
勿論、冬美の両親は断固反対。高校卒業後の上京はギリギリ許しても、転校は認めなかった。
わざわざ東京出身の都の母親を味方に付け、冬美は両親と戦った。
「1回、学校へ見学に行ったら? 焦って決めんでも……」
「んだべ。変な奴いたら、冬美が困るぜ」
「金田一、ケンカ弱そうだし」
「お土産よろしく」
「都はいいでしょ、立石君と島津君も……魚住君は黙ってナサイ!」
冬美は皆の意見を取り入れ、先ずは東京見学の段取りを整えた。
「金田一君の家に……泊まるんだ」
「冬美、それが目的?」
「違うわよ! もう~春菜も綾花も……子犬みたいな顔やめて~」
綾花と春菜の寂しげな視線を受けても、冬美の決意は変わらない。元気良く旅立つ彼女の背中はまるで、永遠の別れに思えた。
2日後には、普通に元気な姿で帰宅。
しかも、客人付き。
「巽……征丸と言います。春まで……お世話になります」
岐阜から来た青年・
その仕草だけで、慇懃な礼儀作法を身に付ける習慣にあったと何となく、感じた。
「冬美が婿連れて、帰ったぞ~」
「きゃ~おめでとう!」
「親泣かせ~」
「うっさい、男ども!!」
案の定、男子にからかわれた。
「あたしは、太刀川 都。都でいいよ。アンタが住むトコ、ウチのアパートだべ。お母さんも首長くしてまってるかんな」
「波多野です」
「……綾花です」
騒がしい彼らを放っておき、女子は静々と自己紹介。と言うか、都は既に巽の話を聞いていたと察した。
「俺、魚住。漁で一番、良い魚……都ン家に配達してっからな」
「俺、立石。わかんねえコトあったら、何でも聞け」
「俺、島津。俺らと歳近いように見えるけど、学校はどうすんだ?」
「いえ、働き口があれば……そちらへ勤めようかと」
男子の質問にも物怖じせず、ハッキリと答える。
「巽君ってやっぱ、訳アリ?」
「都……詮索は、ちょっと……」
流石、都は正直者。春菜が諫めた。
「んで、冬美は「あたしが東京から、招待して差し上げたのよ」だんべ?」
「アハハ! 立石……それ、似てる似てる♪」
「……立石君、後でお話し合いね?」
立石のモノマネに島津はケタケタッと笑い、冬美は切れ気味の笑顔。巽はプッと噴き出して、和んでくれた。
「冬美……金田一君、元気だった?」
「元気、元気。なんか、探偵の真似事やってるんですってよ」
「へえ……金田一君が探偵?」
「おいおい、その話は……」
春菜に聞かれ、冬美は指折り数える。魚住が注意してくる。確かに、中学校時代を知らない人の前で盛り上がるのは憚られた。
「いえ、僕も金田一さんの話は……少し知ってます。遠慮せずに……」
「本当? じゃあ、巽君とハジメは……なすて知り合ったんだべ? 岐阜の人と知り合うたあ、事件絡み? 岐阜から東京へ移り住んだのに(早口)」
「……だから、都の前で……探偵の話は止せっつたんだよ」
巽の許しを得たと思い、都の詰問タイム。魚住はやれやれと、彼女を羽交い締めにした。
「あっ……冬美、噂のクリスティーンに会えたの?」
「……そうよ、白神さんに会ったの。不動高校でミス研の講師をされてるんですって」
あたしの質問を聞き、冬美はさらっと話題をすり替える。
「ウソ~そんな偶然、ある~?」
「白神さん、誰か分かる?」
「はい、僕も……あの人には、お世話になりました」
都が驚く中、春菜の質問へ巽は答える。
「あとねえ、速水 玲香にも会ったんだから♪」
「「「そういう夢でも見たんだろっ」」」
東京自慢を聞きながら、都の実家アパートへ押しかける。巽の荷解きを手伝い、自分達は晩御飯の支度もある為に退散した。
「金田一君さ、来年に開けるはずだったタイムカプセル。忘れちゃってたのよ」
「金田一なら、しょうがねえよ。俺の出す年賀ハガキに、返事も寄こしやがらねえ」
「金田一らしいわ……ハハハ」
「本当……」
中学1年生の桜雪祭、中学校の校庭へコッソリと埋めた7人だけのタイムカプセル。6年後の高校3年生になったら、開けよう。立石のナイスな提案だった。
冬美がのんびりと報告すれば、島津は文句。魚住の大爆笑に、春菜は普段よりも少し明るい笑みを見せた。
「冬美、クリスティーン……」
「それとさ……あたし、やっぱり東京へ引っ越す。金田一君のいる学校へ転校するっ」
自尊心の高い彼女の事だ。東京ガールを前にし、現実に打ちのめされたのだろう。
追究を拒んだ冬美の断言が、それを物語っていた。
「おいおい、都がいない時に……」
「都には、あたしから言うわ。……タレントでやっていくなら、高校卒業なんて……待ってられないもの」
立石の言葉にも、冬美は笑みを消した真剣な態度で返す。
――負けられない。
そんな強固な意志が伝わった。
「冬美……決めたのね」
「春菜……や~ね、なんでアンタが淋しそうなのよ。丁度良いわ、あたしの絵を描いて。ビッグになったら、番組で紹介してあげるわ」
「皆でピカソ風にしてやろうぜ」
シュンッと寂しげな春菜を元気付けようと、冬美は胸を叩く。魚住に茶々を入れられ、ドッと笑いが起こった。
(冬美、本当に?)
旅立つ前に見た背中は、これを示唆していた。あたしは思いの外、ショックだったらしい。
翌朝の登校中、巽を見かける。都のお父さんと一緒に、町内会へ挨拶回りしていた。
(律儀だなあ。金田一君なんて、2週間も住み着いて……学校の先生にも碌に挨拶してなかったっけ)
5年前の桜雪祭をふと、思い返す。懐かしくて、桜の木を探しても冬に備えて葉っぱしかない。残念だ。
「綾花~、おはよう~! 聞いてよ、冬美ったら!」
「おはよう、都。巽君はどうして、この村に? あ……本人から、聞いた方がいい?」
「いんや、普通の理由だったべ。いろ~んな場所を見て回りたいんだってっ」
「……へえ、旅人さんかあ。寅さんみたいにね」
朝から元気な都に捕まり、愚痴の予感。我ながら、上手くかわせた。
「ここへ来る前は、人形島ってとこにいたらしいよ。曰く付きの人形達を毎年、決まった時期に供養するとか……サスペンス魂が擽らるわ~」
彼も生まれた故郷を飛び出した。
その点において、冬美と共感したのかもしれない。あたしにはない発想、巽を気に掛けるには十分過ぎる理由だ。
最初は、好奇心が先だったろう。
彼はあまり、ゴシップに興味ない。
翌朝、お茶の間を騒がせた一大ニュース。売れっ子ミステリー作家の莫大な遺産、その相続問題について話した時、綾花はそう感じた。
「……赤の他人に譲る人って、本当にいるんだね」
「そうね、都の大好きなミステリーの始まりっぽい……」
「もう~、山之内先生……神♪」
巽は差し障りない言葉を呟き、綾花へ全国紙新聞を渡してくれた。その後ろで、都はハイテンション。作家へすっかりと心酔した。
「いやあ……まさか、服役囚にやっちまうとは……」
「事実は小説より奇なりだぜ……」
「この小説家、親戚もいないんだっけ?」
「んだんだ、天涯孤独ってここに書いてる」
「……」
皆が記事へ注目する中、春菜は物思いに耽っていた。
「どうしたの、春菜? ビックリしちゃった?」
「……綾花、7月くらいに蒲生 剛三が亡くなった事件……覚えてる?」
「あ~……え~と。人を騙して
「あの事件で、逮捕された人。どうなったかなって……」
春菜が何故、青森の事件と関連付けたのか、本人も分かっていない様子だった。
「皆さん、世の中に関心深いんだね」
「……!? 巽、面白れぇ奴だな。仙人かよ……」
「フフフ……そうであれば、良かったなあ」
「立石、お前の世俗まみれの本、貸してやれよ」
巽は皆を見渡し、同世代とは思えぬ達観した物言い。魚住の指摘通り、彼は世捨て人かもしれない。
でも、立石の秘蔵本は却下した。
煙草屋で留守番、瓦の屋根補修、漁へ出る事もあり、巽はとても働き者だ。
大人達は「冬美が婿を連れてきた」とクスクス笑う。都も割と傍にいて「見てみて、征丸! この人が速水 玲香、大門 優作、棟方 ケン!」と教える様子が目立つが、もう完全に姉弟の域だ。
「冬美さん、ごめん……僕のせいで変な噂が……」
「いいの、いいの。娯楽の少ない田舎だもん。一々、腹を立てたりしないわ。巽君もこんな時こそ、ド~ンと構えてなさい」
胸を張る彼女自身は、ここを去る。桜雪祭には、約束の為に戻るだろう。
「ねえ、冬美……タイムカプセル。早く、開けちゃあダメかな?」
「へ? ……う~ん、どうだろう。立石君がそのくらいがいいって言ってたし……あたしは、綾花がいいなら……早くなっても、良いわ」
ふとした思い付きに、冬美はニッコリと賛成。彼女は普段から、綾花に寄り添う意見をくれていた。別れが近い今になって、思い出す。
「タイムカプセル? あの……小さい頃の思い出を庭とかに埋めて、大人になったら開けるってヤツかい?」
「そうそう、あたし達……中学校で……金田一君と埋めたの。こ~んなポリバケツに……」
「本当は来年、開けるんだけどね」
巽が初めて興味深そうな態度になり、綾花は興奮気味に身振り手振りで説明する。冬美はさらりと日付を伝えた。
「……素敵だね、本当。それが出来る仲間がいるって……美しいよ」
「巽君……」
哀愁漂わせ、笑う。そんな彼の方が美しかったと柄にもなく、思った。
(人が恋に落ちる瞬間を……初めて見ちゃった……)
冬美の感心した心の声は、聞こえない。
「じ、じゃあ……巽君も……タイムカプセル……埋めない? あたし達と!」
(あ~ここで2人だけって言えないのが、綾花らしいわ)
巽の歓迎と冬美の見送りになるような、新たな思い出を作ろう。心からそう思い、彼へ提案した。
「……僕は、埋められるような思い出なんかない。……馬鹿みたいな話だけど、征丸って名前も……僕の物じゃあないんだ」
「……へ? 名前が……違うの? どうして……」
「……単純な話……人から盗ったんだ。そいつの母親も一緒に……僕は、そういう奴なんだ。皆さんに、親切にしてもらえるような人間じゃない」
「そんな……」
クシャッと表情を歪ませ、巽は背を向けて行ってしまった。
訳アリな事情は察していたのに、深入りし過ぎた。
「綾花、気にしないで。巽君が自分の気持ちを吐露してくれる程……アンタに気を許してる。そう受け取った方がいいわ」
「冬美……」
冬美はいつも、綾花の欲しい言葉をくれる。巽の求める物はまだ、分からない。
だからこそ、まだ無垢だった中学時代の自分へ聞こう。タイムカプセル開封は、決意した。
「ねえ、立石君。タイムカプセル……」
「うん? いいんでね? 絶対にこの日って、決めたワケじゃねえし」
結構、大雑把だった。
他の面子にも声をかけ、OKを貰う。後は、東京の彼だけだ。
都に電話番号を聞き、コール音が鳴る度に胸が高鳴った。
〈お~綾花か、久しぶり~! え? タイムカプセルを早く開けたい? え~と今日は何日だ……15日か、今月の連休は……いや、来月は修学旅行が……クリスマスは……〉
5年振りの声はとても懐かしいが、ウダウダと予定が決まらない。そう、彼はこんな調子で2週間も村に居座った変わり者であった。
「分かった、冬休みね。そのまま、冬美と一緒に東京へ帰ってね。冬美の出発日が決まったら、また連絡するから、よろしく」
〈あ~、待て待て。悪かったって!〉
どうにか、冬休みに約束を取り付けた。
「やった~! ハジメが来る~!!」
皆の大喜び、都の激しいリアクションに負けるが、春菜も喜びを隠しきれない様子。島津の彼女を見る目付きはとても、不安に溢れていた。
綾花はすぐに男の嫉妬を察知し、こっそりと2人きりになる。相談へ乗るような態度で、必死に話を聞き出した。
物陰から、冬美と魚住の気配を感じても、気付かぬフリ。
「春菜……本当は、金田一が好きなんじゃねえかなって。いつも……アイツの話になると、急にお喋りなんだぜ」
(本当はって言ってる時点で、交際バラしてる自覚……ないんだろうなあ。もう、朴念仁め……)
好きだった人の辛そうな表情は、見るに堪えない。ここで綾花が悪役になってでも、2人の別れを唆す方法もあっただろう。
巽の淋しそうな背中が目に浮かび、それを思い留まらせた。
「春菜は、自分の気持ちに嘘を吐かない子よ。言いたくない事は、テコでも言わない。島津君に伝えた言葉があるなら、信じていいのよ」
「……綾花……、お前……なんか変わったな」
「どういう意味?」
「……明るい奴ってイメージを崩さないように、無理して笑ってる……。高校入ってから、ずっとそんな感じだったぜ」
恋人しか目に入らない男だと思っていたが、ちゃんと幼馴染も見てくれていたようだ。
綾花を無自覚に振った詫びは、それで勘弁してやろう。
「島津」
「うお……魚住か、そんなところにいたのかよ。なんだよ……」
「俺、春菜のコト……まだ好きだから。油断すんなよ、マジで」
「は!?」
魚住の物陰からの宣戦布告、島津は慌てふためく。
冬美の静かな表情は、恋を諦められない乙女だったが、もしもの時は綾花が体を張ってとめよう。大好きな友達同士を思えば、久方ぶりにスポ根魂が騒いだのは内緒だ。
冬休み、久しく揃った7人はタイムカプセルを開ける。降り積もった雪を掻き分け、掘り返すのは本当に大変だった。
綾花はテニスの球へ勝手な書き込み、『ウインブルドン優勝記念』なんて嘘もいい所だ。
カッコつけた
見事なキャッチ。
「巽君……あたし――!!」
雪を踏んだ足跡は、中学校の自分が傍にいる。そんな心強さがあった。
巽の求めている物はこれから、知っていく。今はまだ、自分の持てる物だけで勝負だ。
「……綾花さん」
意表を突かれた彼の返事は、桜雪祭の桜吹雪が舞う中で聞く。花びらと名残雪に負けぬ、美しい返事を――。
都のお母さん「どうも、都の母です。若いって良いわねえ、東京に居た頃を思い出すわ~。え……金田一さんに、世話になった話が聞きたい? そんな話はさておき、雪影村に来たら、ウチのアパートへ泊まっていって! さて、次回は『銀幕に立つ役者達』!! タイトル詐欺とは……?」
蓮沼 綾花
テニス大好きスポ根少女、島津への好意は「推し」に近い。冬美と一番仲良し、素直に悩みを打ち明けられる関係だった
作中にて、征丸が二十歳を過ぎてから入籍する
太刀川 都
眼鏡っ娘のミステリーファン、はじめちゃんが好きで1人「ハジメ」呼び。母親同士が友人関係
正直、犯人に気付いていてわざと外部犯の仕業に推理させようとしていた気もする。事件後も推理作家を目指せると思えないよ(涙)
作中にて、夢を追い続ける
社 冬美
ドラマ版では既に東京のタレント事務所に所属
仲間外れを嫌がる為、仲間想い。だからこそ、隠れてコソコソ付き合った島津と春菜が許せなかったと思われる。もしも、公言していれば、表向きだけでも祝福したかもしれない
春菜の死後、「あの子が勝手に死んだ」と言い放ったのは返答によって、綾花が罪悪感に苦しむと察し、咄嗟に吐いた『嘘』だったのだろう。それが島津に聞かれていたとも知らず。
作中にて、3学期から不動高校へ転入する
立石 直也
ドラマ版がイケメン過ぎる。原作にて、部屋に缶ビールが散乱していた(流石90年代の漫画)
島津と春菜の交際を知っており、事件後にすぐに犯人に気付いた
作中にて、きっと弁護士になれただろう
波多野 春菜
寡黙だが、皆が騒ぐ様子を眺めていたい派
はじめちゃんの夢枕へ現れたのは、島津の事を頼みたかったのかもしれない
作中にて、夢を叶えるだろう(赤ちゃんは高校卒業後ね)
魚住 響四郎
一番、偉い。仲間の雰囲気を壊さない様に、失恋後は気持ちを切り替えた。しかも、タイムカプセルを開くまで誰にも気付かれなかった(どうか、幸せになって)
島津 匠
肩を壊してしまった野球男児
冬美が自分に恋心を抱いていると知り、あえて春菜との交際を隠していたと思われる(こんな田舎で無理あるよ、実際バレてたやん)。後、避妊しろ(激ギレ)
作中にて、白神のアドバイスで肩を壊す時期が遅れ、1年生時には甲子園出場を果たした
タイムカプセル
原作にて、5年後に開封。作中にて、約束を6年後に変更(そもそもくらいって言ってたし)。綾花へ一歩踏み出す勇気を与えた
巽 征丸
作中にて、人形島で暮らしていたが、他の土地を巡ろうと雪影村へやって来る
冬木先生の協力で戸籍を「養子縁組」から「実子」へ訂正されたが、メンタルは落ち込んだまま。綾花のアプローチを受けて、後に『蓮沼 征丸』となる
白神 海人
オペラ座館・第三の殺人ゲストキャラ。作中にて、地方医師の実態を調査中に雪影村を訪問する