金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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原作ネタバレがあります。未読の方はご注意ください


3編 【幽霊ホテル殺人事件】の話、今する?

 期末テストが終わった翌日、朝から災難だった。

 目覚めた瞬間、雨音に飛び起きる。こんな時に限り、普段のバイクカバーを被せていない。天気予報の外れに、大慌て。そこから、微妙に不運が続く。

 レインコートは面倒だと手間を惜しみ、台本を読みたくて電車にて登校。満員電車を耐え切れば、到着駅を乗り過ごした。

 閉門に間に合わないと急げば、ゲリラ豪雨。昇降口へ到着した途端、雨が上がった。

 HR後、(いち)は担任の先生から便箋を渡される。【不動高校の金田様】と宛名書きされ、差出人は北海道の弁護士事務所。嫌な予感はしたものの、ひと先ずと開封してしまう。

 

ギャア!? 虹川 幸雄だあ!

 

 濃厚なラブレターを触りだけ読み、鳥肌を通り越して、寒イボが立つ。捨てようかと思ったが、また送られては怖い。昼休み時間に学校の電話を借り、顔見知りの道警へ告げ口。郵便局へ猛ダッシュし、速達で送り返した。

 

 部活を終えた後、週刊誌記者の宇治木(うじき) 政宗(まさむね)へ呼び出されたホテルへ向かう。彼のテーラードジャケットに比べたら、金田祖父から借りた礼服が古く感じた。

 貝殻のチャームを着けて、正解。シャラシャラと音を立て、逸る気持ちが落ち着く。

 

「マジックショー?」

「不動商店街のクジで招待券、当てちゃってさ。ここなら、知り合いにも滅多に会わないし……ショーに夢中で、こっちの話は聞かれないよ」

 

 レストランの夕食は聞いていたが、高校生には贅沢だ。

 ただ、これから舞台へ立つマジシャン達は、父・残間(ざんま) 青完(あおまさ)の旧友の弟子である。

 幼少期の頃に一度会ったきり、ギリギリ大丈夫。

 レストランの点灯が一段、また一段と落とされ、ショーの開幕を教えた。

 

〈お待たせいたしました。マジシャン吉田の登場です〉

 

 ステージがライトアップされ、(いち)はショーと料理をそっちのけで調査結果に目を通す。先ずは前回のおさらいだ。

 

(斑目 紫紋、25年前に絶滅種『夜光蝶』の蛹を発見。元々資産家だったが一躍有名になり、斑目家に更なる発展……以下省略。両親とは他界、妻の緑、娘は3人……舘羽、揚羽、るり)

 

 家族構成と集合写真は、基本中の基本。使用人、長女の婚約者、懇意にしている大学教授やカメラマンなどの人間関係も抜かりなく。

 

(奥様は八重島大学医学部を中退してまで、年の離れた斑目と結婚。当時、実家が多額の借金を抱えていた為の人身御供……)

 

 ここまでが、修学旅行前に受けた報告。

 まだ足りない部分があり、更なる調査を依頼した。

 次のページを捲る手が緊張に震え、深呼吸する。宇治木の心配そうな眼差しに後押しされ、文字の羅列を読んだ。

 

(深山 日影……、つい先日から助手として居候……)

 

 身元不明の入院患者は、名を与えられた。

 奪い取られたような喪失感を味わったのは、一瞬だけ。すぐに次の項目へ移った。

 長女の婚約者は旅行会社員であり、何かの縁で遠野家と関わりがあっては危険。そう思っただけの追加調査だったが、文字を読むにつれて別の緊張が走った。

 

「宇治木さん、貴方の腕を疑うわけではありませんが……この小野寺って人、……本当に?

「生憎、小野寺のご両親は亡くなっていてね。その親戚筋から、教えてもらったんだ。須賀って苗字を聞いて、嫌な予感がしたから……ついでに奥さんの実家と、在学期間が被った人からも、話が聞けたよ。先ず、間違いない」

 

 宇治木の気まずそうな顔から、信憑性は高い。

 

(小野寺 将之は、須賀 徹……。班目 緑が大学時代に付き合っていた恋人・須賀 実との間に生まれた……息子!?

 

 これが事実なら、異父兄妹による婚約。本人達が承諾していても、完全にスリルとサスペンスを予感させた。

 

(なんか遭ったら、隠れ蓑にされるやんけ……)

 

 タイミングが最悪過ぎて、(いち)は頭を抱えた。

 

「ごめん、金田君。そっちも気になるのは、分かるよ。俺……言いにくいんだけど、深山って人さあ……」

 

 宇治木が躊躇いつつも何かを言いかけ時、マジシャン吉田(よしだ)のバルーンマジックが大成功。客人達も食事の手を止め、盛大な拍手が湧き起こった。

 そこへ、ゴッと重い音が混ざる。

 

(……なんだ? 物が落ち……!!)

 

 周囲をキョロキョロ見回せば、店内は本来の明るさを取り戻す。ひとテーブルを挟んだ向こう側、金田一(きんだいち) (はじめ)が鉢植えでテーブルに押し付けられている。相手は勿論、七瀬 美雪(ななせ みゆき)だ。

 デートに見えても、違うのだろう。

 

またアンタかい、明智警視!!

「またとはなんですか、こっちの台詞ですよ」

(!? う~わ~……こっちもタイミング悪~)

 

 しかも、植木鉢の向こう側にはキラッキラな明智 健吾(あけち けんご)警視がいる。(いち)はビビリながら、報告書を宇治木の鞄へ突っ込む。絶対に見付からない様、すう~っと気配を消した。

 宇治木も異変に気付き、鞄のジッパーもそっと閉じた。

 

(どうする? コッソリ、抜ける?)

(いえ、また暗くなった隙に動きましょう)

 

 宇治木のアイコンタクトを受け、(かぶり)を振るう。下手に動けば、明智警視に捕捉されてしまうのだ。

 

「ど~して、こんなところで鉢合わせせにゃならんのだ!」

「キミこそ、高校生がホテルでマジックショーとは随分、豪勢では……」

 

 毒舌なやり取り、久し振り。よく通る声が嫌でも耳に入り、野次馬の視線がチラチラと注がれる。次のマジシャンがマジックショーを始めたと言うのに、お喋りが止まらない。七瀬は仲裁する気配もない。

 失礼過ぎて、目眩がする。

 

「金田君……ちょっ、マズイって」

 

 (いち)は我慢できず、中腰の姿勢で彼らへ近寄った。

 

「成程、七瀬君にたかってタダ飯をしてる上に文句まで、つくづく見下げ果てた甲斐性なしの……」

「アンタにそこまで言われる筋合いないわ!」

「ハジメちゃん、お外行きます? ――良きマジックには、良き観客も必要ですので――」

 

 明智警視がやれやれとため息を吐き、ハジメはムキになって怒り出す。そんな同級生の肩を力強く握り、叫ばれない様に手で口も塞いだ。

 

「……!?(金田、なにしやがんだよ!!)」

「――お前を蝋人形にしてやろうか? ――」

「金田君、来てたのね。あ……宇治木さんも」

 

 ハジメがモゴモゴしようと、(いち)は離さない。七瀬は宇治木を視界に入れ、挨拶の手を振った。

 

「……金田君、今の言葉……誰から聞きました?」

「明智さん、こんばんは。勿論、デー〇ン小〇閣下のお言葉ですよ」

「そちらではなく、マジックのくだりです」

「……片倉さん、だったと思います。学園祭の時……?」

 

 明智警視に怪訝され、(いち)はぼんやりと記憶を頼る。逃亡犯と偶然、露西亜館で出くわした際に聞いた台詞だったと思い返し、血の気が引いた。

 

((確か、高遠(さん)だった気がする……))

「……キミ達の学園祭、盛況だったそうですね。金田君、片倉さんはご本人ですか?」

「はい……そこは、キチンと確認取れています。出演のお礼を渡した時とか……」

 

 幼馴染カップル未満もハッとし、黙り込む。明智警視は眼鏡の縁を押さえ、探るような目付き。違反を見逃さない交通課に睨まれた瞬間を思い返しながら、(いち)は正直に答えた。

 

「……ふむ、あれは私がロス市警に研修……」

「うお、明智サンのロス自慢……。なんか、久し振り……」

「はじめちゃんったら、明智さんはそんなに自慢なんかしてないわよ」

「お2人とも、シ~ッ」

 

 明智警視は口元に手を当て、突然に昔を懐かしむ。彼の海外暮らし経験があるなど初耳だが、驚きよりもマジックショーを優先。カップル未満の声を落とさせた。

 

「ごめん、俺も混ざちゃっていい? すみませ~ん、椅子と……」

「今更ですが、お食事中に失礼します……」

「いえ、長い話になりますので……どうぞ、ご着席を」

 

 宇治木は小さい声でスタッフへ呼びかけ、(いち)も明智警視のテーブルへ移る羽目になった。

 この事態になり、早速の後悔。ハジメが囮になっている間、逃げればよかった。

 

(金田……逃げたいって、顔に書いてやがる)

(もしかしたら、秋絵ちゃんとのデートの為にリサーチしてたのかも)

「赴任から5カ月が経った頃、ロサンゼルス郊外にある古いホテル……」

 

 ハジメと七瀬から、憐れみの視線を受ける。明智警視は極力、囁き声で語り出した。

 

 銀行強盗によって奪われた現金がホテルに隠され、容疑者を泳がせる形で張り込んでいだ。

 そんな話から始まり、ミスターマスクマンと呼ばれた東洋人の言動を教えられる。白いマントを靡かせ、鳩を出す様子がありありと伝わった。

 ショーに相応しくない無礼な迷惑客を、追い払った手際の良さ。

 

「良きマジックには、良き観客も必要……。彼は(・・)そう、言いました」

 

 明智警視の口元は、ミスターマスクマンの表情を再現しているように微笑んだ。

 記憶にある高遠 遙一(たかとお よういち)と完全に一致。

 露西亜館で彼がマスクを被っていたのは、本当に奇術師(マジシャン)としての参加だったのだろう。

 やるせない気分になったが、明智警視の話もやり切れない結末を迎えた。

 容疑者は捜査中に殺害され、その犯人として明智警視の大切な仲間が逮捕された。

 動機は、息子の復讐。容疑者かつて、殺人の罪を犯したが、火災の避難中だった為に心神喪失扱いで減刑された。挙句、全く反省していなかったという。

 

「軽すぎる刑罰は、それ自体が被害者遺族への侮辱……ってヤツだな。ごめん、偉そうにカッコつけて……」

「いいえ、宇治木さんの言う通りよ。パッチって人が、キチンと罪を償ってくれれば……ボブさんは、許してあげられたかもしれないのに……」

 

 宇治木は話の内容を気の毒に思い、七瀬はしんみりと呟いた。

 (いち)は不愉快さに眉間のシワを解し、席を立つ。

 

「金田? まだ金の在処が……」

「花摘みです」

 

 ハジメに声をかけられても、自分でも素っ気ない声で返す。マジックショーはまだ続いており、足音を殺して抜け出した。

 

 男子トイレの個室へ引き篭もり、便座の蓋を閉じたままに座る。ドアを見つめながら、前屈みに項垂れた。

 赤の他人(ボブ・デイヴィス)知り合いの事情(遠野 英治)と重なり、心が痛い。

 

「キッツ……」

 

 今までなら、他人事。身近な誰かでない限り、割り切っていた。

 その分、多くを見落とした。

 だから今は、痛みを堪えて情報を整理する時間だ。

 

(高遠さんはロスにいた。偶然か、必然か? 明智さんとの共通点は、秀英高校出身? だとしても、在学期間は被ってない。明智さんは『秀英のホームズ』、卒業生の間でも有名人……)

 

 必死に記憶を辿り、2人の接点を探す。目を瞑って集中していれば、コンコンッとノックされる。ビビった拍子に、壁を殴ってしまった。

 

「金田君。独りで考え込むのは、やめなさい」

「……明智さん。……よくココが、分かりましたね」

「キミは連れの方を置いて、遠くへ行きません。閉まっている個室は、ここだけです」

「わあ~名探偵……じゃくなくて、名刑事ですね」

 

 明智警視の声を受け、そっとドアを開ける。優雅な眼差しに見下ろされ、(いち)は観念して個室を出た。

 何もしていないが、洗面台で手洗いを欠かさない。

 貝殻のチャームを濡らさない様、気を遣う。

 

「金田君、そのチャーム……どなたからのプレゼントですか?」

「……同じ学校の、朝木 秋絵さんです。修学旅行のお土産に頂きました。自分も、渡しました。シャーペンですが……」

「朝木陶工の娘さんですね、良いセンスです。……別々の旅行先ですか?」

「はい、ハジメちゃん達は沖縄です。自分、兵庫と奈良です」

 

 眼鏡の奥にある眼光は、見定めるような視線。プレゼントの相手を聞いた途端、キラキラが眩しくてハンカチで目元を覆った。

 冷たい水の感触に頭が冴え、こちらも質問しよう。

 

「明智さん、高遠さんとは死骨ヶ原の事件前から、お知り合いだったのですか?」

「いいえ。私は……彼を知りませんでした。ですが、近宮 玲子とは生前、友人関係にありました。彼女が……ある人へプレゼントする為に、トリックノートへマジックを書き留めていた事も……知っていました」

 

 2人が秀英高校の同窓生だったか、明確に知らない。それを遠回しに確認しようとすれば、物凄く重い話をされてしまう。

 

(ある人は高遠さんだとして……。そこまで大切な事をわざわざ、明智さんへ教えた……?)

 

 その意味にゾッとして意気消沈、もう質問したくなくなった。

 

「さとみさんには、お話しました。勿論、金田一(きんだいち)君と七瀬君にも……」

(だ~れも、教えてくれてないんですけど~)

 

 当然と言えば、当然だ。姉・残間(ざんま) さとみは、そもそもお喋りではない。あの事件直後なら、残間くらいにしか話さないだろう。抱え込んだ重みを弟へ背負わせず、そこで打ち止めにする為だ。

 自分も、さとみへ伝えていない辛さがある。だから、彼女の気持ちは分かる。

 気分が落ち込んだくらいで、情報(痛み)から逃げてはならない。

 

「明智さんは、例の真新しい釘についても……知っていたのですか?」

「はい、その件で……キミのお母様とも話しました。それだけで、事件性があると言えない。道警の判断は致し方ないと……」

「と言う事は、高遠さんの本当の父親かもしれない人の話も?」

「……いえ、その方に関してはまだ何も……」

 

 どれもこれも、意外な返答ばかり。母・金田(かねだ) にいみの事情聴取はひと段落したと聞いたが、肝心の話をしていなかった。

 

「金田君はその方について、私に話してくれた事以外で、何か思い出しましたか?」

「いいえ、全く」

 

 明智警視に質問され、本当に何も思い付かなかった。「彼」から誕生日プレゼントされた洋書の存在を思い返したのは、自宅へ帰った時だ。

 (いち)は鏡に映った明智警視を見やる。何故だろうか、それが高遠の姿と見間違える。無意識に変装を疑っているのかと思ったが、彼らの似通った部分を重ね合わせているだけだ。

 

「明智さん、高遠さんのマジックショーはどんな感じでした?」

「……お話した通り、凄腕です」

「……そうですか、それは……観てみたかったですね」

「金田君、アナタは高遠に何を想うのですか?」

 

 個人的に感想を聞けば、思った通りに警戒された。

 明智警視を心配させる要因に、心当たりが多すぎる。(いち)は鏡から目を逸らし、目の前の彼を見上げた。

 

「高遠さんは、ホテルのマジックショーに呼ばれる程の腕前でした」

「はい」

「それを……復讐の為に、使ってしまった……」

「そうです」

今は(・・)、とても……残念に思います」

「分かります」

 

 矢継ぎ早に語る高校生の憤りを、エリート警視はひとつひとつ丁寧に頷く。そのせいか、口から言葉が紡がれた。

 

「そうさせた左近寺達は、もういません。次に償うべき相手がいるとすれば、近宮 玲子に子供がいると知りながら……何もしなかった自分達です。彼女の子供は今、どうしているか……そう考えて、探して、会って、話すだけでも、何かが違ったはずです」

 

 決して、両親に言ってはならぬ。

 残間は愛娘の育成に全てを注ぎ、にいみは息子を隠すのに精一杯だった。

 ――では、「彼」は?

 横浜の出会いにもしも、高遠に関する何か深い意味があったのだとしたら、またも自分は何か見落としたのだろうか? 

 

「……金田君、彼は天性の犯罪者です。高遠が誰と会い、話そうとも……左近寺達を手に掛けたでしょう」

「明智さん、容赦ないですね……」

 

 明智警視はあっさりと、(いち)の独り善がりを否定する。それは誰の為だろうか、少なくとも天才マジシャンに対してではない。息子をボロクソに言われれば、流石の彼女も若きエリート警視に怒り狂うだろう。

 想像したら、不覚にも笑ってしまった。

 

「だとしても、見たかったです。高遠さんの、マジックショー……」

「……金田君」

 

 明智警視の平坦な声にゾワッと背筋が凍り付き、(いち)は口が滑ったと自覚する。

 

「……彼に罪を償わせたら、マジックショーを上演させましょう。キミの為に……一世一代の大魔術をね」

「それは……楽しみですね」

 

 明智警視の明晰な頭脳は、想定される高遠逮捕の瞬間を何度もシミュレーションしているのだろう。笑みに、強い矜持が窺えた。

 それが亡き天才マジシャンに対する彼なりの敬意で、決着だ。

 だが、自分の為に高遠がショーを開く姿は想像できず、必死に言葉を取り繕った。

 

「明智さん、……お話を聞いてくれて、ありがとうございます。戻りましょうか?」

「金田君……そうやって、溜め込んだ気持ちを話してください。私に言いづらいなら、この際、石川県警でもいいでしょう」

 

 明智警視の表情が綻び、遠回しに嫌味が飛んできた。

 彼の言う通り、少しだけ胸の痛みが引いた気がする。但し、打ち明けた罪悪感も襲ってきた。

 ハジメ相手でも最近、ようやく本音を話せるようになった。まだ明智警視相手には、時期尚早かもしれない。

 

「金田君が近宮 玲子の公演を観に行ったのは、小学生の頃に1度だけと聞きました。何か、理由でも?」

「……明智さん、自分は当時……仙台に住んでいたのですよ? 人気絶頂の天才マジシャンが、公演場所に選ぶと思いますか? 仮にショーがあったとしても、入場料を家族全員分、ポンッと出せる経済状況……」

「何も考えずに聞いて、すみませんでした」

「ご理解頂き、ありがとうございますっ」

 

 無駄にトイレの洗面台を占領過ぎたと、廊下を歩く。明智警視にとっては雑談でも、金銭感覚の違い過ぎる質問にはイラッとする。

 

「もしかして、今夜は……キミも商店街の福引で当てたんですか?」

「ご名答、宇治木さんが引き当ててくれました」

「ほお、そうまでして……週刊誌記者と何を話されていたんですかね?」

「……ショーの最中に騒ぐ人の話とだけ、言っておきます」

 

 明智警視の質問の切り替えは、ゾッとする。

 眼鏡が不気味に反射し、(いち)達がテーブルへ着いた瞬間から見られていたと察した。

 可もなく不可もなく、答えられた自分を褒めよう。

 

 その後は強奪された現金の在処を聞かされ、残りのマジックショーを楽しんだ。

 

「金田もこっち乗れよ」

「もう、はじめちゃん。しつこいわよ。金田君、宇治木さん、おやすみ~」

「明智さん、お2人をお願いします」

金田一(きんだいち)君は、保証できません」

「ごめん、なんで?」

 

 カップル未満の2人は明智警視の運転で帰るらしく、駐車場で見送る。高級車が道路へ走り去った後、(いち)と宇治木はドッと疲れた。

 

「あっぶなかった~、偶然って恐ろしいね。深山の件、話したくなかったんだろ? 特に……明智さん」

「……はい」

 

 高遠なら、今夜の出会いを運命と言うだろう。

 明智警視の人柄をより理解する為、この場が与えられた。

 自分達の話を知れば、彼は真偽を確かめに石川県金沢市へ飛ぶ。それにより、もたらされる哀しみを物ともせず、やってのける人だ。

 悲恋湖に消えた人間と同一人物であろうとなかろうと、隠し通したい。

 しかし、班目家はとんでもない爆弾(近親相姦問題)を抱えていた。周知の事実なら、そっとしておきたいが、違うなら悲惨すぎる。

 石川県警に相談しようにも、これは家庭の問題だ。血生臭い修羅場にならないと介入出来ない。

 そうなると、矛先は赤の他人である居候へ向かってしまう。絶対に阻止だ。

 

「警察には相談できない……」

「金田君? まさか、金田一(きんだいち)君達に頼るとか?」

 

 (いち)の呟きを聞き、宇治木は少し明るい声になる。残念だが、違う。ミス研、不動高校の誰も巻き込みたくない。

 事件の場数を踏み、話を聞くだけでも状況を推測できる人物。心当たりがひとつ(・・・)

 

「宇治木さん……函館異人館ホテル、知っていますか? 刑事が逮捕された件です」

「……え~と、逃亡犯が戸籍乗っ取りして、刑事やってたヤツだよね。金田君が解決したって、佐木君に聞いたけど……ごめん、今と関係ある?」

 

 流石、宇治木は道警の不祥事をすぐに思い付く。お喋りな後輩は後日、お仕置きしよう。

 (いち)は震えた唇を噛み締め、深呼吸。該当者の顔を脳裏に浮かべ、妙に懐かしく感じたのは一瞬だ。

 

「その刑事……不破警視へ、連絡を取ってください。班目家で起こるだろう事件を予測(・・)してもらいます」

「は?」

 

 宇治木の困惑した表情はきっと、(いち)の顔そのもの。

 我ながら、自分の発想に恐れ入る。声が笑っている様に聞こえたのはきっと、武者震いだ。




パトリシア「皆さん、閲覧ありがと♡ ……ここで、あたしから電話が来てって展開もアリだったんじゃない? まあいいわ、さて次回は『【幽霊ホテル殺人事件】の話、今する?‐残間 さとみ』♪ なによ、結局アタシは出番ないんじゃない!!」

金田(かねだ) (いち)
オリ主。氷室 一聖と瓜二つの甥、残間 さとみの弟
不動高校生徒会執行部・会計、演劇部部員。朝木 秋絵と交際中(詳細はQ44にて)

金田一(きんだいち) (はじめ)
学校のお調子者、ミス研部員。オリ主にとって聖人的存在

七瀬 美雪
元生徒会長、ミス研部長。演劇部も掛け持ちし、生徒会活動も頑張る

明智 健吾
原作にて、ロスの自慢話かと思えば、高遠に因縁があると教えたかったらしい

宇治木 政宗
鬼戸・墓獅子伝説殺人事件ゲストキャラ、週刊誌記者。作中にて、オリ主から蝶屋敷の調査を頼まれる(詳細はQ59にて)

高遠 遙一
原作にてマスク越しに明智と対面。はじめちゃん曰く、この出会いが魔術列車の脅迫状を警視庁へ送るキッカケになったと推測する

マジシャン吉田などのマジシャン達
順番にショーを披露。はじめちゃん達が騒いだせいで、引退を決意した者もいる
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