金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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原作では秋のバーゲンセールへ行く約束をしていた話です


7編 美雪とはじめのエトセトラ

 年末の大掃除も終えても、門松や鏡餅を飾らない。

 去年も事件の後始末に追われ、正月飾りにまで手は回らなかった。

 TV番組は『激動の1年を大追跡!!』と銘打ち、どこのチャンネルも様々な事件を振り返る。不動高校の旧校舎は勿論、死骨ヶ原湿原ホテル、竜王丸船長の帰還……etc。

 先月の遺産相続により、背氷村殺人事件の当事者達も引っ張りだこ。

 イラついて、レンタルビデオ店から名監督(蔵沢 明)の作品を片っ端から借りてきた。

 台所のテレビを独占し、若きスターの演技を見ながら、宿題に励む。

 

「あ……この人、万代 鈴江よ。わっか~い♪ ほらほら、海峰君……あれ? 映画に興味あったっけ?」

「ないっス、でも『アマデウス』は観てますよ。あれを見ないでピアニストにゃあ、なれません」

 

 何故、七瀬(ななせ)がいる。

 可愛い後輩にして生徒会長・海峰(かいほう) 学(まなぶ)まで、呑気に茶を啜っている。彼から聞こえた名作に共感し、思わず抱き締めた。

 

「七瀬さん、金田一(きんだいち)くんからお電話があったけど……居ないって言っておくわね」

「はい、お願いしますっ」

「……七瀬さん、ハジメちゃんから逃げているのですか?」

 

 金田祖母がそっと台所を覗き込み、悪戯っぽく笑う。七瀬は満面の笑みで返し、一(いち)は状況が掴めてきた。

 

「どうせ、金田一(きんだいち)先輩が原因デショ。急に俺ントコ、電話してきて「金田君ン家に行かない?」って誘われたときゃあ。そう言う事情だったんスね」

「だって、あたしだけで金田君の家へ来たら……秋絵ちゃんに悪いし……」

「ハジメちゃん、雪影村から帰って来たのですね。お土産はないのでしょうか?」

 

 海峰は落ち着き払った様子で、煎餅を頬張る。彼も七瀬の突発的な行動に慣れてきた。

 しかし、彼女のズレた気遣いはそこまでにして、一(いち)は話題を変えた。

 

「さあねっ。昨日の夜に帰って来た時なんて……あたしに挨拶せずに、さっさと寝ちゃってたわ。今日、買い物に付き合ってくれるって約束だったのよ、正月飾りっ」

「その辺のスーパーで、買えばいいだけじゃないですか……」

「いいや、年末セールに男手は必要っス」

 

 七瀬はプリプリッと怒り出し、一(いち)はゲンナリ。海峰は買物の大変さを、力強く語った。

 

「ハジメちゃん……こうやって、探してくれているじゃありませんか」

「いいのよ。ちょっとくらい困ったら、いいんだわ。大体、はじめちゃんは日頃から、あたしのやる事なす事、文句ばっかり! この前、ケーブルテレビでフェンシング大会観てて、あたしも親戚から教わろうか~って言ったら、まあ出るわ出るわ……宇佐美選手の悪口……」

「それ、俺もダチん家でTV観てましたよ。星野が大ファンなんでねって……ええ!! あの宇佐美 乙也を悪く言う奴なんているんスか? 長野オリンピックにフェンシング競技があったら、確実に金メダルを獲っていたと目された男ですよ!?」

 

 唐突に2人の話題は、今月に開催されたフェンシング大会に切り替わる。一(いち)は視聴していない為、口を閉ざした。

 

「オリンピックと言や~、スキー部から渋沢先輩が選ばれるかもってヤツ。どうなったんスか?」

「今は強化合宿に行ってるから、それが終わった後に分かるかなあ。……どの道、新学期に入らないとね」

「……渋沢先輩が選ばれる? 何ですか、それ……。白峰先輩から、大学の推薦入試に合格したとは聞きました」

「ええ~……今月入ってから結構、話題になってやしたよ? 金田先輩、朝木先輩とイチャイチャして……話聞いてなかったんスね?」

「もう……金田君ったら、しょうがないわねえ」

 

 スキー部3年生の話になり、ビックリ仰天。

 不動高校から、栄えあるオリンピック選手が出る可能性を知った。

 しかし、イチャイチャとは心外。

 

「修学旅行での笑い話なら、各方面から聞きましたよ」

「あ~、俺も聞きやした」

「あたしを見ないで。それは、はじめちゃんの仕業なんだから」

 

 和みながら、一(いち)はハジメ達の沖縄話を思い返す。何たる偶然か、5組の担当添乗員がまだ見ぬ課題相手と同姓同名。自分も沖縄へ行きたかったと心底、悔しがった。

 

「そっちの、海峰くん? 確か、囲碁が強い子やったろ。ワシと打と」

「お、いいッスか? 金田先輩のご家族でも、手加減しませんぜ」

「海峰君は先月の囲碁部大会で、とっても良い成績残したんです。来月も個人戦に出るのよねっ」

「お祖父ちゃん、負けても泣かないでください」

 

 今度は金田祖父がひょっこりと顔を出し、海峰を誘う。彼なりの持成しだが、念の為に実力は教えておく。

 

「なんやねん、一(いち)。気~悪いわ~。上手な人はな、接待囲碁くらい出来んねんで」

「……難易度が上がった!」

 

 金田祖父はニンマリと笑い、海峰の判断に全てを委ねていた。

 

「大人げない……」

「フフフ、良いお祖父ちゃんじゃないの……」

 

 一(いち)が呆れても、七瀬は楽しそうに笑ったかと思えば、深刻そうに黙り込む。

 

「秋絵ちゃんが長野へ帰っちゃうから、落ち込んでるかと思ってたわ。……時雨ちゃん、そんなに……悪いの?」

「……秋絵さんから、聞いた通り……そう答えておきます」

 

 七瀬の本題は、それだった。

 学校側への転校の手続きは終わり、秋絵(あきえ)は親しい友人にのみ事情を伝えていた。

 一(いち)はどうにか秋絵のご両親を説得して、病名を教えてもらっただけ。

 横浜の開業医(二神先生)へ相談してみたが、結果は言うまでもない。突き付けられた現実に落胆さえ、出来なかった。

 

「秋絵ちゃん、年明けに荷物取りに……東京へ戻るって言ってたけど、会う?」

「いいえ、引っ越しの人手は足りていると聞きました。別れではありませんから、無理して会う必要ないでしょう」

 

 七瀬の心配そうな視線を見つめ返しても、シャーペンを動かす手は止めない。秋絵との電話越しデートは、教えてやらぬ。

 

「自分達の話はここまでにして、そちらのクリスマスは? まさか、事件に巻き込まれたとか……」

「ないない、ミス研のクリスマスパーティーも問題なく終わったわよ。……はじめちゃんったらね、あたしへのプレゼント……頑張ってくれたの」

 

 一(いち)が話題を変えれば、七瀬はブルブルと頭(かぶり)を振るう。可憐な手で押さえた髪には、氷の結晶を模したヘアピンが着けられていた。

 微笑ましくても相変わらず、進展はない様子。

 

「素敵なヘアピンですね。ハジメちゃん、その為にバイトを頑張ったのでしょう」

「そうみたい♪ それに、はじめちゃん……三が日も年賀状配達のバイトをするの。あたしもだけどね。金田君、お正月のお店は休み?」

「……一応、店は4日から仕事始めです」

「じゃあ、元旦は大丈夫ね。初詣、一緒にどう?」

 

 バイトの話から一転、さらりと元旦の初詣に誘われる。七瀬の場合は、ハジメ達も一緒が前提だとすぐに分かるが正直、断りたい。

 その日は、愛する伯父・氷室(ひむろ) 一聖(いっせい)が眠る寺へ行きたい。

 しかし、それを七瀬へ伝えると気を遣わせてしまう。只でさえ、喪中の金田家に正月飾りが無い点へ触れない様、配慮してくれているのだ。

 ここは無理な要求をして、諦めさせよう。

 

「剣持さんが行くなら、行きます」

「剣持警部はご家族と行くはずよ。三が日どころか、今この瞬間だって……事件で忙しいんだから。ちょっとでも、家族だけの時間を過ごさせてあげなくちゃ」

 

 小さい子供をあやすような口調で、窘められた。

 今すぐ、喪中ハガキを投げ渡したい気分。短気な自分を妄想の中で、必死に宥めた。

 

「その言い方ですと……皆さんは毎週のドラマの如く、事件捜査で会っている様ですね。自分抜きでっ」

「あらまあ、違うわよ。剣持さんとは事件以外でも、会うわ。旅行へ連れて行ってもらったりとか……」

 

 からかってみれば、まさかの親戚同然の付き合い。一(いち)は羨ましい過ぎて、小さく悲鳴を上げた。

 

「何よ、その嫉妬全開の顔。……一応、冬休みに約束してるけど……一緒に来る? 長野のスキー場……」

「繁盛期に、よくホテルの予約が取れましたね。2月のオリンピックも控えて……」

「剣持警部は、長野が地元なの。お友達から招待券とか、譲ってもらえるのよ。今回もそうっ」

「……出身地まで知ってる……間柄?」

 

 七瀬は物凄く遠慮がちに声を掛けてきたが、一(いち)は色々と絶句。疎外感に肩が重くなり、ノートへ顔面を突っ伏した。

 そこまで仲睦まじい彼らの邪魔は、出来ぬ。断るしかない。

 

「……いえ、お気持ちだけ頂いておきます」

「そ、そう言えば、発表会……剣持さんが観に来てくれるって」

 

 そのひと言にやる気満々、演劇部の発表会に気合が入る。

 男気溢れる警部との過ごせる時間はきっと、巡ってくる。無意識にシャーペンを食卓へ置き、両手を組む。傍から見れば、完全に祈る姿勢になった。

 

「なんで……金田君、そんなに剣持警部が好きなの? 明智さんにも色々と、お世話になっているじゃない。歳も近いし……」

「……何でって、それは……」

 

 七瀬から困った奴を見る眼差し、一(いち)は口元に手を当てて考えた。

 具体的に説明しようにも、言葉にならない。

 しかし、パトカーを見掛ける度、会えると期待する気持ちは本心だ。

 

「人を好きになるのに、理由がいるのですか?」

「……相手によるかなあ……、秋絵ちゃんに言っちゃだめよ」

「当たり前です。剣持さんと秋絵さんは、学校の事情聴取で会った程度……。ほとんど面識ありません。そんな方の話をしても、秋絵さんが退屈してしまいます」

「そう言う線引きは、出来るのねえ」

 

 思わず質問で返してしまったが、七瀬は半分諦めたように忠告してくる。一(いち)はそこまで、空気の読めないではない。彼女の微妙に感心した態度も、心外だ。

 ふと電子音が聞こえると思いきや、一(いち)の携帯電話が鳴り響く。『着信』の表示のみだが、不安はない。

 このタイミングなら、予想は付く。

 

「ハジメちゃんですか?」

《……! よく分かったな、金田。今、大丈夫か? 俺、冴子ン家から掛けてんだけどよ。美雪、知らねえ? どこ探しても見付からなくてさ》

 

 一(いち)が通話相手の名を呼び、七瀬はそっと両手で口を押さえる。メチャクチャ瞬きを繰り返していた。

 その意思を汲み取ろう。

 

「海峰君なら、祖父と囲碁を打っています。ハジメちゃんもご一緒にいかがですか?」

《美雪だっつってんだろ。……本当、どこ行ったんだよ。見かけたり、連絡があったら……家へ帰る様に言ってくれ》

「分かりました。七瀬さんに必ず、伝えます」

《まさか……明智さんとこじゃあ……》

 

 本当の事を聞いただけで、ハジメは追究せずに通話を切ってしまう。余程、焦っているのだろう。

 一(いち)はちょっとだけ、申し訳なく思った。

 

「だそうですよ、七瀬さん。自分はこのまま、宿題を続けます。観たい映画があるなら、お好きにどうぞ。お茶のお代わりは自由です。……そこにいる祖母が、ピアノの演奏もしてくれますよ」

「っ」

「……フフフ、そうねえ。あたし、お祖母ちゃんのピアノお願いします」

 

 やれやれとシャーペンを握り、宿題の続きに取り掛かる。覗き見していた金田祖母の息を吞む声が聞こえ、七瀬は勿体ぶってから、頼んできた。

 

「それを聴いたら、帰るわ。まだお正月の準備、終わってないし……」

「……そう、七瀬さんは本当に働き者だこと、さあ……いらっしゃい。何かリクエストは、あるかしら?」

 

 七瀬と金田祖母は微笑み合い、ピアノの部屋へ消える。ようやく、人心地付いた。

 取り敢えず、映画は止めておこう。多少の防音対策を効かせた部屋と言っても、演奏はどうしても聞こえてくる。ビデオを停止させた時、ドビュッシーの『雪は踊っている』が奏でられた。

 弾むようなテンポは、外を走り回る子供達の喧騒そのもの。

 金田祖母が今の状況に合わせた選曲、とても良い。

 

(……元旦、七瀬さん達と初詣……行こっかな)

 

 心変わりを胸中に秘め、シャーペンを動かし続ける。45分程で予定範囲が終わった。

 その間、金田祖母の演奏は続き、金田祖父と海峰の熾烈な対決は持碁で幕引き。

 

「お邪魔しました~♪ 良いお年を」

「ジイチャン、中々の腕前っスよ。俺が保証シマス」

「「いつでも、遊びにいらっしゃい」」

 

 エネルギッシュな高校生2人を見送った後、老人2人はドッと疲れを露わにした。

 

「明日には、腱鞘炎ね……」

「ワシ……途中から、本気で勝ち取りに行ったんやで。最近の子はホンマ、プライド高いわ~」

「お疲れ様です。昼食は自分が作りますので、ゆっくり休んで……電話……」

 

 2人を労おうとした時、廊下の電話が鳴り響く。電子版に表示された相手は、世界的作曲家の孫だった。

 金田祖母がスッと、奥の部屋へ引っ込んだ。

 仕方なく、一(いち)は受話器を取る。

 

「金田でございます」

〈金田君、優歌よ。本日は、お暇かしら? 金田先生はいらっしゃる?〉

 

 一瞬、金田祖父を見やる。彼は陽気にウィンクした。

 

「いますよ、これから昼食ですので……その後にでも、お越しください」

〈ヤッタ♪ お昼がまだなら、お持ちするわ。お腹を空かせて、お待ちなさい〉

 

 師走はその名の通り、多忙な年の瀬。大晦日を明日に控えた今日、来客はまだまだ続く。

 

○●……――私の息子・一(はじめ)のぐうたらな性格は誰に、似たのだろうか?

 只、運だけは家系譲り。

 8月の悲恋湖キャンプモニターツアー、10月のバルト城ミステリーナイト。立て続けに事件発生、はじめも多少の擦り傷を負った。

 私はいつもの事だと思ったが、イベント企画の主催者から、賠償金が支払われるという臨時収入。合計で3桁に及んだ。

 夫のヘソクリより多くて、羨ましい。

 去年の夏、悲報島『宝探しツアー』でも事件へ出くわした。その時は何もなかった為、本当に驚いた。

 大晦日の大掃除も手を止め、はじめの通帳を眺める程だ。

 

「はじめ、去年のツアーなんだけど。今からでも、貰えないの?」

「……考えること、一緒だなあ。お母さん、残念だけどそっちは無理。企画者の美作が、ツアーが始まる前に死んじまってたから、え~と……保険が免責になって、兎に角……払う奴がいないんだとっ。明智さんが言うには……」

 

 窓拭きに励む息子から、予想外の返事。警視庁の若きエリート警視に、何たる恥知らずな質問をしている。母親として、顔から火が出そうな勢いだ。

 

「やだ、この子ったら! 明智さんにわざわざ、聞いたの? 恥ずかしい……」

「恥ずかしくねえよ、貰えるもんは貰っておかねえとっ」

 

 そんな守銭奴みたいな言い方をしているが、はじめの本心は別にある。

 愛らしいお隣さん・七瀬 美雪(ななせ みゆき)の為だ。

 私の頼みで、美雪も悲報島に付き添ってくれた。事件の報せを聞いた時、はじめ以上に彼女の身を案じた。

 今からでも、その行いが報われて欲しかった。しかし、そうは上手くいかないのが現実だ。

 

「ふう~ん、それで美雪ちゃんの誕生日とクリスマス。プレゼントを奮発してあげたの? 通りで、アンタにしては真面目に選んだと思ったわ」

「ち、ち、ち、違うしっ。美雪も高校生なんだぜ、ちょっとやそっとのもんじゃあ……満足しねえから、と、年相応のもんをだな……」

「お母さん、トイレの掃除終わったぞ」

 

 ニヤリと笑って見せれば、はじめの狼狽っぷりは素直過ぎる。のんびりした夫へ「次は靴箱の裏!」と指示しておく。

 

「あ~あ、フミと丙助叔父さんにも……大掃除、手伝ってもらえば良かったんじゃね?」

「何言ってんの、フミちゃんは普段からお家事をやってくれたわっ。寧ろ、丙助の面倒を見ないといけないから、掃除よりも大変よ」

 

 はじめは掃除に飽きてきたらしく、可愛い姪・二三(ふみ)を当てにしようとする。弟の丙助(へいすけ)は正直、気合のスイッチが入らないと木偶の坊だ。

 丙助は冬休みに入った途端、辺境の土地から舞い戻り、フミを連れて行った。

 とは言っても、市内にあるアパートの部屋を借りている。徒歩でも十分、会いに行ける距離だ。

 そのまま平穏に暮らして欲しいが、自由気ままな弟の性格を考えるならば、春先にはふらりと海外へ旅立つだろう。フミの父親でなければ、鉄拳制裁したいところだ。

 私が姉として注意? とっくの昔からしているが、効果ゼロ。それに、あまり叱るとフミが悲しそうな顔をするのも、強く言えない理由のひとつだ。

 あんなロクデナシでも、フミは父親が大好きなのだ。健気過ぎる。

 

「……そっスね」

 

 はじめが遠い目になり、フミへ同情した。

 丙助の存在が、子供達への反面教師になる。良い歳こいた中年オヤジの活用法がそれだけとは、情けない。もしや、はじめは奴に似てしまった。そう考えたら、しっくりくるというもの。

 逆に、フミは私に似た。だから、とても可愛い。

 

「そうだ、はじめ。アンタ、剣持さんと長野に行くでしょ。フミちゃんも連れて行ってあげたら? 日頃の頑張りに、ご褒美をあげると思ってっ」

「……まあ、俺は別にいいけど……。オッサンに聞くだけ、聞いてみるわ」

 

 弟以上に信頼できる現役刑事。

 子供達が生意気な態度を取っても、寛大な心で許してくれる。はじめはその有難みが最近、当たり前になりつつある。推理するだけなら、今の私でも出来るだろう。しかし、警察が捜査方針へ取り入れてくれるかは、別なのだ。

 かつての武勇伝と共に、語りたくない苦労を思い返し、段々と腹が立ってきた。

 

「お母さん。俺が何かやらかす前提で、睨まないでくれ」

「あら~顔に出てた? ちゃんと剣持さんにお願いするのよ。失礼のない様にっ」

「俺だって、オッサンから失礼な事言われてんのに……」

「それは本当の事だから、仕方ないでしょう?」

 

 こうして会話していても、はじめから目上の人を敬う気持ちは見えない。まるで、対等な友人の話をしている様に馴れ馴れしい。

 やはり、この息子は我が弟に似ている。その思い上がり、どこかで報いを受けるだろう。それでも、勝手に立ち直る姿が浮かんだ。

 ふうっと、ため息をつく。

 

「お母さん、はじめ。玄関まで聞こえてるぞ。さっさと掃除しておかんと、出前の蕎麦が来る……」

「「は~い」」

 

 夫の窘める声を玄関から聞き、返事の仕方が被ってしまった。

 

「全く、似た者親子だよ」

「そりゃあ、お母さんの子だもん」

 

 夫がクスリッと笑う。はじめはさらりと認めるが、ここまでぐうたらではない。

 そこだけは、譲らぬ。




青完「残間 青完です。皆さん、閲覧ありがとうございます。さとみは年始年末もマジシャンの仕事に励み……どうした、にいみ? そうだよ、さとみの活躍を告知……。……次回予告、いるかね? さて、次回は『金田一の報酬』!! よいお年をお迎えください」

海峰 学
血溜之間殺人事件ゲストキャラ。作中にて、新生徒会長

氷室 一聖
雪夜叉伝説殺人ゲストキャラ。作中にて、オリ主の伯父

金田一夫婦
母親が名探偵の娘

金田一 丙助
フミの父、自由人。原作にて、名探偵の血筋と明言されていない(婿養子の可能性がある)。作中にて、はじめちゃんの叔父
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