金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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前回の続きです
F.20の後日談でもあります
新年度の新しい出会いはワクワクしますね


C3.【死神病院殺人事件】を解決した後に・後編

 翌日も和泉(いずみ)は来なかった。

 生徒会室へ向かおうとすれば、桐生(きりゅう)に演劇部の部室へ問答無用に拉致られる。演劇部顧問・緒方(おがた)先生が部員の集合(幽霊部員一名を除く)を確認し、手振りで注目を促した。

 

「皆に報告があるの。今年度から、副顧問を置く事になったわ。どうぞ、月島先生っ」

「初めまして、月島 亮二だ。不動高校へ赴任したばかりの1年ながら、1年生の国語を担当している。どうぞ、宜しくっ」

 

 新たな演劇部副顧問の国語担当・月島(つきしま) 亮二(りょうじ)先生は戸を開け放ちながら、快活に挨拶して来た。

 

「は? 副顧問って?」

「しかも、月島……」

 

 寝耳に水の話に先輩方はビックリ仰天。部長たる布施(ふせ)先輩でさえ、知らなかった様子。そして、月島(つきしま)が珍しく真っ青な顔で立ち尽くしていた。

 

「お察しの通り、月島 冬子の兄だ。だが、依怙贔屓は一切しない。そのつもりでいてくれっ」

 

 真面目に宣言されたが、生徒は反応に困る。兄と妹、髪質は似ているが、顔立ちは違った。

 

「……月島さんより、有森君に似ていますね」

「ええ、俺!? よせやい、……ああ! 先生に似ているって言われたのが嫌ってわけじゃなくて……」

「本当だっ、さてはお前……怪盗紳士の変装だな! な~んてなっ」

 

 思わず、口に出た感想を聞き、有森(ありもり)がビビる。月島先生は変装を利用した盗人で笑いを取ろうとし、何名かが渇いた笑みを返した。

 

「それじゃあ、今いる部員の顔と名前を覚えたい。冬子以外は呼ばれたら、返事してくれ」

(((((絶対にシスコンだ……)))))

 

 男子生徒の声が聞こえたかのように、恥ずかしそうに月島は顔を真っ赤にした。

 

「有森、神矢、金田一(きんだいち)は……いないか。次は桐生、……あれ、また金田一(きんだいち)? 違うか、金田二(きんだに)?」

「金田君です。金田(かねだ) (いち)君!」

 

 何故か、桐生がキレ気味に否定した。真面目な性格故、副顧問相手でも、間違いは許せないのだろう。

 

「あ~緒方先生が言ってた字面が似た生徒か……すまんな、金田。早乙女、仙道…………以上だな。よしっ、覚えたぞ。金田一(きんだいち)は何故、来てないんだ? 掛け持ちか?」

 

 『オチコボレ』を知らぬ月島先生の問いには月島でさえ、目を逸らす。思わず、自分も七瀬(ななせ)と目配せしてしまった。

 この場を脱する為、(いち)は行儀よく手を挙げる。

 

「すみません、月島先生。自分と七瀬さんは生徒会へ行く時間です。ここで失礼します」

「ああ、構わない。七瀬は生徒会長だしな。金田もその口振りだと、生徒会か?」

「はい、金田君は生徒会になくてはならない人なんですっ」

 

 退室の許可を貰い、七瀬と廊下へ出る。戸を閉める直前まで、桐生の視線が煩かった。

 生徒会室には早くも新入生到来。

 

「海峰です。東大目指してま~す。囲碁部にも入部する予定っス」

「あ♪ 新入生代表の海峰君じゃない。生徒会に入ってくれるの? 昨日の入学式でも挨拶したけど、生徒会長の七瀬よ」

 

 新入生代表・海峰(かいほう) (まなぶ)に軽薄そうな口調で挨拶されたが、大歓迎である。

 

「遅くなった……皆、揃ってるね。おや、新しい子?」

「……!? 1年2組、海峰 学です。将来はピアニストを目指しています! 宜しくお願いします!」

 

 遠野(とおの)先輩を目にした途端、海峰の態度を豹変させ、ハキハキとした口調にてご挨拶。あまりの変わり様、人を見る目があると感心してしまった。

 

「ご丁寧にありがとう。3年の遠野、よろしくね。僕からも新入りを紹介するよ。2年生の朝木 秋絵さん」

「朝木です。生徒会活動に初めて参加します。至らない点があるかと思いますが、よろしくお願いします」

「秋絵ちゃん!? アナタも生徒会に? 嬉しい~♪」

 

 親しき友人たる朝木(あさき) 秋絵(あきえ)が粛々と挨拶し、七瀬は望外の喜びに大はしゃぎ。一気に生徒会が賑やかになった。

 

「七瀬さんと親しいのに、遠野先輩がお連れしたのですか……?」

「美雪ちゃんの組へ行ったら、演劇部に行ったって聞いたからさ。ここへ来る途中で、遠野先輩と鉢合わせたの。……え~と……アナタは確か……金田一(きんだいち)君と同じ字面の……」

「金田君よ、秋絵ちゃん」

 

 (いち)と面識はあるが、朝木には名前すら覚えられていない。仕方ない為に名乗ろうとすれば、七瀬に先を越された。

 

「あの……遠野先輩っ。以前、作曲家の御堂先生と歩いてましたよね? 1月くらいにデパートで!」

「……ああ、ああ~あれか……うん、歩いてたけど……あれは楽器売り場が分からないって言うから……」

 

 海峰が羨望の眼差しで問いかけ、困った遠野先輩に視線を送る。一緒に居たはずの自分に目もくれないなら、(いち)は沈黙を貫こう。

 

「ええ!? 遠野先輩、御堂 周一郎とお知り合いなんですか? あたしの父、御堂先生と対談したんですよ……」

「言っちゃってもいいの? 秋絵ちゃんのお父さんは朝木 冬生なの」

「へ? 人間国宝の娘さん!? ……マジで神展開、不動高校にして良かった……。特大号、俺も買いました!」

 

 照れ臭そうに朝木は得意げになり、海峰は感激に打ち震えて特大号を取り出す。

 

「……へえ、知ってる顔が雑誌に載るって……嬉しい気持ちになるね……」

 

 そんな2人にグイグイと迫られ、遠野先輩はタジタジとなった。

 (いち)と遠野先輩、そして、七瀬は朝木の父親を知っていたが、他の役員は初耳情報に目ん玉飛び出る程、驚いていた。

 

「そうそう、秋絵ちゃん。朝木陶工が1年以上ロシアで放浪生活していた話、本当なの?」

「本当よっ。3年前にいきなり、頭を冷やしてくるとか言って……家を飛び出してね。去年の年明けにいけしゃあしゃあと帰って来たの。今だから、笑い話に出来るけど……あの時は本当に心配したんだからっ」

「へえ……大胆なお父さんっスね」

(頭を冷やす……で、ロシア? 確かに寒いけど……なんで?)

 

 トーク番組でも語られた壮大な渡航経験。身内から聞けば、傍迷惑な家出騒動。大分、印象が違う。

 

「俺も折角なんで聞いちゃいますけど、遠野先輩って御堂先生の隠し子ですか?」

「……!? それだけは本当に違うから……っ」

(巻き込んで、本当にすみません!)

 

 期待に胸を膨らませ、海峰は不躾に問う。呼吸が止まる程に驚き、遠野先輩は完全否定。元凶の(いち)は胸中で詫びた。

 

「海峰君、御堂 周一郎にはちゃんとお孫さんがいるわよ。あたし、中学校の時に同級生だったものっ」

「あっ、父もその話してた。あたしと同学年のはずだから、不動高校にいないかって。そんな偶然、あるわけないのにねえ」

 

 同級生に朝木陶工の娘がいる時点で「そんな偶然」は存在している。彼女に遠慮してか、誰もツッコまない。

 

「はは~ん、養子縁組ってヤツっスね。御堂先生程の天才ともなると、跡継ぎ問題は避けられませんもんっ」

「何で……遠野先輩は隠し子呼ばわりで、孫は養子扱いなの?」

 

 やれやれと肩を竦め、海峰は苦笑する。朝木は反応に困り、聞き返した。

 

「だって、音楽に生涯を捧げた御堂先生ですよっ。遠野先輩レベルの人が血筋じゃないと認めねえっスわ」

「いやあ、認めないとかじゃなくて……。僕なんかじゃあ、お孫さんに申し訳ないよ……」

 

 狂気じみた海峰の言い分。遠野先輩も恐怖のあまり、表情が強張る。七瀬まで言葉に詰まり、場は静まり返った。

 ただ、(いち)には隠し子や養子も納得できない部分があった。

 

「……御堂先生にお子さんがいたとしても、コウノトリが運んで来たとか、キャベツ畑で生まれて来たのでしょうね」

「……金田君? どうしたんだい、急に……今時、小学生でもしないよ。そんな御伽噺……」

 

 この上ない満足した答えに行き付き、(いち)は無意識に言葉がこぼれる。遠野先輩は真顔で戸惑った。

 

「どうもしていません。自分は御堂先生の恋人は音楽だと言っているだけですよ」

「……先輩! 俺もそういう話っス!!」

((((じゃあ、最初からそう言えや))))

 

 高校生にあるまじき保健体育知識を指摘されても、恥じる事はない。自信満々に自らの考えを述べれば、感涙した海峰と意気投合。握手からの抱擁にて、お互いの感動を伝え合った。

 偶然、その瞬間に入室して来た執行部顧問より「こいつら……御堂 周一郎はトイレ行かないとか、言いそう」と小馬鹿にされる。そこまで非現実的な妄想はしていない為、心外であった。

 本日の解散後、海峰との話は下駄箱まで盛り上がった。

 

「金田先輩、『エヴァ』劇場版は観に行くんスか? 俺はバッチリ、観に行きました!」

「上映中に行きますよ。でなければ、7月公開の話に付いていけませんからね。今、上映中の続きになるのでしょう? 見逃せば、もうビデオレンタルを待つしかありません」

「そうなんスよっ。けど、大丈夫っ、『エヴァ』は人気急上昇中。先輩みたいな観に行けないファンの為にまたスクリーンで上映してくれまス!」

「確かに名作となれば、集客の為に再上映の可能性もありますね」

 

 名残惜しくも別れ、自分の場所で靴を履き替えた。

 

「金田君……アニメの話で、あんなに喋れるのね。ちょっと意外、いっつも校則の話しかしてない気がする」

「……七瀬さんとは執行部での付き合いがほとんどですから、当然です。神矢君や遠野先輩の前だと、あんな感じに喋っていますよ」

 

 ずっと後ろに張り付いていたように、七瀬はそこにいる。既に帰ったと思い込んでいた為、ビビった。

 

「クスッ、演劇部もね。言い忘れたけど、昨日のピアノ……ありがとう。またお願いっ」

「……いえ、こちらこそ。皆の演技を間近で観られて、良かったと思います。特に桐生さんの演技は役に成り切っていて、素晴らしかったです。彼女の演技に合わせて伴奏出来るなら、もう少しだけ……演劇部にも時間を裂けるように、海峰君に頑張ってもらいましょう」

 

 微笑んだ七瀬から礼を言われ、それに感謝を込めて返す。本心から、桐生の演技はまた観たいと思った。

 また偶然にも、月島先生が戸締りの巡回に自分達の会話を盗み聞く。そこから、この話を伝え聞いた桐生がのたうち回る程、喜んだと知る由もない。

 

 原付バイクに跨り、帰路を走行。

 新しい組、演劇部、生徒会執行部、学校生活は全て順調。それでも、わだかまりは消えない。

 自宅と呼ぶ金田宅へ行かず、長野県を目指したい。我儘な衝動を抑えての帰宅、コバルトブルーに輝くBMWが見知らぬ客人を教えた。

 途轍もなく、嫌な予感。原付バイクを降りる事さえ、躊躇った。

 

「……お帰りなさい。(いち)、すぐに出かけます。支度なさい」

「お祖母ちゃん、……何処へ? それにお客様もいらっしゃっているのでしょう?」

「私です。こんにちは、金田君っ」

 

 玄関先まで出迎えた金田祖母は余所行きの着物であり、支度済。その奥から、警視庁捜査一課・明智(あけち) 健吾(けんご)警視が喪服のように黒く装う。優雅さに憂いさも混じっていた。

 予感が的中し、胸に針が通った感覚が襲う。

 

「そのままでも、構いません。詳しい話は行きがてら……」

「いえ、支度します」

 

 明智警視の気遣いを無下にし、2階の自室へ駆け込む。クローゼット式の押し入れから、形見の学ランと学帽を取り出した。

 車内と言う単語は遠出を意味し、明智警視がわざわざ送迎に現れた。その理由は一つだけだ。

 溢れそうな感情が目尻に涙となって浮かび、瞬きで拭う。不動高校の制服を脱ぎ捨て、学ランに袖を通した。

 仏壇に手を合わせようとしたが、金田祖父が座り込む。背中が哀愁を物語っていた為、彼に気遣ったつもりで何も言わず、外へ出た。

 

「お爺様は本当に宜しいのですか?」

「はい、ご心配をおかけした方々へお報せする者が必要ですので……」

 

 明智警視にも気遣われ、電話連絡の為と答えるしかない。実際、金田祖父は受話器を取るだろう。

 

 他人の運転する高級車へ乗り込んでも全然、楽しくない。何かの前触れの象徴になりつつあった。

 

「結論から申し上げます。DNA鑑定の結果、発見されたご遺体は氷室 一聖本人です。お2人のご協力あってこそ……得られた成果です。私個人としても、感謝申し上げます」

「いえ……お役に立てて、何よりです」

(……ああ、そっか……。本当に……もう、生きてないんだ……)

 

 白骨化した遺体からのDNA鑑定は困難とされるが、結局は本人あるいは血縁者のサンプルが必要不可欠。氷室(ひむろ)伯父の実母たる金田祖母1人で事足りたが、サンプルは多いに越した事はなく、こちらも提供していた。

 運転しながら、明智警視は丁寧な態度を崩さない。金田祖母は激情を抑えるように目を伏せたが、その声は震える。手元を見やり、湯吞のような木製の筒が握られていると初めて気付いた。

 それが骨壺の代わりだと、すぐに納得した。

 

 明智警視が事前に段取りを整えてくれた為、効率的に遺骨を引き取れた。

 喉仏、骨盤、踵と特定に繋がった部位の説明を受けても、情報は脳髄へ留まらずに素通りした。様々な現実を突き付けられ、脳髄が認識を拒否していたのだろう。

 

「金田君、お家ですよ」

「……!? はい……ありがとうございます」

 

 我に返った時、車は金田宅に帰り付く。車内に金田祖母の姿はなく、先に降りていた。

 

「気持ちの整理が付かないのでしたら、このまま……車を走らせましょうか?」

「……いえ、降ります。今日はありがとうございました……」

 

 仮に明智警視がここにいなければ、(いち)はあてもなく東京を彷徨っていた気がする。1月に葬儀を終え、別れは済ませていたと思い込んでいた。

 心が納得できず、ただ、ただやるべき事柄に忙殺されただけだった。

 自覚した嘆きに足の力はたどたどしく、(いち)は車を降りる。見るに見かねた明智警視が玄関まで付き添ってくれた。

 

「金田君、学校は大丈夫ですか?」

「……はい、仲の良い友達と同じ組になりました」

 

 先日のさとみと同じ問いかけ、明智警視から聞くのは意外だ。彼は自身について語らないように、相手についても聞かない印象を受けていた。

 欲しかったであろう答えとは違うと知りながら、他の言葉は出なかった。

 明智警視はそれ以上、何も言わない。いつもの眩しさも見えず、その理由は読み取れなかった。

 ただ、この人は本当に約束を果してくれた――。

 

「明智さん、お休みなさい」

「……ええ、お休みなさい」

 

 夜の闇でも輝くコバルトブルーを走らせ、明智警視は去る。見送りに金田祖父母が現れなかった為、(いち)は1人でエンジン音が遠ざかるのを聞いた。

 

「電話しといたで……(いち)が世話になっとる人にも……。お前の都合がええ時、連絡くれ言うとったわ。……他に連絡せないかん奴、おらんかったか?」

「……はい、きっと……いません。思い出せたら……自分で連絡します……」

 

 廊下の電話台に控えても、金田祖父はこちらを振り返らない。彼の声も普段より、しゃがれている。こんな時こそ、氷室伯父を彷彿させる態度で振る舞うべきだろう。しかし、靴を脱ぐのも億劫な状態では、喋るだけで一苦労だった。

 食欲はなくても、部屋着へ着替える。眠る時間を過ぎても、眠くならない。呆然と起きたまま、自然と居間に集まり、家族会議が始まった。

 

「納骨……寺に聞いたら、はようても14日になると……」

「流石にそれは……」

「その日にします」

 

 納骨式は3人で行うが、日付に金田祖父母は渋る。(いち)も自分の誕生日だと思いながら、これも何かの巡り合わせだと感じた。

 あっさりと承諾すれば、金田祖父母を慌てさせた。

 

「久しぶりに伯父さんと誕生日を過ごせるのです。これ以上の贈り物はありません」

 

 慰めでもなく、(いち)の本心だ。

 それ以上の会話は無意味と察したか、3人で沈黙し続ける。時計の針が進む音だけを聞いていた。

 

 ――気付いたら、夜明けを迎えた。

  

 眠そうな金田祖父の荒い運転で、(いち)は校門前に送られる。生活指導の先生に色々と心配されたが、危険運転については何故か、注意を受けた。

 

 身体測定を無事に終え、去年よりも身長だけが伸びていた。

 

「……ああ、金田 正太郎より……背が伸びてしまいました……」

「ショタコン? 健康優良不良少年?」

「健康優良不良少年です……」

「そっちか……通りで。赤いジャケットがまさに、それっぽいなっ。もしかして……この髪型も……いや、違うか……短すぎるもんな」

 

 測定の結果に気分が落ち込み、教室の机で項垂れる。神矢(かみや)は苦笑しながら、(いち)の髪に優しい手付きで触れた。

 

「昨日、自分達が生徒会へ行った後は……何を話されましたか?」

「来週の部活紹介で誰が出るか……とか、そうだっ。月島先生から、チラシ。『劇団アフロディア』と『遊民蜂起』のGW公演っ」

 

 それぞれがチケット入手は難しく、生公演など観た事のない劇団。

 

「へえっ。大手劇団が……同じ時期に公演ですか、どちらも観に行きたくなりますね」

「俺は断然、『遊民蜂起』っ」

「金田君。行く気があるなら、早く月島先生に言ってね。割引券を用意してくれるって、先着でっ」

 

 神矢との会話に桐生が物凄く自然な態度で、割り込む。気にせず、公演案内チラシを眺めた。

 

金田一(きんだいち)!! どこ行った!」

「!? 体育の蝶田先生だ……」

「新学期早々、オチコボレは何してんだか……」

 

 体育担当・蝶田(ちょうだ)先生の喚き声に教室、廊下にいた生徒全員が驚き、竦む。陣馬(じんま) 剛史(たけし)とサッカー部・白石(しらいし)の呆れた声が耳に入った。

 

(……金田一(きんだいち)君……本当に、何してんだか……)

 

 名探偵の孫が学校ではただの問題児。彼が巻き起こす喧騒が心地好くて思わず、泣きそうになる。部屋に引きこもらず、教室へ来て良かった。

 ここには友達がいる。

 

「神矢君は実家のような安心感がありますね」

「ええ……何ソレ……俺、お前の家どころか……親の顔も知らねえぞ?」

 

 今、胸に浮かんだ想いを神矢へ伝える。困惑しながら、彼は優しく笑い返してくれた。

 

「金田君。来週の部活紹介で『桜の樹の下には』を朗読しようって話になったんだけど、ちょっと読んでくれる? 感情の込め方が分からなくてっ」

「……季節は合っていますが……縁起が悪いのでは……」

「だろ? 月島先生、ちゃんと校長の許可は取ったらしいぜ。悪評は消せねえし、開き直っちまうのが良いんだとっ」

 

 眼前にプリント用紙を突き出され、桐生に不機嫌な態度で頼まれる。眼鏡の反射が彼女の凄みを際立たせた。怖い。

 げんなりした気分で文章を黙読する。月島先生に感心したような神矢がわざわざプリント用紙を持ち、読み易いように構えてくれた。

 

「――桜の樹の下には屍体が埋まっている――」

 

 声に出した途端、校庭に植えられた桜の花びらがざわめきながら、宙を舞う。埋められていた人々が音読を読経代わりにし、天へ召された。そんな錯覚に陥れば、心が軽くなった。

 名作だが、今の不動高校には嫌味な内容である。

 




聖正「聖正 景太郎だ。ドラマCD版とアニメ版では少し内容が違って、一粒で二度美味しい……なんだ? ああ、宣伝するんじゃないのか……。え~と、次回予告の内容は……『吸血桜殺人事件』? ……ほお、サナトリウムを改造して旅館に……ここは昔……猟奇殺人事件があったんじゃなかったか?」

明智 健吾警視
作中にて、金田家を気に掛けている。

月島 亮二
オペラ座館殺人事件、アニオリ。劇中では顧問、作中にて副顧問の国語担当。

神矢 修一郎、桐生 春美
オペラ座館殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、オリ主のクラスメイト。

遠野 英治
悲恋湖伝説殺人事件、ゲストキャラ。「S・K(さわやか・カッコイイ)」の前生徒会長。

海峰 学
血溜之間殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、自らの意思で不動高校を受験。入試成績トップの新入生代表。

陶芸家・朝木 冬生、朝木 秋絵
雷祭殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、秋絵は生徒会。朝木陶工はロシアを放浪し、昨年の年明けに帰国する。

陣馬 剛史
墓場島殺人事件ゲストキャラ、原作A組。

体育担当の蝶田先生
亡霊校舎の殺人モブキャラ。

サッカー部・白石
魔神遺跡殺人事件に名前のみ登場、ゴールキーパー
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