金田少年の生徒会日誌 作:珍明
佐木兄弟と明智警視は今回がファーストコンタクト
〇●……――は視点変更に使います
待ちに待ったお泊りの日。
午前の授業を終え、バイトもアイドルタイムで退勤。急いで帰宅し、私服へ着替える。お泊まりの荷物、
「
「ええか?
「分かっていますよ、お祖母ちゃん。お祖父ちゃん……それは
孫よりも緊張した金田祖父母はアワアワと心配事を口走り、苦笑した。
「「大丈夫ですよ、お婆さん。金田先輩は礼儀に事欠かない人です。僕らが保証します」」
「「「!?」」」
「……こんにちは、佐木君。
「「こんにちは。はいっ、迎えに来たのもあります。先輩に良いモノを持って来ました!」」
お揃いのハンディカムを向けながら、佐木兄弟はソレを見せた。
〇●……――
「美雪……俺まで待つ意味あんのかよ? 俺ン家の住所を教えてんなら、勝手に来るだろうにっ」
「ここで待っていないと……
美雪が知らぬ間、はじめと
どちらに聞いても、詳細は教えてくれない。現場にいたクラスメイト3人もケタケタ笑うばかりだった。
結果的に
「あれは……ちょっと俺にも……、おっ? 佐木君か……!?」
「先ぱ~いっ」
「――先ぱ~いっ――」
「佐木君が……ローラースケートでこっちに来る!?」
待ち人来たれり。後輩の佐木 竜太がローラースケートを履き、道路を軽やかに滑って来る。彼と全く同じ格好の少年がもう1人いた。事前に弟・竜二の存在を聞いていなければ、意味不明な光景。
動揺した気分を落ち着けていれば、後ろから肩を叩かれた。
「金田一センパイ♡」
「うわああ!! あれ……佐木!? あ、弟って2人?」
「佐木君……いえ、竜太君には竜二君以外にも弟がいるのね……」
ニッコリ笑顔の佐木にハンディカムを向けられ、美雪もはじめと一緒に混乱した。
「いえ、先輩方の後ろにいるのは弟です。僕が竜太です」
「へへへっ、ボクが竜二です♪ ちなみに兄の隣にいるのは
「こんばんはっ。七瀬さん、金田一君。本日はお招きに預かり、ありがとうございます」
「「
ローラースケートを履いた佐木はそっといつものハンディカムを取り出す。しかも、彼と一緒に現れたのは
颯爽な滑り方が同じだった為、見間違えたのだろう。
「え~と……あ~、確かに兄弟で髪型が微妙に違うような……。~ったく、手の込んだイタズラしやがって」
「「お気に召しませんでした?」」
「自分は好きですよ。ご自身の特徴をよく理解しています」
はじめはじっと佐木兄弟を見比べ、僅かな髪型の違いを見付ける。美雪には見分けが付かず、幼馴染の観察力に驚かされる。クスリッと笑い、
4人の男子は相性が良いと確信し、美雪はほっこりした。
「
「? 七瀬さんが言うなら、誉め言葉として受け取っておきましょう」
「「
それに
「……まあ、いいや。立ち話も何だし……入って来いよ。お母さんも首を長くして、待ってっからさ」
はじめはやれやれと呟き、客人を家へ招いた。
「いらっしゃい~、はじめの母です」
「「初めまして、佐木です」」
はじめの母親は満面の笑みにて、出迎える。彼女は気立てが良く、息子の客人を快くおもてなす性格。美雪も大好きだ。
「
「「こっちは母からです」」
「まあ! わざわざ、こんな……ひゃああ!?
キレイな角度でお辞儀し、お持たせを渡す。3人とも目上の人への対応に慣れており、おばさんの心を鷲掴みにした。
「ウルセ~。おら、俺の部屋に来いよっ」
はじめは不貞腐れた態度だが、キチンと彼の部屋へ招いてくれた。
「はじめちゃん、部屋を片付けてないじゃない!」
本棚の漫画は溢れんばかりに突っ込まれ、TVゲーム機のソフトが隅っこに山積み、ベッドの下から押し込まれた衣類が見え隠れしている。普段よりは片付いているものの、恥ずかしさに怒りの沸点が頂点へ到達した。
「「良い部屋ですね♪」」
「片付けてるだろっ。ほら、座布団も置いたぜ! 適当に座れよ、佐木。……
「お邪魔します。お母様がお茶を……素敵なお部屋ですっ」
美雪も含めた4人分の座布団、微妙に準備が出来ている。佐木兄弟は迷いなく、座った。
感じ入った
「なんで、
「お電話をお借りして、家へ電話を。お母様にお手間を取らせましたので、これくらいはさせて頂きました」
「そんなに畏まらなくていいだろ。ウチみたいな貧乏一家っ」
美雪が嫌味たっぷりに問えば、金田の礼儀正しさが眩い。オボンを手に座布団へ正座する様子さえ、はじめと同世代の男子に思えなかった。
「美雪はベッドに座れよ、その方が楽だろ?」
「え? ……あ、うん」
何気なく、美雪が
「【ジョジョの奇妙な冒険】が全部、揃っていますっ。金田一君、後で読ませて下さい」
「へいへい。それで、美雪が
「はじめちゃんったら、説明したでしょう。小説家の多岐川先生が
「そうだった~、そうだった~。んな話、学校でもイイだろうにっ」
「……日本ミステリー界の女王と知り合いなんて、桜樹先輩に知られたら……どうなるか、わかるでしょう。これも説明したわよっ」
ミステリー研究会・略してミス研の
「七瀬さん。お気遣い頂き、ありがとうございます」
「僕も無理に誘おうとは思いません。けど、先輩方がミス研に入ってくれるなら、大歓迎です」
「……っ、入らねえよっ」
「……うん」
感謝する
美雪もミス研に入部するつもりはないが、気になりつつある。幼馴染は立て続けに事件へ巻き込まれ、哀しき結末を見届けて来た。
そんな彼を助けたい。腕力もない身では知識面しか役立てないだろう。そこまで思考が廻った時、聡明な桜樹先輩が思い浮かぶ。これは嫉妬ではない。ただ、幼馴染が心配なだけだ。
「それで♪
「前置きとして、誰にでもある出会いです。特別な事はありません」
期待に満ちた竜二の声に美雪も我へ返り、困ったように
「……母が自分を身籠っていた時期、人違いをしたのです。多岐川さんを知り合いだと思い、挨拶をしました。普通の挨拶だったなら、その場で終わりだったでしょう。この挨拶が問題だったのです」
「問題のある挨拶? 何だよ、俺らがやるような下品なヤツか?」
「もう、はじめちゃんってば……」
昔語りを開始してくれたのに、はじめの茶々が入る。彼の言う下品な挨拶は美雪も目にした事はある。言葉にもしたくない程、お下劣だが、男子には本当にただの親しき馴合いだ。
美雪がまた呆れた瞬間、
「流石は金田一君、お見事です。七瀬さんの前ですが、女性同士でも破廉恥な挨拶がありますよね。行動そのものは伏せさせて下さい。母は多岐川さんに後ろから、ソレを行いました。多岐川さんは勿論、母も驚きました。お互いに顔も知らぬ他人ですのでっ、母はショックのあまりに破水しました。多岐川さんは親切にも救急車を呼んで下さり、……父が病院へ駆けつけるまで……母に付き添ってくれたのです。言うなれば、恩人ですねっ」
「「「「破廉恥……っ」」」」
大事件な展開に言葉を失う。
「コホンッ、破廉恥はともかく……多岐川さんって立派な方ね。それがキッカケで仲良くなったなら、
「……っ、この話は初めてしましたが……そんな風に言って貰えるとは嬉しいですね。自分、かほる先生が好きです」
多岐川先生の行動を尊敬し、美雪は思った通りの言葉を口にする。
「……お前のお母さんって普段から、破廉恥な挨拶する人なワケ?」
「いいえ、母は……極端な人嫌いです。知り合いがいたとしても、自ら挨拶するような性格でもないのですよ。正直、自分も不思議に思っています。母は人違いとは言え……何故、かほる先生に声をかけたのでしょうかねえ」
はじめが真面目な顔で質問し、
「
「お話を聞けて嬉しかったです。けど、満足なんてしていませんよ。もっと、
「俺もかよ! ビデオをこっちへ向けんなっ」
話の発端である竜太へ
「………兄さんばっかり、ズルい。ボクもセンパイ達のいる学校に通いたい~っ」
羨ましそうに見つめ、竜二はゴロンッと床へ転がる。仲の良い兄弟だと思い、美雪は微笑ましく思った。
「竜二も来年は不動高校だろ。待っていれば、すぐだぞっ」
「ボクが入学するまでに……兄さんは何度もセンパイ達と謎解きしたり、面白い事に出くわすんデショ!? 待てませ~んっ。決めた! 次にセンパイが遠出とか、調査をされるなら、ボクが行きます!」
「はあ~!? 何、勝手な事言ってんだよ!
竜太に宥められても、竜二は余計に不貞腐れる。突然の閃きに本人は名案と言わんばかりだが、はじめは断固反対の姿勢だ。
美雪は驚きのあまり、思考が停止した。
「
「勿論です♪」
「か~ね~だ~っ、そう言う事じゃなくてだなあ……っ」
生徒会執行部の顔になり、
「みんな~っ、降りてらっしゃ~い。ご飯出来たわよ~」
「へ~い、ほらっ飯にしようぜ。この匂いはすき焼きかなあ」
「「わ~い、ちょうどお腹が空いたところですっ(ぐ~っ)」」
「……佐木君はお腹の鳴る音も、兄弟で同じですね」
おばさんの声を聞き、皆でぞろぞろと台所へ降りる。はじめの推理通り、夕飯はすき焼きであった。
美雪は美味しい夕飯を終え、我が家へ帰るのみ。はじめが恨めしそうに玄関先まで見送って来た。
「はじめちゃん、今日はありがとう。今夜は
「わ~ってる。……美雪は気にせず、家で寝てろ。ここからは男だけの時間だぜっ」
美雪は素直に礼を述べたが、はじめはイヤらしい笑みで腕組みをする。またも呆れてしまい、感謝の気持ちを返して欲しかった。
「佐木君は分からないけど……、
「変な事って何だよ? 【ジョジョ】が好きな奴に初心な野郎なんていねえよっ」
はじめの理屈は分からないが、洞察力は侮れない。
〇●……――
「お前らもこういうの好きなんだろ?」
「「
「……っ」
吐き気がした。
佐木兄弟のように返事も出来ず、照れたように振る舞う。手で目元を覆い、血の気が引く感覚を誤魔化すしかない。ここで拒めば良いのだろうが、
「まだまだあるぜ~♪」
「「レンタルビデオ店で借りたんですか? 年齢確認とか……」」
白い紙袋から、他のビデオも取り出される。就寝時間を言い訳に出来るまで、TVから流れる下手くそな芝居の喘ぎ声が苦痛だった。
早朝6時に目覚めれば、快適な気分。案の定、佐木兄弟を枕にしていた。
日課の朝ジョギングを終えても、部屋の主はベッドで豪快なイビキを掻く。
食卓に並んだキュウリのぬか漬けが美味しい。勿論、お吸い物も金田家と味わいが違う。
「キミ達、双子じゃないのか……へえ。はじめには面白い友達がいるもんだな」
「
「センパイは見ていて、飽きませんっ」
「
そして、
「はじめったら、友達を放っておいて! ま~だ起きないのねっ」
「「夜遅くまで、僕たちとゲームで勝負してました。とても楽しかったです」」
「すみません。自分が寝てしまった為、
寝坊助な息子をプリプリ怒り、
「本当、似た者親子だ……」
「もう何よ、あなたまで~♪ ……なんか、褒められた気がしないわね」
ボソッと呟き、
「皆、お昼ご飯は食べてく? ウチはいつまで居てくれて構わないわっ」
「いえ、自分はバイトへ行きます。9時頃にここを発ちますね」
「「僕らも同じ時間に出ます」
使い終わった食器を流し台へ持って行きながら、
「金田君、アルバイトしているの?」
「ええ、佐木君もお家の仕事を手伝っていますよ」
「「僕らが父に、仕事を手伝わせてくれるように頼んだんです」」
質問に答える度、
「あのグ~タラも皆の垢を煎じて飲めばいいんだわ。誰に似たんだがっ」
(お前だよ、お前っ)
わざとらしいため息を付き、
部屋へ戻り、涎を垂らした
「「金田先輩、
「いいえ、このまま寝かせましょう。自分は【ジョジョの奇妙な冒険】を読みますっ」
未読の巻もあり、期待に胸を躍らせる。途端、インターホンが鳴った。
「お客さんだ。兄さん、誰が来たんでしょうね?」
「
「ふわ~、あ? お前ら、まだいたのかよ」
「
「「おはようございますっ」」
唐突に目覚め、
「お前らは飯食ったの? あっそ……ハラ減った~」
「「お供します」」
「行ってらっしゃい」
まだ寝ぼけた態度の
「ぎょえ~!?」
「……!?」
コントのようなドデカイ悲鳴が耳を打つ。
(ゴキブリか? ……佐木君いるし、いいか……)
一切も心配せず、一気読みしてしまう。感無量の内容が脳髄を夢見心地にさせ、目尻に涙が伝った。
近付く
「金田……お前、泣いてんのか? 【ジョジョ】で……」
「
「いや、その……【ジョジョ】は面白れぇし、分かるぜ」
「ええ、名作ですっ。お礼に本棚を整えますね。50音順にして良いですか?」
涙を拭いながら、本棚を整頓して行く。
「俺、これから出かけなくちゃならねえんだわ……金田はどうする? 俺が居なくていいなら、寛いでくれても構わないぜ」
「8時半ですか……。では、お暇します。バイトがありますので、元々9時に発つ予定でした」
流石に部屋の主・
「金田君、佐木君。また来てね♪」
「「お邪魔しました。また来ますっ」」
「シートベルトはしましたね。行きますよ、お2人共っ」
「へ~い」
「……?」
気付けば、警視庁捜査一課・
ちなみに
明智警視はキッチリした背広姿にネクタイ、整った髪型は決して非番の刑事ではない。勤務中の雰囲気は素人目でも分かった。
「はじめっ、明智さんに恥を掻かせないでよ」
「わ~ってる」
「佐木君は本当に良いのですか?」
「はいっ、先輩方をお願い致します」
「……センパイ、また会いましょう……」
母親に念押しされ、
「お2人がお泊りする仲だったとはっ。迎えを引き受けた甲斐があったと言うモノです」
「明智さん、おはようございます。先日は大変、お世話になりました。
「俺が表彰されるんだとっ」
明智警視のキラキラッが派手に輝き、必死の愛想笑い。
助けを求めるように
名誉な話だと思う。だが、高校生が短期間に多くの事件へ遭遇し過ぎである。
「自分……要らないですよね? 降ります」
「金田君の勤務先まで送りますよ。お店の住所は佐木君に聞きました」
「……大丈夫か、金田? 顔色が悪いし、声もメチャクチャ震えてるぜ」
緊張ガッチガチの態度を見て、
全く、大丈夫ではない為に無言。予定外の出会いは礼儀に欠けてしまう。明智警視に多大なる迷惑をかけた身だ。恩を返せないなら、態度で感謝を貫きたい。その事前準備が欲しいのだ。
「明智さんっ、剣持さんはお元気ですか?」
「剣持君は相変わらず、元気にしています」
感謝する相手から、明智警視の部下・
「金田、剣持のオッサンにも会った事あんの? って当たり前か、お前の婆ちゃんを俺に紹介したのはオッサンだし……」
「……その件に関して、剣持さんにはとても感謝しています。
「
明智警視の
「……祖父母は……本当に
「金田?」
「……個人的な興味で伺いますが、小説家の多岐川 かほるとお知り合いだそうですね。正野君から聞きましたよ。特大号を拝見し、もしやとは思っていました」
「……明智さんも雑誌とか読むのですね」
「大学時代の知人から御堂 周一郎のインタビューが載ると聞きましてね。クラシックファンとして、見逃せません。やはり、彼ともお付き合いが?」
「……3歳の頃にお会いしたそうです。自分よりも祖母が詳しいでしょう。御堂先生は元教え子ですのでっ」
「ほおっ、それは興味深い。まさか、人間国宝の朝木 冬生とも面識がおありですか?」
「……朝木陶工の娘さんが不動高校に通っていますよ。ね?
著名人との人間関係を根掘り葉掘り聞かれ、ウンザリする。明智警視のミーハー根性は意外だったが、まるで事件の事情聴取を思わせた。
「え? あ、朝木 秋絵だろ? 1年ン時、同じ組だったぜ」
段々と笑顔も取り繕えなくなり、素知らぬ顔の
「って事は……秋絵は金田が氷室画伯の甥だって、知ってんの?」
「いいえ、朝木さんは何も知りません。……おそらく、朝木陶工は娘さんに何も話されてないでしょう。学校で伯父との関係を知るのは、
「桜樹……確か、先日の聖生病院でご活躍された方ですね。調書を読みましたよ。
途端、
だが、今更になって伯父が天才画家と説明したとしても、遠野先輩は意味不明だろう。このまま黙っているのも不義理な気がする。勝手な自己嫌悪に脳髄が揺れるような感覚に襲われ、気持ち悪かった。
「……完全に怯えてんじゃねえか……大丈夫かよ、金田! やましいコトがあるなら、ゲロッちまえよ。警察はここにいるぜっ」
「疚しくはありませんが、
「
後部座席から身を乗り出し、
(……この袋、Hなビデオを入れてなかったっけ? いや、まさかね。警察の本部に招待されてんのに……そんな馬鹿タレはいないかっ)
高遠「高遠です。皆さん……お忙しい中、閲覧ありがとうございます。今度の公演、さとみちゃんのお父さんも来てくれるんですね。僕も嬉しいです♪ さて、次回は『魔術列車殺人事件』!! 素敵なショーをご覧に入れますよ、『幻想魔術団』の総力を挙げて……楽しみにしててください、お父さんっ」
金田一の母
金田一 耕助の娘
金田一の父
もうすぐ定年らしい