金田少年の生徒会日誌 作:珍明
それを佐木 竜二視点でお送りするだけの回。彼にとっても初事件
七瀬と明智警視は今回がファーストコンタクト
素敵な朝食は勿論の事、約束された
中学生の身では危険だと思われるであろう。
だがしかし、兄・
その功績故、竜二も期待されている。旅費も警察の経費から捻出、感謝しかない。
空き時間に金田一センパイを張り込んだ甲斐もあり、事件の開幕を告げる『地獄の傀儡師』の脅迫状もバッチリ。流石に物騒な為、身を案じた両親から携帯電話を持たされる。
定期的に竜太へ生存報告を義務付けられたのは、ちょっとだけ優越感だ。
「あたしも一緒なんだけど?」
「? はい、分かってますよ。七瀬センパイっ」
「お食事中、失礼します。お客様方に朝のご挨拶をっ」
(ほわあぁ……綺麗な人っ)
皆で不審がっていれば、車掌と同じ服装をした『幻想魔術団』のメンバーが操り人形のロバートと共に、マジックショーの案内挨拶。センパイ方と同じ年頃の美少女が帽子を脱ぎ、黒目の大きな瞳を輝かせた。
流石は一流魔術団に所属するマジシャン、その美しさに見惚れた。
「……お姉さん、どっかで会った事ありません?」
「……いえ、お客様に私は初めてお目にかかります」
麗しき人形使いをじっと見つめ、金田一センパイは問う。
「金田一センパ~イ、ナンパですか? 美人だからって♪」
「ま~……はじめちゃんったら!」
「おいおい、金田一……」
「どうぞ、ごゆっくり」
竜二がからかった瞬間に皆で囃し立てれば、さとみはクスクスッと微笑み、次へ行ってしまう。金田一センパイは目で追いながら、また誰かに注目した。
剣持警部と同じくらい背が高く、服装越しでもガッチリとした体格の男性。人形使いと同じ顔は初見でも、父子と分かる。彼もまた竜二達と同じ案内を受け、嬉しそうだ。
「……あっ、金田のお父さんだっ」
「「「え!?」」」
ハッとした金田一センパイは声を上げ、竜二達は驚きのあまりに変な声が出る。寧ろ、信じられない情報だ。
七瀬センパイと同じ生徒会執行部の
「嘘でしょう……? なんで……はじめちゃんが、金田君のお父さんを知ってるのよ」
「金田の婆ちゃんに写真、見せてもらったんだよ。わ~った、確かめる。すみませ~んっ」
「あ~、待て待て。俺も行く!」
意外にも七瀬センパイは信じない。不貞腐れた金田一センパイはさっと席を立ち、剣持警部も付き添う。勿論、竜二も一緒だ。
「すみませんっ。俺、
「……貴方は先程、ナンパしていた子だね。自己紹介までしてくるとは礼儀正しいな」
愛想良く挨拶し、金田一センパイは相手の名を確かめる。残間と呼ばれた男性は不届き者を見る目付きとなり、竜二まで叱られた気分に陥る。怒らせたら、恐い人だと察した。
「あたし、七瀬 美雪と言います! 金田君と同じ不動高校なんです。彼には生徒会でも、お世話になっております」
「ああ、遠野さんと同じ生徒会の……。これは失礼した。私は残間 青完と言うが、呼びにくければ……金田の父親とでも呼んでくれて構わない。では、貴方達も不動高校の関係者?」
見かねた七瀬センパイが割って入り、生徒手帳を見せての自己紹介。途端、
「はい、そうです。ちなみにそちらが、生徒会長ですっ」
金田一センパイはわざわざ、彼女の情報を付け加えた。
「ボクは不動中です。兄が不動高なんです。あ、佐木 竜二と言います」
「私は剣持と言いまして、こういう者です」
「!? 剣持さん、少し……宜しいですか?」
竜二の後に剣持警部は上着を軽く捲り、残間にだけ見えるよう警察手帳を示す。深刻な雰囲気を出したかと思えば、2人は車両外の通路へ向かった。
「どうしたんでしょう?」
「それよりも……なんで俺に対して、すっげえ顔されたワケ?」
「娘さんをナンパされたら、誰でも怒るわよ。……あれ? 金田君、お姉さんがいたって事?」
七瀬センパイの驚く声で竜二も大事な点に今頃、気付く。そこへ火炎マジックの紳士ことジェント
『生きたマリオット』でお馴染み、一流マジックショーの開幕。前情報で知っていたが、竜二はワクワクが止まらない。大人達も話を済ませ、各々の席へ戻った。
「金田のお父さん、何だって?」
「……ああ、挨拶だっ。娘さんは残間 さとみと言って、先日に見習いとしてデビューしたばかりなんだそうだ。高校で勉強する傍ら、裏方の経験を積んで、ようやく認められたとか……そんな話さ」
「へえ、金田君も演劇部だし……姉弟で舞台に立つってなんか、良いわね?」
「え!? 金田センパイ、演劇部なんですか!? ……去年の学園祭とか、秋の高校生演劇コンクールもいませんでしたよ?」
衝撃の新事実にビックリ仰天。
「金田君は幽霊部員でね、生徒会を優先してるの。ねえ、はじめちゃん」
「俺に振るなよ……佐木はそんな前から、不動高校に目を付けてたんかっ」
「……ちょっと電話して来ます」
気分がス~ッと下がり、竜二は携帯電話を取り出す。通路に出て、竜太へ定期連絡。ワンコールで出た。
「兄さん? 金田センパイに美人のお姉さんがいたんですよ。知ってました?」
〈は?〉
語れば、語る程。電話越しに竜太の落ち込んだ様子は手に取るように分かった。
満足な定期連絡を終え、さとみによる人形・ロバートとのボケとツッコミは拍手喝采。チラッと残間の様子も見てみたが、こちらに目もくれなかった。
スタンダップ・マジックの貴公子たるノーブル
そんな楽しい雰囲気が、爆弾騒動で吹き飛ぶ。
脅迫状の主『地獄の傀儡師』が剣持警部のポケットへ携帯電話を仕込み、自ら連絡して来た。
〈次の「花火」はもっと大きいですよ?〉
変声機を用い、男女の判断が付かない声は嗤う。竜二にも、本気と分かった。
線路上での緊急停車、大混乱しつつも乗員乗客は無事に下車。知り合い同士がお互いを確認し合った。
「さとみ、ケガをしていないか? ……高遠さんは?」
「うん、団長が見つからないって……探しに行ったみたい」
人混みでも残間親子は目立つ。竜二が勝手に注目しているせいもあるだろう。ピピッと携帯電話の着信音が聞こえ、ゾッとする。それは残間のポケットから鳴り響いていた。
「残間です。……その話、長くなるか? 後でかけ直すっ。……会社だった」
「そう、ビックリした……。なんか、電話の向こうも騒いでたけど……大丈夫?」
容赦なく、電話は切られた。
避難完了を終えた剣持警部が時限爆弾の心配をする中、なんと本庁捜査一課の
「剣持君、ただの「空騒ぎ」になりそうですよ」
「ぎゃああ、明智警視!? なんでここに!?」
「明智警視だ! こんにちは♪」
「警視って……剣持警部、知り合いなの?」
「う~ん、七瀬君は初めてか……俺の上司だ」
この騒動でも
「空騒ぎ」については金田一センパイ達の推理通り、薔薇の花吹雪が巻かれただけに終わる。乗員乗客一同はジェント山神の粋なサプライズと判断、解放感から列車へ乗り直した。
「高遠さん、山神さんは見付かったか?」
「それが見当たらなくて、……荷物までこの通りなんです」
残間の傍にはいつの間にか、眼鏡をかけた細身の男性が寄り添う。『幻想魔術団』のマネージャー・
「それよりも残間さん、さっきから電話が鳴りっぱなしですよ。大丈夫ですか?」
「……私、有給消化中だぞ。……はい、残間。……一堂さん、担当は貴方だ。貴方の判断で……うん? ……分かった……かけ直す」
高遠にオドオドと心配され、残間は物凄く嫌そうに電話を取る。その仕草が金田センパイに似ていると感じていれば、彼は億劫そうに電話を切った。
「お父さん、会社……大変なの?」
「……トラブルが起きた。行かねばならない……」
「ええ!? 残間さん、今から仙台って……旭川駅で降りて、飛行機に乗らないと……」
さとみの不安そうな声を聞き、残間は白状する。高遠の慌てふためきを見ながら、竜二も驚く。センパイ方に知らせようとしたが、剣持警部まで通路の奥へさっさと進む。置いて行かれまいと続いた。
「こうなったら、絶対に団長を見付けて来ます。こんな騒動に残間さんを巻き込んだんだ。挨拶させないとね! 2人はちゃんと休んでてっ」
「……そうだな、旭川駅まで少し寝よう。さとみはどうする?」
「ロバートの調子を見ておくわ。さっき、落としちゃったから……」
背を向けても、仲良しげな会話は竜二の耳に入った。
己の寝台に荷物を置きながら、残間の途中下車を伝える。七瀬センパイは残念がり、金田一センパイと剣持警部は仕事ならば、仕方なさそうだ。
明智警視と合流する為、食堂車へ行くと大勢の乗客がいる。『幻想魔術団』の方々もいた。
「金田君のお姉さんが……『幻想魔術団』に?」
「はい、残間 さとみさんって言います。あたし達もまだ、挨拶してないんですけどね」
「これが美人なんだよ、マジ」
「
「パンフレットに、さとみさん載ってないですね」
明智警視から『幻想魔術団』1人1人を解説される。パンフレットにさとみの写真はなく、代わりに知らないマジシャン・
「日本が生んだ唯一「本物」のマジシャンです」
完成されたマジックは「完全犯罪」が如く、一分の隙も無い。近宮の生み出すマジックは正に芸術。
明智警視のべた褒めが始まり、5年前の事故を語った途端に哀愁が漂う。事故死は時の運だが、彼がこれ程に称賛するマジシャンのショー。
見てみたかったと竜二は思った。
旭川駅へ到着し、大勢が下車して行く。定期連絡も兼ね、竜二は電波の良い乗車口をウロついた。
勿論、乗客もハンディカムで撮り続けた。
「佐木さん、丁度良かった。私はここで降りるよ。そちらの皆さんへ挨拶せず、すまない」
「残間さんっ。いいえ、こちらこそ」
「お父さん、その子は知り合いなの?」
目の前にいた残間はわざわざ、竜二にご挨拶。礼儀正しさに会釈すれば、さとみが不思議そうに微笑む。
「ボク、金田センパイの後輩なんです」
「!? いっくんのお友達……そうなんだ~♪ もう知ってるだろうけど、さとみですっ」
そこで改めて、さとみへ自己紹介。彼女の表情が弟想いの姉の顔と変わり、眩しい。先程までのマジシャンの顔と違い、親しげな雰囲気に照れる。
それよりも気になるのは高遠。残間の腕をガッシリと掴んで離さず、長身の大人同士だと絵面的にも怖い。
「……お父さん、降りちゃうんですね。クスンッ」
「すまない、高遠さん。……さとみを頼むよ」
「なんで高遠さんがガッカリしてるの。クスクスッ」
高遠は本当に目を潤ませ、物凄く名残惜しそう。さとみの秘めた本心を代わりに告げ、引き留める姿は微笑ましい。父親は舞台を見逃し、娘はショーを披露出来ない。当然のやり取りだ。
「本当に残念だ……――」
だからこそ、高遠の言葉に違和感などなかった。
今度の定期連絡を留守電メッセージへ入れ、B寝台へ戻る。自分達以外の乗客がおらず、明智警視まで適当に腰かけていた。
「遅かったわね、佐木君。またお兄さんに連絡?」
「はい、金田センパイのお父さんと挨拶していました。皆さんによろしくって」
「!?」
七瀬センパイに伝えれば、明智警視はギョッとする。そこで竜二は彼に、金田センパイの父親を紹介していなかったと気付いた。
B寝台の戸を閉めかけ、背後をツンツンッと小突かれた。
「佐木君、少し良い? いっくん……弟の話を聞きたくて」
「お姉さん! どうぞ、どうぞ♪ センパ~イ、さとみさんです!」
「わあ~♪ あたし、七瀬 美雪です!」
「俺、金田一 一。俺と美雪、コイツの兄貴が不動高校なんです。んで、こっちは……保護者の剣持さんと明智さん」
さとみの突然の来訪に喜び、七瀬センパイはここぞとばかりにご挨拶。金田一センパイは2人の身分を伏せた。脅迫状があったとは言え、まだ事件はない。爆弾騒動の後に警察が居ては変に緊張させるだろう。
「誰が、保護者ですか。初めまして、明智です」
「どうも、剣持です。
「……♪ いっくんのお友達がこんなに……っ」
金田センパイの関係者と言う先入観から、さとみはあっさりと受け入れてくれた。
「学校でのいっくんはどう? そうだっ。新入生に友達がいるって言ってたけど、誰の事か分かる?」
「……多分、ボクの兄ですね。いえ、絶対ですっ。だって、金田センパイから可愛い後輩呼ばわりされたって、兄が自慢してました」
「す、すげえ……自信満々。まあ……お前ら、実際に仲良いよな」
「本当……佐木君、いつの間に仲良くなってたのかしら。金田君、不動中じゃなかったわよね?」
さとみはニコニコ笑顔で話を聞いていたが、七瀬センパイが出身中学に触れ、一瞬だけコメカミを痙攣させた。
「金田君はピアノをお弾きになるとか、お姉様もマジシャンとはやはり……芸術家の血筋ですかね?」
「ああ……いっくんが言ったんですか? 父が元マジシャンって」
「ほお、あのお父さんがっ。通りで、俺よりも身綺麗にしていると思ったなあ」
「さとみさんに似て、素敵な人ですよね。だったら、金田君はお母さ……」
「ロバートって、お父さんから教わったんですか?」
(? 金田一センパイ、わざと遮った?)
明智警視が問い、さとみは少し言い淀む。剣持警部は勝手に納得し、七瀬センパイが言い終わる前に金田一センパイは大きめの声を上げた。
「ううん、お父さんがいっくんに手ほどきしているのを見てて、真似したら出来るようになっただけよ。いっくんは途中でやめちゃったし、しかも! ……あたしがお父さんみたいに辞めたら、生活に困るから! 安定した会社員になって、コネ入社させてやるとか……小学生だった頃に言うのよ。失礼しちゃうわっ」
(……簡単に言ってるけど、見て覚えたって……。才能、あるんだなあ……)
笑顔のまま、さとみはプリプリと怒る表情が可愛い。愛嬌たっぷりの仕草が続き、竜二はトキメキが止まらない。
「
「金田君、ご家族にも厳しいのね」
「「……」」
剣持警部と七瀬センパイは感心し、明智警視はじっと金田一センパイを見つめる。金田センパイを見習えと言う眼力による圧力だ。
「な~んてね♪ いっくん、本当は他に夢があるのっ。ピアノもその為にお祖母ちゃんから習ってたのよ」
「へえ……素敵ねえ。夢の為に、お祖母ちゃんに教えを請うって……ねえ? はじめちゃん」
「そっスね」
和やかな雰囲気だが、誰も別姓については触れない。以前、金田センパイから聞いた言葉を告げて良いかも分からない。黙っておこうと決めた。
「金田君は公演を観に来られないんですか?」
「はい……でも、東京駅まで見送りに来てくれたんです。お祖父ちゃんと一緒に♪」
「え!? それって『銀流星』が出発した時よね? 金田君、東京駅にいたんだ……。はじめちゃん!」
「俺、悪くねえ……だろ?」
明智警視の質問を笑顔で答えるが、さとみは少し残念そう。七瀬センパイはじろりっと金田一センパイを睨む。発車時間ギリギリになった原因故だ。
「……話を聞く限り、キミ達は今日が初対面ですか?」
「はい。はじめちゃんが金田君のお祖母ちゃんから、ご家族の写真を見せてもらっていてっ。それで、お2人の顔を知ってたんです」
「え? お祖母ちゃんから……写真。ふう~ん、金田一君はよっぽど……気に入られたのね。あ! あたしも写真、持ってるのよ。ちょっと待っててね。部屋に置いて来たからっ」
ハッと閃き、さとみはB寝台を後にする。金田センパイの家族写真が見られる。予想外の嬉しさ、竜二は期待して待った。
だが、『地獄の傀儡師』からの着信があり、事件となった。
〈さあ、死のマジックショーの始まりですよ。コンパートメント3号室へ行ってごらん〉
「天外消失」マジック、血を流したジェント山神が薔薇に埋め尽くされ、瞬く間に消える。終点の死骨ヶ原駅にて、劇団員も手に持つだけで下車させ、車両を改める。竜二も剣持警部や車掌の方々と一緒に死体捜索したが、列車内では発見されなかった。
謎解きは困難、竜二は定期連絡を欠かさない。またしても、留守番電話だった。
「ようこそ、いらっしゃいました。剣持様、当ホテルの支配人・長崎と申します。夕海様方もお変わりなく……」
死骨ヶ原湿原ホテル支配人・
「長崎さんもお元気そうね」
「あんな事が遭った場所によく、いらしてくださいました」
マーメイド夕海が挨拶しても、長崎支配人は全く表情を動かさずに嫌な言い方。竜二にも他意を感じた。
――それは悪意だったのかもしれない。捩じれた姿で発見された山神の遺体を見て、思う。
遺体発見現場は正体不明の宿泊客「
本人は既にチャックアウト済みだが、列車が出発した後だった為、不審に思った。名前もマリオネットを捩り、完全な偽名。確実な『地獄の傀儡師』候補だ。
団長を欠いての強行された夜の公演。
池の真ん中にある劇場、今度はノーブル由良間が舞台の上でぐったりとした遺体で登場。しかも、金田一センパイのうっかりでホテルと劇場を繋ぐ跳ね橋が上がった状態のまま、レバーが故障。
つまり、巨大な密室殺人であり、『地獄の傀儡師』は劇場内の中にいる。
剣持警部のちょっとズレた推理は面白かったお陰か、竜二の緊張は幾分か和らぐ。金田一センパイ達は場慣れしているが、こちらは初めて殺人現場に居合わせた身。少しだけ、恐かったのは内緒だ。
劇場内に残り、竜二も推理の手助けだ。
七瀬センパイが大量のお菓子を持ち込み、裏方作業で大忙しの高遠とさとみも誘っての間食タイム。
そうすると人の口は軽くなり、金田一センパイはそっとホテルで起こった5年前を知る。明智警視が言ったリハーサル中の事故現場は此処だったのだ。
「高遠さん、もっと詳しく教え……今度は誰だ?」
「ボクです。失礼しますっと。兄さん、遅いよ。何度も電話したのにっ」
〈金田先輩を部屋に呼んでたっ。今、2人っきり!〉
〈
金田一センパイが高遠を追求しようとした瞬間、竜二の携帯電話がピャンピャンッと鳴り響く。相手は竜太だが、電話の向こうから金田センパイの声に羨ましい。
「金田センパイと2人っきり!? また~ボクのいない時に面白い事してぇ……あ、ちょっと待ってっ。さとみさん、金田センパイですっ。良かったら……」
「え? いっくん!? 高遠さん……」
「良いよっ」
思わず、竜二は叫ぶ。全員の視線を受け、さとみのギョッとした表情に気付く。今、彼女には家族の声が必要だと思い、押し付けがましくも携帯電話を渡した。
さとみは携帯電話と竜二を交互に見つめ、そして高遠を見やる。彼が微笑んで頷けば、彼女は携帯電話に耳を当てた。
「も……もしもし、いっくんなの?」
〈さとみさん……ご無事ですか?〉
「やるじゃない、佐木君っ」
目に涙を浮かべ、さとみは体の緊張を解いたと分かる。七瀬センパイが称賛の肘打ちを竜二に食らわせた。
「高遠さんも金田に会った事、あるんですか?」
「昨日、東京駅でね。初めて、会いましたよ。旭川駅で佐木さんが金田センパイの後輩って自己紹介してくれましたけど、……聞き違いじゃなかったんですね。名字が違うのって」
「バカッ、2人とも!」
「あ~ゴメンなさい~」
金田一センパイのまたもうっかりにて、高遠は気まずそうになる。七瀬センパイから、竜二も怒りの肘打ちを受けた。
「え? 近宮先生って……いっくんまで……」
そこに、さとみの緊迫した表情。いち早く察し、探偵の孫は身振り手振りで携帯電話を渡すように頼む。彼女は快く渡し、金田一センパイは何の躊躇いもなく話しかけた。
本当に探偵らしく、凄い行動力だ。
「金田っ、俺! 金田一っ」
〈お呼びじゃありませんっ〉
「ぶっ! ……すみません……」
金田センパイの冷たい声がハッキリと聞こえ、竜二はウケる。七瀬センパイも笑いを堪えていた。
「ちょうど……具体的に……」
「えと……さとみさん。か……
「う~ん、小学生の時に1回だけ……お母さんと近宮先生の公演を観に行っただけのはずよ。でも、会った内に入らないわよね」
「……あっ、お母さんの話して良いんですね。お父さんは近宮先生をどう思ってたんですか? こう……同業者としてライバル視してたとか……」
七瀬センパイは気を遣い、金田センパイを「
「お父さんは近宮先生の大ファンよ。……記事の切り抜きで作ったスクラップブックを作るぐらい……ねえ?」
((うわ~……))
「お父さん、見る目あるよ♪」
途端にさとみの空気が重くなる。己の父親が女性のスクラップブックを作成する様子を見てしまったのだろう。竜二もそんな親の姿は見たくない。高遠が苦笑しつつ、残間を褒め称えた。
「は? 金田ぁ、まだ……。佐木2号、佐木1号が代われってっ」
「ボクも金田センパイと喋りたかったあ~」
不満そうに金田一センパイから携帯電話を突き出されたが、竜二はもっと不満だ。
「なあ、美雪。真新しい釘を……」
「どの部分に使う板?」
〈竜二は大丈夫か? 怖くなったら、ちゃんと剣持警部に言うんだぞ。それに1人にならないっ。これは絶対だ。出来れば、3人以上で行動しろよ〉
「……分かってるよ。ありがとう」
流石、竜太。竜二の微かな強がりはお見通し。だから、ちゃんと感謝しよう。
「高遠さんは釘の話、雑誌で見かけたりしませんでしたか?」
「……あ~、えと……どうだったかな~。すみません、金田一さん……お役に立てなくて……」
〈竜二、先輩のお姉さんにマネージャーさんの言う事をよく聞くようって〉
「さとみさん! 金田センパイから、高遠さんの言う事をよく聞いてって言ってます。さとみさんは何かありますか?」
「!? 全く……いっくんったら、佐木君……おやすみって伝えてくれる?」
ちゃんと伝えた。
「さとみちゃんもお父さんへ連絡しておき……、団長のコト……言いずらいよね。何だったら、僕がしようか?」
「ううん、あたしがするわ。一応、刑事さんにどれだけ話して良いか、確認しとこっ」
さとみが先に舞台裏から離れ、剣持警部に相談しに行く。竜二達はモソモソとお菓子を食べていた為、彼女が衝撃的な真実を知った場面を観そこなった。
ホテルの消灯時間も迫り、部屋に戻った後。竜二達は折角の忠告を破った。
金田一センパイが『地獄の傀儡師』の罠にかかり、沼地に誘い出されてしまう。幸い、泥だらけの姿で発見でき、彼は九死に一生を得た。
身近な人の死に顔、撮らずに済んで本当に良かった。
山神「山神です……一言も喋られず、終わった……。団長だぞ、俺! さて、次回は『魔術列車殺人事件・後編』!! 特に言う事ねえわあ、そうだ! ドラマ版の活……(長いのでカット)」
残間 さとみ
見習いマジシャン、ロバートと名付けた人形を使う。マーメイド夕海より体重が重い。金田一と佐木が見惚れる程の美少女。ドラマ版では七瀬の従姉。作中にて、オリ主の姉
ホテル支配人・長崎 功史郎
近宮 玲子の大ファン。彼女の弟子を罪深いと評し、ホテルへ来る度に遠回しな嫌味を言う人。近宮 玲子似の人形を持っている(怖)
作中にて、残間 青完とは同担拒否の関係にあり、出会っても口を利かない