金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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墓場島殺人事件の後日談です

※死別の描写があります。苦手な方はご注意ください




C17.次いで【墓場島殺人事件】へ・後編

 GW明けの朝刊は予想外の一面により、絶句。

 

 ――蒲生(がもう) 剛三(ごうぞう)『我が愛する娘の肖像』、『ルノアール国際絵画コンクール』グランプリ受賞――

 

 『怪盗紳士』に盗まれた挙句、わざわざコンクールへ出品された蒲生画伯の未発表作品。彼の二ヤけた顔写真だけで、肝心の絵はない。それどころか、盗人のメッセージが掲載されていた。

 

(……何だ? 絵は褒めてんだけど……遠回しに蒲生画伯を批難しているみたいだ……)

 

 受賞は目出度いが、妙な胸騒ぎもした。

 

 生徒会室の鍵は職員室に無く、一番乗りを逃す。つまり、朝一番に和泉(いずみ)と話せる。無自覚に足取りを軽くし、換気の為に解放された戸を覗いた。

 

「……お早う、金田君」

「おはようっ、金田君っ」

「おはようございます。遠野先輩、和泉さん」

 

 伏し目がちの和泉は確かにいたが、遠野(とおの)先輩から元気溌剌の挨拶を貰う。彼女と2人きりの時間は得られなかったが、見慣れた光景に胸の痞えは綻んだ。

 

「やっと金田君に会えた気がするっ。講習中は全然、会えなかったしさ。『幻想魔術団』のニュースを見たよっ。……大変じゃなかったかい? キミの家に何度も電話したけど、ずっと通話中で繋がらなくてさ

「ああ……お手間を取らせました。ええ……大変な状況ですが、大丈夫ですよ。ありがとうございます」

「……?」

 

 遠野先輩に耳打ちされ、ハッとする。彼は『幻想魔術団』の見習いマジシャンとの血縁関係を知っており、心配をかけていた。その気遣いが嬉しく、素直に感謝した。

 

「おはようございま~す! 遠野先輩♪」

「……っ、おはよう。……朝木君……」

「「おはよう、朝木さん」」

 

 朝木(あさぎ)は元気溌剌と挨拶し、苦笑いの遠野先輩は咄嗟に後輩2人の後ろに隠れる。彼らしくない態度に和泉と顔を見合わせ、キョトンとしてしまう。

 

「遠野先輩、朝木さんと何かあったのですか?」

ウフフッ。まだ、な~んにもないよ~♪」

「いやいや。親の付き添いで偶然、会っただけだよ」

「……??」

 

 GW中の都内で開かれた夢月流の展示会。

 生け花に用いられる壺は全て陶芸家・朝木陶工の作品、父娘と共に家元・桐沢(きりさわ) 香四郎(こうしろう)との会食に招待された。そこに出資者である遠野社長に連れられ、遠野先輩も訪れた。

 朝木陶工は遠野先輩との再会を喜び、とても親しげな会話を繰り広げたそうだ。

 

「そうそう、御堂 周一郎のお孫さんも来たのよ! 美雪の言う通り、本当に孫娘がいたわ……優歌って言ってね。如何にも名家のお嬢様って感じでさ~」

「へえっ、御堂先生は来なかったのですか?」

「急なご用事でね。代わりに夏岡さん? って人が来てたよ。偉い楽団の指揮者だとか……」

「……?」

 

 御堂(みどう)先生の孫娘について話題を振りながら、朝木はライバル心剝き出しの口調になる。それよりも先生本人が気になり、食い気味に問いかける。遠野先輩は必死に名前を思い返していた。

 全く話が見えない和泉は口を挟まず、そっと使い慣れた席へ腰かける。彼女を独りにしてしまい、(いち)は別の話題を探した。

 

「先輩!! 今朝のニュース、見ましたか!?」

「うわっ、ビックリした……海峰君……」

「あらら、良い時に来たわね」

「……土足になってる」

 

 血相を変えた海峰(かいほう)は挨拶もなく、生徒会室へ飛び込む。しかも、上履きに履き替えずに外履きのまま校舎に上がっていた。

 突然の事態に驚き、遠野先輩は肩をビクンッと痙攣させる。朝木は呆れた視線を向けるが、海峰が御堂先生のファンと知っているからこその態度だ。彼の外履きに注目したのは和泉だけだ。

 自分も先輩として注意したいが、先ずは海峰の話を優先しよう。

 

「おはようございます、海峰君。今朝のニュースと言いますと蒲生画伯の受賞ですか?」

「そんなんじゃなくて……ぜえぜえ、御堂先生が……亡くなったんスよ」

「「……は?」」

「え?」

 

 絶望した海峰は足の力を無くし、床へ崩れ落ちる。休みボケの痛快な冗談は絶対にない。自分達は勿論、和泉でさえも絶句した。

 

「どうして……?」

「……速報ニュースを見ただけなんスけど、病死だって……」

「金田君!?」

 

 反射的に呻いた言葉を質問と捉え、海峰は苦悶に顔を歪める。それはきっと、見えていない自分の表情だろう。不意に生徒会室の天井が見え、体がフワッと浮かんだ感覚に襲われる。遠野先輩の叫び声が聞こえた瞬間、視界が真っ暗になった。

 

 凡そ20分程、気絶した後。

 午前の授業を受け、昼休みは教室で弁当を食べ、放課後まで普段通りに過ごした。

 ホームルームは担任の先生より、中間テスト期間の注意事項、体育祭実行委員について触れる。最後に旧校舎の事件で亡くなった尾ノ上(おのうえ) 貴裕(たかひろ)の通夜は今夜と伝えられた。

 

(尾ノ上君、司法解剖から……帰って来たんだ……)

 

 身体の機能は正常なのに、脳髄と視界は切り離されたように他人事だ。

 生徒会室、演劇部も行かずに駐輪場へ直行。途中、何人かに声を掛けられた気がする。きっと、気のせいだろう。

 

「金田君……何度も呼んでるのに……行っちゃった……」

「金田君って……生徒会の?」

「ほっとけよ、美雪っ。俺らも校長室に行かねえとな。オッサンが待ってるっ」

金田一(きんだいち)……」

「これから刑事と喋るって言うのに……金田一(きんだいち)が頼もしく見える」

 

 気のせいではなく、現生徒会長・七瀬(ななせ)が相手だったと知らずに去った。

 彼女と同じ組・平嶋(ひらしま) 千絵(ちえ)、お馴染みの金田一(きんだいち)、2年A組の陣馬(じんま) 剛史(たかし)岡崎(おかざき) 浩司郎(こうしろう)は昨日まで滞在させられた墓場島での事件について、警視庁捜査一課の剣持(けんもち)警部へ事情聴取を受けるのだ。

 何故なら、本校の生徒たる森下(もりした) 麗美(れいみ)が主犯の容疑がかかっている。もう1人の主犯・檜山(ひやま) 達之(たつゆき)が単独犯と宣言した後、自害。現段階で彼女は黙秘を続けていると言う。

 勝手に旅行へ付き添った後輩の佐木(さき)より後日、説明されるが今は知った事ではない。

 

 ヘルメットで頭を覆い、エンジンによる振動が心地良い。走行中の風が何処までも行けてしまいそうな錯覚を巻き起こす。その感覚が好きだ。

 

 何も考えなくて良いから――。

 

 自宅に着けば、玄関に来客の靴が見える。見慣れた靴に縋る気持ちで居間へ急いだ。

 

「お帰り、(いち)君。お姉ちゃんは大丈夫かい?」

 

 予想通りの人物・小林(こばやし) 星二(せいじ)が座布団に座り、スケッチブックに絵を描いていた。

 挨拶もせず、小林画伯の傍へ座り込み、その膝に頭を置く。服には油絵や色鉛筆などの画材の匂いが染み付き、大切な人を思い返せて物凄く安心する。彼は高校生男子の後頭部に優しく手を置いた。

 

「来るのが遅くなったね。先週はずっと旅行先にいたんだ。お昼のワイドナショーを見て、ビックリしたよ。ここに電話もしたけど、通話中だしね。別の回線とか、携帯電話を持ったらどうだい?」

「御堂先生が死んだのです」

「……御堂……、ああ……多岐川さんと対談したって人だね。そんなにお歳に見えなかったけど、亡くなられたんだね」

「病気だったのです」

 

 何の脈略もなく、御堂先生の訃報を伝える。小林画伯は決して話を遮らず、淡々と聞き返してくれた。

 

「御堂先生、自分宛に手紙をくれました。読んでないけど多分、手紙……。来月に封を開けるようにって……死ぬのが分かっていたなら、手紙じゃなくて直接……自分に言ってくれなかったのでしょうか?」

「さあね、僕はその人じゃない。けど……(いち)に伝えたい事があったから、手紙にしたんじゃないかな? 死期が近いって悟ったなら、口で伝える前に逝っちゃうかもしれないし……。それだけは避けたかったんだと思う。(いち)君を想っての事だよ」

 

 人の気持ちが分からないと言いながら、小林画伯は御堂先生の想いを自分なりに解釈してくれる。きっとその通りなのだろうと勝手に納得した。

 納得の後は勝手な回想が起こる。

 1月に出会った時、御堂先生の体は病に蝕まれていた。

 そんな状態でありながら、古き友人の甥にピアノをプレゼントし、写真を探してくれた。

 そこまで親切にされたにも関わらず、二度と御堂先生へ恩を返せない。感謝も伝えられない。死別の悲しみと無力感に涙が滲んだ。

 小林画伯の膝を濡らさぬよう、指で涙を拭う。涙を悟られ、彼の手は背中を労わるように撫でて来た。

 

「僕が昔、海難事故に遭った事を覚えてる?」

「はい、自分が中学の時に……小林さんのお見舞いに病院へ行きました」

 

 3年前の5月頃、豪華客船オリエンタル号の処女航海。

 出航から間もなくして、三積ヶ浦でタンカーとの衝突により多くの乗客・乗組員が海へ放り出され、命を落とした。乗客だった小林画伯は命からがら助かったが、その後遺症で水恐怖症に陥っているのだ。

 小林画伯の病室を訪れた際、我が母・にいみは不謹慎にも大爆笑した酷い思い出だ。

 

(いち)君のお母さんには大爆笑されたねえ。まあ……それは置いといてっ。僕はそんな事があってから、旅行へ行く度に遺書を用意してるんだ。一応、伝えておくよ」

「……知りたくはありませんでしたが……はい、覚えておきます」

 

 小林画伯に家族と呼べる身内はいない。親族とも疎遠であり、天涯孤独。遺書の宛先は彼の作品を託せる美術協会ぐらいだろう。それくらいしか、(いち)には思い付けなかった。

 

 知りたくもない結果を知るのは9月の始まりだった。

 

○●……――(ひびき) 史郎(しろう)は冬以来、北海道・背氷村殺人事件の当事者として仲間内で有名になった。

 顔見知りですらない業界関係者に声を掛けられても、事件の内容を求めてくるばかりで嬉しくない。アイドル歌手や俳優達はそれ以上追及される日々。ただの番組スタッフは注目度が低い為、心境的にも助かった。

 

「あの綾辻さんがね……」

「良い子だったのに……ホント、加納のせいで……」

「殺されて当然だよ、比留田とか」

「明石なんかで……前科付いちゃって、可哀想」

「水沼とか誰だよ。そんな奴いたか?」

 

 同情に託けた被害者にして加害者への誹謗中傷。聞き流すのが処世術だが、耳に残ってしまう。転職を考えた時期、尾高山の遺体捜索を見届けに行った。

 

 ――金田と出会った。

 

 氷室(ひむろ) 一聖(いっせい)に生き写しの甥御。彼の心は綾辻(あやつじ) 真里奈(まりな)と同じ、悲しみと絶望の〝吹雪〟が吹き荒れている。「伯父と一緒に帰りたい」、そんな切実に訴えも大人達は叶えてやらなかった。

 遺体は白骨化した状態で発見され、氷室画伯本人と断定された。

 納骨に関し、駄目で元々と明智 健吾(あけち けんご)警視へ連絡してれば、あっさりと教えてくれた。彼も道警の銭形(ぜにがた) ケンタロウ警部補から聞いたそうだ。

 金田の事は誰にも言ってない。

 そもそもTV業界の関心は氷室画伯から遠退き、父親の経営するタロット山荘殺人事件を生き延びたアイドル歌手・速水 玲香(はやみ れいか)に焦点を置いた状態。所属する事務所の社長、マネージャー、父親を一度に亡くすなど、同情を禁じ得ない。

 それでも新曲を自ら手掛け、その身に起きた悲惨さを感じさせない。速水のような少女が業界を生き抜く覚悟を決めながら、転職を言い訳にして逃げ出そうとした自身を恥ずかしくも思った。

 

 『幻想魔術団』の報道を知った直後、局内にて俳優の棟方(むなかた) ケンと遭遇した。

 

「団員の子、都内で見た事あるよっ。響さんには世話になったし、教えといてあげる♪ 事件の話、何か聞けたら良いねっ」

「はあ……どうも」

 

 親しげに情報を貰うが棟方とは事件以来、初めて口を利いた気がする。

 それでも『大草原の小さな家』を訪れたのは微かな好奇心によるモノだろう。マジシャンに興味は正直なく、北海道の復讐殺人事件という共通点だ。

 犯人たるマネージャー・高遠 遙一(たかとう よういち)は亡くなった近宮 玲子(ちかみや れいこ)の熱狂的なファン、そんな報道内容に違和感も覚えていた。

 

「いらっしゃいませ」

「コーヒーをひとつ」

 

 ファンシーな店内に先客がおり、響は少しだけ安心する。短髪の眼鏡にハンディカムを持つ少年に初対面ながら、親しみを感じる。その対面に座った背広の男は弁護士バッチを付けており、2人の関係性は見えなかった。

 

「GW中に兄弟揃って、別々の事件にねえ……。佐木君、ケガは無いように見えるが、色々と大丈夫か?」

「はい、僕は大丈夫です。それで……どうでしょう。森下先輩の弁護、引き受けて貰えますか?」

「……この場では返答しかねる。……だが、出来る事はしよう。見せてくれたビデオ、まだ預かってもいいかな?」

「はい、勿論。同じビデオを警察にも提供してますから、検事も確認済みだと思います」

 

 聞くとはなしに聞いてみれば、事件、弁護、警察、検事と物凄く深刻な内容。

 佐木(さき) 竜太(りゅうた)と呼ばれた少年はブレザー制服から、高校生だろう。少数の客しか入れないような店でも、不特定多数の人が出入りする場所では話さないで欲しい。その気はなくとも、盗み聞き状態になってしまう。注文したコーヒーが置かれ、響はわざとらしくスプーンの音を立て、存在をアピールした。

 

「すみません、コーヒーのお代わりを。ところで、金田君は元気かな?」

「……ええ、元気ですよ。冬部さんが殴っちゃったケガも治りました」

「……言い訳はしない。金田君には悪い事をした……。名刺は渡していたが、一向に音沙汰なくてね。元気なら、良いんだ……」

「金田先輩はケガをそれ程、気にしてないんですよ」

 

 金田の名を聞き、ぞわっと背筋が粟立つ。偶然だろうが、彼を連想してしまう。どこにでもある苗字、特に珍しくもない。勝手な動揺を誤魔化す為、砂糖を多めに入れた。

 カランカランッと来客のベルが鳴り、戸は開く。響は佐木と同じ制服の男子を視界に入れ、コーヒーを吹いた。

 噂の金田だ。

 

「「「金田君(先輩)」」」

「え?」

 

 3人同時に声を掛けられ、金田は三眼目をギョッとさせる。途端、戸を閉めた。

 一瞬の困惑は場を包み、そっと佐木が追いかける。響は|冬部と呼ばれた弁護士へ取り敢えず、目礼した。

 

「先輩っ、行かないで下さいよ」

「……コンニチハ、佐木君。ここの所、学校では会いませんでしたね。中間テストは期待して宜しいですか?」

「2人ともテスト、今日までだっけ? よく頑張ったわね。コーヒー、オマケしといてあげるっ」

 

 佐木に腕を引っ張られながら、棒読みの金田は再び入店。会話から察するに中間テスト期間の様子。しかも、常連らしく店長らしき人からもコーヒーを用意された。

 

「お久しぶりです。響さん……冬部さん、どういう集まりですか?」

「ああ、やっぱり……この人も先輩の知り合いなんですね。僕、佐木と言います。金田先輩の後輩です」

「TV局の響です。名刺を……」

「冬部です」

 

 自己紹介する流れになり、響は冬部(ふゆべ) 蒼介(そうすけ)弁護士と名刺交換。正直、個人的に弁護士と関わるのは初めてだ。別の意味で緊張して来た。

 

「はい、コーヒー。持って行ってっ」

「休みでも扱き使われています」

「折角なので、席も詰めましょう。響さん、冬部さんの隣へどうぞ」

 

 店長は4つもコーヒーを用意し、不服そうな金田はブツブツと配る。佐木に勧められるまま、冬部弁護士の隣へ腰かけた。

 

「金田先輩がTV局の方と知り合いとは意外です。北海道の事件が関係を?」

「え……っ」

「いいえっ。響さんにはヒッチハイク先で路頭に迷っているところ、家まで送り届けてくれた親切な方です」

「ヒッチハイクで路頭に迷う……? 高校生が?」

 

 佐木の指摘にドキッとしたが、澄まし顔の金田は嘘を言わずに話を逸らす。冬部弁護士が仰天した。

 

「響さんは『幻想魔術団』の事件をどう思われますか?」

「……北海道の事件って、そっちか……。生き残った左近寺なら、昨日くらいに局内で見かけたよ。仲間が死んだ直後だって言うのに……元気溌剌って感じかな」

「ふうん、弟の言う通りですね。左近寺って人」

「……」

 

 金田にニッコリ顔で質問され、響は思い当たる。元々、『幻想魔術団』関係者に会いたかったのだ。

 

「この店に『幻想魔術団』の人が来た事あるって聞いたんだけど、知ってる?」

「いいえ……、僕はよく通うんですが……見た事ないですね。金田先輩は?」

「色んな方が来られますので……一度や二度では覚えられませんね。冬部さんは?」

「俺は初めて来たからなっ」

 

 予想通りの答えを聞き、妙な安心感。本命に会える偶然など、滅多にない。それでも、金田の元気そうな姿を見られただけでスッキリした気分だ。

 

「それはそうとして、佐木君は冬部さんと何の相談ですか?」

「森下先輩の件ですよ。冬部さんなら、力になってくれると思いましてっ」

「……まだ返事はしていないが……」

「身内の話になりそうだし、僕はここで失礼するよ。お勘定を……」

 

 他の事件については知らぬ方が良い。そう判断し、席を立つ。会計は一杯分のコーヒー代のみ、経費は落ちないかもしれないが、領収書はキチンと貰う。

 響が店を出た矢先、金田は当然のように追いかけて来た。

 

「響さん、ありがとうございます」

「……何を?」

「ヒッチハイクの件です。ずっと、お礼を言っていませんでした」

「ああ……別に、気にしなくていいんだよ」

「そのお詫びではありませんが、メモを拝借します」

「メモっ、ええとコレに……」

 

 突然、言われても大丈夫。響は常にスケジュール帳とペンを持ち歩く身。それらを渡せばし、金田は白紙の開いたページへ電話番号を書き込んだ。

 

「『幻想魔術団』の関係者……そのご家族の携帯電話です。響さんが背氷村の事件当事者だと言えば、取り合ってくれるでしょう」

「え、良いのかい?」

 

 まさに棚から牡丹餅。

 スケジュール帳を返してもらい、番号を凝視してしまう。背氷村は同じ北海道の事件という間柄、そんな意味ではないとすぐに察する。遠回しに金田の名を出さぬ様、暗示している気もした。

 

「連絡先を誰に聞いたって言えば……いいかな?」

「そうですね……金田一君にでも、しておきましょう」

 

 全く悪びれない笑顔が年相応の少年に見え、知らずと安堵の息を吐いた。

 今日、この場所に来られて良かったと心から思う。

 

 その後。冬部弁護士に「黒坂村全焼事件」の情報提供を求められ、「森下先輩」の事件に関与していると気付く。当時の報道資料を正式な手順で持ち出すのに苦労したが、協力した事を決して後悔しない。

 生き残った岩野(いわの) (あゆむ)が当時の「不始末」を自供した影響もあっただろう。「森下先輩」の判決を冬部弁護士から伝えられ、勝手な感動に涙が流れたのは内緒だ。

 




竜二「佐木 竜二です。閲覧ありがとうございます( ´∀`)原作ではボク、ドラマ版では兄さんが活躍しています。是非ともご覧ください。さて、次回は『不動高校学園祭に人は死なない』!! え~センパイの学校でまた事件!!」

森下 麗美
「黒坂村全焼事件」の生き残り。逮捕後は黙秘を続けたが、ある事情から金田一へ全てを白状した。

平嶋 千絵
地元でも怖れられる墓場島を復讐の舞台に利用された。『誰が女神を殺したか?』の作中で文化祭にも参加している。

陣馬 剛史
復讐計画に利用されたA組男子。

岡崎 浩司郎
千絵の恋心を使って利用されたA組男子。『誰が女神を殺したか?』で千絵と歩くシーンあり

岩野 歩
「黒坂村全焼事件」の原因を作ったサバイバーメンバーの1人、金田一の機転で生き残ったが事件のショックで精神的に参り、自供したとされる。遅すぎる贖罪によって麗美の減刑に繋がっただろう

尾ノ上 貴裕
七不思議殺人事件、ゲストキャラ

小林 星二
悲恋湖伝説殺人事件、ゲストキャラ。作中にてオリ主と交流がある。

響 史郎
雪夜叉伝説殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、長野県尾高山で出会う。

桐沢 香四郎
1/2の殺人者、ゲストキャラ
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