金田少年の生徒会日誌 作:珍明
この回にて、章の終わりとします
チア部部長の
そんなこんなで2年生の3人4脚。現在、千絵は同じ組の
「……平嶋さん、大丈夫? さっきは……ゴメン」
「うん……ありがとう。和泉さん……、あたしも……ぼ~っとしてた」
2人は第一走者と第二走者。千絵はゴール後に陣地へ帰る事を忘れ、ぼ~っとし過ぎた。同じチームの冴子に腕を引っ張られたが、遅かった。
「2人とも無事? あ~あ、平嶋さん……おでこ真っ赤っ。和泉さんは眼鏡、割れてないわね」
「……うん」
「……っ」
完走した
「貴船君だ。おっ、見てみて。C組は神津さんが走るよ、美術部のマドンナ! D組は生徒会の金田君っ」
「美雪と同じ生徒会の? 千明、こっからよく見えてるわ。和泉さんも生徒会でしょ。あの2人って仲良いわけ~?」
「……多分」
太田がじっと走者の顔触れを確認し、知っている名を呟く。水分補給し終えた
「なんで美雪ってさ、彼氏いないんだろうね。金田君もいるし、遠野先輩との噂もあるじゃん」
「わかる、それっ。やっぱ……あの馬鹿に遠慮してるとか? ただの幼馴染を差し置いて、恋人作ったら可哀想みたいな?」
「「……」」
勝手な会話が始まる中、千絵と和泉は沈黙。
クラスメイトの
「和泉さん! 大丈夫ですか!?」
「金田君……っ。うん……、ちょっと転んじゃっただけ……」
「「金田君、美雪とはどうなってるの?」」
「!?」
汗だくの
「……は? 七瀬さんが何ですか?」
((あ……こりゃあ、美雪に脈ないわ……))
「あの……金田君、速かったね。息ピッタリって言うか……」
「放課後も……練習してたって、七瀬さんに聞いた……。頑張った甲斐……あったねっ」
途端、金田は青褪める。まるで脅迫されたような怯え方、見るに見かねた千絵は必死に話題を変える。和泉もか細い声を振り絞り、3人4脚の成果を讃えた。
「ええ、放課後に公園で練習を重ねました。桐生さんがお勧めしてくれたのですが、広さが本当に丁度良かったです。神矢君も頑張ってくれましたっ」
「「良い人だね、桐生さんってっ」」
((高校生の男女が放課後に公園で練習って……やる気満々か、絶対に気があるデショ。もう1人の男子、居づらいじゃん。カワイソ~))
やっと笑顔になり、金田は今日までの努力を伝えて来る。太田と冴子ではないが、千絵は
もしも、麗美がいれば、時田がいれば。色々とツッコんで話を広げただろう。でも、いない現実が胸を締め付けた。
「部活対抗リレーの後、美雪が迎えに来るからっ。それまではココで休んでなよ」
「2人とも綱引きまで出番ないしね」
「「うん……」」
「では失礼します。和泉さん、平嶋さん」
3人が救護テントを離れた時、千絵は気付く。金田は誰も呼んでいない自分の名字を呼んだ。同じ学年だが、接点のない生徒も把握しているのだ。
呆然と過ごす内、部活対抗リレーは野球部の圧勝。アンカーの
「ハアハア、平嶋さん……和泉さん。お待たせ……戻ろう?」
「もおっ、美雪は来なくていいんだって! 2人とも子供じゃねんだぜっ」
「金田一君っ」
惜しくも2位だった演劇部アンカーの
「ほらっ、行こうぜ」
「うん……っ」
「平嶋さん、歩ける?」
「美雪ちゃん、ありがとう」
「七瀬、少しいいか?」
金田一はさり気なく、和泉と歩幅を合わせる。美雪と千絵が救護テントを離れた瞬間、
「教頭先生、どうしました?」
「校門に部外者がうろついていてな。千家が捕まっているんだっ。聞けば、七瀬の知り合いらしくてな。対応してくれないか?」
(……それが先生の仕事じゃあ……)
意味不明に思っても、人の良い美雪は行く。金田一と和泉は先に陣地へ行ってしまった為、千絵は彼女が心配で校門へ着いて行った。
困り果てた
「だから、森さんの家族はここいないしっ。学校に招待されてないから、ダメだって!」
「フフフ」
「アナタは森 宇多子さん!」
「本当に知り合いなんだ……」
千家は必死の説得にかかり、
「不穏な空気に満ちているから、立ち寄っただけよ。そこのアナタっ」
「あたし?」
「アナタが笑ってくれれば、それで良い。お友達はそう思ってるわ」
「……!?」
やっと千家の腕を離し、森は千絵をじっくりと眺めてから意味深に告げる。正直に怖い。占い師のように心情を見透かされ、思い当る節はあっても、見知らぬ他人から貰いたい言葉ではなかった。
「ありがとう、……誰だっけ?」
「同じ組の平嶋さん。あ、こっちは5組の千家君。小学校で一緒だったの……!? 平嶋さん?」
「……っ」
千家にお礼を言われても聞こえない。
溢れる涙と感情の波が周囲の音を遮断し、千絵は蹲る。美雪に肩を掴まれ、校舎の隅っこまで付き添ってくれた感覚だけはあった。
突然の涙にビックリした千家は陣地へ戻ってくれる。事情を知らない彼に涙を見せたくない。
「ゴメンね、美雪ちゃん」
「ううん、麗美ちゃんのコトだよね……。ずっと、気にしてくれたのに……あたし」
「……麗美もそうだけど……時田さんも……。尾ノ上君も……、本当は今日、ここにいたのにって……思ったら……考えてもしょうがないのにっ」
「平嶋さん……」
零れた感情のまま、千絵は美雪へ心情を吐露する。しかし、ここにいる彼女はつい先日に小学校の同級生だった
「森さんの言う通り、麗美ちゃんも若葉ちゃんも尾ノ上君もっ。平嶋さんに笑ってて欲しいって思ってるよ。実はね、若葉ちゃんから結婚式の招待状が届いたの。式自体は明後日なんだけど、明日には青森へ行ってくるわっ」
「え……もう結婚しちゃうの? 時田さん……」
慰めや励ましではなく、美雪は当たり前のように千絵の笑顔を望む。それがいなくなった皆の総意だと言いたげな優しさが伝わる。
やっと涙が止まり、千絵は時田の正式な結婚にゾッとする余裕が生まれた。
「時田さん……幸せになれるかな?」
「……若葉ちゃんはいつも幸せそうだったよ。これからだって……きっと」
口にしてから、無神経な質問だったと後悔。美雪こそ、時田の幸せを一番に望むからこそ、不安に思っているはずだ。
自分ばかりが悲しんでいられない。彼女達のようになれずとも、せめて、千絵は笑顔でいよう。
そこに綱引きの競技アナウンスがかかる。さあ、出番だ。
「行こっか、平嶋さん!」
「美雪ちゃん……千絵で良いよ」
「うん、千絵ちゃん」
「……♪」
今日初めて、千絵は心から笑う。それは美雪のお陰、卒業まで不動高校に通い続ける勇気と覚悟を得られ、本当の本当に感謝した。
――だからこそ、美雪に結婚式の話は何も聞かなかったのだ。
鍵谷「鍵谷 善司です。閲覧ありがとうね、マスミちゃんもあの中に居たかったんだろうなあ。あ、ボクはいたとしても見学組だよ。皆が楽しんでいる様子を見るのが、好きなんだ。さて、次回は『花嫁は異人館村殺人事件に消えた』!! 金田一君、結婚式へ参加する為に……一週間も学校を休むの?」
三谷教頭
ドラマ版七不思議殺人事件、ゲストキャラ
2年5組・千家 貴司
首吊り学園殺人事件より登場の準レギュラーだった。
森 宇多子
首吊り学園殺人事件、ゲストキャラ。短編に度々登場。