金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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原作を読み返しても、一週間は確実に学校を休んでいる。金田一の出席日数が心配。


2話 花嫁は【異人館村殺人事件】に消えた・後編

 体育祭の部活対抗リレーは新入部員勧誘に最適、競技の影響で入部する1年生も実際にいる。演劇部にも部室を訪れる1年生がチラホラと現れ、2位ゴールは意味を成した。

 功労者でもある演劇部部員にして生徒会長・七瀬 美雪(ななせ みゆき)を欠いたまま、顧問の音楽担当・緒方 夏代(おがた なつよ)先生より台本が配られる。

 夏のコンクールは『オペラ座の怪人』を演目、土曜日まで各自で練習。オーディション紛いの台詞合わせを行い、正式に配役を決定する。基本は立候補だが、他薦でも配役を振るとの事。

 役に希望者がある部員は早速、緒方先生へ群がった。

 (いち)は裏方の皆さんと一緒に台本を開き、選曲や効果音を一先ず、相談し合う。これが難航した。

 

「……御堂 周一郎の曲を使いたいです」

 

 希望曲を伝えても、うだうだと「舞台と合わない」などちっとも纏まらない。普段、七瀬がどれだけ段取り良く決められているのか、文字通りに身に染みた。

 

「金田君、伴奏なんだけど……当てがあるのよ。一緒に来てっ」

「……自分、伴奏はクビですか?」

 

 クスクス笑いの緒方先生に連れられ、音楽室へ向かう。先客がいるらしく、ピアノの演奏が聞こえた。

 

「あっ、金田先輩に緒方先生! 俺の演奏でも聞きに来ましたか?」

 

 囲碁部の1年3組・海峰(かいほう) (まなぶ)は将来有望なピアニストを自称し、来訪者にも自信満々な態度で照れる。その度胸、是非とも見習いたい。

 

「海峰君、何故こちらに?」

「ちょいちょい、弾かせてもらっているんス。うちにピアノないんでっ。てていっとな」

「彼がその当てよ。ちょうど……御堂 周一郎の曲ね」

 

 御堂(みどう)先生の代表作品『悪魔の呼び声』、(いち)では指が攣る曲を海峰は滑らかな指使いにて弾きこなす。初めての耳にするが、ピアニスト志望は伊達ではない。寧ろ、称賛に値する巧さだ。

 

「……海峰君、御堂先生について自分よりも詳しいですよね。彼が詩を書く逸話をご存じですか?」

「知ってるも何も今度、詩集が出まっせ。御堂先生は作曲の際、曲のイメージを詩に託していたスよ!」

 

 片手で弾き続け、海峰は足元の鞄から雑誌を取り出す。詩集の告知、弟子達のインタビューが掲載された新号。雑誌を持ち歩くとは流石、御堂先生を讃える同志。思わず、抱き締めた。

 

「ふうん、生前に愛用した楽器を弟子達へ贈った……ねえ。8千万もするヴァイオリンまで……」

「「……住む世界が違いますね」」

 

 雑誌を捲り、緒方先生はインタビュー記事を読む。

 東京フィルコンツエルトの指揮者・夏岡 猛彦(なつおか たけひこ)はフルート、ヴァイオリニスト・(くれ) 亜里沙(ありさ)はヴァイオリン、作曲家マイケル・ヘンリーはギターを贈られ、オペラ歌手・風倉(かぜくら) 百合恵(ゆりえ)だけ現金と生々しかった。

 見慣れぬ桁の金額、庶民な高校生2人は圧倒された。

 

「金田先輩、お弟子さんの中で好きな人います?」

「御堂先生自身にしか、興味ありませんっ。佐木君……」

ひゅ~、徹底してる~♪ でも、その気持ちは嫌いじゃないっス。俺は断然、マイストロの夏岡 猛彦……うお!? ……あ、アンタ……ミス研の佐木 竜太!!」

「記者の宇治木、……どこかで見た名前ね」

 

 突然の質問にて、ミス研の1年1組・佐木(さき) 竜太(りゅうた)に気付く。海峰の驚き方から、彼は有名らしい。緒方先生は素知らぬ顔でページを捲り、読みふける。隅にある記者・宇治木(うじき) 政宗(まさむね)の名を呟いていた。

 

「金田先輩が音楽室に行くのが見えましてね。全然……弾かないから、ついっ」

「ん? 金田先輩……ピアノ弾けたんスね……。お手並み拝見と行きましょう。俺、厳しいっスよ」

「……難易度が上がりましたね」

 

 佐木の希望を叶える気はなかったが、やれやれと肩を竦めた海峰に席を譲ってもらう。後輩2人に遠回しに頼まれ、(いち)は鍵盤に指を這わせた。

 

「お……これ、御堂先生がアメリカで作曲したヤツ♪」

「本当、金田先輩は御堂 周一郎が好きですねっ」

「さっきの曲と聞き比べると若さ故の情熱を感じるわねえ……。と言うより……金田君、楽しそうな弾き方をするわねっ。どうしましょう……」

 

 指の動きひとつひとつに集中し、(いち)は周囲の声が聞こえない。聴覚と記憶にある楽譜が一致する度、喜びの信号が脳髄に痺れを起こす。痺れは汗となり、頬を伝って落ちた。

 

「金田先輩……実は御堂 周一郎の隠し子!?」

「そのネタ、もう僕らが使いましたっ」

「そうだったの? クスッ、知らなかったわ」

「緒方先生!? 違いますからね」

 

 感激した海峰は勝手な憶測を叫び、即座に佐木が否定。彼の中でそう発言してしまう程、評価されたのは嬉しい。緒方先生が真に受けたように笑えば、(いち)も焦った。

 

「……それはそれとして、金田一(きんだいち)先輩と七瀬先輩を知りませんか?」

「見てないですね」

「キンダイチ先輩?」

「海峰君と同じ、入試成績1位で合格した生徒よ」

 

 音楽室を見渡し、佐木が問う。海峰が疑問した途端、緒方先生からの衝撃発言、七瀬の幼馴染にして名探偵・金田一(きんだいち) 耕助(こうすけ)の孫たる金田一(きんだいち) (はじめ)、Hなビデオを警視庁に持ち込むような馬鹿タレが入試トップとは初耳。あまりにも意外、失礼ながらも採点間違いを疑った。

 

「自分、七瀬さんが1位と思っていました。遠野先輩みたいにっ」

「そっか、七瀬先輩よりも点数が良かったのか……金田一(きんだいち)先輩っ」

「へえ、それは会ってみたいっスね。生徒会で見た事ないから……ミス研?」

「所属だけで言うなら、私の演劇部にいるわ」

 

 緒方先生は表面的な行動だけで生徒を評価しない。必ず、長所を見つけ出す人。しかも、含みのある言い方は金田一(きんだいち)への独占を感じた。

 

「なんで佐木が演劇部の先輩に用が? 部の勧誘とか?」

「……ちょっと、気になる事がありまして。多分、明日か明後日には生徒会でも話に上がると思いますよ」

「「?」」

 

 深刻そうに佐木が2人を探していた理由は本当に明後日、明かされた。

 

 昨年度から不動高校に赴任した小田切(おだぎり) (すすむ)先生は別人。今年の2月、不動市の郊外にある雑木林で発見された身元不明の遺体が本物。つまり、つい先日まで顔を合わせた彼は『小田切先生』ではなかった

 生徒会執行部面々は顧問の先生より、淡々と伝えられた。

 

「……小田切先生が……なりすました偽者……?」

「そんな……馬鹿な、何かの間違いですっ。あの小田切先生ですよ!」

「……っ」

 

 前生徒会長の3年E組・遠野 英治(とおの えいじ)先輩は勿論、2年5組・朝木 秋絵(あさき あきえ)も狼狽える。2年1組・和泉(いずみ) さくらも青褪め、力なく椅子へ座る。海峰達も似たような反応だ。

 

(……水沼と……同じ……なりすまし……)

 

 (いち)は思った以上に冷静、ただ脳髄に『小田切先生』との日々が思い返された。

 動揺する生徒に対し、執行部顧問の先生は警察に被害届を提出する旨。『小田切先生』は体育祭前日に退職扱いとし、その後については一切、無関係と宣言した。

 2・3年生を対象に事情聴取を行うが、生徒は何を見聞きしようとも口外せぬよう、念押しされた。

 授業日程は予定通り行われても、皆の心は心あらず。僅かな接点のあった生徒だけが順番に校長室へ呼ばれるのだ。

 (いち)も授業中、呼び出された。

 

「こんにちは、金田君」

「雪峯さん、お世話になります。そちらの方とは初対面ですね。金田と申します」

「住吉です。どうぞ、お座り下さい」

 

 校長室には捜査一課・雪峯(ゆきみね) 美砂(みさ)刑事、住吉(すみよし) 慎吾(しんご)刑事の2名。偽者の学校での態度など、差し障りのない内容だけ聞かれる。ラブホテル事件について、こちらからは何も話さなかった。

 

「金田君……ありがとう、戻っていいわ。……元気出してね

 

 雪峯刑事の励ましは小声過ぎて、(いち)に聞こえなかった。

 昼の休み時間、食事もせずにミス研会長の3年1組・桜樹(さくらぎ) るい子へ訊ねる。彼女は代休明けに偽者が無断欠勤した為、事件の匂いを嗅ぎつけて相手の自宅を訪問。そこで様々な違和感に気付いたと言う。

 

「……金田一(きんだいち)君に相談してからと思ったけど、彼もずっと休んでいるし……。そしたら、昨日に剣持警部から連絡がね……。流石にショックだわ……あんなに良い先生が……」

「桜樹先輩……」

 

 余裕のある笑みが崩れ、桜樹先輩さえも泣きそうになっていた。

 廊下を歩けば、生徒の嘆きが聞こえる。けれども、それは『小田切先生』に騙されたショックだけだ。

 本物の為人を知らぬ故、その気持ちは共感できる。同じ『なりすまし詐欺』なのに、(いち)は違う名前の感情に戸惑う。寂しく、悲しく、偽者を憐れむ。彼の必死に教師であろうとする姿勢に、惹かれていたからだ。

 

「……金田君……今日、執行部ないって……」

「和泉さん、ありがとうございます」

「……あの……私が言えた義理じゃないけど……、元気出して」

「……はい」

 

 か細い声だが、和泉の励ましはハッキリと聞こえる。彼女と同じ組だった 時田(ときた) 若葉(わかば)を想う。転校していなくなり、偽者も学校から姿を消した。

 

(……あの人が先生じゃないなら……、時田さんは……)

 

 それ以上、考えない。全ての事情を薙ぎ払ってでも、名も知らぬ彼と幸せであれ――そう、祈った。

 

 ――結局、2人の結末を誰からも聞く事はない。

 

 

○●……――青森県の俵田(たわらだ) 幸太郎(こうたろう)刑事に見送られ、美雪とはじめは新幹線へ乗車。

 3人だった行きが、帰りは2人。

 若葉から最後の贈り物であるペンダントを眺め、美雪は別れ際を思い返す。愛の為に己の死さえ、受け入れてしまった彼女にかける言葉は今も見つからない。腹の傷が痛いと言い訳し、幼馴染が流した涙に対しても同じだ。

 はじめは『小田切先生』が嫌いではなく、若葉との恋仲もぶっきらぼうな態度で応援していた。2人が後の将来を美雪以上に願っていたのだ。

 美雪は何も言わず、車内販売のお弁当を買う。はじめの涙を拭わず、諫めず、好きなだけ泣かせた。

 

 新幹線は無事、千葉駅へ到着。

 改札口にて、本庁捜査一課・剣持(けんもち) (いさむ)警部が待ち構える。親戚のおじさん並みに親しげで頼れる大人と会え、美雪はホッとした。

 

「オッサン、すまねえな。わざわざ、迎えに来てもらってよ」

「な~に、構わんさ。帰りは温泉に連れて行ってやるからな、期待してろ♪」

「良いんですか♪ ありがとう、剣持さんっ」

 

 レンタカーに乗り込み、3人となる。一瞬だけ、美雪は『小田切先生』を思い返したが、すぐに振り払う。折角、剣持警部がはじめに気を利かせ、温泉宿へ連れて行ってくれるのだ。

 

「ケガはもういいのか? 隠し持ってたフライパンで猟銃の弾を受け止め損ねたんだっけか?」

「甲冑の肩当てだよ。兜 礼二がコレクションしてたっ」

「お医者さんはお風呂に入っても大丈夫だと、言ってましたよっ」

 

 剣持警部が心配したケガ、破損した甲冑の破片が刺さったモノ。

 はじめは腹に肩当てを巻き、銃弾そのものはギリギリ防いだ。しかし、強い衝撃に体がショック状態になり、卒倒。その拍子に甲冑が壊れ、大惨事だ。

 美雪も心配したが、発案は良かった。これまでの経験上、幼馴染は殺人犯と乱闘になる経験を持つ。犯人に罪を重ねさせない為にも、自衛してくれていた。

 自衛は必要。美雪は自分自身に出来る自衛を考え、ついに決めた。

 

「あたしっ、ミス研に入るっ。勿論、はじめちゃんもね!」

「え……俺も?」

「ミス研と言えば、桜樹君には大体の事情を説明しておいたぞ。学校でも偽者の小田切で少々、騒ぎになったらしい。お前達はゆっくり、帰って来いだとかっ」

 

 決意表明した途端、剣持警部は桜樹先輩の名を出す。欠席中の状態は彼女に聞くとしても、青森へ行くと伝えた同級生に何を言うべきか、また言葉に詰まった。

 

「それと副会長から七瀬君に伝言っ。こっちは全く支障ないから、帰って来なくても良いぞってな」

「副会長……キレてんじゃん。怖っ」

「……そうだねっ。本当、あたし……副会長を怒らせてばっかり……」

 

 事情を全く知らない副会長の見えない怒りが伝わり、はじめの肝が冷える。脳髄に浮かんだ仁王立ちが笑いを刺激し、美雪は笑ってしまった。

 

「副会長はともかく、桜樹先輩にはそろそろ……礼くらいしとくかな」

「ほお、金田一がそう言うか……。桜樹君には部下も世話になっとるし……女の子が喜びそうなイイトコを探しとくかっ」

「剣持さんったら……、あたしに聞いてくださいよっ」

 

 車は段々と街から離れ、郊外すらも抜けて山奥へ入る。天気は崩れ、雲行きも怪しかった。

 

「オッサン、まだ着かねえの? かれこれ……1時間以上は経つぜ」

「そう急かすな。下手に速度出してみろ、急な雨にスリップだ」

「あ……雨……!! きゃあ!?

 

 運転手の危惧した通り、車体に響く豪雨。そして、近場の大木に落雷した。

 突然の閃光と轟音、美雪は恐怖のあまりに悲鳴を上げる。剣持警部も咄嗟の対応で急ブレーキを踏み、はじめも小さな呻き声と共に後部座の下へ転んだ。

 

「大丈夫か、2人ともっ」

「「何とか……!?」」

 

 高校生2人の安否と周囲を警戒し、剣持警部は問う。七瀬は驚いた心臓の脈拍を宥めつつ、はじめは面倒そうに起き上がりながらの返事だ。

 その次、落雷を受けた木が道路を防ぐようにゆっくりと倒れる。美雪は絶句した。

 

「なんで俺達って、行く先々でこういう目に遭うんだろうな……」

「俺の携帯は……圏外か、参ったな。こんな山ン中じゃあ……公衆電話なんてないだろうし……そうだ! この近くにたった一軒、別荘があったんだ。電話がなくても、雨宿りはさせてもらおう!」

「誰かいるといいわね……」

 

 はじめがゲンナリし、剣持警部は携帯電話を取り出す。残念な事に電波が入らない場所、そこで刑事ならではの脳内地図が周辺の建物を思い出してくれた。

 舗装された道路から外れ、デコボコした土の悪路を車は安全運転で向かう。剣持警部の読み通り、洋風建築の別荘へ到着した。

 電灯が付けられても、建物全体が薄暗く不気味な雰囲気。車は4台駐車され、人の在宅は間違いない様子だ。後はノックをしに車の外へ出るだけだ。

 

「おお、高そうなベンツ! 相当な金持ちがいるんじゃね?」

「うう……風が強い……」

「ごめんください! ごめんください!」

 

 強風に煽られながら、正面玄関にある真鍮製の扉へ縋るように3人は並ぶ。剣持警部がドアノッカーを叩き、大声で訪問を報せた。

 また落雷の音、さっきよりも遠い。身の安全を確認する為、美雪はそっと振り返った。

 建物の曲がり角、斧を手にした人影が見えた

 

「はじめちゃん……。ねえ、はじめちゃ~ん! あれ、あれっ」

「なんだよ、美雪……。何にもねえぞ」

「どうした? 七瀬君っ」

 

 七瀬は背筋が凍り付き、はじめの背中を叩く為に一瞬、顔を逸らす。次に見た瞬間、そこには誰もいない。見間違えのはずはなく、剣持警部の腕へ縋り付いた。

 

本当に誰かいたの!

「しかし、これだけ呼んでも誰も出て来んぞっ」

「返事はないけど、お邪魔しま~す♪

 

 美雪の訴えに耳を貸さず、はじめは勝手に扉を開ける。途端、フッと電灯が消えた。

 

「なんだ……停電。さっきの落雷か?」

「――いつまでも、こんな所にいると『怪人』が出るわよ――」

「美雪? 『怪人』って何の事だよっ」

「あたしじゃないわっ」

 

 剣持警部は玄関以外の窓を見上げ、状況を把握。はじめの問いかけに美雪は怯えつつ、否定した途端に誰も触れていない扉が閉まる。足も踏み入れていないのに3人は雷雨の中、閉め出された状態だ。

 

「なんで閉めるのよ!」

「俺じゃねえ!」

「騒ぐな、騒ぐな。アレ? ドアノブが回らん……」

 

 騒ぎ2人を尻目に剣持警部がドアノブに触れたが、扉は開かない。まるで施錠されたような手応えらしい。さっきは確かに開いたのだ。

 

「あたし、もう車でいい! 怖い、怖い!」

「美雪、落ち着けって……イタタ……」

「大丈夫か、金田一! ごめんください! ケガ人がいるんです! 中へ入れてください!」

 

 美雪は完全にビビり、はじめの腕を掴む。その拍子、彼は腹への痛みに顔を歪める。雨が傷に刺激を与えてしまったのだろう。少し焦り気味に剣持警部は改めて、ドアノッカーを叩いた。

 

 ――キィ

 

 扉が開いたのを見計らったように閃光が空を覆い、中を一瞬だけ照らす。斧を肩へ担ぐ人、美雪は恐怖に震え上がり、悲鳴も死んだ。

 斧の刃に雷が反射し、ゆらっと動く。さっと剣持警部が2人を庇うように立ってくれた。

 

「……剣持さん、何をしているのですか?」

「……ん? その恰好……(いち)君か……?」

「……(いち)君って……あ! もしかして、金田君!?

「なんでお前がここに!?」

 

 相手が剣持警部の名を呼び、ようやく同じ不動高校生徒会執行部と判明。

 黒い学生帽とズボンは他校の生徒と見間違える程、似合う。まるで映画のワンシーンのように白いシャツは雨に濡れ、男子ながらの色気にドキッとした。

 

「金田君っ、どうしました?」

「剣持さんが来ました。明智さんが呼んだのではありませんか?」

「「「明智(さん、警視)」」」

 

 暗闇から聞き慣れたカッコイイ声を聞き、本庁捜査一課の明智 健吾(あけち けんご)警視の存在に男2人は心底、嫌そうな声を出す。美雪は寧ろ、頼れる大人が増えて嬉しかった。

 

 ――この奇妙な遭遇は中学校の同級生(御堂 優歌)との再会に繋がり、楽譜探し騒動へ飛び込む。

 まさか、天才作曲家の遺作が金田(かねだ) (いち)を『地獄の傀儡師』へ導くキッカケになろうとは夢にも思わない。

 




時田家使用人・ユキ「ご閲覧ありがとうございます。村は生き残った者でどうにか、やって行きますよ。お嬢様の分まで……。さて、次回は『悪魔組曲相続事件‐御堂 優歌』。これまた……若葉様に似た芯の強い方でございますね」

小田切 進先生
本名は六星 竜一、無国籍。六星 詩織の息子。母親により復讐の道具・殺人マシーンとして育つ。周囲に溶け込む為にどんくさい男を演じ、PTA会長から「気の弱い」と評価されても不純異性交遊の原因ではないと庇われ、金田一から「冴えない」と言われても「嫌いじゃなかった」と好感を持たれていた。

時田 若葉
六星の復讐計画に薄々気付いており、写真の出処にも気付いていたと思われる。「先生のためなら死んでもかまわないの」の宣言通り、死の間際も抵抗しなかった。

青森県警・俵田 孝太郎
異人館村殺人事件、異人館ホテル殺人事件、人喰い研究所殺人事件、短編にも登場。
登場時は金田一を生意気な高校生と断じていたが、「すげえ奴」と認める。その後、コナンの横溝参吾刑事並みに金田一を信頼する。

警視庁捜査一課・雪峯 美砂刑事、住吉 慎吾刑事
それぞれ午前4時40分の銃声、証言パズル、ゲストキャラ
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