金田少年の生徒会日誌 作:珍明
金田一の視点です
誤字報告により、修正しました。ありがとうございます
久々の不動高校は普段と変わらず、
教職員は馬鹿みたいな量の宿題や課題を山と積み、親しきクラスメイト3人組は屋上で『怪盗紳士』の時事ネタを振る。彼らは欠席中の出来事を何も聞かず、はじめには有難かった。
「金田一君、七瀬さん。ようこそ、ミス研へ」
「はい、よろしくお願いします♪」
(ウソだろ、美雪。アレ、本気だったのか!)
ミステリー研究会・略してミス研の部室へ連行され、ミス研会長の
「演劇部はどうすンだよ。文化部の掛け持ちは原則禁止つったろ。生徒会長?」
「あたしは掛け持ちよ、先生達はOKしてくれたモン。はじめちゃんは……流石に無理だったから、演劇部を退部扱いにしてもらったわ。あっちは昨日、『オペラ座の怪人』の配役も決まったしっ。コンクール前の合宿先を決めないとねっ。どこが良いかなあ……やっぱり、演劇に見合う洋館かな♪」
副会長のブチ切れた笑顔が見え、はじめは眩暈がする。呑気な美雪の行動には時折、ヒヤヒヤさせられる。幼馴染として、彼女を守らねばならない。
「七瀬さんの演劇部で『オペラ座の怪人』を演じるんですか? それでしたら、合宿にピッタリの場所がありますよ」
「白神さん、本当? 是非、教えてください♪」
「……どうも、っつ~か……白神さんは部外者っしょ。なんで校内をウロウロしてんスか?」
「白神さんは正式にミス研の講師なったのよ。何だかんだと郊外活動も多いし、須貝先生がいつも引率してくれるワケじゃないもんっ」
ミステリールポライター・
顧問の歴史担当・
「金田一だって、須貝先生に迷惑かけてんじゃん。今日も授業中に爆睡してたんだろ? 村上がボヤいてたぜっ」
「ウルセェ~岡持、徹夜だったんだよ。こっちはっ」
「構わなくていいぜ、岡持君。金田一君はいつも寝不足だっ」
先月入部した奇特な同級生2年4組・
昨晩、腹の傷が痛み、夜間診療した病院にて女の怖い一面が露わになった事件へ遭遇し、解決時は夜明けを迎えた。眠る間もなく、学校へ登校したのだ。
そこに3年3組・
「白峰君と佐木君は本日、来られませんが会議を始めます。議題はご存知、ミス研存続について! HRでお知らせがあった通り、1学期は24日まで延長されました。これはチャンスですっ」
正確には立て続けの不祥事により、緊急職員会議や保護者説明会が相次ぎ、授業日程が大幅に遅れている事への調整である。例年は7月20日、今年は曜日の関係で19日までの予定だった。
はじめは正直、ゲンナリ。
「現在、課題クリアの見込みはありません。そこでっ、白神さんが良いお話を持って来てくれました」
「岐阜県奥飛騨にある『くちなし村』、先祖代々より続く大地主・巽家先代当主が亡くなりました。その相続人であり、次期当主に指名された巽 征丸氏へ脅迫状が届いたそうです。村に古くから伝わる『生首祭り』が終わるまでにその生首を頂戴する……とねっ」
白神は去年に発行された雑誌のページを開き、『くちなし村の生首祭り』特集を見せられる。首の無い地蔵や古そうな鳥居の写真が掲載しており、不気味。はじめは温泉の部分だけしか、読み耽る。
「今回は『くちなし村』へ行き、次期当主を守り切る。そして、脅迫状の犯人を炙り出す! 分かったわね、真壁君っ」
「やれやれ、また脅迫状絡みの事件か……次の推理小説のネタにでも……」
「分かったわね、真壁君?」
「はい……精一杯、探偵役を務めさせていただきます……」
桜樹先輩にギロリッと睨まれ、真壁先輩はビクンッと震え上がる。彼女がブチ切れ気味なのは無理もない。
生徒会執行部からの存続条件、1学期中に写真部の3年4組・
「すみません、質問良いですか? 『くちなし村』への旅費はどうなりますか? ミス研の部費で賄いきれるとは思えません」
「七瀬さんの言う通り、全員は無理です。行く人を選抜します」
「先ず、私が巽家に招待されています。今年の祭りの取材も含め、助手として桜樹さんを連れて行きます」
美雪の質問に桜樹先輩は恥じる事無く答え、白神のしれっとした提案を聞く。反論はないが、男性陣は嫉妬のあまりに彼を睨んだ。
「伊志田君の旅費は写真部が持ちます。これは津雲先生からの申し出です」
「本当っスか、桜樹先輩! へえ~、津雲先生ってば太っ腹♪ あれ、伊志田先輩って……どの人?」
「写真部の部室にいます。私が去年、撮影した『くちなし村』の写真を皆さんで検証中しているはずです。伊志田君はネガから現像したいと積極的でしたよ」
写真部顧問の化学担当・
岡持はキョロキョロと部室を見渡し、面識のない伊志田先輩を探す。白神も講師とは言え、協力し過ぎに感じた。
「ぐっ……なんでアイツ、僕よりもやる気なんだよ。って言うか、ここやれや~」
「見解の違いだって、すぐ言い合いになるでしょう……。ああ、真壁君と佐木君の2人は決定です。まだ心許無いから、後1人は来て欲しいわ」
「「「金田一君っ」」」
「「!?」」
ブツブツと真壁先輩が呟けば、桜樹先輩はため息をつく。そうして、皆へ参加を促した瞬間に鈴森、岡持、鷹島先輩が何の示し合わせもなく、はじめを名指し。美雪と思わず、顔を見合わせた。
「さっすがに……岐阜は遠いわ~」
「ウチ、店あるから……泊まりはちょっと……」
「知らない人の家とか、嫌」
「七瀬さん……来る?」
「行きます、行きます! ちょうど良いわ、はじめちゃん。ミス研入部の初仕事よ!」
「ミス研は探偵業じゃねえっての!」
各々の言い訳をされ、桜樹先輩も困惑。こちらもやる気満々の美雪に肩を叩かれ、はじめは呆れた。
けれども、桜樹先輩に免じて断らない。ミス研の存続ばかり考えている様に見られがちだが、これから向かう『くちなし村』で後輩を死なせぬ。
その必死さを知っているからだ。
「しかし、桜樹君。なんで、わざわざ岐阜にしたんだい? 近場なら、小笠原の怪現象があるだろうにっ」
「小笠原って、小笠原諸島? ……まさか、あの曰く付きの客船に何かあったんですか!?」
「流石、鈴森さん。その船です。先日、船の状態を調べに行ったところ、現地の方から興味深いお話を伺いました。真夜中に船が港内を漂っていたそうです。まるで誰かが操縦しているみたいにっ。以前から、噂だけはありましたが……今回はキチンと目撃者もいるんですよ」
真壁先輩が疑問すれば、鈴森の唐突なハイテンション振りにビックリ。どうやら、幽霊客船とやらは知る人ぞ知るミステリーらしい。
白神の言い方にも信憑性がありそうだ。
「それこそ、佐木が喜びそうな話だろ。アイツ、なんで居ねえの?」
「……少し、用事が出来たの。……そうね、金田一君も行ってあげてっ。音楽室だと思うわ」
「あ、ちょっと! はじめちゃんっ」
哀愁漂う桜樹先輩に教えられ、はじめは細かい打ち合わせからトンズラっ。美雪の制止は無視した。
無論、ミス研1年1組・
「あれぇ、金田一。まだ居たか……もしかして、宿題やってたとか? 昨日の今日じゃあ、終わらないだろ。俺で良ければ、手伝うぜっ」
「マジかよ、千家! 代わりにやってくれるだなんてなあ♪」
「そこまで言ってないっ。……休んでたのって、小田切先生関係だろ? 何も聞かねえけど……お疲れさんっ」
「……よせやい、湿っぽくなっちまうだろ」
帰路に就こうと下駄箱へ向かえば、2年5組・
本当は宿題など放置する気満々だったが、千家の手前やらざるを得ない。仕方なく、30分程は図書室で励む。彼と一緒に出来上がった分を職員室へ提出しに行けば、ノモッツァンにビックリ仰天された。
「金田一……聖正病院って、知ってるか?」
「うん? 真壁……先輩達が入院中に事件が起こった病院だろ。それが……どうした?」
「……いや、やっぱいい。金田一の組、学園祭に何するか決めた?」
「まだっ、来週に決めるってよ。葉平がメチャクチャ乗り気でさ~お化け屋敷になりそう。千家のトコは?」
話を振っておきながら、千家は無理やり中断させる。少し聞きたかっただけの雰囲気は深刻に感じず、はじめも学園祭の話へ乗った。同じ組にいる怖い物好きな
「こっちは犬とのふれ合い広場を企画中だっ。他からもアイディアはあるけど、絶対に通そうと思ってる」
「……犬? へえ……面白そうじゃん」
「だろ? 俺も自信あるんだっ。……ん? あそこにいるのは……ミス研の佐木って奴か?」
「げっ、よりによって俺の自転車の近く……?」
ニッコニコの千家が指差した駐輪場、妙な事態に首を傾げる。はじめは目を凝らし、撮影に熱心な佐木を警戒して近寄った。
「……(白目)」
「ほら、
「僕、忙しいんでっ」
「「!」」
生徒会執行部の2年D組・
状況が全く見えないが、厄介事を察知。
「金田一先輩、そちらは千家先輩ですね。丁度、良かった。海峰君に手を貸してくださいっ。見ての通り、
「「「お前がやれよっ」」」
佐木は物凄く自然に己の先輩方を扱き使おうとし、ツッコミを受ける。ミス研に顔を出さないと思いきや、
「何があったんだよ……コレッ」
「転校しちまった和泉先輩っスよ。生徒会メンバーに挨拶もなくて、
「もう歩けもしないんですけどねえ。
「あ~昨日、和泉……言ってたなあ」
心配した千家が問えば、海峰は涙ながらに語る。鬱陶しい佐木も一応、
途端、
「……はじめちゃん。和泉さん、何を言っていましたか?」
「か、
「顔だけ、こっち向けてる。怖……」
「そっか、金田一先輩は和泉先輩と同じ組でしたね。体育祭で知りましたけど……え?
「佐木、ちょっと黙ってよっか? しょうがねえなぁ……っ」
和泉との会話を言い触らす気はない。
お互いの愛車を押しながら、取り敢えずは最寄りのファミレスを目指す。
「七瀬さんも……はじめちゃんから聞いて、知ったと言っていましたね。和泉さんと仲良かったのですか? さようならを言う程にっ」
「……転校するって言われただけ。挨拶じゃねえよっ。まともに口を利いたと言や……卒業式のリハーサルだな。前日に生徒会だけでやったろ? あん時くらいだぜ。教室にいる時より、ずっと喋ってんだもんなあ。生徒会は楽しくやってたんじゃねえかな♪」
(……朴念仁っ)
「……?
和泉とのやり取りを聞かれ、はじめは今では懐かしい3月まで記憶を遡る。
「……教室にいる和泉さんは知りません……でも、相手がはじめちゃんだからこそ、転校を教えてくれたのではないでしょうか……。貴方と話すと気が楽になると言いますか……悩みを打ち明けやすいのです。……いっその事! 悩み相談事務所でも始めれば、良いのではありませんかっ」
「生徒会の仲間がいなくなったくらいで、……何を怒ってるんだ? お前……もしかして、和泉が好きだったのか? それで、最後に話をした俺に嫉妬か?」
眉間にシワを寄せ、
「好きだったのですか? 自分……和泉さんが……」
「そこ? え、本当に分かんねえの? 今のお前……紅さんに妬いてた時と同じだぜ……っと。すいやせんっ、前を見てなかった……!?」
「ウフフフ、良いのよ。金田一君っ」
神奈川県警の
「茅さん、久し振りっ。去年の夏以来っスね。……その箱も相変わらず……」
「覚えててくれて、嬉しいわ。お久しぶり……元気してた? この子もアナタと会えて、喜んでるみたい」
「……はじめちゃんの元カノですか? 学生には見えませんし、社会人の方と不純異性交遊は感心しませんねっ」
箱を愛おしげに撫でながら、茅警部は微笑む。去年の夏休み、はじめ達が参加した秘報島「お宝探しツアー」でも持ち込んでいた箱。当時の彼女は潜入捜査中であり、箱へ銃を忍ばせていた。今はナニが入っているか、知らない。
気にすべきは
「ちげ~よ、この人は神奈川県警の刑事さん! 去年の夏休みに知り合ったんだよ! コイツは同じ学校……制服、見りゃあ……分かるか、
「……神奈川っ」
「もしかして、
はじめがお互いを紹介した途端、
あまりにも早業、はじめは気付くのが遅れる。急いで手を伸ばし、バイクの後部を掴むのが精一杯だ。
「
「
指摘通り、はじめは知っていた。
金田母子は横浜で中学校時代を過ごし、去年の2月に母親が失踪した事。事件性もない為、道警の
だから、茅警部の登場に何かしらの期待がある。それを伝えたつもりだが、ヘルメットから覗く
「……明智警視から連絡を頂いたの。私の権限で出来る限りの事をするわ。
「お断りしますっ」
「
茅警部にも取り付く島もなく、
エンジン音に気付き、はじめは手を離して良かった。
はじめは取り敢えず、茅警部とファミレスへ入る。本庁捜査一課のエリートたる
「俺、
「……そう、その銭形警部補……先月、神奈川警察署を訪ねていたみたいなの。アナタ、私を紹介してなかったでしょう? だから、他の人が追い返しちゃったのよね。あっ、責めてるんじゃないわ。こればっかりは……規律の問題もあるの。コーヒー頼む?」
本庁捜査一課の持つ権力は地方警察にも影響があり、効果覿面。はじめもつい先日、青森県警相手に利用させてもらった身。だから、一介の警部補では正式な捜査協力の段階を踏まなければ、他県警は動かない。銭形警部補の憤りを今、感じ取った。
「明智さんからの連絡って、いつですか?」
「昨日よ。剣持警部から紹介されたと聞いたわ。アナタが悲報島の事件を解決した時、身元引受人で来てくれたじゃない? 覚えててくれたみたい」
「茅さん、美人っスもんね。……でも、
「書類は簡潔にしか書かないし、この子も納得出来ないわ。担当した警官には勿論、話を聞くつもりよ」
昨日、
明智警視と会っていた可能性が高いが、母親の失踪とは別件な気がする。唐突の悪寒に震えた。
「
「……はい」
金田家の縁者を巻き込んだ北海道2つの事件。
老夫婦ははじめへ感謝してくれたが、
不意に腹の傷が痛み、配膳されたコーヒーにミルクと砂糖を入れて飲む。苦味から、はじめは横浜に他の心当たりがあったと思い返した。
「俺の知り合いに結城 英作って開業医がいます。名刺もらってるんで、頼ってみてください」
「開業医……!? それは助かるわ。身元不明の患者とか……情報を得られるかもっ」
「銭形さんにも……連絡するんスよね?」
「……ええ、勿論よ。色々と確認したいし……あら、……この子。あの救急車が気になるの?」
茅警部の安心する答えを聞いた瞬間、微かなサイレンが聞こえる。赤いランプを点灯させ、救急車が道路を通り過ぎる。はじめは何気なく、視界に入れた。
ゾワッと背筋に悪寒が走る。
(なんだ……この嫌な感じ……)
だから、見送った。見えなくなるまで見送った。
去り行く救急車に硫酸を被った不動高校の女子生徒がおり、聖正病院へ搬送中。そんな事実を今日のはじめは知りようがなかった。
――さながら開幕ベルのようなサイレン、はじめを『オペラ座館』で繰り広げられる3つの惨劇へ誘っていた。
佐伯「佐伯……航一郎です。え~なんで俺が次回予告? 刑事の女が予告やりゃいいじゃん。……もう~っ。さて、次回は『秘宝島殺人事件の刑事‐銭形 ケンタロウ』!! 銭形? 誰だ……お前?」
神奈川県警の茅 杏子警部
箱を持つ妖艶な美女、短編にも登場。箱の中身は誰も知らない
ミステリールポライター・白神 海人
オペラ座館殺人第三の殺人事件、ゲストキャラ。作中にてミス研の講師
2年4組・鈴森 笑美
氷点下15度の殺意、ゲストキャラ。作中にてスキー部と掛け持ち中
ミス研会長の桜樹 るい子
学園七不思議殺人事件、ゲストキャラ
岡持 武則
瞬間消失の謎、ゲストキャラ。実家が弁当屋
真壁 誠、鷹島 友代
学園七不思議殺人事件より登場、準レギュラー
2年5組・千家 貴司
首吊り殺人学園事件より登場の準レギュラーだった
伊志田 純
不動高校学園祭殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、ミス研に協力中
顧問の歴史担当・須貝先生
天草財宝伝説殺人事件、モブキャラ。作中にてミス研、顧問