金田少年の生徒会日誌 作:珍明
剣持が先日、妻への想いを語っておきながら、初恋の女性の元へ駆けつける(心の浮気?)な構図になってしまいましたが、まあ、いっか
オリ主不在回、佐木竜太の視点です
誤字報告により、修正しました。ありがとうございます
全て愛用するビデオで撮影した映像が解決へ導き、最早この身は探偵役の助手と言っても過言ではない。寧ろ、そうだと自負している。
「『くちなし村』行きのバスは1日1回の夕方!? レンタカーを借りなかったら、ずっと待ち惚けかよ。白神さんと刑事さんに感謝だね。本当っ」
「オッサンも別口で招待されてるなんて、偶然にしちゃあ……出来過ぎだけどな」
「偶然じゃねんだろ」
ミス研3年生・
「それでっ、現段階での2人の見解は?」
「「奥さんの自作自演、またを狂言」」
紫乃から手紙を見ながら、ミス研会長・
「まんま、的場ン時と同じだろ。奥さんには自分の子が当主になると困る理由がある。誰にも言えない秘密って奴さ。なあ、伊志田君」
「全くだっ、真壁クンよぉ。容疑者から外れる為に刑事まで味方に付けるところがマジ、計画的っ」
「……仮にそうだとして、白神さんまで呼ぶのはリスクが高すぎるぜ」
「金田一君、私は冬木さんから相談を受けました。巽家の主治医をされている方です。もしかしたら、お互いに助っ人を呼んだ事実を知らないのかもしれませんね」
ミス研の講師・
「ふわ……よく寝た……。お前ら、ちゃんと朝飯食ったな? んじゃ、行くぞ。早く行かんと『くちなし村』から来るバスに当たっちまう」
大欠伸し、剣持警部は出発を宣言。全員、急いで乗り込む。運転は白神だ。
「……では、剣持警部の為にお浚いします。巽 紫乃の連れ子である征丸が後継者。脅迫状は『生首祭り』が終わりに彼の命を奪う内容です。剣持警部が受け取ったお手紙にはその辺りの事情は書かれていなかったと思います」
「何!? じゃあ、征丸君が狙わとるんか!? なんてこった……そりゃあ、紫乃さんも東京にいる俺を頼るはずだっ。田舎警察なんざあ、地主の権力に弱い弱いっ」
「……そう言うの、口に出して良いんですか? 剣持警部」
桜樹先輩がメモ帳を読み上げ、剣持警部は今更に憤慨。地元警察への罵倒は問題な気がするが、面白い為に竜太は良しとした。
「悪いが、刑事サン。今回は僕と真壁に任してもらいますっ。こっちも……背負ってるモンがありますんでね。でも、荒事は頼みますっ」
「……よく分からんが、お前らが桜樹君に代わって推理すると言うワケだな。金田一も手伝うんだろ?」
「あくまで手伝いだっ。もしも、俺と桜樹先輩が先に解いちまったら、この2人を真相に誘導しなきゃいけねえんだよ。ほんっとメンドクセ~」
「金田一君? 警部さんとの内緒話なら、小声でしたまえよ!」
真剣な態度の伊志田先輩に請われ、剣持警部は鷹揚に頷いてくれる。金田一先輩はわざとらしくダラけ、天井を仰ぐ。真壁先輩は聞きたくないらしく、唇を尖らせた。
現役刑事と3人の高校生を映しながら、ずっと沈黙中の2年生・
「七瀬先輩、本当に来て良かったんですか?」
「……!? 大丈夫よ、佐木君。はじめちゃんにはあたしが一緒にいないとっ。それに……心配しているのは伊志田先輩も同じよ……」
七瀬先輩とヒソヒソ話しながら、伊志田先輩を一瞥。彼は不敵な笑みを浮かべても、真剣な眼差しで手紙や写真を見比べ、白神へ質問を繰り返した。
竜太が伊志田先輩の存在を知った時、評判はすこぶる悪く、周囲にメチャクチャ嫌われていた。今も人を見下す性格は変わらないが、どことなく思いやりを感じる。少なくとも、この件には本気で取り組んでいるのだ。
それらを七瀬先輩は理解し、金田一先輩同様に見守ろうとしている。ならば、竜太も伊志田先輩の活躍を見届けよう。
「佐木君、僕もいるからね?」
「? 知ってますよ?」
何故だろうか、真壁先輩に存在をアピールされた。
時折、運転を交代しつつ。【くちなし村】と表記されたバス停を発見、バスの発進も見届ける。そこに1人だけ眼鏡を掛けた男性が立っていた。
「白神さん、お待ちしておりました。こちらが助っ人の皆様ですね。初めまして、冬木です。巽家の主治医をしています」
『くちなし村』唯一の医者・
「実は私、東京で刑事をやっております。紫乃さんとは古くからの友人で、脅迫状の件を相談されました……」
「!? そうですか……それは心強い。奥様には白神さんをお招きした理由は去年と同様に祭りの取材と言っておりますので……。あっ、お早うございます。今日の客人をお連れしました」
巽家の大地主に相応しい古く畏まった屋敷の門にて、冬木医師は使用人へ声を掛ける。案内された玄関先も武家屋敷のいかめしさが漂い、いつ『首狩り武者』が現れてもおかしくない雰囲気だ。
「白神様、ようこそ……剣持さん!? どうして……日暮れだとばかり……」
「紫乃さん、突然にすみません。予定より早く来られましてな」
「……?」
噂の紫乃は上品な着物を着込み、挨拶に出向く。しかし、剣持警部を見た途端にギョッとする。予定の訪問に驚いたにしては大袈裟だ。
仏壇と遺影が置かれた居間へ通され、冬木医師は本当の目的を語って聞かせる。紫乃は完全に青褪めていた。
((黒だな、これ……))
真壁先輩と伊志田先輩の心の声が聞こえ、脅迫状の主はほぼ確定。問題は動機、事の発端だろう。早く征丸達と話したい気持ちになり、竜太は自身を諫めた。
「征丸君はどちらに?」
「学校です……今日は土曜日ですから、お昼頃に帰って来ます」
「他のお子さん達もですか?」
剣持警部のナイスな質問に紫乃は笑顔だが、嘘臭い。真壁先輩の問いにも頷いて見せるだけだ。
「私は回診がありますので、出ます。夕方にはまた寄らせて頂きます」
「はい、冬木さん。色々と有難うございます」
冬木医師が去り、皆も頭を下げた。
「それじゃあ、詳しく聞かせて下さい。私も脅迫状の内容は白神さんから聞いた限りなのでっ」
「はい……こちらです」
剣持警部に催促され、ようやく落ち着いた紫乃は封筒を差し出す。実物を見て思うのは『首狩り武者』は達筆、その一言に尽きる。彼女が書いてもおかしくない。
「『首狩り武者』って言うからには戦国時代の落ち武者の末裔みたいなモンですかね?」
「……それは村に古くから伝わる悪霊です」
真壁先輩が何気なく訊ね、紫乃はよくある落ち武者伝説を語った。
戦国時代の終わり頃、家来が武将・
『生首祭り』は『首狩り武者』の祟りを忘れさせない為、今も続いている。そして、巽家は裏切った家来の末裔。万一、呪いが蔓延した場合の矛先だ。
(もう……この人が的場にしか見えない)
「柊……ね」
「成程、紫乃さんが恐れている理由はよく分かりました。では、その名を使う人物に心当たりは?」
真壁先輩は項垂れ、伊志田先輩が意味深に呟く。剣持警部が更に問いかけた瞬間、使用人が竜太達の部屋の準備が整ったと伝えに来た。
「皆様、お疲れでしょう。昼食の用意が整うまでお休みください」
微笑んだ紫乃はそう締めくくり、話は区切られた。
客間は8畳が2部屋並び、襖で区切れる。男性陣6人はミッチミチだが、仕方ない。
「野郎と同じ部屋だなんて、ゴメンだぜ」
「ガタガタ言うな、紫乃さんの客とは言え……俺達は余所者だ。警戒するに越した事は無いっ。お前達は前例があるんだぞ。トイレだろうと1人になるな!」
((……せめて、剣持警部に着いて来てもらおう))
愚痴った金田一先輩は以前、犯人の罠にかかって単独行動。底なし沼へ落とされ、殺されかけた。そして、先輩方2人も犯人に襲われ、病院送りにされた。3人とも苦い思い出らしく、渋々と承諾した。
襖がスパーンッと開く。流石、桜樹先輩は休んでなどいない。
「さあ、纏めましょうっ。2人の見解は如何に!」
「……剣持警部、怒らないでください。犯人は後妻さん、動機はそうだな……息子の相続に反対する先妻の子達を始末する。そんなところさっ」
「……俺も同意見。ただ……事件に関係あるか分かんねえけど、医者の冬木も怪しい。裏切られた武将って柊だろ。文字を崩せば、冬木になるじゃん。末裔なんだろうぜ、きっと。先祖の名を勝手に使われて、脅迫状通りに誰かが死んだら、疑われちまうからよ。俺達に協力的な態度にも頷けるぜ」
「お前ら、紫乃さんをそんな風に……もがっ」
桜樹先輩に詰め寄られ、真壁先輩と伊志田先輩は現段階の推測を述べる。得心の行く推理に案の定、剣持警部は憤怒の形相で暴れ出す。どうにか、金田一先輩が抑え込んだ。
「皆の意見は?」
「補足すれば、『首狩り武者』に関してです。去年も奥様に取材したところ……村の掟で余所者には話せないと断られました」
「あたしは特に……紫乃さんは剣持警部を見て驚いたのも、気を許せる人と会えて……怖さを実感したんだと思ったわ」
「良いぞ、七瀬君。流石、乙女心が分かるっ」
「オッサン! 佐木もなんか、言えよっ」
「……そうですね。……それらの先入観を抜きにしても、なんでさっさと言わないんだろうと思いました。脅迫状は他の子達の誰かの差し金だって、紫乃さんもですが……冬木先生もです。勿体付ける意味なんて、無いじゃないですかっ」
桜樹先輩に発言を促され、白神は講師らしく補足。七瀬先輩が素直な感想を述べれば、剣持警部は感激する。また金田一先輩が抑え、竜太は紫乃と冬木医師に感じた違和感を告げた。
「紫乃さんは心の優しい人だっ。亡くなった夫の子がやりましたなんて、言えるワケないだろっ」
「オッサン、佐木の言う通りにその辺の先入観を無しにして言うなら……犯人は手強いぜ。脅迫状なんざぁ送れば、警察でも何でも巽家は絶対に対抗手段を取るはずだ。それを見越して、尚且つ、自分が犯人と疑われない策も練っているのさ」
剣持警部が紫乃を庇えば、金田一先輩は意外と容赦なく警告。しかも、2重の意味だ。
――紫乃への先入観を捨てろ。
それは脅迫状絡みの事件を乗り越えたからこそ、言えたのだろう。竜太は知らなかったが、四ノ倉学園殺人事件と類似した経緯から、金田一先輩は紫乃を疑う要素があった。
「金田一、本当は犯人がわかっとるんじゃないだろうな?」
「何も起きてない状況で、犯人捜しもクソもあるかよ~」
「はじめちゃん、何も起こさせないっ。あたし達の目的のひとつでしょっ」
剣持警部が厳しく追及すれば、金田一先輩は途端に腑抜け顔。七瀬先輩は呆れたが、竜太は彼の態度の変化が面白かった。
「……だったら、屋敷内を調べておくか。時代劇みたいにカラクリが……ほわ!?」
「ん~」
真壁先輩も金田一先輩に呆れつつ、警告には触発される。障子を開けた傍にまさかの次男・隼人が蹲っており、彼もビックリ仰天だ。
「隼人君、お久しぶりです。今日は友人達をお連れしました」
「ん~」
白神が丁寧に挨拶しても、隼人は返事をしない。手元のビー玉をいくつも転がし、ブツけて遊ぶのみ。パチパチ、チ~ン。チ~ンチ~ンチ~ン。チ~ンチ~ン、パチ、チ~ン、パチ。
「私も嬉しいですよ」
「ん~」
((((((何が?))))))
(なんか、挨拶しているみたいだ)
皆が反応に困ろうとも、2人はフフフッと微笑み合う。ビー玉がブツかり、音を奏でる。チ~ン、パチ、パチ、チ~ン。
隼人は満足したのか、のそのそといなくなる。竜太は無口な父親を持つ身、彼が白神を歓迎していると分かった。
「隼人君は幼い頃に大病を患い、ビー玉で遊ぶようになりました」
「ふう~ん、成程っ」
(((何が?)))
白神の言い回しを聞き、桜樹先輩は納得した。
解散後、竜太は真壁先輩に付き添い、剣持警部と一緒に屋敷内を探索。表向きは余所者が入ってはならない場所を確認したいと言えば、使用人・冬木 ウメは快く案内してくれる。聞けば、冬木医師の母親だそうだ。
人の死角を突いたモノ、『合わせ鏡の間』を隠し切ったどんでん返し、実に興味深い。事件捜査抜きで竜太の胸が弾んだ。
「他に気を付ける事はありますか?」
「大広間の猟銃です。3年前に泥棒が入り、銃を盗もうとなさった。同じ事が起こらんとも限らんので……銃口に鉛を詰めております」
((ひぃえ~、殺意込めすぎだろ))
死の制裁に高校生2人は恐怖。ウメから実際に猟銃を見せてもらい、剣持警部は平然と銃口を覗き込む。確かに鉛があった。
さて待ちに待った高校生達の帰宅。大広間に昼食を用意された席で対面した。
「なんだアンタら、人の家でっ」
「お兄様、白神様よ。去年もいらした……お久しぶりです」
「龍之介君、もえぎさん、そして、征丸君、ご無沙汰しています。先程も隼人君がご挨拶に来て下さいましたよ。今日は東京の友人も連れて来ました」
挨拶もされずに龍之介から睨まれ、もえぎが諫める。白神は慣れたように挨拶し、各々で自己紹介した。
「キミが征丸君かあ、大きくなったな。覚えてないだろうが、キミのお母さんの友人の剣持だっ」
「母の? 遠いところからお越し下さり、ありがとうございますっ」
剣持警部は親戚のオッサンが如く、征丸に馴れ馴れしい。彼にとっては見知らぬ大人だが、紫乃の友人と聞いて礼儀正しく挨拶した。
伊志田先輩の探るような目付きを竜二は見逃さなかった。
田舎ならではの和食。
隼人はおらず、白神もいない。大人数での食事故、2人は別室で食事するそうだ。
高級料亭へ来た気分で昼食を味わう中、誰もが無言。時折、床の間の掛け軸、件の猟銃を何気なく見回した。
「もえぎちゃんはご両親によく似ていますね。目元はお母様似、髪質はお父様とお見受けします」
「! そう言われたのは初めてですわ。父は若い頃、兄の隼人と同じ髪質だったんですよ。私の髪は祖父母に近いです。目元は確かに……母に似ています」
((うお~い、前妻の話題を振んなあ~!! 気まずいだろうが!!))
伊志田先輩はニッコリと微笑み、もえぎへ語り掛ける。彼女は己の髪を指摘され、淡々と事実だけを返す。金田一先輩と真壁先輩はビックリ仰天で味噌汁を吐かぬ様に堪えた。
「紫乃さんの息子さんもお母様によく似ていますね」
「ええ……征丸は私に似ていると思いますわっ」
笑みを絶やさず、伊志田先輩は紫乃にも声を掛ける。躊躇いながらも、彼女は確かにそう答えた。
真壁先輩と金田一先輩の視線が絡み、彼らが確信を得た瞬間を目撃した。
微妙にピリピリした昼食後、先輩2人は客間に籠る。写真や手紙、脅迫状、竜太が撮影したビデオもだ。
「何か、分かったのかしら? もしもそうなら、早期事件解決ね。はじめちゃん!」
「おいおい、美雪。真相が分かっても、それで終わりじゃないだろ」
「ん? 金田一、どういう意味だっ」
残った面子は縁側に座り、家の者が来ないか周囲を見渡す。七瀬先輩が期待すれば、金田一先輩はため息だ。剣持警部には疑問だが、竜太と桜樹先輩はすぐに理解した。
「根本的な解決になりません。私達は脅迫状の犯人を炙り出しますが、同時に征丸君も守り切らなければ……解決と言えません。仮に剣持警部が犯人を説得出来ても、それは今だけです。私達が去った後にいずれ……別の形で事を起こすでしょう」
「……そうか、根本的な解決か……」
桜樹先輩の理に適った説明を聞き、剣持警部は深く考え込む。犯行を未然に防いでも、終わりではない。動機を知り、計画もさせない。これこそが今回の解決だろう。
再び、襖がスパーンッと開く。
「「集まってくれ、結論が出たっ」」
赤沼「ここでは赤沼と名乗ろうか。夕方のバスに剣持とか言う刑事が乗るはずなんだが……来ないな。どうすんだ、コレ。さて、次回は『飛騨からくり屋敷のどんでん返し‐桐山』!! 帰ったら、全部……終わっとった」
冬木 ウメ
倫太郎の母親。容疑者リストに出されたコマで「ワシの出番がない」の台詞が書かれ、読者の笑いを取った。