金田少年の生徒会日誌 作:珍明
半分だけ関わりますので【】は付けていません
誤字報告により、修正しました。ありがとうございます
生徒会執行部は生徒会長がいてこそ、成り立つ。
「遠野先輩、2年1組の貴船 葉平は今学期を以て転校します。終業式には参加されるそうです♪」
「遠野先輩、夏休み期間中の体育館利用者リストっス」
「遠野先輩、各部活の予算表を修正しました」
「うん、ありがとうっ」
生徒会長の席に腰かけ、
「2学期の行事予定を確認します。9月の学園祭は11月に変更、2年生の修学旅行は例年通り12月、10月予定の生徒会選挙も同じ変更なし。新年度生徒会長及び、副会長に立候補したい人は執行部顧問までご相談くださいっ」
遠野先輩より2学期のお報せを以て、本日の業務終了。各自、手早く戸締り開始。
「11月だと中学校の文化祭と日程、被りません? 下手したら、小学校も学校行事やってまっせ」
「……そうなのですか? 外部からの来客は減るかもしれませんね……。先生、地域の行事と摺り合わせは……もういませんよっ」
海峰と雑談していれば、執行部顧問はさっさと退室。いつもながら、戸締りを押し付けられた。
「そう言えば、先輩方の催しは何スか? ウチは無難にタコ焼きの屋台っス」
「自分の組はマジシャンによるマジックショーです」
「僕の組は景品釣りって言ってね、ビニールプールに景品をばら撒いて、釣り竿で釣ってもらうんだ」
各々が出し物を教え合い、クスクスと笑い合う。
「良いなあ、楽しそう。あたしんトコは部活動の出し物に専念するからって、組の分は無しになっちゃった」
残念がる朝木の言葉で去年、
「……あの遠野先輩、来週の土曜日にクラシックコンサートがあるんです。一緒にどうですか?」
「先約があるんだ……ゴメンね、朝木さんっ」
「七瀬先輩と行けばいいんじゃないスか? 朝木先輩、仲良しっショ」
(来週のクラシック……、はて? 紅さんのソロコンサートもあるし……そういう時期かな?)
照れ顔の朝木が勇気を振り絞り、遠野先輩へお誘い。見事に撃沈した彼女の気持ちを知り、海峰は慰めた。
「ダメダメ、美雪は上海に行っちゃうの。ペンフレンドに会うんだってっ」
「七瀬君、海外にまでお友達がいるんだ。今日は青森へ行くって言ってたし、案外……困っている友達を助けにでも行ったのかな?」
(七瀬さん……昨日、な~んも言ってねがった……)
「金田先輩、難しい顔してねえで演劇部に行きやしょうよ。俺も緒方先生に呼ばれてるんでっ」
へこたれない朝木はケタケタッと笑う。
来週は夏休み中だが、
陽気な海峰に腕を引かれ、演劇部へ急いだ。
「私の名はエリックっ。クリスティーン……どうか、最後にエリックと呼んで……」
部室では役者陣による台本の台詞合わせ中、左顔面を包帯で覆う
顧問の
その傍らに部外者の
――桐生 春美はいないのにっ
昨日、家を訪ねたが、ご家族から会いたくないと門前払いされた。
「金田君、海峰君。これで揃ったわね」
「……緒方先生、七瀬 美雪さんは?」
「月島さん、おはようございます。外出許可が下りたのですね」
「おはよう、金田君。うん、思ったより時間かかちゃったっ」
緒方先生は夏岡の困惑に答えず、
「コンクールまで2週間を切ったわ。この劇で重要な怪人の伴奏シーン、海峰君が引き受けてくれました。月島さんもピアノには触れてもらうわ。その指導として、夏岡さんにご協力頂けます」
「よろしくっス(うおお!! 夏岡 猛彦と同じ空間にいられる神展開!!)」
「……改めて、夏岡です。僕も指揮者を職とした身、高校生相手でも遠慮しませんのでっ」
「「「宜しくお願い致します」」」
緒方先生の説明を聞き、
「早速ですが、演劇の素人ながら……ひとつ。最後の『悪魔組曲』第三楽章、クリスティーンが弾くっ。と言うのは……いかがでしょうか? 金田君の伴奏が無くなるのは惜しいですし、倒れた怪人を悼む……そんな展開に出来れば……違和感はないかとっ」
「……今から、変更ですか? ……怪人が倒れる尺だけ、どこか削らないと……」
「連弾にしてはどうでしょう? クリスティーンは怪人の想いに答えなかった意思表示になる……?」
夏岡が意見し、月島先生と緒方先生は台本と睨めっこ。
「連弾を! お願いしますっ。夏岡さんの言う通り、金田君の伴奏を入れたいです。エリックが弾いている途中から、クリスティーンと連弾して……エリックは去る。クリスティーンの伴奏をラウルが傍で……そんな最後にしたいです」
(俺の動きも変わる!)
「自分、問題ありません」
必死に訴える月島へ、ラウル役・
月島先生による台本の修正、神矢と音響係はそれぞれの効果を見直す。
こんな時、七瀬がいないのは実に痛い。警視庁捜査一課の方々へ協力を要請し、青森での宿泊先を調べ上げたい。権力乱用など、自分が許せぬ。必死に怒りを堪えた。
「冬子との台詞合わせだが、相手シーンのある役は病室で練習に来て欲しいっ」
「……はい、分かりましたっ」
月島先生の申し出、絡みの多いクリスティーン役へ病院通いを頼んでいる。パッと脳内に浮かんだ過密スケジュールは頭を悩ませた。
放課後になり、下駄箱。
これからの勤務を考えれば、心労で気が重い。コンクールが終わるまで、バイトを休もうと決めた。
「金田先輩、今日から『エヴァ』の劇場版公開っスけど……。いつ、行けそうですか?」
「……そうでした……。すぐにでも行きたいです……! 月曜日の祝日に行きましょう。店も休みですしっ」
「了解です。竜二にも伝えますっ」
「「!?」」
絶対に行く。瞬時に空き時間を閃き、脳細胞は心地良く活性化。
「佐木君、七瀬さんが青森へ行った話をご存知ですか?」
「はい、
「……張り込み? それ、ストーカーじゃねえの? どんな弟だよ」
ドッペルゲンガーさながら、よく似た兄弟である。
「では……
「いいえっ。相手の方、ビデオとか記録が残るのを嫌がるそうでっ。こっそりとつけたら、
「……ふ~ん、ミス研の桜樹先輩とやらが好きそうな案件っスね」
人間キャンプファイヤーを目撃した直後だが、
「その桜樹先輩は鷹島先輩とこれから、お出掛けです。ルポライターの仕事をお手伝いされると……そう言えば、夏の合同合宿……お2人はどうします? 僕、行けないんですよ。その時期、父の仕事を手伝ったりするんで……甲子園とか」
「俺も行けねんだわ。ちょうど……囲碁部の大会あってよ。小角先輩にちょ~っと抜けたいなんて、言えねえっスわ(涙)。金田先輩は行くんスよね? 土産話、楽しみにしてマスッ」
(……全員のスケジュールには合わせられんし、ゴメン。……あれ? 剣持警部は昨日……)
後輩2人へ申し訳ない気持ちになりつつ、昨日を振り返った。
ファミレスは即座に本題へ入り、他の話をする暇もなく現地解散したはず。それ以前に依頼されたなら、また脅迫状類の事件かもしれない。続け様に巻き込まれ、名探偵の孫を心底、憐れんだ。
寧ろ、
七瀬の行先など気に掛け、竜太へ訊ねた自分自身を不思議に思う。
「クラスメイトの奴ら、沖縄石垣島リゾートホテルに行くとか言ってやしたよ」
「良いですね、沖縄……(シンジとアスカが行き損ねた……)」
「金田先輩、近場の小笠原諸島船旅に興味は?」
海峰が憎々しげに告げ、
『大草原の小さな家』の夜ピークは繁盛、相席も致し方なし。
気の良いお客様方は見知らぬ者通しでも、和気藹々とお喋り。賑わいの中、
「アナタも宇治木さんのお知り合いでっ」
「影島と言います。私達、彼のススメで来たんです。……もしかして、冬部さんですか?」
「はいっ、冬部です。影島……ああ、あの件ではお世話になりました。こんな形ですが、ご協力感謝します」
(宇治木さん、折り入ってお願いがどうとか……言ってたっけ……。何だったんだ?)
聞く前に逃げ出した為、何も知らない。先週の見舞いでも、
「キミ、大丈夫かい? 何か心配事? 悩みなら、聞いてあげられるよ」
「! ――ご親切にありがとうございます。ただの考え事です。お客様が次も来てくれるか、どうかを――」
ミートスパゲティを運んだ客・髪を一纏めにした中年男性がじっと覗き込み、気遣う。彼は以前の来店でも心配してくれた。近くで見れば、母・にいみと写っていた男性・
写真の男が20年越しにこの場に現れ、食事する。そう錯覚する程だ。
だが、今は勤務中。私情は捨てよう。
「バイトさん、どうしたんです?」
「……知り合いに似ていると思っただけですよ」
お手伝い中の竜太へ耳打ちし、
「聞こえたんだが……私が知り合いに似てるって? 光栄だな。相手の名前を聞いてもいいかい?」
「――ヤダッ、私ったら♪ でも……折角なんで、教えちゃうっ。黒川さんって言って、むか~しに絵画教室を開いていた人なんです――」
「へえ、絵画教室……私の親戚じゃないなあ。残念だっ」
「――ですよね。そんな偶然、あるわけないですもんっ――」
拾った話題を広げてくれたお陰で聞けた。
黒川(仮)は口元を曲げて数秒、考え込む。その仕草は心当たりがない様子。抱えていた疑問が1つ、スッキリした。確かめるだけでも、気負った思いは違う。
(やっぱし……宇治木さんの話、聞くだけ聞いとくか)
そう決意すれば、善は急げ。
翌朝に宇治木を不動高校近くのファミレスへ呼び出す。彼も快く、不動山市まで現れてくれた。
念の為、竜太に同行を頼む。24時間営業はモーニングメニューにそそられるが、
「ごめ~ん、朝から来てもらっちゃって♪ 何でも好きな物、頼んでっ」
「金田先輩が宇治木さんを呼んだんですよね? でも、遠慮なく。モーニングセット、ドリンクはミックスジュース、ラーメンも追加でっ」
「佐木君……朝ご飯、まだなのですか? 自分、カフェオレをお願いします」
ご機嫌良く宇治木はメニュー表を差し出し、奢り宣言。逞しい竜太は好きなだけ注文していく。料理名だけで胃がもたれそうだ。
「宇治木さん、自分へ頼みたい事とは何でしょうか?」
「ごめん……その、葉崎さんを覚えてる? 彼女に会って欲しいんだ」
「!? 『夜桜亭』の……葉崎 栞さんっ。まだ裁判も始まってないはずですけど、釈放されたとか?」
『夜桜亭』殺人事件の容疑者・
「ごめん、説明不足だったな。葉崎さんはまだ入っているよ。……彼女、冬部さんの弁護も受けようとしないと言うか、……面会中もずっと黙ってて……非協力的なんだ」
「……!? 冬部さんが弁護人なのですか……?」
「どうして……冬部さんはそこまで葉崎さんを……」
宇治木はから深刻に語られた事実、
冬部弁護士は被害者・
つまり、冬部弁護士も標的の可能性もあるのだ。
斧田が殺された時点で犯人に目星が付いたなら、そこにも自ずと気付くだろう。冬部弁護士は友人だけでなく、自分の命を狙った相手を弁護している。驚きしかない。
「すまない、俺も事情は分からない。けど……冬部さんは真剣に葉崎さんを助けたいっ。それは確かだっ」
「……何故、自分が葉崎さんに会うのですか?」
「葉崎さんが金田先輩に会いたがってるとか……?」
尚の事、
「ああ、そうなんだっ。それと言うのも……いっつも同じ話ばかりじゃあなんだから……偶には世間話しようと思って、不動高校の体育祭に朝木陶工が来てたって話を……」
((話のチョイス……間違っとる……))
「そしたら、金田君は元気ですかって質問して来たんだっ。彼女、キミに何か言いたいんだと思う。俺も一緒に行くし、どう……かな?」
「……お断りします」
正直、葉崎に会いたくない。一度は敵となった相手だが、真正面から相対しての逮捕ではない。彼女に気付かれぬ様、コソコソと告げ口した挙句に捜査一課・
「ごめん、キミ達の旅行を台無しにした張本人なのは分かってる。せめて、顔を見せるだけでも!」
「……旅行を台無しにされたとは思いません。話が以上でしたら、失礼しますっ」
「金田先輩……」
宇治木の切実な態度に胸を打たれてしまいそうだが、
葉崎を真の意味で救いたいのであれば、冬部弁護士が果たすべき役割。連行される彼女の為、パトカーを追いかけられる。そんな彼にしか、叶えられない。
注文したカフェオレは惜しかったが、ファミレスを去る。困り顔の宇治木を振り返らず、心配する竜太も置き去りにした。
可愛い後輩には明日、謝罪しよう。
バイト先へ到着した直後、携帯電話が鳴り響く。表記された番号は父・
〈残間だ。私は今、東京にいる。
「生憎、夜9時過ぎまで戻りません。その件の為にわざわざ……東京へ?」
〈明智警視との約束だ。例の件で……どうにも、意見が食い違うと言うか……妥協し合えなくてな。では、夜に会おう。お義母さんにはこちらから、伝える……(プッ)〉
「ちょ……!? 話の途中で切……っ。全く……礼儀のなっていない人ですっ」
原付バイクへ跨ったまま、通話。
色々と頼んだ身だが、疲労困憊の後に見たい顔ではない。話の分かる宇治木とのやり取りを思い返し、残間の勝手が強調されて余計にイラッとした。
だが、
逃亡した『地獄の傀儡師』との接触に備え、宮城県警による残間の周辺警護だ。どう考えても、無駄な労力。
長めの休憩時間を頂き、聖正病院へ向かう。月島と台詞合わせがある。
月島先生が病院側に事情を説明し、人の少ない屋上を借りた練習。暑い日差しが肌を刺激しても、吹く風は心地良い。干されたシーツが舞台の上と重なり、心が躍る。
「金田君、悩み事?」
「……そんな風に見えますか? ……ただの私情ですよ」
「金田、悩んでんの? その憂いた感じ、クリスティーンの役作りかと思った」
「俺もっ」
ごちゃごちゃした情報に加え、演劇部から『3人』が文字通り、いない。この事実がじわじわと脳髄を侵し、感情の波が襲う。
だが、演劇部に関し、
「金田君、今更……降りたいと言ってもダメよ。私は怪人、何としてもクリスティーンを舞台に上げるんだからっ。それにね、他の皆も……思いはひとつ、コンクールへ出場する! これはちゃんと自分達で決めたの。そこは信じてっ」
(顔をやられたのに……まだ、他の人を信じられるのか。……すげえな、月島さん)
スッキリとまでは行かぬが、胸の蟠りは小さくなる。月島の人を惹きつける力は同時に勇気もくれた。
「……勇ましいですね。本当、尊敬します」
「……うん、ありがとう?」
「確かにっ、冬……月島さんといると元気出るぜ」
「……有森、お前が月島君と付き合っているって……バレてるからっ。ふつ~うに名前で呼べば?」
本音を語り、月島は首を傾げる。女子に勇ましいは違うかと思えば、ニッコニコの有森は親指を立ててまで賛同する。布施先の面白くなさそうな仏頂面は3人で笑った。
コンクール後の退部を引き延ばしても良いと思える程に――。
閉店後の処理を無事に終え、原付バイクを走行。
風圧が心地良い分、心拍数は上がっていく。金田祖父母が居るとは言え、残間に会いたくない気持ちは募るばかりだ。ここまで気持ちが正直になり、体が抵抗するのは中学校以来な気がする。
金田祖父に知られれば、「普段からや!」と返されるが
普段よりも安全運転を心がけ、ゆっくりと金田家へ帰宅。
原付バイクを駐車スペースへ乗り付けた途端、玄関の戸が勢いよく開いた。
「
「は?」
「何も聞かず、波照間島へ行って欲しいと言われたんだ。七瀬さんにっ」
アロハシャツを着た金田祖父は高らかに宣言し、
呆気に取られたまま事情を聞けば、まさかの名前。嫌な予感に頭皮さえも汗だくだ。
「お土産はいりません。行ってらっしゃいませっ」
「「お前も来るんだ!!」」
他人事で見送ろうとしたが、
七瀬の頼みなど、明日の約束に劣る。
だが、悲しくは時間通りに昏睡する体質。その隙を突かれたのは言うまでもない。
はじめの友達1「いえ~い、金田一の同級生で~す♪ 「お前の推理でなんとかしみろよ」って言ったの、オレです。アイツ、またサボりかよって思った時は大体、事件に巻き込まれてるらしいぜ。何にも聞かねえけど、出席日数は確認しとけよ。さて、次回は『怪盗紳士は殺人を食い止めない・後編』!! ……え? 指名手配中の……あの人、出るの?」
葉崎 栞、斧田 鏡一郎
吸血桜殺人事件ゲストキャラ
捜査一課・正野刑事
剣持の部下
雪峯 美砂刑事
午前4時40分の銃声ゲストキャラ、作中にて警視庁所属