金田少年の生徒会日誌 作:珍明
ナニコノヒラキ、再び
作中は3ヶ月前にしています
我慢しきれなくて、恋〇語ネタ使いました。後悔はない(キリッ)
念の為に『90年代』をタグ追加します
初めての沖縄、石垣島を通り過ぎての波照間島。
日本の南国、常夏の土地。その呼び名に相応しき暑さだが、東京よりも陽射しは優しい。吹き続ける風のお陰で団扇要らず。ただの旅行ならば、堪能できよう。
〈金田先輩、お疲れ様です。ご自宅へ電話したら、沖縄に行ったと聞きましたよ。今、どの辺ですか? こっちは映画が終わって、竜二達と昼ご飯です〉
「――沖縄、波照間島の喫茶店だ。喫茶店でランチを食べている――」
〈なんスか、金田先輩。正月を満喫してた詐欺師みたいな言い草。ウケるっ〉
〈金田センパイ、ボクも誘ってくださいよ~。絶対に事件絡みでしょう!〉
公衆電話から後輩・
『エヴァ』劇場版を観に行く。
楽しみだった約束は青森滞在中の
しかも、詳しい事情は語られず、この島に絵描きがいたか、その人物を訪ねた者はいるか、物凄く曖昧な情報を元に探せと無茶苦茶だ。
金田祖父と父・
ここまで同行しただけだが、
〈よく考えたら、シンジやアスカが行きたがった沖縄にいるんスよ。2人の分まで楽しまなきゃ♪〉
〈〈金田先輩、なんくるないさ~♪〉〉
「フフフ……挨拶ではありませんよ」
可愛い後輩から励ましを受け、ちょっと面白かった。
受話器を下せば、現実に打ちのめされる。ゲンナリし、そっと座り込んだ。
(お~の~れぇ、
「
「私、残間と申します。七瀬 美雪さんにお取次ぎ願えますか?」
湧き起こる激情に悶絶していれば、金田祖父に追いやれる雑な扱い。残間は知らん顔で受話器を取り、七瀬へ連絡した。何故だろうか、2人はドンヨリとした暗い雰囲気を纏う。
当てが外れたか、嫌な事実を知ったのだろう。どの道、
〈何か、分かったんですか? 金田君のお父さん!〉
「キミの予想通りだよ、七瀬さん。岸和田病院に身元不明の入院患者がいた。記憶と心神喪失に関わらず、絵筆だけは取っていたそうだ。そう……去年の5月、油絵を描き上げていた。……うん? こんにちは、
内容を聞くとはなしに聞いてしまい、ス~っと頭が冴える。
春休み、沖縄、葬儀。『我が愛する娘の肖像』の油絵、描かれた南十字星の見える波照間島。
それらは全て、転校してしまった
――彼女に危険が迫っている。
飛躍した瞬間、
「
〈うわぁ! ビックリした……え? 金田も波照間島へ来てんのか? あれ、俺……和泉の名前出したっけ?〉
「どうなのですか?」
〈……無事だよ、今は……〉
「……今はって……? 何が起こって……」
疑問しながら、質問を控える。
一気に記憶を掘り起こし、台本を読むが如く登場人物の心情を読み取る。
その和泉が転校した後、蒲生画伯が生き別れた娘と対面した記事を読んだ。肝心の娘は顔写真さえ、出回っていない。
(……和泉さんが……蒲生画伯の生き別れの娘?)
それは違うと脳髄が拒否。
だが、和泉の『我が愛する娘の肖像』が載った雑誌を眺める姿。今にして思えば、
判断材料はある程度、揃った。
「
〈!? お前、何言ってんだよ。それに……これは桐生と全然、違うだろ〉
一瞬、
「……動機や過程や経緯の話をしていません。ああ、すみません。回りくどかったですね……和泉さんを死なせないでください。ただ、それだけです」
〈……分かってる。……ジッチャンの名にかけてっ〉
亡くなった
遠野先輩の予想に過ぎなかった「友達を助けに行った」は当たっていた。
「信じますよ、
〈……ああ、ありがとう。金田っ〉
故に敬意を込めた。
心から感謝し、
「やめ、やめぇ! 青ボンも無駄足やったからって、キレんなや!」
「……はい」
「無駄足?
カッカする金田祖父に咎められれば、落胆した残間も渋々と従う。どうやら、2人とも調査結果に満足していない様子だ。
「
「……
気まずそうに金田祖父が誤魔化しても、残間は舌打ちの如く暴露。
(……あ~、
沖縄行きを快諾した理由に気付き、
金田祖母も同じ期待を抱き、連絡を待ち侘びているはず。七瀬を責めはしないが、せめて件の絵描きが男性だと最初に伝えて欲しい。
――否、報・連・相、大事!!
「お祖父ちゃん……お祖母ちゃんにも電話しましょう」
「……せやな」
「先に港へ行こう。今から行けば、昼出発のフェリーに間に合うっ」
金田祖父は気が重そうに公衆電話を手に取れば、残間はレンタカーへ乗り込む。連れがまだ乗っていないにも構わず、エンジン音が鳴り響く。置き去りにされる危機感、
法定速度を守っているが、運転は荒い。
流石、残間。波照間島は用済み、長居は無用と言うワケだ。
「
「……!? ……北海道の話をしたいです」
無言の空間に耐え兼ね、残間は問う。ハンドルを握り締めた手から、質問の意図を察す。だが、それには乗らない。今の
後部座席の金田祖父は緊張が解れた息を吐き、寝転ぶ。
残間も深呼吸し、
背氷村の邸宅にあった不用品を売却し、清掃業者も入り、いよいよ絵画を飾れる。相続税もバッチリ支払い終えた絵画500幅、貸し倉庫から運び出す配送業者は手配済み。
問題は展示だが、自分独りでは時間がかかる。いざとなれば、宿泊する皆様に手伝ってもらおう。
「……
「……お願い致します……」
本当はひとつひとつ、この手で飾りたい。
演劇部コンクールの日が迫り、北海道へ行く時間も惜しいのは事実。またも残間の手を借りねばならず、悔しさに唇を噛んだ。
メモ帳を捲れば、【元ペンション従業員の
「そちらは管理人予定の方だ。銭形さんから是非、雇って欲しいと頼まれたよ」
(……事件か何かで、職を失った人か?)
道警の
レンタカーショップにて、返却手続き完了。フェリー出港まで時間があり、金田祖父は気だるそうに自宅へ電話。残念がる金田祖母の反応が嫌でも伝わった。
「青ボ~ン、明智さんが電話くれ言うとったらしいで~。こないな島やと……お前の携帯も電波通じんやろ……? ……なんや、明智さんと揉めとんのか?」
「……昨日の今日で……私から、明智さんに話す事はないだけですっ」
「お祖父ちゃん、高遠さんの件ですよ。明智さんは残間の近辺に宮城県警を張り込ませたいのです」
明智警視の名を聞いた途端、残間はウンザリして手で顔を覆う。目上の人を相手にしては珍しく、素直に困り果てていた。
「あのトッポイニイチャンが青ボンの前に現れる……そうは思えんでぇ。明智さん、東京におるんやな。ほんなら、今……
「剣持さんです。今回の青森行きはそちらから、依頼された為と人伝に聞きました」
「……高校生を事件に巻き込むのは……あまり、感心しないな。……ただでさえ、
金田祖父は怪訝そうにため息を吐き、やれやれと肩を竦める。逃亡中たる
剣持警部が
「……
「……仕方あるまいな」
「残間?」
〈聞き入れて下さり、ありがとうございます。残間さんが提示した条件につきましては早速、手配を致しますっ〉
「……こちらこそ、取り越し苦労である事を願っております。……はい、これからフェリーです。東京に着きましたら、ご連絡致します」
宮城県警の警護を承諾する条件、
本庁捜査一課のエリート警視ならば、それなりに対応されるはずだ。
受話器を下した残間は深いため息を吐き、座り込む。しばらくの間、監視された生活を送るのだ。その気苦労を思えば、精神的疲労は計り知れない。一応、同情しておく。
「ホンマ……お前ら、よう似とるわ。父子じゃのう……」
「「……生物学上の父子ですからっ」」
金田祖父から煩わしそうに呟かれ、イラッとする。
フェリーは出発し、僅かな時間だけ滞在した波照間島へ別れを告げる。金田祖父と残間はベンチを占領して仮眠、
離れていく波照間島や海を眺めながら、今だけは気分を休めようと思った。
「なんくるないさ~、ご旅行ですか?」
「アハハ……それ、挨拶ではありませんよ。……高……!?」
後ろから声を掛けられ、
振り返れば、知ってはならない現状を知る。だが、声が似ているだけの勘違いの可能性も捨てがたい。その緊張感に指先までも痙攣し、体中の毛穴から汗が噴き出した。
「どうしましたか? 震えていますよっ。何か……恐ろしいモノと遭遇しましたか?」
(アンタだよ!)
極上の愉悦を声に馴染ませ、隣に立たれる。近付いた気配に緊張感がより高まり、足が竦む。
青いジーンズに黒白のアロハシャツ、凡そイメージとかけ離れている。奇妙な安心感を得てしまい、
サングラスに麦わら帽子で人相を隠そうが、どう見ても高遠 遙一です。本当にありがとうございます。
「……その素敵なサングラス、絶対に外さないでください」
「キミがそう望むなら……ところで、何をしに沖縄へ? 観光にしてはっ、
無礼と知りつつ、必死に要求。クスリッと笑い、高遠はサングラスのフレームをからかうように指先で小突く。逃亡犯の自覚を持ちながら、余裕綽々の態度にイラッとした。
しかし、次の質問にはゾッする。
沖縄へ到着した早い段階で、自分達は高遠に尾行されていた。しかも、中途半端に会話も盗み聞きされ、違う方向へ勘繰られている。わざわざ探りに来たのが、その証拠だろう。サングラス越しでも伝わる眼光、答え方次第では命の危険に晒される予感に思わず、唾を飲み込んだ。
「……母を探しに来ました。人違いでしたけど……」
「! そうですか……残念でしたね。僕の方でも引き続き、探してみます。幸い、目星は付けてるんですよ」
正直に伝えれば、高遠の威圧感は抜ける。代わりに気弱なマネージャーだった頃の親しみやすい態度へ変わり、
「……まさか、その為に出て来たとか言わないでください……ね?」
「ご心配なく、
そこから会話が途切れ、
(誰だ……高遠さんが金田達に近付くはずないとか言った奴!!)
意味不明で奇想天外な状況、今すぐにでも
負の感情に脳裏が支配された時、ピエロ
高遠ならば、拘留された人間の気持ちを汲めるだろう。
「拘留中の被疑者が……一度しか、会った事ない人の名を出す時って……どんな心境ですか?」
「! ……もう少し、具体的な人間関係が知りたいですね」
突拍子もない質問をされても、高遠は嬉しそうに微笑んで見せる。仕方なく、かつて遭遇した殺人事件について掻い摘んだ説明を加える。勿論、被疑者の名は伏せた。
「……そこにいるのが僕なら、キミと話したい心境にあるっ。そう答えます」
「……貴方は自分と話したかったのですか? 銭形さんに相談とかすれば……」
「僕の口から言ってしまえば、キミとは決して会わせてもらえなかったでしょう。……ですが、その方は逆にキミと話したくないから……つい口に出してしまったのかもしれませんね。……ああ、事情に巻き込みたくないと言う意味ですっ」
(……会いたくないと思い過ぎて、……そんな考え方もあるのか……)
確かに明智警視や銭形警部補ならば、どんなに妥協しても手紙のやり取りしか認めない気がする。つまり、高遠は
拘留中の容疑者と高校生を会わせるなど、推理小説家も青空の様に真っ青だ。
海の波しぶきが一瞬だけ、紅い。
紅い花びらが如く、血に染まった
決して、叶わぬ光景。
「見ていて飽きませんね、金田君♪」
「!? ……よく言われます。でも、貴方程ではありません。視線の強さが違います……」
高遠の声に我へ返り、ビビる。彼の麦わら帽子のつばへ入る程、
「僕からも質問をひとつ……キミの家に出入りしていた人、誕生日を祝いに来たと言ってましたね。何か……贈り物は受け取っていませんか?」
「本を貰いました。【フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス】の洋書です。言っておきますが、書き込みはありませんよ」
会話を長引かせない為、正直に答える。
15歳の誕生日、「彼」がくれた英語ビッシリの洋書は本棚に差してある。高遠の本当の父親かもしれず、顔や名前も思い出せない相手だ。
仮に父親だとしても、
「……本と言えば、【ジョジョ】は読んでくれましたか?」
「まだです。金田君、コミックタイトルと教えておいてください。僕は日本の漫画に疎くて、探すの大変でしたっ」
さらりと話題を変えても、高遠はニッコリと応じる。彼が逃亡犯でなければ、一緒に書店へ出向いただろう。そんな日は来ない。
石垣島の港が近付き、下船の準備に乗客は動き出す。ベンチにいた残間と金田祖父も起き上がり、
「金田君っ。約束通り、キミの家族は巻き込みません。今日は偶々、会えただけです。ご理解、頂けますか?」
「……はい……、そこは信じています。……それと話を聞いてもらって、ありがとうございます。自分は貴方の味方にもなれないのに……」
「……こちらこそ、キミと話せて良かったです。……さあ、帰りなさい。お父さんと一緒に……」
「残間に会って……」
麦わら帽子で顔を深く隠し、微笑んだ高遠は人混みへ紛れる。
2度と会う事のない相手。勝手に思い込んでいた為、あっさりとした再会に拍子抜けだ。滅茶苦茶、恐怖に満ちた邂逅だったが、不思議と悪い気がしないのは何故だろう。
「……
「――鈴木と申します。首に着ける鈴に、木に鼻を括るの木と書いて……――」
「何言うとん、お前? 元旦に団子食いよった詐欺師か?」」
寝起きに目を充血させ、残間は何気なく問う。ここで高遠に会ったなど、絶対に言えない。
心外だ。
残間とは途中で別れ、
「おかえり、
「分かりました。
金田祖母の物静かな態度が落ち込みを教え、
母・にいみの手掛かりは何もなく、徒労に終わった。その虚しさは理解しているつもりだ。けれども、
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