金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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原作冒頭、『我が愛する』が一度盗まれたのは半年前。終盤には、3ヶ月前とある
ナニコノヒラキ、再び
作中は3ヶ月前にしています

我慢しきれなくて、恋〇語ネタ使いました。後悔はない(キリッ)

念の為に『90年代』をタグ追加します


27話 怪盗紳士は殺人を食い止めない・後編

 初めての沖縄、石垣島を通り過ぎての波照間島。

 日本の南国、常夏の土地。その呼び名に相応しき暑さだが、東京よりも陽射しは優しい。吹き続ける風のお陰で団扇要らず。ただの旅行ならば、堪能できよう。

 

〈金田先輩、お疲れ様です。ご自宅へ電話したら、沖縄に行ったと聞きましたよ。今、どの辺ですか? こっちは映画が終わって、竜二達と昼ご飯です〉

「――沖縄、波照間島の喫茶店だ。喫茶店でランチを食べている――」

〈なんスか、金田先輩。正月を満喫してた詐欺師みたいな言い草。ウケるっ〉

〈金田センパイ、ボクも誘ってくださいよ~。絶対に事件絡みでしょう!〉

 

 公衆電話から後輩・竜太(りゅうた)へ連絡すれば、独り暮らしの部屋が騒がしい。彼の弟・竜二(りゅうじ)海峰(かいほう)の元気な声も聞こえて、羨ましい。本来ならば、(いち)もそこにいた。

 『エヴァ』劇場版を観に行く。

 楽しみだった約束は青森滞在中の七瀬(ななせ)からの調査依頼により、破らされた。

 しかも、詳しい事情は語られず、この島に絵描きがいたか、その人物を訪ねた者はいるか、物凄く曖昧な情報を元に探せと無茶苦茶だ。

 金田祖父と父・残間(ざんま)が勝手に了解し、飛行機とフェリーを乗り継いでの到着。2人が港周辺を聞き込み調査すれば、情報は苦も無く集まる。レンタカーを借り、岸和田病院へ辿り着く。

 ここまで同行しただけだが、(いち)の気力はゼロ。院内へ入らず、公衆電話に縋り付いた。

 

〈よく考えたら、シンジやアスカが行きたがった沖縄にいるんスよ。2人の分まで楽しまなきゃ♪〉

〈〈金田先輩、なんくるないさ~♪〉〉

「フフフ……挨拶ではありませんよ」

 

 可愛い後輩から励ましを受け、ちょっと面白かった。

 受話器を下せば、現実に打ちのめされる。ゲンナリし、そっと座り込んだ。

 

お~の~れぇ、金田一(きんだいち)!! てめえの仕業だろ! この恨み、晴らさずおくべきか~!!

(いち)っ。黙っとっても、うっさいぞ」

「私、残間と申します。七瀬 美雪さんにお取次ぎ願えますか?」

 

 湧き起こる激情に悶絶していれば、金田祖父に追いやれる雑な扱い。残間は知らん顔で受話器を取り、七瀬へ連絡した。何故だろうか、2人はドンヨリとした暗い雰囲気を纏う。

 当てが外れたか、嫌な事実を知ったのだろう。どの道、(いち)には興味ない

 

〈何か、分かったんですか? 金田君のお父さん!〉

「キミの予想通りだよ、七瀬さん。岸和田病院に身元不明の入院患者がいた。記憶と心神喪失に関わらず、絵筆だけは取っていたそうだ。そう……去年の5月、油絵を描き上げていた。……うん? こんにちは、金田一(きんだいち)さん。……ああ……その時期より前から、何度も訪れる娘さんがいてな。今年の春休み時期、葬儀の手配もその子が……」

 

 内容を聞くとはなしに聞いてしまい、ス~っと頭が冴える。

 春休み、沖縄、葬儀。『我が愛する娘の肖像』の油絵、描かれた南十字星の見える波照間島。

 それらは全て、転校してしまった和泉(いずみ) さくらを符号させた。

 

 ――彼女に危険が迫っている。

 

 飛躍した瞬間、(いち)は衝動的に残間の持つ受話器を奪い取る。会話の邪魔をされ、彼は露骨に顔を歪めたが詫びない。

 

金田一(きんだいち)君、和泉さんは無事ですか?」

〈うわぁ! ビックリした……え? 金田も波照間島へ来てんのか? あれ、俺……和泉の名前出したっけ?〉

「どうなのですか?」

〈……無事だよ、今は……〉

「……今はって……? 何が起こって……」

 

 疑問しながら、質問を控える。金田一(きんだいち)は何も語らぬ人だ。

 一気に記憶を掘り起こし、台本を読むが如く登場人物の心情を読み取る。

 蒲生(がもう) 剛三(ごうぞう)画伯の新作、『我が愛する娘の肖像』。雑誌へ掲載された際、美術部顧問の中津川(なかつがわ)先生はモデルの少女が和泉に似ている(・・・・・・・)と指摘。

 その和泉が転校した後、蒲生画伯が生き別れた娘と対面した記事を読んだ。肝心の娘は顔写真さえ、出回っていない。

 

(……和泉さんが……蒲生画伯の生き別れの娘?)

 

 それは違うと脳髄が拒否。

 だが、和泉の『我が愛する娘の肖像』が載った雑誌を眺める姿。今にして思えば、(いち)が愛する伯父・氷室(ひむろ) 一聖(いっせい)を想うのと同じ眼差し。絵自体、彼女は想い入れがある。そこまで考えを巡らせ、胸のざわめきは荒れ狂う吹雪と化す。

 判断材料はある程度、揃った。

 

金田一(きんだいち)君、お願いです。和泉さんを……桐生さんと同じ結果にしないでください」

〈!? お前、何言ってんだよ。それに……これは桐生と全然、違うだろ〉

 一瞬、金田一(きんだいち)は困惑した。突拍子もない意見、電話越しでこちらの表情が見えにくかったせいもあるだろう。それでも流石、名探偵の孫。(いち)が僅かな瞬間、青森の事情を把握したと見抜いた。

 

「……動機や過程や経緯の話をしていません。ああ、すみません。回りくどかったですね……和泉さんを死なせないでください。ただ、それだけです」

〈……分かってる。……ジッチャンの名にかけてっ〉

 

 亡くなった桐生(きりゅう)の顔が脳裏を掠め、深呼吸する。もう2度と、彼女のような死別は懲り懲りだ。

 金田一(きんだいち)は間を置き、先日ぶりの誓いを立てた。とても静かな力強さは彼本来の気質、思い遣りに溢れている。

 遠野先輩の予想に過ぎなかった「友達を助けに行った」は当たっていた。

 

「信じますよ、金田一(きんだいち)君」

〈……ああ、ありがとう。金田っ〉

 

 故に敬意を込めた。

 心から感謝し、金田一(きんだいち)は通話を切る。彼に全てを任せ、(いち)も受話器を下す。待ち侘びた残間が無言で拳を振り下ろし、慌てずに金田祖父を盾にした。

 

「やめ、やめぇ! 青ボンも無駄足やったからって、キレんなや!」

「……はい」

「無駄足? 金田一(きんだいち)君には十分な情報を渡せました」

 

 カッカする金田祖父に咎められれば、落胆した残間も渋々と従う。どうやら、2人とも調査結果に満足していない様子だ。

 

(いち)は気にせんでええわ、ワシらが勝手に勘違いしてしもうたんや」

「……にいみが(・・・・)……この島にいる(・・・・・・)と思ったんだ」

 

気まずそうに金田祖父が誤魔化しても、残間は舌打ちの如く暴露。

 

(……あ~絵描きがいるか調べて(・・・・・・・・・・)って……話だったから……)

 

 沖縄行きを快諾した理由に気付き、(いち)は背筋が凍り付く。段々と焦り、服の下や地肌が汗ばんだ。

 金田祖母も同じ期待を抱き、連絡を待ち侘びているはず。七瀬を責めはしないが、せめて件の絵描きが男性だと最初に伝えて欲しい。

 

 ――否、報・連・相、大事!!

 

「お祖父ちゃん……お祖母ちゃんにも電話しましょう」

「……せやな」

「先に港へ行こう。今から行けば、昼出発のフェリーに間に合うっ」

 

 金田祖父は気が重そうに公衆電話を手に取れば、残間はレンタカーへ乗り込む。連れがまだ乗っていないにも構わず、エンジン音が鳴り響く。置き去りにされる危機感、(いち)と金田祖父は慌てて飛び乗った。

 法定速度を守っているが、運転は荒い。

 流石、残間。波照間島は用済み、長居は無用と言うワケだ。(いち)は心底、彼を哀れに思う。

 

(いち)……、私に何か……言いたい事はないか?」

「……!? ……北海道の話をしたいです」

 

 無言の空間に耐え兼ね、残間は問う。ハンドルを握り締めた手から、質問の意図を察す。だが、それには乗らない。今の(いち)にとって、重要な話を望んだ。

 後部座席の金田祖父は緊張が解れた息を吐き、寝転ぶ。

 残間も深呼吸し、(いち)へメモ帳を渡す。ビッシリと事細かなに文字が書き込まれて真っ黒、ビビる。それだけ、北海道合宿計画を任せっきりだったと思い知った。

 背氷村の邸宅にあった不用品を売却し、清掃業者も入り、いよいよ絵画を飾れる。相続税もバッチリ支払い終えた絵画500幅、貸し倉庫から運び出す配送業者は手配済み。

 問題は展示だが、自分独りでは時間がかかる。いざとなれば、宿泊する皆様に手伝ってもらおう。

 

「……(いち)、遠野さんを当てにするな。お客様として招くなら、キチンと準備しなさい。……こちらでやっておくが、異論ないな?」

「……お願い致します……」

 

 本当はひとつひとつ、この手で飾りたい。

 演劇部コンクールの日が迫り、北海道へ行く時間も惜しいのは事実。またも残間の手を借りねばならず、悔しさに唇を噛んだ。

 メモ帳を捲れば、【元ペンション従業員の諏訪(すわ) 正子(まさこ)】と走り書きを見付けた。

 

「そちらは管理人予定の方だ。銭形さんから是非、雇って欲しいと頼まれたよ」

(……事件か何かで、職を失った人か?)

 

 道警の銭形(ぜにがた) ケンタロウ警部補には色々と親切にされている。諏訪は少なくとも、報道関係者ではないだろう。断る理由もなく、了解した。

 レンタカーショップにて、返却手続き完了。フェリー出港まで時間があり、金田祖父は気だるそうに自宅へ電話。残念がる金田祖母の反応が嫌でも伝わった。

 

「青ボ~ン、明智さんが電話くれ言うとったらしいで~。こないな島やと……お前の携帯も電波通じんやろ……? ……なんや、明智さんと揉めとんのか?」

「……昨日の今日で……私から、明智さんに話す事はないだけですっ」

「お祖父ちゃん、高遠さんの件ですよ。明智さんは残間の近辺に宮城県警を張り込ませたいのです」

 

 明智警視の名を聞いた途端、残間はウンザリして手で顔を覆う。目上の人を相手にしては珍しく、素直に困り果てていた。

 

「あのトッポイニイチャンが青ボンの前に現れる……そうは思えんでぇ。明智さん、東京におるんやな。ほんなら、今……金田一(きんだいち)くんらと一緒におるんは誰や?」

「剣持さんです。今回の青森行きはそちらから、依頼された為と人伝に聞きました」

「……高校生を事件に巻き込むのは……あまり、感心しないな。……ただでさえ、金田一(きんだいち)さんは立て続けに事件と遭遇しているんだぞ」

 

 金田祖父は怪訝そうにため息を吐き、やれやれと肩を竦める。逃亡中たる高遠(たかとお)との面識は少ないが、年の功故にそう感じる何かがあるのだろう。

 剣持警部が金田一(きんだいち)を巻き込んだと初めて知り、残間は呆れる。(いち)も同感だが、断らない同級生にも責任はある為、沈黙を貫いた。

 

「……(いち)の話やと、また不動高校の生徒さんが関係しとるんやろ? 金田一(きんだいち)くんの方から、着いて行きたいて頼んだかもしれんで。ホンマ……えらい子やわあ……」

「……仕方あるまいな」

「残間?」

 

 金田一(きんだいち)の状況を不憫に思い、何気なく呟く。意を決心した残間は厳しい表情になり、公衆電話の受話器を取った。

 

〈聞き入れて下さり、ありがとうございます。残間さんが提示した条件につきましては早速、手配を致しますっ〉

「……こちらこそ、取り越し苦労である事を願っております。……はい、これからフェリーです。東京に着きましたら、ご連絡致します」

 

 宮城県警の警護を承諾する条件、金田一(きんだいち)が捜査する現場へ青森県内の医療関係者を待機させる。これを一般人の自分達が要請しても、相手にすらされないだろう。

 本庁捜査一課のエリート警視ならば、それなりに対応されるはずだ。

 受話器を下した残間は深いため息を吐き、座り込む。しばらくの間、監視された生活を送るのだ。その気苦労を思えば、精神的疲労は計り知れない。一応、同情しておく。

 

「ホンマ……お前ら、よう似とるわ。父子じゃのう……」

「「……生物学上の父子ですからっ」」

 

 金田祖父から煩わしそうに呟かれ、イラッとする。(いち)と残間は何の示し合わせもなく、声を揃えた。

 フェリーは出発し、僅かな時間だけ滞在した波照間島へ別れを告げる。金田祖父と残間はベンチを占領して仮眠、(いち)は他の客と一緒に甲板を歩き回った。

 離れていく波照間島や海を眺めながら、今だけは気分を休めようと思った。

 

「なんくるないさ~、ご旅行ですか?」

「アハハ……それ、挨拶ではありませんよ。……高……!?

 

 後ろから声を掛けられ、(いち)は呑気に相手の名を呼ぼうとする。口から滑り出かけ、咄嗟に噤んだ。

 振り返れば、知ってはならない現状を知る。だが、声が似ているだけの勘違いの可能性も捨てがたい。その緊張感に指先までも痙攣し、体中の毛穴から汗が噴き出した。

 

「どうしましたか? 震えていますよっ。何か……恐ろしいモノと遭遇しましたか?」

アンタだよ!

 

 極上の愉悦を声に馴染ませ、隣に立たれる。近付いた気配に緊張感がより高まり、足が竦む。(いち)は反論を殺し、ゆっくりと視界の隅で相手の足元から服装を捉えた。

 青いジーンズに黒白のアロハシャツ、凡そイメージとかけ離れている。奇妙な安心感を得てしまい、(いち)は視界を上げてしまう。

 サングラスに麦わら帽子で人相を隠そうが、どう見ても高遠 遙一です。本当にありがとうございます。

 

「……その素敵なサングラス、絶対に外さないでください」

「キミがそう望むなら……ところで、何をしに沖縄へ? 観光にしてはっ、誰かを探している(・・・・・・・・)様に見受けられます。明智警視へお電話されたのも、その報告ですか?」

 

 無礼と知りつつ、必死に要求。クスリッと笑い、高遠はサングラスのフレームをからかうように指先で小突く。逃亡犯の自覚を持ちながら、余裕綽々の態度にイラッとした。

 しかし、次の質問にはゾッする。

 沖縄へ到着した早い段階で、自分達は高遠に尾行されていた。しかも、中途半端に会話も盗み聞きされ、違う方向へ勘繰られている。わざわざ探りに来たのが、その証拠だろう。サングラス越しでも伝わる眼光、答え方次第では命の危険に晒される予感に思わず、唾を飲み込んだ。

 

「……母を探しに来ました。人違いでしたけど……」

「! そうですか……残念でしたね。僕の方でも引き続き、探してみます。幸い、目星は付けてるんですよ」

 

 正直に伝えれば、高遠の威圧感は抜ける。代わりに気弱なマネージャーだった頃の親しみやすい態度へ変わり、(いち)は不気味に思う。笑みも取り繕えず、口元が痙攣した。

 

「……まさか、その為に出て来たとか言わないでください……ね?」

「ご心配なく、それは違います(・・・・・・・)よっ」

 

 そこから会話が途切れ、(いち)は再び海を眺める。高遠も離れようとせず、ご一緒。

 

(誰だ……高遠さんが金田達に近付くはずないとか言った奴!!)

 

 意味不明で奇想天外な状況、今すぐにでも金田一(きんだいち)へ説明を要求したい。寧ろ、彼に助けを求めたい。だが、それをすれば、今後の生活に支障が出る。嫌だ。

 負の感情に脳裏が支配された時、ピエロ左近寺(さこんじ)焼死事件やトリックノートを思い返す。ファミレス繋がりから、宇治木(うじき)の頼みを断った出来事も浮かんだ。

 高遠ならば、拘留された人間の気持ちを汲めるだろう。

 

「拘留中の被疑者が……一度しか、会った事ない人の名を出す時って……どんな心境ですか?」

「! ……もう少し、具体的な人間関係が知りたいですね」

 

 突拍子もない質問をされても、高遠は嬉しそうに微笑んで見せる。仕方なく、かつて遭遇した殺人事件について掻い摘んだ説明を加える。勿論、被疑者の名は伏せた。

 

「……そこにいるのが僕なら、キミと話したい心境にあるっ。そう答えます」

「……貴方は自分と話したかったのですか? 銭形さんに相談とかすれば……」

「僕の口から言ってしまえば、キミとは決して会わせてもらえなかったでしょう。……ですが、その方は逆にキミと話したくないから……つい口に出してしまったのかもしれませんね。……ああ、事情に巻き込みたくないと言う意味ですっ」

(……会いたくないと思い過ぎて、……そんな考え方もあるのか……)

 

 確かに明智警視や銭形警部補ならば、どんなに妥協しても手紙のやり取りしか認めない気がする。つまり、高遠は(いち)との対面を望みながら、隠し通していた。

 拘留中の容疑者と高校生を会わせるなど、推理小説家も青空の様に真っ青だ。

 海の波しぶきが一瞬だけ、紅い。

 紅い花びらが如く、血に染まった斧田(おのだ)。その傍らに立ち尽くすのは葉崎(はざき)だが、脳髄の奥で配役は勝手に入れ替わる。(いち)が立つ足元、水沼(みずぬま) 貴雄(たかお)が血に伏した。

 決して、叶わぬ光景。

 

「見ていて飽きませんね、金田君♪」

!? ……よく言われます。でも、貴方程ではありません。視線の強さが違います……」

 

 高遠の声に我へ返り、ビビる。彼の麦わら帽子のつばへ入る程、(いち)の顔を覗き込まれていた。

 

「僕からも質問をひとつ……キミの家に出入りしていた人、誕生日を祝いに来たと言ってましたね。何か……贈り物は受け取っていませんか?」

「本を貰いました。【フランケンシュタイン、あるいは現代のプロメテウス】の洋書です。言っておきますが、書き込みはありませんよ」

 

 会話を長引かせない為、正直に答える。

 15歳の誕生日、「彼」がくれた英語ビッシリの洋書は本棚に差してある。高遠の本当の父親かもしれず、顔や名前も思い出せない相手だ。

 仮に父親だとしても、(いち)は居場所も知らぬ。知っていれば、すぐにでも連絡して目の前の息子(仮)を引き取って欲しい。

 

「……本と言えば、【ジョジョ】は読んでくれましたか?」

「まだです。金田君、コミックタイトルと教えておいてください。僕は日本の漫画に疎くて、探すの大変でしたっ」

 

 さらりと話題を変えても、高遠はニッコリと応じる。彼が逃亡犯でなければ、一緒に書店へ出向いただろう。そんな日は来ない。

 石垣島の港が近付き、下船の準備に乗客は動き出す。ベンチにいた残間と金田祖父も起き上がり、(いち)は高遠から距離を取った。

 

「金田君っ。約束通り、キミの家族は巻き込みません。今日は偶々、会えただけです。ご理解、頂けますか?」

「……はい……、そこは信じています。……それと話を聞いてもらって、ありがとうございます。自分は貴方の味方にもなれないのに……」

「……こちらこそ、キミと話せて良かったです。……さあ、帰りなさい。お父さんと一緒に……」

「残間に会って……」

 

 麦わら帽子で顔を深く隠し、微笑んだ高遠は人混みへ紛れる。

 2度と会う事のない相手。勝手に思い込んでいた為、あっさりとした再会に拍子抜けだ。滅茶苦茶、恐怖に満ちた邂逅だったが、不思議と悪い気がしないのは何故だろう。

 

「……(いち)っ、誰かと喋っていなかったか? 麦わら帽子で相手の顔はよく見えなかったが……」

「――鈴木と申します。首に着ける鈴に、木に鼻を括るの木と書いて……――」

「何言うとん、お前? 元旦に団子食いよった詐欺師か?」」

 

 寝起きに目を充血させ、残間は何気なく問う。ここで高遠に会ったなど、絶対に言えない。(いち)は咄嗟に適当な名を告げれば、寝惚けた金田祖父から頭を心配された。

 心外だ。

 

 残間とは途中で別れ、(いち)達は金田家へ帰宅した。

 

「おかえり、金田一(きんだいち)くんから連絡があったわ。あちらは全て、解決したそうよ」

「分かりました。金田一(きんだいち)君には明日の学校で……確認します」

 

 金田祖母の物静かな態度が落ち込みを教え、(いち)も静かに告げる。

 母・にいみの手掛かりは何もなく、徒労に終わった。その虚しさは理解しているつもりだ。けれども、(いち)の心は和泉への想いに満ち、金田祖母を慰める余裕はない。

 金田一(きんだいち)が全てにおいて、万事を成してくれる。ただ、それだけを信じた。




はじめの友達2「どうも~金田一と同じ穴の狢、ベタ塗ってない奴です♪ フェーリーでの再会って運命感じるけど、女子以外はお断り~。さて、次回は『怪盗紳士の殺人が濡れ衣であろうとも』!! やだん……綺麗なお姉さん(ポッ)」

蒲生 剛三
業界の伝手だけあるが、才能はそこそこ(吉良談)。富と権力の亡者。さくらの美貌に堕ち、殺すのを惜しんだ


諏訪 正子
タロット山荘殺人事件ゲストキャラ

水沼 貴雄
雪夜叉伝説殺人事件ゲストキャラ。作中にて、死んでも尚、オリ主に恨まれ続けている
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