金田少年の生徒会日誌   作:珍明

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和泉さくらの結末です
そして、章の終わりとします

誤字報告により、修正しました。ありがとうございます


30話 怪盗紳士の殺人が濡れ衣であろうとも-和泉 さくら

 和泉(いずみ) さくらは自傷行為を警戒され、刑務官の厳重な監視下に置かれる。

 畳だけの居室は妙に懐かしい。

 母と暮らしていた頃を思い返すからだろう。

 でも、ここは懐かしさに浸る場所ではない。罪を背負った人間の檻だ。

 (きし) 一成(いっせい)の苦しむ顔が脳裏に滲む。

 血の匂い、ナイフの重さが手の平に再現される。膝を抱え、さくらは目を閉じた。

 

(……裁判なんていらない。もう……早く、決めちゃって……)

 

 まだ起訴も始まっていないが、判決を待ち遠しく思う。それだけの事をした。

 そこへ現れた冬部(ふゆべ) 蒼介(そうすけ)弁護士の面会は虚を突かれた。

 

「初めまして、冬部です。和泉 さくらさん、私は東京のお友達から弁護を依頼されました。いきなり、私を信じろと言われてもお困りでしょう。本日ご挨拶にのみ、伺いました」

「……友達、……金田一(きんだいち)君?」

 

 鋭い眼光に情けを感じないが、冬部弁護士に揺るぎない誠実さを感じる。

 

「ご想像にお任せします。依頼人はアナタを助けて欲しいと……私に頭を下げました。それだけ、和泉さんの身を案じているとお考えください」

(……もしかして、七瀬さん……)

 

 さくらが何者であっても、普段の態度を変えずに接してくれた同級生2人。パトカーに乗せられ、見えなくなるまで見送ってくれた。

 事件後もこうして、気に掛けてくれる相手なんて。心当たりは彼女達だけだ。

 冬部弁護士を信じていないワケじゃない。ラベンダー畑に戻れないなら、この身に価値などない。今もそう思う。

 正直、断りたかったが、口は動いてくれなかった。

 

 金田一(きんだいち)との面会は部屋着同然の恰好を見られてしまう。顔が焼けるように熱く、羞恥が皮膚を突きさす。さくらはこんな状況でも羞恥心が残っていると気付き、自分自身に愕然とした。

 

「……また青森まで来て、学校は平気?」

「へへへっ、今日から夏休みなんだぜ。それよりも……さくら、あんまり飯食ってないんだって? 大河内さんに聞いたぞ。ちゃ~んと食っとけよ~。ポアロなんか、俺ン家の飯を食い切るんじゃないかってくらいに食べまくってんぜ」

 

 いつもの金田一(きんだいち)。愛しき子犬・ポアロの真似をして、さくらを楽しませてくれる。口元の緩みに気付き、笑える自分にも驚く。彼の前では自然と心が反応してしまうのだ。

 

「……金田一(きんだいち)君、あたしの為に弁護士を雇ってくれたんでしょう? その人、東京の友達に依頼されたって言っただけで……アナタの名前は出さなかったわ。……ありがとう」

「……っ、悪い。それ……俺じゃない。多分……いや、間違いなく……金田(かねだ)だよ」

 

 不思議と本音が溢れ、感謝を伝える。金田一(きんだいち)はハッとし、想定外の名を出した。

 彼と同じ字面、金田(かねだ) (いち)

 不動高校生徒会執行部の同級生、転校する時は欠席の為に挨拶出来なかった。否、金田一(きんだいち)以外の誰とも別れを告げなかったと言うべきだ。

 しかし、彼とはそこまで親しくない。全く理由が思い至らない。

 

「……金田(かねだ)君がどうして?」

「それは……さくらが自分で聞いてくれ。手紙でも……出てからでも……お前の口から、金田(かねだ)に直接、聞いてやってくれ。ただ……これだけは言える。金田(かねだ)にとって、お前は他人事じゃないっ」

 

 事件の真相を明かした時と同じ眼差し、金田一(きんだいち)は真剣に真実を語る。金田(かねだ)の三眼目が不意に脳裏を掠め、ゾッとした。

 今だからこそ、分かる(・・・)。あの瞳には荒れ狂う吹雪(憎悪)が宿っている。

 さくらが金の亡者どもへ断罪を決意したのと同じ、金田(かねだ)も誰かを手に掛けるだろう。そして、それは金田一(きんだいち)に見抜かれる。またも、彼は同級生の罪に嘆き悲しむ。

 予感よりも確信に近い。

 嫌だ。

 さくらは同級生が辿る末路よりも、金田一(きんだいち)が心配で堪らない。事件に関わるなとか、危険な事をしないでとか、否定的な言葉を用いても無駄。一度、事件解決へ走り出せば、彼は止まらないのだ。

 今回、よくよくと思い知った。

 

「さくら?」

「……金田一(きんだいち)君。……あたし、あいつらとは違う……ちゃんと罰を受ける。お父さんの為とか言って……この手を血に染めたんだもの。だから……頼めた義理じゃないけど、金田(かねだ)君をお願い……。あたしみたいにならないように……傍にいてあげて……」

 

 金田(かねだ)が血に染まろうと知った事ではない。口から出まかせに過ぎないが、金田一(きんだいち)はさくらへ優しく眼差しをくれた。騙しているような罪悪感に胸がチクチクと痛む。

 金田一(きんだいち)は少しだけ目を伏せ、静かに口を動かす。

 

「ああ……任せてくれ。金田(かねだ)には俺が……傍にいる。本当、さくらは優しいよ。あいつらとは違う。ちゃんと向き合える。だからさ、やり直せるよ」

金田一(きんだいち)君……」

 

 さくらの心の奥にそっと沈む。ラベンダーの花束を添えられたような嬉しさがあった。

 

「その代わりと言っちゃあなんだけど、背氷村の氷橋。俺も一緒に行くよ。さくらがその橋を渡るなら、俺は隣にいる。岸さんも言ってろ? あれは……本当にキレイなんだ」

「……」

 

 折角の誘い。未来の約束。

 さくらは答えない。答えられない。

 金田一(きんだいち)に言われるまで、岸の言葉は頭から消えていた。夥しい血に動揺し、救急搬送される彼の声はほとんど聞こえなかったと言い訳しよう。

 本当は転校した日、金田一(きんだいち)との別れ際に伝えたかった想いを口にしたかった。何も終わっていない状態では、まだ早いと脳髄の奥が囁いていた。

 

(あたしに……その橋を渡る権利なんて)

 

 行きたい気持ちは少し、ある。それは金田一(きんだいち)に想いを告げるより、勇気を必要とした。

 

 冬部弁護士は優秀だ。

 海津(かいづ)殺害は正当防衛が適応され、実質的な殺人罪は蒲生(がもう)殺害のみ。

 海津の私物から強力な薬物が発見され、しかも、注射器へ挿入中の状態であった。それが使用されれば、さくら自身の命も危うかったと認められた。

 また蒲生の悪行は報道で知れ渡り、吉良(きら) 勘次郎(かんじろう)画伯のような盗作を訴える画家が何人も名乗り出た。羽沢(はざわ) 星次(せいじ)が画商仲間に声を掛け、それらしい作品を証拠として集めてくれたのも大きかった。

 

(あたしが殺した人がこんなにも……多くの人を傷つけていたなんて)

 

 どんな悪人だろうと蒲生も人間、ひとつの命。

 さくらの罪は罪でしかない。

 

 元執事・小宮山(こみやま) 吾郎(ごろう)は裁判中、何度も面会に来てくれた。いつも差し入れを手に、穏やか顔を見せてくれた。

 

「アナタは今でも……私にとって、お嬢様に違いありません」

「小宮山さん……」

 

 たった1カ月だけの主従関係。それなのに、こんなにも自分を大切に想ってくれる。

 素直に嬉しく、さくらは咽び泣いた。

 

 吉良画伯も来てくれた。

 酒の匂いをさせず、喜ばしい出来事を伝えてくれる。蒲生が5年前から発表した作品全て『和泉(いずみ) 宣彦(のぶひこ)』の名へ改められた。

 しかも、いくつか不動山美術館へ展示される。父の名が本当に世間へ認められた。

 嬉し過ぎる報せに脳髄の奥が湯気を立てるようにぼんやりとしていた。こんな気持ち、もう二度と味わえないと思っていた。

 だからこそ、この幸せが怖い程、眩しかった。

 

「押収された絵画はお嬢さんの物だ。引き取り手がいねえと国のモンになっちまう。さっさと出て来い。画廊を用意しねえとな。俺も良い場所をいくつか、見付けといてやる。北海道でも、青森でも、何処でもな」

「……はいっ」

 

 彼は粗暴ながらも、さくらの出所を心待ちにしてくれた。

 そうだ。自分には役目がある。

 

 ――父の遺した作品を後世に伝える。

 

 初めて、目標を持てた。

 それを果した時、胸を張って笑える日が来るかもしれない。そんな「未来」を想像した。

 

 だから、岸へ手紙を送る。

 足の傷を詫びる為だったが、すぐに面会へ飛んで来てくれた。

 

「さくらさん! 手紙、ありがとう。あのね、僕……氷橋、準備して待ってる!」

「岸さん……はい、行きましょう。氷橋を見に……」

 

 北海道の背氷村。

 岸が言っていたあの場所へ必ず、一緒に訪れる。そう、約束した。

 

 最終判決は保護観察。冬部弁護士は抗告や控訴もしてくれたが、棄却された。

 

「力及ばず、申し訳ない……」

「いいえ……、十分です。冬部さん、ありがとう」

 

 さくらの想定よりもずっと軽い刑だ。首を垂れる冬部には、感謝以外ない。

 

 先ずはポアロを迎えに行こう。

 子犬だった彼はすっかり、成犬だった。勿論、さくらを覚えていた。

 

 保護観察生活は吉良画伯により、目まぐるしく忙しい。保護観察員よりも厳しく、さくらを導いた。

 その甲斐あり、『和泉 宣彦』作の絵画を展示する場所がひとつ、またひとつと増えていく。

 亡き父宛のファンレターが多く届いたが、金田(かねだ)から便りはひとつもない。一度だけ、さくらは手紙を書いた。終ぞ、返事はなかった。

 それが答えだと思った。

 でも、心のどこかで返事を待っていた。

 

 

 さくらは二十歳になり、保護観察が解かれた。

 法的に償いが終わろうとも、あの拘置所の畳の部屋は昨日の事のように思い出せる。

 そして、2人を殺した感触も――。

 

(……本当に許されていいのかな)

 

 自問自答に答えなどなく、胸の奥にシコリとして残った。

 

 約束の冬はあっと言う間に訪れ、さくらは北海道へ来ていた。

 岸が運転するワゴン車に金田一(きんだいち)七瀬 美雪(ななせ みゆき)も乗っている。とても心強い。何故なら、生まれ育った土地と違い、大雪山の背氷村は極寒。

 

(ここが背氷村……来たんだっ、あたし……)

 

 目の前に広がる村は白銀に覆われ、別世界。

 雪景色は美しくとも、侵入を拒む突風にヒヤヒヤ。さくらは七瀬と手を繋ぎ、恐怖心を誤魔化した。

 

「さくらさん。あそこに~泊まるんだよ~」

「あたしも初めて来たけど……立派なお屋敷ねえ」

金田一(きんだいち)君、ペンションか何かなの?」

「いや……さくらも知ってる奴の家だよ」

 

 運転手の岸は一際、目立つ邸宅を指差す。川を挟んで同じ建物があり、そちらには道警のマークが記されていた。

 七瀬も和気藹々な雰囲気の中、金田一(きんだいち)の声は重くて、何かを予感させた。

 

 館の傍には断崖の川。他人を寄せ付けず、静寂に満ちていた。

 既に乗用車が何台も駐車され、そこへ縦列させた。

 途端に建物から人が飛び出て、ドアを開け放つ。その勢いにビビった。

 

「ようこそ、お越しくださいました! きゃ~、本当に和泉さ~んだあ♪ あ・た・し、覚えてる? 森下よ~♪」

「……ゴメンなさい」

 

 強風に負けぬ快活な挨拶をされたが、森下(もりした) 麗美(れいみ)に覚えはない。あの年のGW中、不動高校から突然に去った同級生だと後で何となく、薄らと思い出した。

 素直に謝れば、許してくれた。

 同窓との再会も驚いたが、何よりも邸宅の中に感動させられる。廊下に素晴らしい絵が飾られ、客人を出迎えた。

 

「……これ、全部……同じ画家が描いた絵?」

「はい、その通り♪ これなるは彼の天才画家・氷室 一聖の作品であ~る! 和泉さんのお父さんと同じ世界的に有名デショッ」

 

 さくらが感激していれば、森下は大げさに作者を説明する。ハッと高校時代を思い返す。

 長野県尾高山に墜落した旅客機、そこで亡くなっていた悲劇の画家。彼は死を隠された挙句、薄汚い金の亡者に財産を搾取されていた。

 そう、さくらにとっても他人事ではない(・・・・・・・)為に覚えていた。

 応接室へ通されれば、ひとつの絵画がさくらの心を揺らした。

 白い着物、ぐったりした子供を抱え、斧を手にした夜叉、所謂『雪夜叉』。

 氷室 一聖(ひむろ いっせい)画伯の代表作。

 悲しみと絶望、それに至る殺意が肌に触れるようだった。

 

(あたしも……こんな顔だった?)

 

 問いかければ、描かれた夜叉の頬に涙が伝った気がする。

 

「皆さん、寒かったでしょう。コーヒーとココア、紅茶もありますんで~」

「諏訪さん、ありがとう」

「……ああ~、生き返る~」

「諏訪さんはあたしと同じで、ここの管理を任されているのっ。普段は夏とか、暖かい季節だけでね。今回は和泉さんが来るから、オモテナシ♪」

「へえ……あれ? 金田一(きんだいち)君は?」

 

 恰幅の良い諏訪(すわ) 正子(まさこ)がオボンに温かい飲み物を用意し、七瀬や岸は縋る様にカップを掴む。森下に紹介され、気を取られている隙に金田一(きんだいち)の姿はない。

 彼が居ないだけで、さくらは一気に不安へ陥った。

 

金田一(きんだいち)君なら、彼と喋ってるんじゃない? ああ、あたしらの雇い主ね。さっきまでクマみたいにソワソワしてたくせに……部屋に引っ込んだな、ありゃあ」

「雇い主……って、ここの持ち主? そんな方ともお知り合いなんだ……凄い」

「会ったら、驚くと思うよ~。僕も驚いたし~」

 

 やれやれと森下は肩を竦め、温かいカップを飲み干す。さくらが感心していれば、岸はニヨニヨと意味深に笑う。誰も彼も、持ち主と面識があるようだ。

 きっと金田一(きんだいち)が解決した事件の関係者だろう。ちょっと安心した。

 

「和泉さんだっけ? お客様に頼んでワリィけど、金田一(きんだいち)さんへ持ってってくんね。廊下出て、ドアが開いた部屋いるんで。すぐ分かりますっ」

「あ……はい」

 

 オボンを渡され、諏訪にウィンクされる。さくらに持ち主への挨拶を促しているのだろう。

 半端に開いた扉から喧騒が聞こえ、そっと覗き込む。書斎らしく本棚と机が整然と置かれ、グラス、鬼の面、季節外れな蝉の置物まで飾られている。カーテンは全開、吹雪く外の景色も見えた。

 

「ご勝手にどうぞ、ごゆるりとお過ごしください。――ゆっくりしていってね!!! ――」

「うるせえな、いい加減に腹括れよ。その逃げ癖は変わんねえなあ、ホントッ」

 

 それよりも、金田一(きんだいち)と背を向けた男に目を向ける。緊迫した雰囲気だが、さくらは飲み物だけでも渡そうと決めた。

 

「失礼します。金田一(きんだいち)君……あの飲み物っ」

「諏訪さん、ありがとうございます。そこに置いて……」

……さくら!?

 

 記憶にあった背丈より高く、声も低い。

 それでも、かつては生徒会執行部を共にした同級生・金田(かねだ)だとすぐに気付いた。

 

「――裏切ったな、僕の気持ちを裏切ったな――」

「それはもうエエちゅうねん! さくら、改めて紹介するわ。……ここの持ち主、金田(かねだ)だ」

金田(かねだ)君……アナタが……持ち主?」

 

 ジロリッと金田一(きんだいち)を睨み、金田(かねだ)は恨めしい声を出す。慣れたやり取りらしいが、さくらはその迫力にたじろいでしまう。

 

「和泉さん、お久しぶりです。ええ、ようこそ……我が伯父にして、世界一の天才画家・氷室 一聖の画廊へ。歓迎いたします」

 

 丁寧な物腰は変わらず、されど他人行儀によるご挨拶。

 それにより、さくらは全て解った。金田(かねだ)と自分は決して、他人事ではなかった。だから、冬部弁護士へ依頼した。もしも、彼自身が弁護士であるならば、自ら法廷に立っただろう。

 金田(かねだ)はそういう人間だったのだ。さくらが逆の立場では決して、彼の為にそこまでしない。それを分かっていながら、彼はそうする。

 けれども、さくらは解っただけで聞いていない。手紙で返事を貰えぬならば、金田(かねだ)へ問いかける。今がその時だ。

 

金田(かねだ)君はどうして……あたしを助けてくれたの?」

「……っ」

「……金田(かねだ)

 

 声が出た瞬間、さくらは気付く。高校時代の自分がまだ、胸の奥に生きていた。

 ギョッとした金田(かねだ)が目を逸らせば、金田一(きんだいち)はそっと名を呼ぶ。その眼差しは推理を披露した時に似ており、逃がさない意思を感じた。

 

「俺……諏訪さんに挨拶して来る」

 

 飲み物を手にし、金田一(きんだいち)は部屋を去る際にドアも閉める。意外と容赦ない。

 パタンッとした音が、空気を変えた。

 さくらと金田(かねだ)、2人きりで呼吸音も聞こえぬ緊張感が壁となった。

 金田(かねだ)は何かを言いかけ、口を噤む。さくらと視線が絡めば、逸れる。その繰り返しだ。

 彼の迷いに声も掛けられない。

 

(手紙は……読んでくれた?)

 

 さくらが胸中で呟いた時、金田(かねだ)は一歩だけ近付いた。心を読まれたのかと思った。でも、お互いの手は届かない。彼の深呼吸から極度の緊張状態が伝わり、こちらも胃が竦む。

 何を言われても良い。聞きたい。

 応えるように金田(かねだ)の口がゆっくり、開いた。

 

「和泉さん、自分は貴女が…………」

「……! 金田(かねだ)君……」

 

 紡がれた言葉に嘘はない。確かな想いがそこにあった。

 さくらはただ、静かに頷いた。

 自分達に違いなんて(・・・・・)なかった(・・・・)。だって、彼の三眼目に吹雪は――。

 

 

 吹雪が止んだ夜明け。

 眩しい朝陽を浴びながら、さくらは歩く。氷で作られた橋の上、地面と変わらぬ堅い感触に安心した。

 冬の風は頬を刺すが、隣にいる〝彼〟のお陰で寧ろ、心地好い。

 

 ――ラベンダー畑に帰れないと悔やむ自分はもう、いない。

 




大河内「大河内だ。やれやれ……怪盗紳士は取り逃がすし、本庁は出張って来るし、酷い真相を知るわで散々だ。ん? ああ、あのお嬢さんについては……刑事としては何も言えんが、個人的には幸運を祈ろうじゃないか。さて、次回は『今度は上海人魚伝説殺人事件だそうで』!! 上海!? 金田一は高校生だろ!? どこまで事件に関わるつもりだ!」

和泉 さくら
北海道出身、1年前に不動高校へ転校してきた。事件前3カ月前、蒲生の個展で父親の絵を発見し、自力で真相を突き止める。怪盗紳士の名を語り、絵画を盗んで国際コンクールへ送り付けた
作中にて、自死を妨害されて逮捕
冬部弁護士、吉良画伯など周囲の人々に支えられ、自分自身を本当の意味で許した

ポアロ
ラベンダーの匂い嫌いの愛くるしい子犬。事件後は金田一家に住み、いくつかの事件にも登場。後にご近所さんへ引き取られる
作中にて、さくらの下へ帰った

岸 一成
美大出身、フリーター。事件後に和泉 信彦の絵に心を救われた話をし出す(さくらに直接、言えよ)。作中にて、足を刺されて入院。さくらと背氷村の約束を交わす

吉良 勘次郎
蒲生がパクりたくなる程の実力。近年は行き詰まり、酒におぼれる日々だった。和泉 宣彦の作品を高く評価。正式に彼の名としたのもおそらく、吉良の尽力と思われる
作中にて、さくらの後見人になり、支えになった

羽沢 星次
先代・羽沢氏の養子。性格は卑怯だが、慧眼は確かなモノ
作中にて、さくらの減刑の為に蒲生の悪評を集めた

元執事・小宮山 吾郎
事件後に重大な事実を暴露し、金田一達を驚かせた(今、言う!?)
「誰が女神を殺したか?」にモブ出演、原作者側の遊び心で青森名産・ラベンダーまんじゅうの屋台出してた(え~!?)
作中にて、その事実を明かす事なく、さくらの自称執事を生涯、続けた


森下 麗美
墓場島殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、背氷村邸宅の管理人
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