金田少年の生徒会日誌 作:珍明
はじめちゃんとのタンデムシーン書けると喜んだら、『37歳』の公式コラボで先にやってた(面白かった
誤字報告により、修正しました。ありがとうございます
司法解剖を終えた遺体は密葬され、彼女は骨壺に納まっていた。
コンクールの結果、
「また来てやってください」
娘を死なせた原因であるにも関わらず、家族の方は頭を下げてくれた。
帰り道、公園へ寄り道。桐生と
夏休み故、無邪気な小学生が多くて騒がしい。
ベンチを探し、先客の男達にビビる。左頬へ傷を持つ初老の男性ではなく、ミステリールポライター・
「金田君! 本当に会えましたね」
「……白神さん、こんにちは。初めまして、金田です」
「ハハハ、ご丁寧にどうも……黒沢です。私の方は以前から、アナタを知っていましてね。先日の演劇部公演、勝手ながら観させて頂きました。素晴らしいクリスティーンでしたよ」
背を向けた瞬間、目敏い白神に呼び止められる。不動高校の制服が目立ったのかもしれない。否、私服であろうとも気付かれただろう。
まさか、コンクールを観に来られた方と思わず、素直に照れた。
「金田君……こちら、『オペラ座館』オーナーです」
「……先日は我が校の生徒が大変、ご迷惑をお掛け致しました」
白神の紹介を聞き、一気に底冷えして頭を下げる。
「いえ、そんな金田さん……どうか、畏まらないでください。お急ぎでなければ、お時間を頂けたらと思います」
高校生の私情に利用された挙句、事件現場と化したリゾートホテル。
正直、不動高校演劇部は訴訟されてもおかしくないが、今日までホテル側は責任を問わず、賠償も求めず、演劇コンクールまで見届けてくれた。
心が広い、器が大きいなどの言葉では表せない。正に聖人のような方だ。
そんな屈託のない笑顔に呼ばれ、黒沢オーナーの隣へお行儀良く腰かける。彼を挟んだつもりが、
「白神さん、本当に会えたとはどういう意味ですか?」
「桜樹さんから、今日は桐生さんのご自宅へ伺うだろうと聞きましてね。小1時間程前に私達も焼香へ伺いました」
ふとした疑問を問えば、
「私がどうしても、金田さんと話したかったんです」
黒沢オーナーの慌てた弁明を聞き、
「実は『オペラ座館』の劇場を取り壊す前に一度、公演をしようと思います。知り合いに頼んだら、OKしてくれました。是非、金田さんに来て頂ければとお誘いに上がりました」
「劇場の取り壊しですか? それは事件が遭ったから……」
「金田君、違います。元々、老朽化の進んだ建物だったんですよ。あの合宿が終わった後に取り壊す予定でした。現場検証もあり、遅れただけです」
同級生を亡くした劇場。
突然の招待に困惑したのは一瞬、その言葉が反響して視界と脳髄を切り離す。黒沢オーナーと白神の声が遠くに聞こえる。折角の誘いだが、結論はすぐに出た。
「お気持ちだけ、頂いておきます。自分、劇場には行けません」
「……アナタなら、そう言うだろうと思っていました」
自分の表情や声に無礼があっても構わず、
招待は方便で本当はただ、
白神の視線を感じ、我に返る。
「金田さん、また会いましょう。必ずっ」
「はい、黒沢さん」
黒沢オーナーはクスクスと笑い、挨拶をくれた。彼との再会を望んだのは本心、ビックリ仰天な形で果たすのは秋の頃だ。
背氷村合宿にて、邸宅管理人の印象や美術雑誌の記者との遭遇を報告。黒沼先生が想定するより早く、危惧した展開らしい。道警の
「遠野君とやらには悪いですが、良い隠れ蓑になって頂きましょう。何でしたら、氷垣氏とご相談の上に相応のお礼を致します」
「遠野先輩にお礼は不要です。……と言いたのですが、迷惑をかけてばかりなので……先輩の意見を聞いてから、氷垣さんに相談したいと思います」
「フフフ……
「はいっ」
黒沼先生は冗談抜きで遠野先輩を利用する様子。心から前生徒会長へ詫びつつ、事務所を後にした。
バイク屋へ直行し、新車納品。
この日の為、事前に黒沼先生の事務所へ必要な書類を預けていた。彼も自前のバイクで出勤し、
光沢のある車体を目にした時、胸が弾けるような気分になった。
店員の説明を聞きながら、上の空だったらしく黒沼先生に何度も指先で注意された。
帰り道の公道、黒沼先生と並走しての金田宅へ帰宅。
新しいヘルメットの視界、乗り心地やグリップの握りも手に馴染む。これならば、何処までも遠くへ行けてしまう。胸の高鳴りが最高潮に達した時、脳髄の奥に尾高山が浮かんだ。
途端、激情は覚める。そこへ走らせても、待ち人はいない。
「
「……これに乗って、長野へ行きたいと思っただけです」
「行ったらええやん、
心配してくれる黒沼先生に気を取られ、庭にいる金田祖父から呑気な声をかけられる。感傷に浸っていた為、
「こんにちは~、黒沼先生。
「朝木……朝木 冬生ですかっ、彼は長野県出身の陶芸家でしたね。成程……良いと思うよ。
(あ~……そうだった……誘われてた~……)
体育祭の頃、人間国宝・
「せや、
「お祖父ちゃん、勝手に決めないでください! お祖母ちゃん、止めさせて!」
「黒沼先生、おいででしたの? お茶淹れますね」
「お構いなく」
善は急げと金田祖父は家の電話へダッシュ。
こうなれば、
なんと軽井沢へ行く段取りの真っ最中。
その旨を金田祖母が朝木陶工へ連絡したところ、快諾。折角だから、
「ここまで万全ですと、私の言う事はありません。
「いやいや、黒沼先生っ。朝木さんが話の分かる人でやったんですわ~♪」
「それだけ、
(勝手に色々と決まった……。確か……伯父さんの絵、朝木先生も持ってたよな……見に行くのに丁度良いかっ)
凡そ2時間近くも待たされたにも関わらず、黒沼先生は満足げ。
黒沼先生が縁側にいる嬉しさから、将棋に興じたツケが回ったとも言える。彼は親切にも書店まで付き添い、雲場村までの道路地図も選んでくれた。
「金田だよな? 生徒会のっ」
「岡持君、貴方もお買い物ですか?」
レジに並ぶ中、
「……荒木 比呂、自分達と同世代の方と聞きましたが……単行本も出ているのですね」
「この人、有名なの? 読書感想文のオススメコーナーにあったのを選んだだけで、作者については知らないなあ」
夏休み恒例の読書感想文。
去年、かほる先生の新刊を選んだ。今年は別の本も見ておこうとレジの列から離れ、オススメコーナーをうろつく。純文学から絵本、実録物まで並ぶ。
(かほる先生また新刊、出したな。ペルソナドール、流山 森太郎、右竜 あかね……あ、巴さんの出してる本ってこれかあ)
本独特の匂いに混ざり、悪臭が鼻に付く。キョロキョロと周囲を見回せば、明らかに浮浪者の男が週刊誌の列を見るとはなしに見ていた。
だが、浮浪者の髭に隠れた眼差しは雑誌ではない。更に隣のカタログスタンド、旅行のチラシだった。
「そうだった、そうだった~。金田、桜樹先輩から聞いたんだけど、演劇コンクール良かったらしいじゃん。おめでと~な」
「岡持君、ありがとうございます。学校以外で言われると照れますね」
レジ会計を終えた岡持に祝われ、
「……金田……?」
澱んだ雑音が耳を打ち、ビビる。浮浪者の掠れた声だと気付き、
「金田の知り合い?」
「……記憶にないので、初対面です」
「!?」
本当に心当たりがなく、
「あ、オジサン。待ってくれ」
「岡持君?」
ハッとした岡持は浮浪者を呼び止めに行き、二言三言、交わして戻る。相手もペコリと頭を下げ、今度はゆっくりと去って行った。
「ウチが弁当屋だから、住所を教えに行ったんだ。食べに来てくれるかもしれないしね」
「知らない方でしょう? 勇気ありますね」
「俺が見た感じ、悪い人には見えなかったしなあ。何か、困ってるなら桜樹先輩の出番だしっ」
「……学生の領分を弁えてください……」
岡持は既に、ミス研の悪影響を受けていた。
「
「ミス研の皆さんが面白いのです」
合流した黒沼先生は話を聞いていたらしく、クスクスと笑われる。
「長野へ行っている間、部活は大丈夫?」
「はい、今のところ……」
黒沼先生に演劇部を心配された瞬間、別の問題を思い返す。登校日をサボる件について、遠野先輩を説得せねばならない。
帰宅した直後、速攻で電話。
〈……もう、金田君は突然に言うんだからっ。閉庁日明けには絶対、学校へ来てくれよ。僕も行くからっ〉
「はい……」
――久々に頑張った。
天候は良好。
最低限の着替え、訪問先のお持たせをサイドバックへ詰め込む。バイクへしっかりと取り付け、貴重な品を入れたヒップバッグは腰に装着。赤いジャケットを着込み、グローブとヘルメットを仕上げに着ければ、準備万端。事情はどうであれ、遠出する楽しみに胸は弾んだ。
先ずは
「わあ! ピッカピカの新車……素敵」
「佐木1号の奴、俺の誕生日に家へ上がり込んでたんだぜ。金田との電話を切ったら、後ろにいてよ。マジ、ビビったわ」
「軽井沢へ行かれると聞いて、渡したい物があったんです。間に合ってよかった……ちゃんと読んでください。旅行雑誌の特集とか、信じちゃあダメですから」
「……キノコ図鑑ですか?」
七瀬は新車のバイクに見惚れ、
「おはよう、金田君。はじめがお世話になりますっ。これ少ないけど、ガソリン代とお昼ご飯代ね。はじめはこれ、お父さんが昔使ってゴーグル。ピカピカに磨いといて上げたわよ」」
「おはようございます、はじめちゃんのお母様。有難く頂戴致します」
「……俺への小遣いより多くね?」
「当たり前でしょう。ずっと運転するの、金田君なんだから」
「原付だと馬力や道路交通法でツーリングは現実的じゃないですから、2人乗り姿も撮りがいがあります♪」
七瀬と佐木が言い終えた時、
「
「確かに……登校日をサボるのは生徒会執行部として少々、遺憾ですっ」
突然、佐木にガッカリされた為、
(金田君……卒業式、サボってなかったかなあ)
「どの口が言うんだよ、金田」
「まあ、この子はっ。はじめが急ぐからでしょう。皆が誕生日を祝ってくれてるのに突然、軽井沢へ行く~なんて言い出してっ」
七瀬は無言を貫き、
詳細を知らず、遠出を許すなど放任主義にも程がある。
信頼故だろう。
「七瀬さんは今日もバイトですか?」
「うんっ、秋絵ちゃん達も遊びに来てくれるの。そう言うわけだから、はじめちゃん。あたしは夜にならないと、電話に出られないからね」
「……美雪、バイト先で変な奴に絡まれんなよっ。こっちは助けてやれねえんだからっ」
七瀬のバイトは好調らしく、今から楽しそうな雰囲気。
「何よ、その言い方。一緒に来て欲しいなら、そう言ってくれれば……」
「金田、行くぞ。出発してくれ。んじゃあ、行ってきますっ」
手元をもじもじさせ、不貞腐れた七瀬の言い分は遮られる。
「息子さん、お預かりします」
「先輩、行ってらっしゃい」
「はじめ、金田君に迷惑かけないでよ」
バイクへ跨り、背後に
「はじめちゃん、もっと腰に手を回してください。強くしていいのです」
「……お前がそれで良いなら……」
命を預かった使命感と緊張にゾワゾワと神経が高ぶった。
毎時間、休憩は必須。
時折、美しい風景を背景に一眼レフカメラ・ニコンFで記念撮影した。
群馬県へ突入した最初の休憩所で何故か、殺人事件現場に遭遇してしまう。
現場検証中の様子や野次馬を目にし、
通りすがりの石川県警・
先を急いでいた為、2人は野次馬解散に紛れて出発。
「はじめちゃん、流石ですね。パッと見ただけで、犯人を言い当ててしまわれた!」
「あれは被害者の武藤 恭一が持ってた蝉の抜け殻……」
ヘルメット越しの耳元にて
「そもそも、通りすがりの石川県警さん。決定打に欠けていただけで、真相は見抜いていたっぽいぜ」
「はじめちゃん、休暇中の猪川警部ですよ。いがみ合った相手だろうと……立てる事も忘れないのですね。しかし、良かったのですか? 剣持警部の友人だと言えば、貴方だけでも軽井沢へ乗せてもらえたでしょう。事件解決の功労者としてっ」
「そうして欲しいのか?」
「いいえ」
軽口を叩き合っても、安全運転は忘れない。
最後の休憩所にて、
「金田、矢ヶ崎公園を目指してくれ。そこで待ち合わせになった」
「はじめちゃん、軽井沢へ何をしに行くのですか?」
「……ああ、そろそろ……いいかな。『邪宗館』ってトコに用がある。その用に関しては俺だけの問題だ。だから、金田が一緒に来てくれて助かってる」
「……そうですか、お役に立てて幸いです」
問いかけた瞬間、
ここに七瀬がいれば、抱えた問題を語るのだろうか――ああ、悔しい。
「問題のお邪魔になるなら、自分は泊まる場所を別にしますか?」
「そこまで言ってねえ。あっちにはお前も泊めてもらえるように頼んでおいた。他のお客さんもいるから、丁度良いってよ」
「……失礼、意地悪を言いました。はじめちゃんと寝泊まりなんて、千葉で偶然にお会いした以来ですね。何だが、緊張します」
「……そういや、そうだったな。オッサンが柄にもなく、ロマンチックな事を言ってたっけ……」
感情が滲み出て、嫌味となる。剽軽な態度で
時々、暖簾に腕押しのような虚しさに襲われるのは気のせいだろう。
瑠璃子「金田一君が来る! 金田一君が来る♪ 金田一君が来るっ」
研太郎「井沢 研太郎です。閲覧ありがとうございます。補足すると金田一は『原付免許』、金田君は『普通二輪免許』と種類が違います。原作だと盆休みの後だっけ、早めに会えるなんて嬉しいぞ」
瑠璃子「ああ……揃うわ、あたし達……」
研太郎「さて、次回は『邪宗館の住人よ』!! 遠藤さん、車をお願いします」
白神 海人
オペラ座館・第三の殺人、ゲストキャラ。作中にて、ミス研の講師
黒沢 和馬
オペラ座館殺人事件と新たなる殺人、ゲストキャラ
猪川 将佐警部
黒死蝶殺人事件、ゲストキャラ。作中にて、群馬県で出会う