シャアにクリソツなクワトロ大尉()   作:星乃 望夢

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確認作業は頑張ってますが、誤字が所々にあって申し訳ない限りであり、支援していただいている方々には感謝の意を表する事しか出来ません。

また感想返しも滞っておりますが、全ての感想に目を通して励みにさせていただいております。

今後もこんな私をよろしくお願いします。


赤い彗星の軌跡

 

 一夜明けて私は、ウォンさんやエゥーゴの出資者の集まる会合に出る為に、何の変哲もないハンバーガーショップに入る。

 

 そこでは店員に変装するヘンケン艦長がカウンターに居るが、実際に注文を受けたらどうなるのか見てみたくもある衝動を抑えながら、カウンターへと歩み寄る。

 

「オーダーを」

 

「月見バーガーが食べ頃だ」

 

「ではそれで頼む」

 

 何処に目と耳があるかなど分からないのだからブレックス准将がグラナダに入った等という直接的な事を言うものでもない。

 

 ヘンケン艦長に別室に通された私は、エゥーゴの出資者らと対面する。

 

「遅くなりました。ウォンさんをはじめ、此処にいらっしゃる方々のご支援で初期目標は達成出来ました」

 

「クワトロ大尉、ご苦労」

 

 私はウォンさんと握手を交わし、推められた席へ座る。

 

「今日呼んだのは、君がジャブロー侵攻作戦に反対だと聞いているので、その意見を聞きたくてな」

 

「では先ず、戦力差がひとつと、地球上の破壊行動は地球を汚染します。それに、私はゴップ大将派閥の人間である為、率先してジャブロー攻撃を賛成できない立場にもあります。他にも、あの重力の井戸の底へ落ちたあとの脱出はどうするのです? 軍事的効果を考えれば、手練の多い連邦正規軍と戦うジャブロー戦よりも、宇宙に不慣れな兵の多いグリプスに仕掛ける方がこちらの被害も少なく済みます。グリプスを攻略できれば、近郊のルナツーも我々に呼応するでしょうし、ティターンズを宇宙から追い出せばコンペイトウやア・バオア・クーの連邦軍も味方に付けることは難しい事ではありません。よって、グリプスを撃滅する事が効果的だと考えております」

 

「しかしグリプスは所詮連邦軍の手足に過ぎん。グリプスを叩いたところで、第二のグリプスが生まれるのは道理だよ。だから連邦軍の本部であるジャブローを叩けば、グリプスも補給が無くなるわけだ」

 

「グリプスも兵器工廠として充分な能力があります。また、ルナツーがある限り、グリプスが干上がる事はありません」

 

「なら尚更ジャブローを叩いてしまう方が良い。それに、ジャブローを攻略できれば世界が我々エゥーゴを認めて民意を一挙に味方に付けられる」

 

「ウォンさんは出資者とばかり思っていましたが、政治家としての明もお持ちの様だ」

 

「フッ、バカを言え。それにだ、君が此処に居るということは、ゴップ大将も承知の上なのだよ」

 

「あまりあの御仁に借りは作りたくは無いという所ですが」

 

「貴官はジオンとも繫がっているのだろう? 新しく造らせた新型と戦艦もある。それを使って、ジャブローを叩け!」

 

「出資者は無理難題を仰る。了解しました。エゥーゴ艦隊はジャブローへの降下作戦を実施します。地上のエゥーゴの支援組織、カラバとの連携は?」

 

「連絡は取れてる。MSはカラバに渡して、パイロットは宇宙へ戻れば良い。君の戦力にペガサス級があるのだから可能だろう」

 

「アルビオンは連邦正規軍で、私へ個人的に協力してくれている部隊でありますので、同じ連邦軍と撃ち合わせる事は出来ませんよ」

 

「ならアーガマでも使って上がって来い」

 

「わかりました。バリュートとフライングアーマーについて、数を揃えていただきたいのですが」

 

「各サイドと月の支援で用意させる」

 

「では準備が整うまで、アーガマは先行偵察として出撃します」

 

「そうしてくれ。ついでにグラナダに居るティターンズを叩いて貰いたい」

 

「やれるだけのことはします」

 

「頼んだぞ、クワトロ大尉」

 

「はい」

 

 会合を終えたものの、やはり実感としてグリプスの実情を体感して来た私と違い、後方で数字を相手にする方々の関心をジャブローから外すことは出来なかった。

 

 やはりここがガノタである私の限界か。

 

 シャアの様な潜在的に人を惹きつける物があれば多少強硬姿勢も取れるだろうが、スポンサーの気分を損ねるわけにも行くまい。

 

 だから引き下がるしかないのが歯痒い所ではある。

 

「良いのか? クワトロ大尉」

 

「言うだけの事は言いました。あとは実施した後に今回の判断が正しいかどうか分かる事でしょう」

 

「現場を知らんのだ、現場を」

 

「とはいえスポンサーの意を反故にしてはエゥーゴの活動に支障が出ます。そこは上手く折衷案を取るしか無いでしょう。それに今回はあちらの要望を通したのですから、次はこちらの要望を通させますよ」

 

「抜け目がないな、クワトロ大尉」

 

「交渉とはそういうものです。ヘンケン艦長、次は艦隊戦を覚悟して貰いたい」

 

「任せろ。船乗り冥利に尽きるってもんだ」

 

 私はウォンさんにああは言ったが、相手がティターンズとなればアルビオン隊も動かせる。

 

 次の艦隊戦は少し楽が出来るだろう。

 

 ジャブロー降下作戦に先駆け、アーガマとアルビオンでグラナダのティターンズを叩く作戦を説明する為に、一度ミーティングをする通達を発した。

 

 私とヘンケン艦長はウォンさんの運転するエレカに乗って移動していた。

 

「これが献金で造られた船とはな。連邦軍の目を盗んで、良く建造したもんだ」

 

「連中はスペースノイドを知らな過ぎる。所詮は地球から宇宙を支配した気でいる奴らだ。大昔に新興国家のアメリカ大陸を欧州が嘗めていたのと同じだよ。我々スペースノイドを舐めてるから、こうして裏でやっている事も察知出来んのさ」

 

「解る話です」

 

 スペースノイドとアースノイドの溝、その対立構造や潜在的な物、確執。

 

 アニメで見ていた物よりも実際に体験してみるとでは、あのサイコフレームによる人の心の光を見せ、ラプラスの箱を開示した所で人々が変わらなかったのも頷ける。

 

 そうしてしまうと「ガンダム」という物語に終止符を打ってしまうというメタな視点は横に置き、地球連邦政府が議会を宇宙に上げるのはVガンダムの宇宙戦国時代まで行かなければならないとなると、人類に絶望しても無理からぬ話だ。

 

 今という時代で連邦議会の議員達を宇宙に上げるのはほぼ不可能だ。

 

 ならばサイド共栄圏構想を実現させるのも手ではあるが、そうした所でスペースノイドが自治権を主張しても、連邦政府は認めずに軍を差し向けるだろう。

 

 やはり今は、ティターンズを打倒しなければ時代は変えられんと言うことか。

 

 集合場所の建物が近くなると、カミーユの手を引くエマ中尉の姿が見えた。

 

「どうした、エマ中尉」

 

「あ、クワトロ大尉」

 

 おそらくエマ中尉が気を利かせてカミーユを連れてきたのだろう。

 

 その腕にはハロが抱えられていた。

 

「カミーユ君、君は良いのか?」

 

 史実と違って、私はカミーユをパイロットとして戦わせてはいない上、まだ保護した民間人の身の上だ。

 

 それをエマ中尉が連れてきたとなると、カミーユ自身がパイロットになることを選んだのではないかと考える。

 

「まだわかりません。でも、僕もガンダムを扱えるんです」

 

「君をアムロ・レイの再来だと担ぎ上げる気はない。それに、赤い彗星も居ることだ。目的のないまま戦場に出れば、君が死ぬ事になるぞ」

 

「でも、ティターンズは赦せないんですよ!」

 

「それはお父さまの恨み晴らしかな?」

 

「違います。僕だって…」

 

 続ける言葉を呑み込むカミーユに、さてどうした物かと頭を悩ませる。

 

「連れて来い。ニュータイプならば話を聞く必要がある」

 

「ウォンさん」

 

「クワトロ大尉が面倒を見るのだろう? ガンダムは多い方が良い」

 

 確かにガンダムが揃えば民意もまた味方に付け易いだろうが、それで覚悟も無い少年を戦場で使えば、私はクェスを使ったシャアと同類だ。

 

 その業さえ、私に背負えと言うか。

 

「君はまだ民間人の身だが、やるのであればその扱いはしないぞ?」

 

「はい!」

 

 真っ直ぐで純粋過ぎるのも考えものだな。

 

 ミーティングルームにはパイロットと各艦長が集合していた。

 

 その顔ぶれも錚々たる面子だ。

 

 アーガマ隊はヘンケン艦長以下私とクロエ、アポリー、ロベルト、エマ、レコア、トリッパー、バッチ、ボディ、おまけのカミーユ。

 

 モンブラン隊にアルビオン隊とマッケンジー中尉も居る。

 

「ではクワトロ大尉、説明を頼む」

 

「はい」

 

 ヘンケン艦長に言われ、私はディスプレイ画面に月の宙域図を出して説明に入る。

 

「我々エゥーゴの次の作戦は、地球連邦軍本部ジャブローへの降下攻略作戦となった」

 

 部屋に居る面々にどよめきが走る。

 

 無理も無い。

 

 ジャブローを攻めに行くというのだから、生半可な戦力では死にに行く様なものだ。

 

「その作戦の準備と並行し、先行偵察としてアーガマとモンブラン、アルビオンは先発。我々の動きを追うティターンズ艦隊を叩く事となった。つまりは艦隊戦を仕掛け、これを撃滅し、地球方面の連邦軍低軌道防衛衛星ラインを突破し、降下作戦の橋頭堡を築くのが第一段階となる。かなり過密なスケジュールとなるが、諸君ならば遂行できると私は確信している。質問がある者は受け付ける。何かあるか?」

 

 言葉を区切ってミーティングルームを見渡すが、手を上げる者は居なかった。

 

「シナプス艦長、よろしいですか?」

 

「我々はゴップ大将からクワトロ大尉の意向に沿えと命令されている。相手がティターンズならば、我々も働かせて貰おう」

 

「ありがとう御座います。艦隊指揮系統はアルビオンのシナプス大佐へ移しますが、艦の運用については各艦長判断に委ねます。MS各部隊は各所属艦での命令で動いて貰う。尚発進は各艦の補給が済み次第とし、本日のスケジュールに変更は無い。以上、解散!」

 

 私はミーティングを解散させると、バニング大尉のもとへと向かう。

 

「バニング大尉」

 

「おう、クワトロ大尉」

 

「ウラキ中尉とキース少尉をアーガマに貸していただきたいのですが」

 

「奴らを地球に降ろすのか?」

 

「重力下での戦闘経験は、我々エゥーゴにとっても貴重な戦力です」

 

「わかった。だがバリュートは使えんぞ?」

 

「フライングアーマーを手配します。ウラキ中尉!」

 

「はい! なんでしょうか、クワトロ大尉」

 

「君にフルバーニアンを返却する。重力下でも使える様に調整しておいてくれ」

 

「フルバーニアンを地上で?」

 

「バランサーを調節すれば出来るはずだ。フルバーニアンの推力なら、リック・ディアスよりも動ける」

 

「了解しました。コウ・ウラキ中尉、ガンダム1号機フルバーニアンを受領致します」

 

「頼んだ、ウラキ中尉。マッケンジー中尉!」

 

「はい、クワトロ大尉」

 

「Mk-Ⅱのテストだが、もう一機上げることになる」

 

「Mk-Ⅱを2機使うんですか?」

 

「君はガンダムタイプに慣れているし、カミーユ・ビダンにもMk-Ⅱを任せようと思っている」

 

「あの子をですか?」

 

「そうだ。ガンダムの扱い方をレクチャーしてやってくれ」

 

「わかりました」

 

「頼んだ。アポリー、ロベルト、エマ中尉」

 

「はっ」

 

「お呼びでしょうか」

 

「なんでしょうか、クワトロ大尉」

 

「エマ中尉にはシュツルム・ディアスを任せる。リック・ディアスの動かし方を叩き込んでくれ」

 

「大尉用の機体を任せるんですか?」

 

 私の決定に、アポリーが言う。

 

 まぁ、私用にリック・ディアスを強化した機体だ。

 

 そう思うのも無理はない。

 

「エマ中尉ならやれると判断した。私も百式のテストをしなければならん。今日はやることが山積みだぞ?」

 

「わかりました」

 

「リック・ディアスはジオン色の強い機体だ。ビシバシやるぞ?」

 

「よろしくお願いします」

 

 アポリーは私に返し、ロベルトがやる気を入れてエマ中尉に言う。

 

 さて、これで一通りのやる事は終わったか。

 

「クワトロ大尉さん」

 

「モンシア中尉か。何か?」

 

「ティターンズを叩くってのは本気なんですかい?」

 

「ああ。中尉も、ティターンズの蛮行は30バンチで知っていると思うが?」

 

「ま、構いませんがね。ただ、いつまでもジムじゃなくてもっと良い機体を回して貰えませんかね?」

 

「ジム・カスタム高機動型なら、今現状のエゥーゴのMSでもトップクラスの機体だが? 中尉はリック・ディアスは嫌いなのだろう?」

 

「まぁ、ジオンっぽい奴は乗り難くて肌に合わないんですけどね。大尉ならガンダムの1機や2機、用意出来るんじゃないですかい?」

 

「新型は開発しているが、今現状用意出来る戦力はこれで精一杯だ。それで納得して貰えるかな?」

 

「まぁ、大尉がそう仰られるのなら、我慢しますぜ」

 

「悪いがそうしてくれ」

 

「コラ、モンシア! クワトロ大尉に突っかかるんじゃない!」

 

「い、嫌ですねぇ隊長。ちょっとした世間話をしてただけですよ」

 

「ウソを言え、強請るヒマがあるならMSデッキを走って来い!」

 

「ちょ、待ってくださいよ隊長!」

 

「ウダウダ言ってる元気があるなら走れ!」

 

 不死身の第四小隊も、バニング大尉が健在であるから手綱は任せても大丈夫だろう。

 

 モンシア中尉はティターンズに入ったあとは流れに流れて火星のジオン残党へ合流するまでに至る。

 

 ジオン嫌いのあのモンシア中尉がだ。

 

 そんな道筋をたどるよりも、エゥーゴでバニング大尉の下に居るほうがマシではあると思いたい。

 

 アーガマに戻った私は百式の準備をしつつ、クロエに声を掛ける。

 

「良いのか、クロエ。レコア少尉に代わることも出来るぞ」

 

「はい。でも私がやりたいんです。それに、ドッキングすればあとは見ているだけですから」

 

「今回はテストだ。オオワシは元々無人運用する仕様だぞ?」

 

「貴方の傍を離れたくない。これは私のわがままです。駄目ですか?」

 

「私を社会的に抹殺する気か?」

 

「その時は一緒に私も死にます」

 

「怖い子だ…。ドッキングはオートでやるが、機械に頼るなよ?」

 

「はい。わかっています」

 

 頷くクロエの頭を軽く撫でて、私は百式のコックピットへと入る。

 

 百式は変形機構の脆弱さが判ったデルタガンダムをMSとして使える様にした機体だ。

 

 機動性は悪くはないが、グリプス戦役の終盤では息切れしていた。

 

 オオワシはGディフェンサー開発の実証評価試験機と銘打って開発し、百式とのドッキングをして使う仕様にした。

 

 百式のウィングバインダーの干渉は、バインダーを開いて倒す事で解消する改造を施されている。

 

 元々可変機の主翼となる部分であったからそれ程難しい物でもない。

 

 ただ百式が背負いものをしているというシルエットは慣れないものだ。

 

 Gディフェンサーのプロトタイプとして造ったオオワシだが、基本的に装着しっぱなしを想定しているものの、着脱機構とパイロットが乗れるようにもしている。

 

 これを装備している百式は機動力と火力を強化され、大気圏内でも飛んでいられるのだから、可変機やイカロス・ユニット、バイアラン辺りでなければ飛んでいられない今の時代のMSとしてはそれだけでアドバンテージを稼げる。

 

 世界が違えば零式弐型という物もある。

 

 無理のない機体だろう。

 

 ただビームを反射するにはOS開発が間に合わず、当たっても敵に向かって跳ね返すのではなく、当たった方向へただ反射するという所までしか開発出来ていないが、背中から不意を撃たれても致命傷を避けられるという点では使えるだろう。

 

 アンマンが見張られているのを承知の上でアーガマをアンマンから発進させる。

 

 アーガマの戦力が増えていれば不用意に仕掛けて来ないだろう。

 

 しかもそれが新型も複数居ては尚更だろう。

 

 しかしこうもコロニーの残骸が多いと、上から探すというのも難しい。

 

「クワトロ・バジーナ、百式、出るぞ!」

 

 私は百式を発進させ、軽く動かす事で機体の癖を把握する。

 

 やはり元々可変機であったが為に運動性も悪くはない。

 

 ガンダムMk-Ⅱやシュツルム・ディアス、リック・ディアスが発進し、最後にオオワシが発進する。

 

 金色の空間戦闘機の様な機体が百式の方へと向かってくる。

 

『クワトロ大尉』

 

「ああ、ドッキングする」

 

 オオワシの機首に見えるセンサー部と砲塔が折り畳まれ、エールストライカーの様な見た目となると、レーザーセンサーで誘導され、百式のバックパックとドッキングする。

 

『ドッキング終了』

 

「上出来だ。機動性をテストする。舌を噛まないようにな」

 

『はい』

 

 私は百式のバーニアを全開にして宇宙を駆ける。

 

 大気圏内を飛行させる程の推力はフリーダムガンダムを基準にするとフルバーニアンの倍以上となる。

 

 それを目指して造ったオオワシは中々の機動性を約束してくれる。

 

 リニアシートであるからフルバーニアン程のGも身体には掛からない。

 

 一通り動きを確認した所で、次は模擬戦をしてデータを取る。

 

 相手はリック・ディアス隊とガンダムMk-Ⅱだ。

 

 シュツルム・ディアスはまだ慣れていない上、カミーユも素人だ。

 

 だが、カミーユならやるな。

 

 私は百式を駆ってアポリーとロベルトのリック・ディアスへと向かう。

 

 そして両機の合間を抜けるが、反転が遅い。

 

 リック・ディアスのクレイバズーカをバルカンで撃ち落とし、それによって生じた爆煙の中を百式は突っ切る。

 

 爆煙でこちらの姿を見失った両機は、百式が爆煙の中から現れたことで一瞬の慌てが見えた。

 

 そしてビームライフルを撃ち、アポリーのリック・ディアスを撃墜すると、ロベルトのリック・ディアスがクレイバズーカを撃つのをビームライフルで撃ち落としつつ、弾頭を貫いたビームはそのままロベルトのリック・ディアスまでも貫く。

 

「アポリー、ロベルト、不甲斐ないぞ」

 

『も、申し訳ありません。大尉』

 

『やはりニュータイプは違いますな』

 

「この程度はベテランもやって来るぞ。お前たちにはアーガマのMS部隊を引っ張って貰わなければならない。この様な体たらくでは若いパイロットに笑われるぞ?」

 

『はっ』

 

『精進致します、大尉』

 

「それで良い。基礎から叩き直してくれ。マッケンジー中尉、Mk-Ⅱは行けるな?」

 

『はい。癖の方は掴めました』

 

「よろしい。では行くぞ!」

 

 今度はガンダムMk-Ⅱへと向かって百式を駆る。

 

 カミーユへのレクチャーをして貰っていたから、ガンダムMk-Ⅱは2機出ている。

 

 片方は白、片方は黒。

 

 動きから白にカミーユ、黒にマッケンジー中尉が乗っていると見た。

 

 さて、これが初陣となるカミーユの適性を見ることが出来るが。

 

 ビームライフルで牽制されるが、それを機体を捻るだけで最小限の回避をする。

 

 黒いガンダムMk-Ⅱと交差する瞬間、ビームライフルで右腕を撃ち抜き、そして過ぎ去った背後へ向けてオオワシのビーム砲を撃てば、黒いガンダムMk-Ⅱは撃墜判定となる。

 

 後に砲塔があるとこういう芸当も出来る。

 

 残るは白いガンダムMk-Ⅱだ。

 

 どう動かすかは一度乗っている上に、カミーユはジュニアMS大会でも優勝している実績がある。

 

 MPが直ぐにでも実戦で使えるレベルだと言ったのも嫌味ではない。

 

 相対速度を合わせる為に後退しながらビームライフルで引き撃ちするのは悪くない手だ。

 

 だがMk-Ⅱの推力ではオオワシを装備する百式を振り切る事は出来ない。

 

 ビームの火線を機体を捻り、バレルロールをして合間を縫う様に接近する。

 

 普通ならビームの火線が来る所を迂回したり、シールドで受けたりする物だが、ベテランともなればそうした無駄をせずに真っ直ぐ突っ込んで行く。

 

 それによって敵を動揺させた隙を突いて撃破する。

 

 もっとも、余程肝が据わっていなければやれない戦法ではあるが。

 

 ビームサーベルを抜き、ビームライフルのビームを切り払い、その返す刃でビームライフルを切り裂く。

 

 白いMk-Ⅱはバルカンを撃ってくるが、機体を半身に捻ってその火線から逃れ、そのまま百式の脚部で白いMk-Ⅱの頭部を後ろ回し蹴りで蹴り飛ばす。

 

 バランスを崩しながらも強引にスラスターを噴かして離脱する白いMk-Ⅱを、オオワシのビーム砲を展開し、ビームライフルと共に放てば、左脚と右肩を直撃し、そしてビームライフルのビームがコックピットを撃ち抜いた。

 

「戦法は悪くはないが、経験の差か」

 

 カミーユがガンダムMk-Ⅱを強奪してからは少なくとも何度か実戦に出ている筈だったのを、それをさせずに今日が初陣ともなればこんなものだろう。

 

 やはり戦う意思があっても戦う理由がなければ強くはなれない。

 

 ララァはアムロに守るべきものがないと言った。

 

 帰るべき故郷も無ければ、人を愛していないとも言った。

 

 しかし果たして、それはそうとも言えるがそうとも言えない。

 

 アムロが戦った理由は怒りから端を発している。

 

 そしてシャアへの闘争心、ホワイトベースを守るため。

 

 仲間を守るため、自身の命を守るため。

 

 母と互いに擦れ違い別れ、戦士としての死に様を見せられ、仲間を失い、淡い想いを寄せていた人を失い、大人を失い、そして父とも擦れ違い別れ、また仲間を失い、その果てにララァを撃ってしまった。

 

 それが戦争と言うものだが、確かに帰るべきホワイトベースは沈んだ。

 

 守るべきものも失って、それでもまだ残る仲間たちを想い導いた。

 

 そこで終われれば救いのある物だったのだろうが、時代は続くものだ。

 

 そしてアムロは戦う理由を失い、その再起は女に尻を叩かれたり、若者の戦いに触発された物であっても、最後はシャアを止めるためという使命感という名の運命であっただろう。

 

 ベルトーチカ・チルドレンならばひとりの父親ともなれたが、帰るべき場所があっても、アムロは虹の彼方へと消えていった。

 

 それも仕方がない。

 

 アムロ・レイとシャア・アズナブルの物語の結末は、そうあるものなのだろう。

 

 だからカミーユには、己の戦う意味と帰るべき場所を定めて貰いたい。

 

 そうすることで切り開ける未来もあるのだと、私は信じたい。

 

「クロエ、調子はどうだ?」

 

『大丈夫です。ご心配には及びません』

 

「そうか。無理はするなよ?」

 

『はい』

 

 それ程クロエに負担が掛からないように動いていたが、痩せ我慢をしていないとも限らない。

 

 我慢強い子だからな。

 

 とはいえ、さすがに早く終わらせ過ぎてしまったか。

 

「アストナージ、データは取れたな?」

 

『取れてますよ。でも、もう少し手加減してやってくださいよ』

 

「戦場では、そんな泣き言は通用せんよ」

 

『ま、そうですがね』

 

『あ、あの、お時間があるのならちょっとしたデータの検証をしたいのですが』

 

「任せる。好きにしてくれ」

 

『了解!』

 

 さて、どうなる物か。

 

『クワトロ大尉、後ろ!』

 

 クロエの言葉を耳にする前に、ロックオンアラートが最初に鳴った時点で百式を宙返りさせる。

 

 その流れのままビームサーベルを出力する。

 

 ビームサーベルとかち合うヒートホーク。

 

 機体の照合──MS-06S。

 

『赤いザク? きゃあっ』

 

「クロエはそこで見ていろ」

 

 私はオオワシを分離し、赤いザクを蹴って引き離す。

 

 ビームライフルを撃つが、銃口を向けてロックし、トリガーを引いた時には回避行動をされて、ビームは虚しく過ぎて行く。

 

 成る程、これがアムロ・レイが体感した赤い彗星か。

 

 しかし──。

 

「あの時のプレッシャーは感じられんな!」

 

 ア・バオア・クー。

 

 そこで私はジオングと撃ち合った。

 

 四方八方から撃たれるオールレンジ攻撃。

 

 アレに比べれば速い程度のザクは脅威でもなければ、速さならばゲルググの方が上であり、何よりもデータで再現された物に過ぎない。

 

 そして、私はクワトロ・バジーナだ。

 

 赤い彗星のザクに動揺することもない。

 

 ザクマシンガンを放つシャアザクの火線を回避しながらビームライフルを撃つ。

 

 それを回避したシャアザクだが、腕を振りかぶったと思うとシャアザクは赤いゲルググへと姿を変え、ビームナギナタを振り回して来た。

 

「なに!?」

 

 考えるよりも身体が先に動き、アポジモーターを噴かして間合いの外に出ながらバルカンを撃つ。

 

 シャアゲルググはそのバルカンを大きく後退して回避すると、今度はジオングに姿を変え、その5連装メガ粒子砲を放って来た。

 

「味な真似を!」

 

 その十本のビームの火線の隙間を縫って、私は百式を駆ってジオングへと向かう。

 

 腕部の5連装メガ粒子砲を飛ばし、頭部と腹部のメガ粒子砲も撃ってくるが、僅かな隙間に機体を滑り込ませて接近する。

 

「データはデータだな。そこっ!」

 

 ビームライフルを撃ち、こちらを狙う5連装メガ粒子砲の端末を撃ち抜く。

 

 背中からまたビームを撃たれたので宙返りで回避し、出力させたビームサーベルを投げ放って、残った5連装メガ粒子砲の端末を破壊する。

 

 そして振り向きながらビームライフルを放ち、ジオングの胸部を撃ち貫く。

 

 脱出した頭部がメガ粒子砲を放ってくるが、それをビームサーベルで切り払い、ビームライフルを撃ってジオングの頭部も撃墜する。

 

「良い催し物だった。次はあるのか?」

 

『っ、は、はい!』

 

 所詮はデータに過ぎない。

 

 これでは雪辱を果たせたとは言えないが。

 

 頭上からビームが飛んでくるのを、アポジモーターを噴かして回避する。

 

 漆黒の宇宙を切り裂く一筋の光。

 

 そして見えて来るのは──RX-78-2。

 

「ガンダム…!」

 

 こちらも反撃にビームを放つが、ガンダムはバレルロールで回避し、ビームライフルを撃ってくる。

 

 それをこちらもバレルロールで回避すると、ビームライフルを撃ちながら接近する。

 

 AMBAC機動で最小限の回避でビームをやり過ごすその動き、私がシミュレーターで勝ったのはジャブローで回収された時のデータが最後だったが、その動きはア・バオア・クーで見たものと同じだ。

 

 つまり、一番ニュータイプとして脂の乗っていた頃のデータと言える。

 

 ビームサーベルを出力し、振り被れば後に一歩下がられて回避される。

 

 そのままビームライフルを撃たれるが、半身になって躱し、ビームライフルの銃口を向けて放つが、こちらと同じ様にガンダムは半身になって躱しつつビームサーベルを抜き、振り下ろされるビームサーベルをビームサーベルで迎え撃つ。

 

「サーベルのパワーが負けている!? エネルギーの使い過ぎか!」

 

 ガンダムを蹴り飛ばしビームライフルを撃つが、それはガンダムの左腕を吹き飛ばすに終わり、反撃のビームライフルは百式の右肩を貫き、ビームライフルを失う。

 

「まだ終わらんよ!」

 

 私はバルカンを撃ちながら百式をガンダムへと向かわせる。

 

 ビームライフルを持つガンダムの方が有利だが、その射撃はデータで再現されたコンピューターの計算に過ぎない。

 

 アポジモーターを噴かしてフェイントを掛ければ、それに素直に反応する。

 

 そこはやはり機械だな。

 

 学習型コンピューターのデータとはいえ、機械には限界がある。

 

「うおおおおお!!!!」

 

 間合いに入った私は、百式の脚部を振り上げ、ガンダムのビームライフルを蹴り飛ばす。

 

 その反動を利用してビームサーベルを抜くガンダムだが、脚を振り上げた勢いでサマーソルトの様に宙返りした百式は、ビームサーベルを抜かれる腕を切り飛ばし、そして返す刃でガンダムの胴体を貫いた。

 

「これで終わりだな?」

 

『あ、は、はい。ありがとう御座います、クワトロ大尉』

 

「中々楽しめた。レポートは3枚にまけておこう」

 

『わ、わかりました』

 

『ほれみろ。クワトロ大尉がそう簡単に墜ちるわけないんだよ』

 

 機体の性能差を考えれば百式でガンダムに負けていては示しがつかない。

 

 だが、やはり百式では限界もある。

 

 とはいえ、私の本命の為の繋ぎだ。

 

 それに百式は私が使うわけでもない。

 

 悪くはない機体ではあるが、こんなものだろう。

 

「よし、全機アーガマへ帰投。休憩を挟んだら次のテストを始めるぞ!」

 

 この胸に湧き上がる達成感と高揚。

 

 ほとほと私はパイロットだというものだ。

 

 

 

 

 

 

 

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