シャアにクリソツなクワトロ大尉()   作:星乃 望夢

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ジャブローの風

 

 ガルダ級の滑走路へ到着すると、リック・ディアスとネモが数機待機していた。

 

『クワトロ大尉!』

 

「ロベルトか。首尾はどうなっている」

 

 背から降り立つガンダムMk-Ⅱ試作0号機の横へMS形態に変形させたセイバーを降り立たせる。

 

『はっ。ガンダムとシュツルム・ディアスを中心にエリア1の制圧をしています。ガルダも2機を確保しております』

 

「分かった。ロベルトはここでネモ隊と待て。私は内部制圧に加わる」

 

『了解しました。しかし、妙ではありませんか? ジャブローの抵抗があまりにも少なすぎます。出てくるMSも旧式ばかりです』

 

「確かにそうだな。よし、ロベルト、捕虜を尋問してジャブローの現状を聞き出せ」

 

『はっ。それと、ジャブロー内部では強力な電波ジャミングが行われているようで、短距離無線も通じ難く、有線またはレーザー通信しか使えません』

 

「了解した。味方の損耗については分かるか?」

 

『ジャブローへと降下出来たのは確認出来た数で194機となっております。これだけのMSがあればジャブローの制圧も可能かと』

 

「そうでなければ態々重力の井戸の底まで降りてきたのが無駄足というものだ。ロベルト、あとを任せるぞ」

 

『はっ』

 

 ロベルトへと指示を出した私は、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機の前にセイバーを向かい合わせてコックピットハッチを開けると、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機のハッチも開けられる。

 

「どういうつもりです、クワトロ大尉」

 

「そのガンダムでは君の裏切りが露呈する。そうなっては今後の動きが難しくなる」

 

 ここまで来る間は見られた敵機はあらかた撃破して、死人に口なしとなっている。

 

 煙に巻くのならばガンダムMk-Ⅱ試作0号機を今使うのは得策ではない。

 

「分かる話ではあるが」

 

「なに、機体にアテはある」

 

 セイバーの手を架け橋代わりにコックピットの前へと持って行くと、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機のコックピットから出て来たアムロをセイバーのコックピットへと招き入れる。

 

「見たことの無いコックピットだな」

 

 セイバーのコックピットを見渡すアムロ。

 

 連邦でもジオンでも無く、普及している全天周囲モニター・リニアシートでもないセイバーのコックピット。

 

 レイアウトは覚えている限り準拠したからな。

 

 態々別規格にして、全天周囲モニター・リニアシートにしていないのは拘りだと言わせてもらおう。

 

 それに私はどちらかと言えばこうしたメカメカしい第一世代のコックピットの方が落ち着く。

 

 生粋のアースノイドであった私の感覚は、同じ程度の時間をスペースノイドとして育ち、無重力の星の海に適応したと言っても、私自身は地球の重力に魂を縛られたオールドタイプである事に変わりはない。

 

 初めて無重力の宇宙を経験した時の感動は今でも忘れてはいない。

 

 スペースノイドとなれば隣町へ電車で行く感覚で隣のバンチへと渡る事が出来る。

 

 定期運行される連絡便に乗り、宇宙へと出た時、私は本当の意味で宇宙世紀に生きているのだと実感した。

 

 宇宙へ何処までも自分の意識を拡げられそうなあの感覚。

 

 前世では宇宙に出れるのは厳しい訓練に耐え、様々な専門知識を学んだ一握りの宇宙飛行士だけだ。

 

 それ程、地上と宇宙は隔絶した距離だった。

 

 しかし宇宙に人が住むことが当たり前の宇宙世紀は、スペースノイドならば散歩感覚で宇宙へ出ることが出来る。

 

 とはいえ自分の住むコロニーの中で生活は完結してしまえる為、ネットで知り合った友人と会う為だとか、会社の業務で他のバンチやコロニーサイドへ行く用事がある為だとか、観光の為に出るだとかという理由が無ければ自分の住むコロニーから出ることもなく過ごすスペースノイドの方が大半であり、そうして人工の大地と人工の重力に身を任せていればスペースノイドであろうと重力に魂を縛られているとも言える。

 

 スペースノイドだからとて、人類全てがニュータイプになれる訳が無い。

 

 ハマーンが言った、アステロイドベルトという火星と木星の間まで行っても、ザビ家再興を掲げながらも地球に憧れ、固執していた自身を指して魂を重力に引かれていると言ったのは真理だ。

 

 真にニュータイプというのならば、ニュータイプにとって地球圏は狭すぎると思って木星へと旅立ったジュドーや、太陽系から旅立ったグレイ・ストーク、そして正暦ではニュータイプは地球圏から遥か彼方への星々へと旅立ち、ニュータイプと呼べる人種は地球圏には残っていないと言う。

 

 宇宙世紀150年を数えて世間一般なニュータイプとは違うサイキッカーと呼ばれる存在がようやく現れる程度なのだ。

 

 急いだ所で人類全てがニュータイプになれるわけでもない。

 

 アクシズを地球に落とし、人の住めない星とした所で宇宙に出た人間の適応能力としぶとさを低く見積もりすぎている。

 

 大量のコロニーが落ち、人類の99%が死滅しても人は地球で逞しく生き続け、科学文明をリセットしようとも人は存続し続けた。

 

 核の冬を齎そうとも生き残った人々がスペースノイドを怨み、第二のティターンズやジオンを生むのは道理である。

 

 そうなった所で武力で抑え込むと考えていたのだろうが、そうした所で反感を育ててればグリプス戦役の再来である事をあのシャアが考えていなかったとは考えられない。

 

 そんなもしもを考えても仕方が無い、案外ギレンの野望にあるEDの様に上手くやっていたのだろう。

 

 既にエリア1の制圧はほぼ完了しているらしく、そこらにはジムスナイパー・カスタムやジム・キャノンの残骸が転がっている。

 

 流石に一年戦争期のMSVとはいえ、7年もの間進化した最新鋭機の大群が押し寄せてくれば一溜りもない。

 

 それでもMSがあるだけでも戦力にはなる。

 

 歩兵でMSを相手にするのは絶望的だからな。

 

 対MSロケット砲や、間接部を狙って転倒させる事は出来ても正面の装甲を抜くのは戦車砲を使わなければ厳しい。

 

 MSのまま長時間飛び続けられるというのはやはり便利だ。

 

 完成を急がずに妥協せず、日夜技術開発を続けたのは無駄ではなかった。

 

 しかしそれでもまだ隠れ潜んでいた残敵や、残骸に見せかけて大破した機体に紛れてこちらを狙おうとする者も居た為、そうした相手に向かってスーパーフォルティスやアムフォルタスを叩き込んだり、シールドブーメランを射出して切り裂く。

 

「何処へ向かっているんです」

 

「このジャブローは私の地上勤務での拠点でもある。その時に使っていた機体も当然あるのさ」

 

 ジャブローを防衛する部隊はエゥーゴの降下部隊を迎撃する為にあちらこちらに分散していたのを、制圧部隊の本隊へ向けて集結したのだろう、殆ど素通りに近く移動が出来る。

 

 それでも警備の為に残っている機体を無力化する。

 

 シートベルトも着けていない人間を乗せている為に無茶な機動は出来ないが、シールドブーメランで防御は出来るし、アムフォルタスならば一発でMSの腕や脚を消し飛ばせる。

 

 武器を奪い擱座した機体は無視して進めば、MS用の格納庫の一つへと辿り着く。

 

「ここは」

 

「宇宙艦船用のドックとそれに載せるためのMSが置かれている格納庫だ。幾ら数が欲しくても、アレを動かせる人間は私以外にいないから持ち出されてはいないだろう」

 

 それはジャブローが引っ越し中であっても、引っ越ししているのはティターンズとティターンズ派の連邦軍であり、今残っているのはそうしたティターンズ派に命令された連邦軍の部隊だろう。

 

 分かり易い例えを言うのならば、アラスカ基地を囮にサイクロプスでザフトの戦力を壊滅させる為、主流派の大西洋連邦の部隊はアラスカ基地を早々に脱出。

 

 残されたユーラシア連邦やアークエンジェル、主流派に属さない大西洋連邦の部隊も居たのだろうとはアークエンジェルへと戻ったムウ・ラ・フラガの言葉で考証する事も出来る。

 

 つまり今我々は攻め込むザフト側の立場であり、防戦している部隊はそうして切り捨てられた部隊だとしても職務の為に戦っていると言える。

 

 だからこそ、分かり易い目印が必要となる。

 

 セイバーから降り、カードキーを端末へとスライドさせれば扉が開く。

 

「あれは…、ズゴック?」

 

 照明に照らされたのは赤いズゴック。

 

 しかしその頭部には特徴的なヒートラムが装備されている。

 

 両腕にアイアン・ネイルがあるが、その腕にクロー・シールドも装備されている。

 

 私が地上でジオン残党を鎮圧する為に用意された、ラムズゴックである。

 

 勿論、連邦軍の赤い彗星を喧伝する為にシャアズゴックのカラーリングとなっているが、その背中にはコルベット・ブースターを改良した飛行ユニットが装備されている。

 

 それは水陸両用に加えて上空からの奇襲能力も欲しかったという理由をでっち上げて我を通した結果の姿と言える。

 

 ラムズゴックの改修理由でもあるアイアン・ネイルを再度取り付けているのはやはりそうした掴めるクローを無くすと対MS戦で使い難い上に、3本指のクローでも有るのと無いのでは野戦作業の効率がダンチなのだ。

 

 姿としてはラムズゴックがコルベットブースターを背負っているような物で、スピードは落ちるが、このままでも水中での戦闘は可能であるし、ズゴック譲りの高い陸上での格闘戦能力、そしてコルベットブースターによる空中戦にも対応している。

 

 ズゴックS型をベースとしてラムズゴックのヒートラムやクロー・シールドを装着し、反応速度を高める為にマグネット・コーティングやバーニアも強化し、総合性能は陸上戦に限ればあと10年は戦えるパワーがある。

 

 というよりズゴックのカタログスペックがギラドーガにも負けていないと言うのがジオン驚異のメカニズムと言えば良いのか?

 

 とはいえズゴックそのままの超硬スチール合金では重すぎる為、潜航能力を多少犠牲にしつつも軽いチタン合金セラミック複合材に変えてある。

 

 だから空も飛べるというわけだが、マグネット・コーティングを施した事による機体操作性の繊細さとズゴックが元々パイロットに操作性に癖があると評される気難しい機体であれば、水陸空中対応のマルチファイターであるこのラムズゴックを扱えるパイロットはそうは居ないだろう。

 

 ふむ、我儘を言ってZGMF-MM07を再現したのは間違いではなかったな。

 

 MSハンガーの昇降機に乗ってズゴックのコックピットに乗る。

 

 こちらは造った時期が時期であるからあのアスランのズゴックの様に全天周囲モニターでは無く、連邦軍の第一世代のコックピットである。

 

 電源を入れ、機体を立ち上げる。

 

 つい2年前に地球に降りて仕事をしていた時にも乗った上、この機体はゴップ大将の管理管轄でもある為に整備は行き届いている。

 

 本当ならばこの上にもう一つ被り物をするのだが、今回は目印になるのが目的の上にクロエも置いてきてしまったからお預けだ。

 

 ちなみにそちらはハイパージャマーや光学迷彩を使って潜入や偵察、強襲用のパッケージとなっている。

 

 やるならやるまでとことんやるのがガノタの拘りというものさ。

 

 幸いにしてそうした技術はブラックライダーで検証されてもいたから技術開発は簡単だったのも要因である。

 

「クワトロ・バジーナ、ズゴック、出る」

 

 コルベットブースターの翼に武装がオートで装着されたのを確認し、開放されたMSハンガーから歩み出すズゴック。

 

 やはりジャブローで赤い彗星となればズゴックに乗らずなんとする。

 

『そんな旧式の機体で大丈夫なのか?』

 

「フッ、私の愛機は凶暴かつ、充分速いさ」

 

 背中のコルベットブースターに火を入れ、本来備わっている背中と脚部の核熱ジェットエンジンも合わせれば軽快なホバー移動を可能とする。

 

「君にはそのガンダムで戦ってもらう。やり方は先程見ていただろう?」

 

『無茶を言う』

 

「アムロ・レイならばそれくらい出来て貰わねば、赤い彗星のライバルの名が泣くぞ」

 

『煽てた所で』

 

 しかしそう言いつつも、セイバーを動かすその機動に淀みはない。

 

 アムロをセイバーに乗せたのも、ガンダムである上にサイコフレームとバイオセンサーが備わっていれば操縦難易度も低い。

 

 あれもちゃんとしたガンダムだからな。

 

 変わってズゴックは私があれこれ要件を付けていったら私以外には乗れない機体となってしまっている。

 

 ただでさえ癖のあるズゴックにコルベットブースターを背負っているが故のバランスの悪さがある。

 

 まぁ、何処をどういう調整をしたか分かっていれば苦も無く乗れるのだが、それを今の忙しい時にアムロへと押し付けるのならば、セイバーにアムロを乗せる方が即戦力となる。

 

 来た道を戻りながら、エリア2へと差し掛かる端まで来たのだが、予想以上に抵抗にあっているのか、ビルを影にして様子を伺うエゥーゴの部隊と合流出来た。

 

『赤いズゴック!? 一年戦争で赤い彗星のシャアが乗っていたって噂の。でもあれはラムズゴックに、背中のはコルベットブースターなのか?』

 

「ウラキ中尉、現状はどうなっている」

 

『クワトロ大尉! はっ、はい。ここから奥がエリア2ですが、ティターンズの抵抗にあっていて中々進む事が出来ず、無理に進もうとすると十字砲火に晒され、また施設が入り組んでいて避ける場所も無ければ部隊を展開する余地も無く』

 

「成る程、つまりはその十字砲火を単機で突破し、敵のペースを崩せば良いのだな?」

 

『理屈はそうですが…』

 

「言ったのは私だ。私が先行する。ウラキ中尉は私の後に続け。フルバーニアンの推力ならば重力に縛られることもない。柔軟に頭を使う事だ」

 

『了解しました。やってみます。キース!』

 

『わかってるって。目眩ましをやってやるよ!』

 

 キース少尉の乗るジム・キャノンⅡがビーム・キャノンを連射し、地面を抉り土煙と閃光が視界を遮るのを見つつ、ズゴックを吶喊させる。

 

 こちらの様子を見る為に建物の影から身を乗り出したジムⅡがビームライフルを撃ってくるが、それを機体をバレルロールさせて回避し、そのジムⅡの眼前に着地しつつ、勢いに滑るまま右腕のアイアン・ネイルとクロー・シールドをジムⅡの頭部へと叩き込む。

 

 頭部を貫通したジムⅡの他にも横に隠れていたジムⅡへ左腕のメガ粒子砲を向けて撃ち放ってビームライフルを握る右腕と左脚を撃ち抜いて無力化する。

 

 そしてクローを頭部へと突き刺したジムⅡを蹴り上げて地面に転がす。

 

 さらに横からビームサーベルを抜いて振り下ろしてくるジムⅡへはコルベットブースターの翼に装備されているビームサーベルを起動し、機体を翻してビームブレイドで振り下ろされるビームサーベルを打ち払い、振り向き直ったズゴックでビームサーベルを弾かれたジムⅡの両腕を掴み上げる。

 

 ズゴックのエアインテークから排熱が行われる。

 

 そしてこのズゴックのアイアン・ネイルはただのクローではない。

 

 高周波振動によって赤熱・高温化させ、ジムⅡの腕を溶断する。

 

 両腕を無くしたジムⅡを蹴り飛ばして宙返りしつつコルベットブースターに点火し、迫る天井を両腕のクローで突き、機体を急降下させる。

 

 こちらを撃ち落とそうとジムⅡやジム・クゥエルがビームライフルを撃ってくるが、身を屈める事でビームの火線をやり過ごし、そして着地点に居た3機の中心に降り立ち、左右のジムⅡを両腕のメガ粒子砲を放って無力化する。

 

 正面のジム・クゥエルはビームサーベルを引き抜いて振り下ろそうとしてくるが、それをヒートラムを展開して胸部に突き刺す。

 

 ヒートラムに衝突したジム・クゥエルはビームサーベルを取りこぼしながら反動で後ろへと倒れ込む。

 

 ヒートラムを格納し、ズゴックを立ち上がらせる。

 

『結局お一人で突破してしまいましたね』

 

「これくらいならば朝飯前だ。とはいえキース少尉の目眩ましが的確だったお陰でもある」

 

『えっへへ、ありがとうございます!』

 

 ウラキ中尉とキース少尉と合流しつつ、ここまで空き家のジャブローにMSが居残っているのに首を傾げる。

 

 アムロ・レイと戦っていたクワトロが知る由もないが、エゥーゴの降下作戦の大規模さにティターンズ側も掻き集められるだけのMSを集めた。

 

 一線を退いたジム・クゥエルが混じっていたのもその為であり、ジムⅡが多いのもルナツーからMSを引っ張り出したからだ。

 

 ルナツーには一年戦争におけるジムの生産設備がある為に、宇宙で運用されるジムⅡの一大生産拠点となっている。

 

 逆にジオン系の生産設備のあるコンペイトウやア・バオア・クーでハイザックが組み上げられている。

 

 それらはジオン残党への心理的効果と、ジムとザク譲りの操縦性もあって優先的にグリプスへと運び込まれティターンズによって運用されている。

 

 ハイザックはその操縦性から新兵向けの機体として、戦後鹵獲したザクⅡF2型などで訓練していたパイロットにも受け入れられ受けが良かったが、ビームライフルとビームサーベルを同時にドライブ出来ないという欠点、そしてジオンのザクに心象的に苦手意識や忌避感を持つ一年戦争からのパイロットは自身のジムが改装でき、ビーム兵器の運用も問題ないジムⅡを好む傾向にある。

 

 一部のエースパイロットは回されたジム・カスタムやエゥーゴではジム・カスタム高機動型を使っているが、一般兵はジムⅡを使っている事が多く、ジムⅡ=歴戦のパイロットという指標もある程だ。

 

『クワトロ大尉、後方のロベルトから捕虜を尋問したところ、ジャブローは引っ越し中との事です』

 

「このもの静けさを見ればそうだろうな。他にはあるのか?」

 

『はっ。それが、地下に核爆弾があり、それの起爆スイッチが押されたと言っている将校がおりまして』

 

「核か……。アポリー、先行した連中を呼び戻せ。ウラキ中尉、すまないが逃げ遅れが出ないように行ってくれ。全部隊に通達しろ、ジャブローに自爆する用意がある、直ちに撤退準備に入らせろ! アポリー、その証言をする将校のもとへ案内してくれ」

 

『了解!』

 

『はっ!』

 

 アポリーとウラキ中尉に指示を出し、さて、ここからどうなるかと思考を巡らせる。

 

 あのジャミトフが地球を汚染する手を取るとは考えられん。

 

 であればやはり、ジャブローの核自爆はバスクの指示による物だろう。

 

 スペースノイドアレルギーも行き過ぎてそれは虐殺に他ならない物であるが、そうした良識の欠落した指揮官を使わなければならないのも、連邦軍がジオンのソーラ・レイやデラーズ・フリートによる観艦式への核攻撃で多くの将兵が宇宙へと散ってしまったが故だ。

 

 連邦宇宙軍が疲弊してしまった影響で、そうした暴走を抑えられる者が居なくなってしまった。

 

 バスクやジャマイカンが大きな顔を出来るのはティターンズであることもそうだが、そうした背景もある。

 

 まったく、私がアナベル・ガトーを止めることが出来ていれば変わったのだろうが、ジム・カスタム高機動型でサイサリスを抑えるのは無理があった。

 

 いや、それは言い訳でしかないな。

 

『どうするのだ、クワトロ大尉』

 

「核爆弾の存在が本当ならば脱出する。カイ・シデンとの合流は君に任せる。セイバーならば脱出も難しくはない」

 

『了解した。あとは任せて貰おう』

 

「頼む」

 

 私はアムロへと答えながらズゴックを駆ってアポリーのリック・ディアスへと続く。

 

 核があるのは確かだろう。

 

 なにしろこの連邦軍の中枢を明け渡すことも、ましてや核で吹き飛ばすことも連邦軍上層部は考えていないのだから、地下150mという浅い場所に埋められているのも突貫工事で敷設した為だろう。

 

 最初から自爆用の核爆弾を敷設するのならばもっと深くへ埋める。

 

 つまりはこのジャブローをエサにすると決めた時に掘って埋めたと考えられる。

 

 私は有線回線の端末を見つけ、ズゴックから降りて番号を打ち込んだ。

 

 数回のコールの後、電話が繋がった。

 

『私だ』

 

 佇まいを直して、私は口を開いた。

 

「クワトロ・バジーナであります。ご無沙汰しております、ゴップ大将」

 

 

 

 

 

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