シャアにクリソツなクワトロ大尉()   作:星乃 望夢

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これが若さか、と言いたかったクワトロ・バジーナ

 

 ゴップ大将との会談を終えた私は、イングリッドを伴って本隊と合流する事にした。

 

 核爆弾の解除こそしたが、未だNジャマーは起動させたままとなっている。

 

 それは単純に、逃げ遅れてしまった連邦軍やティターンズが外部への応援を呼べない様にする為だ。

 

 折角空き家のジャブローを少ない労力で手に入れたと言うのに、応援を呼ばれてさらに一戦交えるというのは無駄でしかない。

 

 時間になっても起爆しなかった核爆弾の調査ないし、私が戻るまでアウドムラとスードリは上空待機をしているだろう。

 

「結局さ、養父殿(おやじどの)は私達に何をさせたいわけ?」

 

「難しい話だが、ゴップ大将は人類が衰退する事を望んではいない。一年戦争によって人類の半数が死に至り、コロニー落としと戦乱によって太平洋側の沿岸地域や北米大陸の大都市と言った、世界経済に大打撃を被った上に、各サイドも深い傷を負った事で、地球圏の経済混乱は7年が経とうとも安定しているとは言い切れない。ジャミトフは戦争を起こす事で地球に居続ける人々を抹殺しようとしている。だが地球とそこに居る人々を愛するゴップ大将はそれを容認する事はない」

 

「赤い彗星に力を貸してるのも、利害が一致してるからってわけね」

 

「そういう事だ。閣下は人類の存続を確定する為に必要な事をしているだけだ。私が人類に仇なす者となれば、この首も無事では済まないということさ」

 

「つまり私はその見張り役ってところか」

 

「どうかな。寝首を掻く為の死神の鎌やもしれん」

 

「ムリムリ。私だって早死にしたくないし」

 

 私はイングリッドと会話しつつ、ガルダ級の滑走路に出ると、思った通りアウドムラとスードリが上空で待機しているのを見て、ズゴックの両腕を振り、そして下へと振り下ろす。

 

 やはり人型機動兵器はこうした無線が通じずとも身振り手振り、ジェスチャーやハンドサインまでも使えて意思疎通出来るのだからとても便利だ。

 

 AMBACや機体を捻ったりと、人型であるからこその、人間と同じ動きでの回避行動というのは馬鹿にならない物で、これは戦闘機やMAには出来ない小回りと運動性の高さがある。

 

 アウドムラとスードリが着陸し、両機から出て来るガンダムMk-Ⅱやシュツルム・ディアス、リック・ディアス隊、フルバーニアン、数機のネモの前にズゴックを立たせ、コックピットの外に持って来た腕を足場にして立ち、仲間たちを見回して口を開いた。

 

「諸君らの働きで、無事ジャブローを制圧する事が出来た。見ての通り、核爆弾の解除にも成功した。各自交代で今日の疲れを癒やしてくれ。アポリー、ロベルト、エマ中尉、ウラキ中尉はすまないが残ってくれ。今後の方針を確認する。それと本日付けで私は大尉を外れ、大佐に昇進した。以後よろしく頼む。以上、解散!」

 

 その場を解散させると、大仕事を終えた気の緩みが伝播する。

 

 シュツルム・ディアスとアポリーとロベルトのリック・ディアス、フルバーニアンのコックピットからエマ中尉とアポリー、ロベルト、ウラキ中尉が出て来るが、その場に残ったガンダムMk-Ⅱもコックピットを開いてカミーユが出て来た。

 

「どうした、カミーユ。もう休んで構わないぞ」

 

「あ、いえ。居ちゃダメですか?」

 

「パイロットは休むのも仕事だ。君はジャブロー攻略戦で先陣を切った我々の勝利の立役者だ。明日に疲れを残しても言い訳は聞かんぞ」

 

「わかっています」

 

「なら残る事を許可する」

 

 ガンダムに乗っていることで増長はあるが、大人の話に混じって身の振り方を自分なりに考えたいとするのを子供だからと遠ざけるのも違うものだ。

 

 大人と子供の境目の思春期とは難しい時期なのだ。

 

 そのまま子供で居たいという我儘と、しかし大人の世界への憧れもあって大人の話に混じりたがる。

 

 それを大人の話だからと突っぱねる事は容易いが、カミーユは実際にガンダムMk-Ⅱのパイロットであるから、子供として特別扱いすれば、大人と子供の立場を場面で使い分ける事もしてエマ中尉の修正を受けるだろう。

 

 カミーユに期待は掛けても特別扱いはしないというバランスを求められるのが難しいところだ。

 

「先ず解除した地下の核爆弾を掘り起こして完全に無力化する。ロベルトは捕虜をスードリに集めてくれ。アポリーは部隊を再編成、エマ中尉は投棄したMSを拾いに行ってくれ。ウラキ中尉は損傷したMSを掻き集めて修理を監督して貰いたい」

 

「スードリを連邦軍に渡すのですか?」

 

「ガルダ級2機を好きにして連邦政府に睨まれたくは無いからな。捕虜返還と合わせて交渉に使える」

 

「了解しました」

 

 ガルダ構想の為にガルダ級は本来ならば1機でも爆散させてはならない機体なのだ。

 

 それをやってしまったら物理的に首が飛ぶ案件である。

 

 ブラン・ブルターク少佐は連邦軍の所属でベン・ウッダー大尉は制服からティターンズの所属であるが、それでもベン・ウッダー大尉はティターンズである前に連邦軍軍人としてブラン・ブルターク少佐の指揮の下、エゥーゴと戦って、カラバに渡ったアウドムラを追撃した。

 

 スードリを沈めたのはベン・ウッダー大尉であるが、現場指揮官の暴走として処理されたのだろう。

 

 でなければいくら連邦政府議会の支持基盤を固めていても、責任問題は問われかねない事を仕出かしているのだ。

 

 コロニーに毒ガスを2回も流し込んで、さらにはコロニーレーザーの試射でコロニーを吹き飛ばして、グラナダにまでコロニー落としを敢行し、造るのに何年もの膨大な時間と巨額の資金を使った連邦軍本部のジャブローを、キリマンジャロ基地が完成したからとは言え、囮にして誘い込んだエゥーゴを核で逃げ遅れた味方ごと吹き飛ばす等という過激な事をして、良く最後までティターンズの椅子に座れていたと思うが、ダカール演説からグリプス決戦までは貯蔵していた物資と、宇宙で残していた戦力で戦っていたとは分かるが、ジーン・コリニーが失脚した影響は果たして何処まで出るものか。

 

「しかし大佐、核爆弾を掘り出すってどうやるんです?」

 

「掘った機材があるだろう。自爆させる予定であったのだから態々運び出す余裕があるとは考えられん。無ければ無いでMSを使えば良い。伊達に人の形をしているわけではないのだからな。その有用性を柔軟に使うまでだ」

 

「わかりました。しかし、大佐への昇進はおめでたい事です」

 

「めでたいものか。お陰でどさくさ紛れにあれもこれもと押し付けられてしまったのだからな」

 

「ですが大佐の方が口通りが良いと思います」

 

「だな。その方が呼びやすい」

 

「通りの良さで昇進させられたら堪らんよ。アポリー、ロベルト、明日からは貴様らも中佐になって私の副官をやってみるか?」

 

「ありがたいお話ですがご遠慮させて頂きます」

 

「自分はMSを動かすしか能が無いので辞退させて頂きます」

 

「そういう事だ。エマ中尉とウラキ中尉も、疲れているところすまないな」

 

「いいえ」

 

「クワトロ大尉、あっ、すみません。大佐はティターンズがジャブローを取り戻しに来ると考えているんですよね」

 

「ああ。早くて明日の昼くらいだろう」

 

「了解です。とにかく使える様にする事を最優先します」

 

「頼む、ウラキ中尉。必要な事は私の名前を使ってやってくれ。エマ中尉も頼む」

 

「はい!」

 

「了解しました」

 

 MSに関してはウラキ中尉に任せてれば大丈夫だろう。

 

 あれでメカに関しての目はそこらのメカニックが敵わない物だからな。

 

 それぞれに指示を出してMSに乗って散らばって行くと、セイバーがアウドムラから降りて来た。

 

 コックピットが開いたものの、その外にアムロが出て来る事はない。

 

「クワトロ大尉、いや、大佐になったのでしたね。カラバのハヤト・コバヤシが面会を求めているので、アウドムラに来てもらえますか?」

 

「わかった。カミーユは私と来い」

 

「はい!」

 

 コックピットに乗り直して、私はズゴックをアウドムラへと入れる。

 

 昇降機がコックピットの前に上げられると、先に私が出て、そして中に居るイングリッドへと手を差し伸べる。

 

 私の手の上に置かれた小さな手を引いてイングリッドが乗るのを確認すると、昇降機を降ろす。

 

「女の子? クワトロたい、さ、その女の子は?」

 

「上官から預かった娘だ」

 

 カミーユへと答えながら、私はセイバーから降りるアムロに格納庫の隅にあるバルキリーのもとへと連れられた。

 

 そこにはカイ・シデンとハヤト・コバヤシが待っていた。

 

「カラバのハヤト・コバヤシです。ジャブローの制圧、おめでとうございます」

 

「エゥーゴのクワトロ・バジーナ大佐です。地上でのカラバの支援に、エゥーゴを代表して感謝します」

 

 私はハヤト・コバヤシと握手を交わす。

 

「しかしジャブローを制圧したとなると、人員やMSの帰還は無理なさそうですね」

 

「いや。確認はまだだが、引っ越しで使われてもぬけの殻にする為にそうしたシャトルの類は残っていない可能性が高い。そうなればカラバにも動いて貰う必要があります」

 

「了解です。連絡員を何名か合流させたいのですが」

 

「お願いします。これから私は地下にある核爆弾を掘り起こして完全無力化をします」

 

「わかりました。それと、私の妻から宇宙に居るブライト・ノア中佐宛に、自分たちは無事だと伝えてくれと、ブライト中佐の奥さまから伝言を預かっています」

 

「それは良い報せを聞けました。ブライト大佐も、ジャブローに居るご家族の事を気にしていらっしゃいました。この後の宇宙との通信で報せておきます」

 

「よろしくお願いします」

 

「クワトロ大佐さんは、エゥーゴで何をする気なんですかい?」

 

「こら、カイ!」

 

 ふむ、まぁ、シャアかどうか私を怪しむカイ・シデンの事は解らなくもない。

 

 こうして確信が無いからこそ直接訊きに来ているということは、その天秤は私とシャアが別人という方に傾いていると思いたい。

 

「私は、スペースノイドの人権を守りたいだけだ。とはいえ、アースノイドを蔑ろにするつもりはない。だが、アースノイドと違ってスペースノイドは、一年戦争というジオンの蛮行によってその存在を軽んじられている。だから30バンチ事件の様な事が起きてしまう。そうした時にスペースノイドを守る力が必要だ」

 

「ならアンタがスペースノイドを引っ張って行けば良いんじゃないのかい?」

 

「最初はそれでも良いだろう。しかし独立をしたいのならば他者の庇護から脱し、自立することも覚えなければならない。独立を叫びながらも都合が悪くなれば庇護を頼るなど節操なしとは思わんかね?」

 

「ん、まぁ、そうだな。それじゃあ、アンタがエゥーゴを使ってするのはスペースノイドを守るってだけなのか? アンタならもっと出来ることはあるだろ?」

 

「私を買い被って貰っては困るな、カイ・シデン君。私はクワトロ・バジーナだ。それ以上でも、それ以下でもないさ」

 

「オレには、アンタがシャアだと思えたんでね」

 

 そうカイ・シデンが言うと、私の隣にカミーユが出て来た。

 

「カイ・シデンさん、貴方は元ホワイトベースのクルーで凄い人だと知っています。でも、クワトロ大尉が違うって言うのなら、それを疑うのは違いますよ。もしクワトロ大尉がシャア・アズナブルだと言うのならば、態々違う名前を名乗ってまで連邦軍やティターンズと戦うなんて回りくどいやり方はしませんよ。そんな自分の名前から逃げるような卑怯な事をする人じゃありません。僕はそれを知っています。だからクワトロ大尉はクワトロ大尉ですよ」

 

「カミーユ」

 

 私はあんな受け答えをしてカミーユの修正をくらうと思っていたのだが。

 

 そして、これが若さかとすると思っていたのだが。

 

「悪かったよ。ジャーナリストをやってると、疑り深くってね。まだクワトロ大佐がシャアじゃないと確信はないが、若い声に免じて信用はする」

 

「それで構わんよ、カイ・シデン」

 

 私が手を差し出すと、一瞬躊躇ったが、カイ・シデンと握手を交わすことが出来た。

 

 カミーユに助けられたな。

 

「宇宙と連絡を取る。出来れば同席して貰いたい。ブライト大佐も喜ぶだろう」

 

「わかりました」

 

「オレはパス」

 

「ブライトと顔を合わせるのか」

 

 三者三様の言葉を聞きつつ、私は踵を返して歩き出す。

 

「それってさ、私も付いて行かないとダメ?」

 

「君は今暇だろう? 社会見学をするのも悪くない」

 

「はいはい。そう言うんなら付いていきますよ〜」

 

 カミーユよりも子供であるイングリッドからすれば、大人の会話は退屈になるだろうが、いつ目覚めたかは分からずとも、しかしそう前でもないと分かるならば、社会体験をさせることは悪くないだろう。

 

 長距離通信をする為にNジャマーを解除し、通信センターの大画面を使って宇宙と連絡を取る。

 

『待っていたよ、クワトロ大尉。……懐かしい顔ぶれも居る物だ』

 

「ご無沙汰しています、ブライト大佐」

 

 ハヤト・コバヤシが通信が繋がったアーガマのブライト艦長へと声を掛けた次に私が声を発する。

 

「ジャブローの制圧は完了しました。しかし人員やMSを戻す為の手立てがありません」

 

「カラバでニューケネディとヒッコリーのシャトルを用意していますが、それでも半分を上げられるかどうか」

 

『ジャブローであれば打ち上げられる物があるのではないか?』

 

 私とハヤト・コバヤシの言葉にそう言ったのはアルビオンのシナプス艦長だった。

 

「ティターンズはジャブローを囮にして、もぬけの殻に我々を招き入れて核で吹き飛ばす事でエゥーゴの戦力の大半を奪おうとしていました」

 

『核だって!?』

 

『連邦軍の心臓部を核で吹き飛ばそうとしただと!? 正気か!?』

 

『ジャブローはアマゾン川流域の地下にあるのだぞ! それを核で汚染しようなどとは、ジャミトフは何を考えている!』

 

 核が用意されていた事に、ブライト艦長とシナプス艦長が驚愕し、そしてさらに少し遅れて繋がったブレックス准将が憤りを吐き出した。

 

「残念ながら事実です。核爆弾は解除したのでジャブローはそのまま使えます。ですが物が無いのでどうにもならないのが現状です。また、私は本日付けで大佐に昇進させられてしまったので、落ち着くまでジャブローを離れる事が出来なくなってしまいました」

 

『ゴップ大将の采配か。先手を打たれたな』

 

『そうですね。これでクワトロたい…、大佐が不用意に動けなくなってしまいました』

 

『む? 別に大佐だって動けば動けるだろ?』

 

『そう事は楽ではないぞ、ヘンケン艦長』

 

『艦隊や基地司令を預かる立場ですからね。クワトロ大佐を最前線から遠ざけるのが狙いでしょうか?』

 

『それもあるが、クワトロ大尉を大佐にすることで、ゴップ大将はエゥーゴをコントロールしようとしている』

 

『あの方は食えない御仁ですからな。クワトロ大佐、次の指令を貰っていると思うが?』

 

「ええ。次の目標はティターンズが拠点化したキリマンジャロ基地です」

 

『ダカールが近いな。無闇には攻め込めんぞ』

 

『下手に攻撃してしまえば、連邦軍全てを敵に回す事になりますね』

 

『厄介な場所にティターンズも逃げ込んだってわけか』

 

 シナプス艦長、ブライト艦長、ヘンケン艦長の言う事は最もであった。

 

 連邦議会のあるダカールに近いキリマンジャロ基地に移ることで、ジャミトフはティターンズが動き易くする上に、エゥーゴが簡単に攻め入れない算段を立てていたという事だ。

 

『一先ずジャブローが使えるのは幸いと言えるが、クワトロ大佐はどう考える』

 

「はい。これを機に地上はジャブローを中心として専守防衛に努めたいと考えています。その間にアウドムラを使って、太平洋を経由してキリマンジャロへの偵察を考えています。また、宇宙では各サイドの連携を強めて戦力の増強を計るのがベストかと」

 

『それが無難としか言えんな』

 

「ジャブロー制圧は出来ましたが、かと言ってそれが民衆に与える影響は微々たる物です。数字は動いても、一般市民に対して対岸の火事であれば、関心を寄せられる物でもありません」

 

『それが企業と言うものだからな。クワトロ大佐、アーガマを地上へ降ろし、積めるだけで構わない、MSを宇宙へ上げてくれ』

 

「了解しました。シナプス艦長、アルビオンもジャブローへと降ろしていただけますか?」

 

『わかった。アーガマと共にジャブローに降ろさせる』

 

「お願いします。それとアイリッシュ級をジャブロー宙域へ待機させておいてください。ピストン輸送でMSを宇宙へと上げます」

 

『手配させる。ブライト大佐、ジャブロー降下に参加させた艦隊をそのまま使ってくれ』

 

『了解致しました』

 

『頼む。それと、シナプス大佐も、クワトロ大佐へのレッスンを頼みたい』

 

「煙に巻く事は出来ませんでしたか」

 

『佐官教育とまでは行かんが、大佐となったからには最低限覚えてもらう事はあるからな』

 

『まぁ、話は聞こう、クワトロ大佐』

 

「その優しさは少し辛いものですよ、ブライト艦長。では、ジャブローにてお待ちしております」

 

『うむ。引き続き頼む、クワトロ大佐』

 

「はい。出来得る限りでやらせて頂きます」

 

 ブレックス准将が締めた事で通信が終わる。

 

 私は座っていた椅子の背もたれに深く身を預ける。

 

 癒やしが欲しい……。

 

「クワトロ大佐」

 

「どうした、アムロ・レイ」

 

「あのガンダムは貴方に返却する」

 

「気に入らなかったかな?」

 

「いや。ただ、あれはエゥーゴの象徴だろう。ならそれに相応しい人間が乗るべきだ」

 

「ガンダムMk-Ⅱはカミーユが慣れているから、譲れないぞ?」

 

「貴方のズゴックで良い」

 

「あれは機体バランスがめちゃくちゃだから、素人が乗るとすっ転ぶぞ?」

 

「慣れてみせるさ」

 

 あのアムロがMSに乗りたがっているとはな、理由があるとは言え、宇宙に出たことで否が応でもやらなければならない事が出来ている。

 

 とはいえ、無理を押しているというのは見れば解る。

 

 眠っていたのを無理やり叩き起こされた上に、やりたくない事を強制され、しかしそうしなければならないとなればこうもなろう。

 

「わかった。なら慣れるついでに付き合って貰う」

 

「了解した」

 

 私はジープに乗って格納庫を目指した。

 

 MSや戦闘車両、格納庫は様々あるが、しかし大まかに機種ごとや部隊ごとに纏められている。

 

「なにここ?」

 

「ジャブローに保管されている、ジオンから接収した機体を纏めておく格納庫の一つだ」

 

 イングリッドにそう説明すると、格納庫の灯りを点ける。

 

「な〜にあれ、あんなのジオンにあったの?」

 

「アッグガイ。ジャブロー攻略用に造られたMSだ」

 

「ふ〜ん。それでさ、ここに何があるの?」

 

「穴を掘るMSだ」

 

「穴を掘るって、トンネルでも造る気?」

 

「察しが良いな。このジャブローを攻略する為に、ジオンは専用のMSを幾つか開発した」

 

「うへぇ、ホントにあるし」

 

「両腕が掘削機なのか。肩のも掘削ブレードですね」

 

「ああ。アッグと呼ばれる掘削用のMSだ」

 

「もうあれじゃあモビルワーカーなんですけど。ジオンの上層部って頭バカだったの?」

 

「ちょうど3機ある。イングリッド、カミーユ、夕食まで付き合って貰うぞ」

 

「げぇ、こんなのに乗るのぉ?」

 

「え、でも、こんな娘がMSに乗れるんですか?」

 

「乗れるわよ。なに? 悪い?」

 

「別に悪くはないけど」

 

「その優しささ。嫌いじゃないけど、いつか身を滅ぼすよきっと」

 

「そんなこと」

 

「わかるよ。はぁ、乗るの? コレに? カッコ悪」

 

 イングリッドとカミーユ、相性は悪くはない様に思えるな。

 

 2人のやり取りを見つつアッグに乗り込み、直下掘りでもしてみたい衝動を抑えながら格納庫を出た。

 

 150m程度、さらに一度掘ったとなればそう苦も無く掘り起こせるだろう。

 

 さて、赤い彗星ならば土方作業のひとつもやってみせよう。

 

 

 

 

 

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