シャアにクリソツなクワトロ大尉()   作:星乃 望夢

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黒いガンダム

 

「やってみるさ」

 

 リック・ディアスをグリプスへと向かわせる。

 

 これだけ近づいているというのにまったく応答はなし。

 

 まぁ、平和な時はこんなものか。

 

 時期的にグリプスを1と2に分離し、グリプス2のコロニーレーザーへの改修に入っている頃だろう。

 

 それに、ジオン残党も宇宙での最大勢力であったデラーズ・フリートを失って久しい今日。

 

 デラーズ決起と合わせて宇宙で地下に潜っていたジオン残党勢力はデラーズ・フリートへと合流し、残っている勢力は地上のアフリカを中心に燻っている残党と比べて極小規模な宇宙海賊が精々だ。

 

 デラーズ・フリート残党も大半がアクシズへ逃れているとも聞いている。

 

 ともすれば、ティターンズの宇宙拠点と目されているこのサイド7はグリーン・ノアに仕掛ける輩は居ない。

 

 その隙を突いて、こうして我々は侵入しているわけだが。

 

 グリプスに取り付き、隔壁を開ける。

 

 隔壁の中の作業員に見つかると面倒なために、本来シャアが潜入しただろう場所とは別の所に取り付いて隔壁を開けた。

 

 中へリック・ディアスを入れると、作業員に見つかる。

 

 多少場所を変えたくらいでは見つかってしまうか。

 

「チィッ」

 

 舌打ちしながらトリモチランチャーで作業員の身動きを封じる。

 

 あれなら直ぐ様通信で助けを呼ぶ事も出来まい。

 

 リック・ディアスを隔壁の前に止めると、ランドムーバーを装着しながら降り立つ。

 

 隔壁の端末にパスコードを解析する端末を接続し、解析したコードを打ち込んで隔壁を開けると中に入る。

 

 それを3度ほど繰り返し、距離的にそろそろコロニーの中へと入れる筈だと思っていると、今ままでのエアロックの隔壁とは別の扉に行き着く。

 

 そこを過ぎればコロニーの中へと入れるのだが。

 

「そう4度も上手くは行かないか」

 

 おそらく管理センターで開いた隔壁の異常を見破られたか、端末を接続してもパスコードが解析されない。

 

 持ってきた爆弾をセットして隠れる。

 

 爆風をやり過ごし、中から風が入って来るのを見ながら、身を乗り出す。

 

 ヘルメットのバイザーを上げると、鼻に突くのは工場や工業地帯で感じる独特の臭い。

 

 扉を開くとそこから見えるコロニーの中は雲の他にスモッグで覆われている地表だ。

 

 ランドムーバーを噴かし、コロニーの中へと入る。

 

「あれはMS…! こちらがドックか」

 

 写真を撮りながら飛んでいく。

 

 コロニーの中心は遠心力が働いていないために無重力だから慣性飛行で流れて行くが、換気と空気の流動の為に多少の風は吹いているし、その中心部は無重力でありながら乱気流もあるという不思議な場所であり、風で飛ばされたら最悪の場合そのまま地面に落ちる。

 

 故にただ飛んでいても雲やスモッグの流れに注力して飛んでいく。

 

「潮時か」

 

 もう反対側の壁が見えつつあり、これ以上行けば見つかる可能性と、リック・ディアスの心配もある。

 

 踵を返してターンしながら飛ぶと、目の前を黒い大きな影が過ぎ去った。

 

「うおっ」

 

 しかもその影が作った風圧にバランスを崩されて飛ばされてしまう。

 

「Mk-Ⅱか…っ」

 

 ランドムーバーを噴かして一気にコロニーへと入った入り口に向かう。

 

 後ろからガンダムMk-Ⅱがバルカンを撃ってくる。

 

「こう小さな目標に当たるものか」

 

 そう言いながらガンダムMk-Ⅱの写真を撮り、コロニーの岸壁スレスレを飛行して一気に上へ上昇する。

 

 一直線に入り口へと向かわないのは、そこをバルカンで攻撃されて使い物にならなくされたら堪らないからだ。

 

 また後ろからバルカンで攻撃されるが、また当たらない。

 

 そして私は開いている扉の中へと飛び込むが、前方には既に異常を見に来た人間が居た為、進路を変更した。

 

「自分たちのコロニー内でバルカンを使う。地球と地続きでないとわからんのか…っ」

 

 私はそう悪態を吐きながら来た道へ戻る為に飛んでいくが、行く先々は既に手が回されている。

 

 しかし捕まるわけにはいかない。

 

 隔壁を幾つか降ろして追っ手を撒きながら、どうにかリック・ディアスのある所まで辿り着けた。

 

 逃げの一手で突き進みながら後方へは顔も向けずに適当に牽制していた為、腕を銃弾が掠めるなどということもなかった。

 

 コックピットに乗り込むと、スラスターを全開にしてグリプスから離脱する。

 

「アポリーとロベルトは上手くやっているだろうか」

 

 タイムスケジュール的に、そろそろグリーン・ノア1で訓練飛行中のMk-Ⅱを見つけているだろう頃合いだ。

 

 予め決めていた合流予定ポイントのアステロイドに隠れて待つ事にする。

 

「……なんだ。この感じは」

 

 私はニュータイプではない。

 

 しかし、強い力を持ったニュータイプを感じたことはある。

 

「私を呼ぶ者が居るというのか……」

 

 一年戦争。

 

 あのララァ・スンのエルメスを相手にした時も、音を聞いた。

 

 そしてア・バオア・クーでも、私は声を聞いた。

 

 力の強いニュータイプは、オールドタイプであっても声を届かせる。

 

「君なのか、カミーユ・ビダン…」

 

 ジェリドに名前を馬鹿にされて殴り飛ばし、今は拘束されてMPに尋問されている、と言った所か。

 

 運命がどう転ぶかはわからないが、シャアではない私に、カミーユを導けと言うのか、ララァ・スン。

 

 ロベルトのリック・ディアスが合流する。

 

『クワトロ大尉、ガンダムMk-Ⅱの存在を確認しました』

 

「こちらでも確認した。が、仕掛けるのはグリーン・ノア1とする。ロベルト、アーガマへ合図を送れ」

 

『了解!』

 

 ロベルトのリック・ディアスが信号弾を上げる。

 

 すれば遥か後方に位置するアーガマからメガ粒子砲が発射され、グリーン・ノア1の側面に着弾する。

 

 予め穴を開けてもらって、そこからさらにMSで穴を拡げて内部に侵入する。

 

 コロニーの側面とてデブリや小さな石ころが当たった程度では壊れない様に出来ている。

 

 MSで穴を開けようとしても手間が掛かる。

 

 だから先に前もって穴を開けて貰ったのさ。

 

「よし、ロベルト、アポリーと合流、コロニーの中に入る」

 

『了解しました!』

 

 アステロイドから離れてグリーン・ノア1へと向かう。

 

 さて、これからどうなるかは私にもわからない。

 

 ある程度道すがらに行けば良いが、私はシャアではないのだ。

 

 ティターンズと戦えてもアクシズとの交渉など出来はしないし、カミーユを上手く導いてやれるか。

 

 人手不足を理由に少年を戦場へと駆り立てる。

 

 私が死ねば落ちるのは地獄だろうな。

 

 しかし、今は猫の手どころか赤子の手すら借りたいところがエゥーゴの実情だ。

 

 カミーユを戦いに巻き込むのなら、せめてシロッコへのトドメは私が刺さなければならない。

 

 代わりにハマーンの相手をカミーユに頼む事になるが、カミーユの精神を連れて行かれるかよりはマシだと思いたい。

 

 一先ずはガンダムMk-Ⅱを鹵獲するのが最優先だ。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

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