シャアにクリソツなクワトロ大尉()   作:星乃 望夢

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貴様らが情けない奴だからだ!

 

 神秘で広大な宇宙──。

 

 そう言うのは簡単である。

 

 だが実際には光なく、全ての輝きが失われた宇宙とも言える。

 

 それでも、宇宙には変わらず蒼い星は月と共に太陽の光に照らされている。

 

 人の犯した過ちを清算する為にその歴史を閉じ、文明を崩壊させられても、人は生き続け、再び文明を築き上げる。

 

 文明をリセットする存在。

 

 いつしか人は、その殻である肉体を捨て、一つとなって大いなる意識に統合し、神のような力を得たとしても、結局は世界に干渉するために人の形を器として選ぶというのだから、人は人である限り、別の存在になる事も、ましてや人という存在そのものを忘れる事など出来はしない。

 

 だからこそ、人はMSを造った。

 

 人が巨大ロボットに惹かれるのも、この世界にある普遍無意識が人であるのならばこそだ。

 

 様々に存在する神々が分かりやすく人の形で描かれるのも、そうする事で人心を集める為だ。

 

 サイコフレームもそうして人の意志を集め、MSという人の形を通して外界に働き掛けるのは解る話だ。

 

 探せば埋まっていそうな木星の伝説巨神と同じシステムなのだから、人々の意識を集めて地球に落ちるアクシズを跳ね返したり、人の願いを聞き入れ摩訶不思議な力を発揮するのも無理はない。

 

 サイコフレームは無限の可能性を持ちながらも時として使い方を誤れば悪魔の力にも成り得る。

 

 フェネクスやネオ・ジオング等を見れば、サイコフレームが必ずしも良い物ではないのは解るだろう。

 

 しかしそれでもサイコフレームを求めるのは、それがまた人の意志による奇跡を起こすというのを識っていて、それに縋ろうという私の弱さなのだろう。

 

 それが、人というものだろう──。

 

 確かにそうだろう。

 

 あらゆる事を想定し、準備をしてきても確実ではない。

 

 コロニー落としを阻止する事の大変さはデラーズ紛争で体験した。

 

 ならばサテライトキャノンを作ろうとするのは無理もなかろう。

 

 一介の軍人、新米のパイロットであり、キシリアの影に気を張らなければなかったと言い訳を重ねた所で、ジオンのコロニー落としを阻止する術も力も権力も当時の私は持ち合わせていなかった。

 

 それなりの力を持っていても、デンドロビウムが目立ってくれていなければコロニーにたどり着けはしなかったのだ。

 

 ならば外から一方的にコロニーを破壊出来る力を求めはするし、たかが石ころひとつをガンダムで押し返すのではなく破壊してやるとするのも、それによって人の心の光を世界に見せる事がなくなろうとも、虹の先へ、世界を誤った方向へと持っていくことのなく導ける2人を依代にすることもなくなる。

 

 それが人の過ちを手助けする事になろうともか──。

 

 もしそこまで人という存在が愚かであったのならば、それは必然であり、滅ぶべくして滅ぶのだろう。

 

 他者より強く、他者より先へ、他者より上へ。

 

 それが人の本質であり、宇宙へ出てニュータイプとなろうとも争い続ける人の真理だ。

 

 競い、妬み、憎んで、その身を食い合う。

 

 その果ての終局だと言うのならば、それは逃れられぬ運命というものだ。

 

 ならば何故戦い続ける。そうまでして人類が愚かである事を実感し、識っているのにも関わらず、人々へ過分な期待を持ち続けているのは何故だ──。

 

 決まっている、それでもと言い続ける為だ。

 

 光なく、時すらも止まった世界の果てなど考えた所で、そんな果てしのない先の事など知らぬさ。

 

 今を生きる世界こそが全てなのだから、それを少しでも良くする為に抗い続けることの何がいけないと言うのだろうか。

 

 だがそれを求めていようとも、世界から争いがなくなることはない。混迷の続く世界で、いったい何を信じて進み続ける。戦いの果てで築かれた世界は、結局のところ次なる戦いの為の一時的な平和に過ぎない。その繰り返しの連鎖を断ち切る為には絶対的な支配が必要だ。なのに何故その為の路を選べる立場にありながら選ぼうとしないのかな──。

 

 それが人の望み、人の夢、人の業であるとしても覚悟はある、私はその為に戦っている。

 

 でも、貴方を想う人の事も忘れないで。人はひとりでは生きてはいけない。人の繋がりがあるからこそ、強く生きていける事が出来るもの──。

 

 わかっているさ。

 

 わかっているからこそ、死ぬつもりは毛頭ない。

 

 だが、必要であるのならば、世界を次代へと託すためならば、私は人身御供でも依り代でも果たしてみせよう。

 

 それで切り開ける未来があるのならば、私が生きている意味があったと思える。

 

 本当に、それで良いのか──。

 

 それで未来への水先案内人が出来るのならば本望さ。

 

 だが、それによって悲しむ者の想いを蔑ろにすれば、世界は誤った方向へと閉ざされてしまう──。

 

 確かにな、だが、あの子らならばその悲しみも乗り越えてくれるだろう。

 

 私が育てたあの子を甘く見るな。

 

 でも、やっぱり悲しいよ──。

 

 生きているから触れ合える。だから死ぬってのは寂しいことなんだよ──。

 

 何度も言わせないでくれ、わかっているさ。

 

 ただ覚悟を言っているまでだ。

 

 本当にそうであるのならば、そもそもそういった思考は出て来ないのではないかな──。

 

 何処ぞの誰かが出て来ない所為だと言いたい所なのだがな。

 

 …………ええい、揃いも揃って顔を逸らすな!!

 

 だからあっちこっちで情けない奴だと散々言われるのだろうが!

 

 いい加減に姿を表せ──。

 

「シャア・アズナブル!!」

 

「わっ!? びっくりした。寝言でいきなり叫ぶって、どんな夢見てたのよ」

 

「…………何故君がここに居る、イングリッド」

 

 視界に映るのはイングリッドの姿であり、その端に見えるのは天井である。

 

「なんか暇だから驚かせようと思って」

 

「…………寝坊だな。私としたことが」

 

 枕元の時計を見れば起きようとしていた時間を過ぎてしまっていることが判った。

 

「そりゃ夜通しで穴掘りしてればそうなるでしょうよ」

 

「私も歳かな」

 

「まぁ、オジサンよね」

 

「そこはかとなく刺さる言葉だな」

 

 ベッドから出てクローゼットから真新しい軍服の袖に腕を通す。

 

 その襟に輝く大佐の階級章が重い。

 

 ノースリーブではなく、しっかりと着こなした軍服は連邦軍大佐としてあるべき姿である。

 

「なんかホントさ。どうなってんのよアンタは」

 

「なんのことかな?」

 

 手櫛で少し乱れている髪を整え、部屋のテーブルにあるサングラスを手に取って掛ける。

 

 さて、今日も1日クワトロ・バジーナとしてやるべき事をするとしよう。

 

 

 

 

 

 

 

 

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