シャアにクリソツなクワトロ大尉()   作:星乃 望夢

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サイコフレームの力

 

 蒼い光に包まれた金色のMS。

 

 フェネクス──。

 

 UC計画の要。

 

 全身のフレームにサイコフレームを使ったフルサイコフレームの機体は、ニュータイプ神話を抹殺する為にNT-D──ニュータイプ・デストロイヤーというシステムを搭載したサイコマシンとして完成した。

 

 その3号機がフェネクスである。

 

 フェネクスはこちらを見下ろしながら蒼い宇宙に浮いている。

 

 そのフェネクスが腕を伸ばし、マニピュレータを差し伸べて来る。

 

 私は手を伸ばすと、そのフェネクスのマニピュレータが触れ合ったと思えば、それは人の手となり、フェネクスは一人の少女へと姿を変えた。

 

 悲しげな瞳の彼女が振り向いて視線を向ける先に、私にも視えた。

 

 禍々しいオーラを放つネティクスを。

 

「助けろと言うのか。それこそ、言われずともだ」

 

 人をマシーンとする機械など、私が見過ごすわけがない。

 

 そうであったのならば、私はクロエを助け出す事もしなかっただろう。

 

 彼女は再びフェネクスへと姿を変えた。

 

 そして私の背後から巨大な機械の腕が伸びてくる。

 

 その機械の腕は白い装甲に包まれ、露出するフレームは赤く光っていた。

 

 私が振り返ると、そのガンダムは赤いフレームを蒼く輝かせた。

 

「ユニコーン……」

 

 不死鳥のガンダムへと変身し、青くフレームを輝かせるフェネクス。

 

 ユニコーンが私のセイバーと重なれば、腰とシートの下のサイコフレームから蒼い光と虹色の光が放たれる。

 

「熱……温かな光…」

 

 そして私の身体も蒼い光に包まれる。

 

 この温かさが、世界を作っていく。

 

 しかし、今という時代ではそれを分からない人間が多過ぎる。

 

 地球に居続ける人々のエゴに絶望するのも無理のない話ではない。

 

 だからこそ、私はこの熱を忘れてはならないのだ。

 

「視えるぞ。私にも、敵が視える…!」

 

 カメラもレーダーも捉えていない先から来る悪意の塊。

 

 フェネクスの示す先、視えるのはサイコガンダム。

 

 ネティクス、サイコガンダムの他にはギャプラン、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機。

 

 乗っているパイロット、ネティクスについては既に理解している。

 

 そしてサイコガンダムとギャプランについて代わっていなければパイロットは誰だか分かっている。

 

 そしてその面子でガンダムMk-Ⅱ試作0号機となれば、誰が乗っているか絞り込める。

 

「ティターンズめ。なりふり構わずということか」

 

 ありったけの強化人間を掻き集めてぶつけて来る。

 

 サイコガンダム1機でも厄介が過ぎるというのに、ギャプランはセイバーで相対しようと思っても、ギャプランよりも止めなければならないのはネティクスとガンダムMk-Ⅱ試作0号機だ。

 

 あの2機は危険過ぎる。

 

 通信回線を開き、オープンチャンネルで呼び掛ける。

 

「私はエゥーゴのクワトロ・バジーナ大佐だ。ジャブローに接近中の部隊に告げる。所属を明らかにされたい。責任者は応答を願う」

 

『戦隊長のブラン・ブルターク少佐だ。ルナツーの赤い彗星は大尉だったと記憶しているが?』

 

 応答したのはブラン・ブルターク少佐だった。

 

 オールドタイプながらオークランドのニュータイプ研究所で開発されたアッシマーを駆るベテランパイロットだ。

 

 予想はしていたが、手強い相手となればアッシマーも好き勝手にさせられない。

 

「先日大佐に昇進した。ジャブローの管理は連邦軍から正式に移管されている」

 

『エゥーゴが正規軍になったと言いたいのか?』

 

「そうだ。連邦軍大佐として、貴隊の展開中止を要請したい」

 

『我々はティターンズのバスク・オムからの命令で出撃している』

 

「了解した。健闘を」

 

『お互いにな』

 

 そう短いやり取りで通信は切れた。

 

 指揮系統の違い、さらにはバスクは大佐だがティターンズ特権で准将の命令として発する事も受け取ることが出来る。

 

 私が大佐となり、エゥーゴの軍権、つまりは管轄は私持ちとなり連邦軍として扱われる事となったが、階級が上の扱いに出来て先任のバスクからの命令で動いているから、互いに仕事をするだけだと言うブラン少佐の判断は間違いではない。

 

 これを撤回するには私がバスクかジャミトフに掛け合って、ジャブロー奪還を命じられたブラン少佐への命令を撤回させなくてはならない。

 

 大佐だからと命令して受け入れられるような単純な話ではないのだ。

 

 指揮系統や担当地区で命令系統は複雑に入り乱れている。

 

 宇宙軍と地上軍、地上軍も陸軍、空軍、海軍、さらには欧州、アフリカ、アジア、アメリカと方面軍という形で細分化されている。

 

 宇宙は各コロニーの駐留部隊、ルナツー、ソロモン、ア・バオア・クーといった司令部で分かれているものの、地上軍の様に旧暦から続くそうした区分けをそのまま継承しているわけでは無い為、所属派閥でのいざこざはあれども、そこまで複雑であることは無い。

 

 スペースノイドから見てアースノイドは遅れていると言われることもあるのは、それはそうだなとしか言いようがない。

 

 スペースノイドは自分達がアースノイドとは違うという意識も持ち合わせているから、そんな古臭い柵を作るのはアースノイドと変わらないと嫌う傾向もある。

 

 アースノイドはスペースノイドを蔑むが、スペースノイドはアースノイドを宇宙にも出れない古い地球人だと見下さないとやっていられない。

 

 地球に居残るアースノイドは特権階級の者達であるが、宇宙世紀の地球圏の総人口は過半がスペースノイドなのだ。

 

 人の重さで沈む地球から巣立ち、宇宙へと上がるべきだとした志も、結局は首相官邸ラプラスの爆破テロによって宇宙に出ることを忌避する土壌を作りもした。

 

 特権と既得権益が失われるのを嫌った政治家や裕福層の人間が地球環境の保全を言い訳にして地球に残ったとあれば、地球から追い出された人々が不平不満を抱き疑問を口にして批判するのは当たり前の事だ。

 

 アースノイドは地球に住んでいるのが当たり前過ぎて、スペースノイドが宇宙で生活する苦労などまるで知らない。

 

 スペースノイドとアースノイドの溝が埋まらないのも無理はない。

 

 セイバーへと向かって来るアッシマーを、MAに変形して相対する。

 

 互いに直線コースに乗りながらも撃っては来ないし撃ちはしない。

 

 正面からぶつかる勢いで接近し、機体を傾けて擦れ違い、そのまま旋回してドッグファイトに移行する。

 

 アッシマーは空気抵抗を考慮してMA形態では円形の外装で空気を受け流してバーニアで飛んでいる。

 

 推力に物を言わせて無理矢理飛んでいるギャプランよりも空中での運用を考えられている機体だが、セイバーは空中戦の為に空力制御も徹底して設計されている機体である。

 

 ホームグラウンドの空中戦で、セイバーが遅れを取るわけがない。

 

 ビームライフルを撃つが、それをアッシマーは機体を推進させている脚部を片方前へ投げ出すように展開する事で直角に機体を回避させてビームの火線を回避する。

 

 マクロスのガウォークの様な避け方を出来るから侮れない物であるが、空での戦いはセイバーに分がある。

 

 スラスターを噴かしてアッシマーに追い縋りながらスーパーフォルティスとビームライフルで弾幕を張る。

 

 しかしアッシマーは機体各部のアポジモーターや脚部を使ってのAMBAC、それらを複雑に取り入れた独特の加減速や回避行動に眼を引かれる。

 

 そして速度に関してはセイバーが優るのではあるが、そんな複雑怪奇な回避行動を取られるといきなり速度が落ちる為、セイバーはアッシマーをオーバーシュートしてしまい後ろを取られるが、フルスロットルで距離を引き離し、後方からのビームはバレルロールで回避する。

 

『成る程。中々良い機体だ。宇宙ではどうだったかは知らんが、空中戦ではこのアッシマーこそが王者だ!』

 

「やってくれる!」

 

 セイバーをMSに変形させ、機体を投げ出す事でエアブレーキを掛け、さらに宙返りして後方から迫っていたアッシマーをオーバーシュートさせる。

 

「墜ちろおおお!!」

 

 ビームライフルと脇の下に展開した砲身からスーパーフォルティスとアムフォルタスのフルバーストを放つが、アッシマーはMSに変形してビームの隙間に機体を半身にさせて捻り込みながらやり過ごすと、大型ビームライフルを向けて来る。

 

 放たれたビームをシールドで防ぎながら、ビームサーベルを抜いてスラスターを噴かして吶喊する。

 

 大型ビームライフルの火線をバレルロールで躱しながら懐に入り、ビームサーベルを下から切り上げるが、しかしアッシマーはビームサーベルを切り上げる右腕を左脚で踏みつけて押し留める。

 

 大型ビームライフルを両腕で構えて狙いを定めるアッシマーだが、シールドの大型ビームソードを起動して発振したビーム刃がアッシマーの大型ビームライフルを貫き、そのまま機体まで貫こうとした所を、横合いからのビームに邪魔される。

 

「くっ」

 

『ちっ。強化人間には我慢が利かんか』

 

 セイバーとアッシマーの間を過ぎ去って飛んで行くのはギャプランだった。

 

 双方無言の了解という物で戦った私とブラン少佐。

 

 部下に手を出すなとも言ってはいないし、互いに一騎打ちを始めたのも私達の都合だ。

 

 戦隊長が不利になった所で横槍を入れて援護するのは間違った事ではないのだが、この場でそれをするとどうなるのか。

 

『クワトロ大佐!』

 

 ドダイに乗ったカミーユのガンダムMk-Ⅱがギャプランへ向けてビームライフルを撃つ。

 

 はぁ、始まってしまったか。

 

 なんて緩いことを頭の片隅に追いやりながらアッシマーと距離を開ける。

 

 アッシマーとギャプランが先行し、そしてベースジャバーに乗っているハイザックやアクト・ザク、モビルフォートレス形態のサイコガンダムがやって来る。

 

 こちらもドダイに乗ってリック・ディアス隊が上がってくる。

 

 こうなってしまってはやるしかない。

 

 ギャプランはカミーユがアムロと共に抑えに行った。

 

 アッシマーはビームライフルを失った為に後方に下がったが、退却するのではなく指揮に回ったようだ。

 

 サイコガンダムはモビルフォートレス形態のまま侵攻してくる。

 

 サイコガンダムはこちらで抑えないと被害が馬鹿にならないのは目に見えている。

 

 とはいえ、それを素直にやらせて貰えるかと言えばそうとはならない。

 

 ネティクスが背中の有線式大型ビットを射出し、オールレンジ攻撃を放って来る。

 

 宇宙程自由ではないが、大気圏内でもビットは使う事が出来る。

 

 そしてネティクスの様な大型ビットとなると搭載するスラスターも大型故に結構自由の幅が利く。

 

 さらにガンダムMk-Ⅱ試作0号機がビームライフルを撃ってくるが、それを躱しながらビームライフルを撃ち返す。

 

 サイコガンダムを前面に押し出してハイザックとアクト・ザクの部隊がジムⅡとネモと撃ち合いを始めるが、Iフィールドを持つサイコガンダムによって突破口を開かれてしまっている。

 

 サイコガンダムの拡散メガ粒子砲により次々とこちらのジムⅡとネモに被害が拡がってしまう。

 

「ええい、ここで不必要に消耗するわけには…!」

 

 ジムⅡだとてジムⅢへの改装を控えている機体なのだ。

 

 いたずらにMSの損失をしたくないのが本音である。

 

『クワトロ大佐!』

 

 私のセイバーとガンダムMk-Ⅱ試作0号機の間に入って来たのはガンダム試作1号機フルバーニアンだった。

 

『あのガンダムMk-Ⅱは自分が抑えます!』

 

「相手はニュータイプか強化人間だ。出来るのか? ウラキ中尉」

 

『伊達にガトーと戦って生き残って来ていません。それに、あのガンダムMk-Ⅱのデータは見ました。やれます!』

 

「わかった。任せる、ウラキ中尉」

 

『はい!』

 

 ガンダムMk-Ⅱ試作0号機はかなりのコストが掛かっているが、カタログスペックではガンダム試作1号機ゼフィランサスに毛が生えた程度だ。

 

 それを空間戦闘向けとはいえオーパーツ並みのスペックを持つフルバーニアンならば難しい事はない。

 

 グリプス戦役期の高級MSと遜色ないスペックのステイメンよりも性能が上のフルバーニアンであるからこそ、出来ることもある。

 

 その推力で長時間滞空し続ける事も出来る。

 

 私はガンダムMk-Ⅱ試作0号機の相手をウラキ中尉に任せ、ネティクスと相対する。

 

 サイコガンダムは拡散メガ粒子砲が厄介であるが、まだ他でも対処は可能である。

 

 しかしニュータイプ用MSでオールレンジ攻撃が可能なネティクスを放置すればサイコガンダム以上の被害を生む。

 

 ネティクスの放つ禍々しいオーラ。

 

 ネティクスは腕を振るってそのオーラを放つ。

 

「くっ、しかし、この程度のサイコヒットならば!」

 

 オーラを受けたセイバーの機体が一瞬硬直し、モニターにもノイズが走る。

 

 サイコミュを通して機体の制御が奪われかけるのが解る中、私はサイコフレームに意識を向ける。

 

 セイバーのサイコフレームから放たれる蒼い光がネティクスの放つ機体を包む悪しきオーラを弾き飛ばす。

 

 物理的な力すら持つサイコフィールドの力比べ。

 

 これが本物のニュータイプをさらに強化した力だと言うのならば。

 

「物哀しいな。この程度の為に命を弄ぶとは」

 

 シールドのビームソードを出力すると、それは通常のビーム刃よりもさらに長大なビームサーベルを形成した。

 

「そのエゴを断ち切らせて貰う!」

 

 振るった長大なビームサーベルでネティクスの有線式大型ビットを制御するケーブルを断ち切る。

 

「これでビットは使えまい!」

 

 セイバーのスラスターを噴かしてネティクスへと迫るが、背後からの殺気を感じて機体を宙返りさせれば、ケーブルを失ったはずのビットがまだ稼働していた。

 

 ビットにも禍々しいオーラが宿っている辺り、サイコミュによる遠隔操作をしているのが判る。

 

 高いニュータイプ能力を持っていれば出来るのは知っていた。

 

「ビットは、こう使う物だ!」

 

 背後からのビームを躱し、振り向きながらセイバーの腕を振るうと、発せられたサイコフィールドが大型ビットを包み込む。

 

 大型ビットは動きを止めると発していた悪しきオーラが消え失せ、蒼い光を放ち始めると、私の意のままに動き始める。

 

 それを見たネティクスが驚きを顕にする様な動きを見せる。

 

 確かにネティクスはサイコミュを搭載したガンダムタイプとして今の時代では完成系に近いMSだ。

 

 だが、サイコフレームを搭載するこのセイバー相手にビット兵器を使う機体を持ち出したのが不運だな。

 

 コントロールを乗っ取った大型ビットを動かし、ネティクスへと攻撃を仕掛ける。

 

 ネティクスの有線式大型ビットはジェネレーター内蔵式で高出力のビームを放てる上に大型のスラスターも内蔵している。

 

 それによって後続で登場するビット兵器と比べても稼働時間が長い上に火力も充分と、フィン・ファンネルの構想の親戚とも言える性能を持っている。

 

 操る大型ビットをビームを次々と撃ちながら機動させる事で撃ち落とされない動きをさせる。

 

 そのイメージ元はプロヴィデンスやレジェンドのドラグーンで動かしている。

 

 ネティクスも両腕の連装ビームランチャーを撃つが、大型ビットには撃ち落とせる様な動きをさせていない為、放たれるビームを次々と避けながらビームを撃ち返してネティクスの動きを牽制していく。

 

 避け切れないビームはシールドで防ぐが、高出力のビームを次々と受けたシールドは融解し、使い物にならなくなる。

 

 しかしそうしてビットに意識を割けば、こちらへの注意力が散漫となる。

 

 機械に操られているのならば、如何にニュータイプと言えども対応に隙が出て来る。

 

 シールドブーメランを射出し、3つのビット兵器の猛攻は並大抵のニュータイプでは対応し切れない。

 

 それをどうにかしてしまうのは一部のトップレベルのニュータイプやスーパーコーディネイター位だ。

 

 ビームサーベルを抜きながら、そうして動きを制限されたネティクスへと斬りかかると見せ掛けて脇を素通りする。

 

 ビームサーベルを避ける為に回避行動を取ってしまったネティクスをビーム刃を出力したシールドブーメランが襲い、その右脚を切り飛ばす。 

 

「私が撃つのはお前ではない。その悪しき力を断つ!」

 

 機体を透過して視えるコックピット。

 

 禍々しい力に自由を奪われている様が視える。

 

 体勢を崩したネティクスへ向けて、コントロールを奪った大型ビットを伴い、脇の下へ展開した砲身とビームライフルを構えたフルバーストを放つ。

 

 頭部と右腕、左肩、左脚を撃ち抜かれ、そして背中のバックパックはシールドブーメランに切り裂かれたネティクスは、禍々しいオーラを飛散させて落ちて行く。

 

 その胴体だけとなった機体をセイバーで受け止める。

 

 サイコフレームの放つ蒼い光は消え、一息吐く。

 

「慣れないものだな…」

 

 一先ずこれで最大の障害のひとつを制圧出来たが、まだサイコガンダムが残っている。

 

 頭に響く頭痛を堪えながら、私は抱えたネティクスの胴体を降ろすために、アウドムラがあるガルダ級の滑走路へと飛んだ。

 

 

 

 

 

 

 

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