「見せて貰おうか。新しいガンダムの性能とやらを!」
私はそう言葉を紡いでフットペダルを踏む。
アーガマのカタパルトから飛び立つ。
ガンダムMk-Ⅱは私の意のままに動いてくれる。
成る程、反応は良好だが。
「悪くはないが、加速が足りんな」
とはいえ、フルバーニアンと比べるのは酷な話か。
Mk-Ⅱ1号機を見張っていたハイザックに手を挙げ、味方であることを示す。
そのまま私はガンダムMk-Ⅱを駆って、カプセルへと近づく。
「撃ってこない。ということは、騙し通せるか?」
カプセルの近くに居るハイザックへも手を挙げると、構えているザクマシンガン改の銃口が下がる。
やはりまだまだひよっ子だな。
しかしこうも上手くいけるか。
私はガンダムMk-Ⅱのシールドの影になる様にカプセルを庇う形で接触する。
『何をしているんだ、エマ。そのカプセルは爆弾だろ? それでエゥーゴの艦を沈めるんだよ!』
ジェリドの声が無線で入ってくるが、ゆくゆく彼も運のない男だ。
カミーユへの失言がティターンズ崩壊の始まりを作り、そうして上からの欺瞞によってカミーユの母を殺し、因縁が生まれながら戦友や想い人を亡くして行き、最後は紅蓮の炎に焼かれるか。
それが戦争というものだ。
ただ、我々の運の良いところはブレックス准将はバスクの様な卑劣漢ではない所だ。
将軍であるが故に非情な命令や判断を下さなければならない立場にあるが、良識のあるお方だ。
まぁ、カミーユを戦場で使いたいと思う所はあるものの、アムロ・レイの再来として、エゥーゴの求心力を高める狙いがあるのも理解出来る。
それが、シャアの絶望へとなってしまったことは悲劇だ。
『ここから出してください! 死ぬのはごめんですよ!』
「助かりたければ床に伏せて口を閉じていろ!」
偽装作戦中に一々説明をしている暇はない。
私は手短にカミーユの母ヒルダ・ビダンへと告げると、カプセルを抱いて、ビームライフルをジェリドのハイザックへと向ける。
『なんのつもりだ、エマ中尉!』
そして撃ち放ったビームは、ハイザックのザクマシンガン改を撃ち抜く。
踵を返して、私はガンダムMk-Ⅱをアーガマへと向かわせる。
ガラス一枚隔てただけの死と隣り合わせの状態の人間を連れて戦闘機動など取れはしない。
ならば武器を奪ってこちらへ攻撃させない手を使う他あるまい。
行く手をMk-Ⅱ1号機を見張っていたハイザックが立ちはだかるが、それをビームライフルでザクマシンガン改と右脚を撃ち抜き、よろけた機体を踏み台にして加速する。
そして発光信号でアーガマへ牽制の砲撃を入れる様に要請する。
すると命令が伝わったのだろう、MSデッキから出て来たアポリーとロベルトのリック・ディアスがビームライフルを撃って、こちらの背に迫るハイザックを牽制する。
そしてアーガマからも艦砲射撃が開始される。
『クワトロ大尉!』
アーガマのカタパルトに身を出してくるガンダムMk-Ⅱ3号機、乗っているのはカミーユか。
「どけカミーユ! このまま中へ入る!」
アーガマのカタパルトに着艦はせず、私はアーガマのMSデッキへとカミーユのMk-Ⅱ3号機ごと押し込む様に直接ガンダムMk-Ⅱを滑り込ませる。
カプセルをデッキに置くと、私はコックピットハッチを開く。
「アポリーとロベルトを発艦させろ!私も出る。敵ハイザックを追い払え!」
『クワトロ大尉!』
エマ中尉がこちらへ飛んでくるのを手を掴んで受け止める。
「すまない。追っ手を撒くのに友軍を攻撃してしまった」
『自分はティターンズを降りるつもりです。逃亡兵となりますね』
「中尉の身柄は私が保証する。悪いが今はそれで納得してくれ。時間が惜しい。カミーユのお母さまを頼む」
『了解しました』
私はエマ中尉を押して機体から遠ざけると、カミーユへと回線を開く。
「そこで何をしている」
『何をって、僕の家族の事でクワトロ大尉の手を煩わせるわけには』
「気持ちはありがたいが、一人の身勝手な行動で、部隊を殺す事にもなる。君は民間人である事を忘れるな」
『そうですが…』
聞き分けは良いと思いたいが、やはり感情が先走るのは若さ故のものだ。
「ハイザックのパイロットの尋問はどうなっている!」
私がそう告げるのと同時に、あろうことか私のリック・ディアスがアーガマから出て行ってしまう。
フランクリン・ビダン、困ったお人だ。
「何故私のリック・ディアスが出た! 誰が乗っている!」
『ハイザックのパイロットが人質取って乗り込んだんですよ!』
「人質?」
『クローチェ中尉が人質です!』
「なんだと!? どうしてそうなる!」
『人質に取られたレコア少尉と代わったんです!』
「ええい! やってくれるっ」
私はコックピットのハッチを殴り付けて憤りを吐き出す。
アストナージを脅してリック・ディアスを盗んだのだろうと思っていたが、まさか人質を取って逃げるなどと。
クロエは強化人間とはいえ、それは投薬処置による調整であり、身体的な強化処置は施されてはいない。
それにその強化処置も完治して久しい。
言ってしまえば普通の人間だ。
訓練などもしていない上に、その時の強化措置の後遺症で同年代のレコアやエマよりも身体が細い。
ともすれば、フランクリンの人質となってリック・ディアスを取り戻すつもりだとしても、大の男の大人に正面から力尽くでは敵わない。
「私のガンダムを出せ! このMk-Ⅱでは間に合わんっ!」
『出すんですか!?』
「当たり前だ! 私のリック・ディアスに追い付くにはそれしかない。急げ!」
私のリック・ディアスは指揮官用の上に、私が満足して動かしやすいようにバーニアも強化している。
このガンダムMk-Ⅱではとても追いきれん。
『りょ、了解! 格納庫! 大尉のガンダムを緊急発進だ、急げっ!』
クロエ、私の声が届いていたら早まるな。
ララァ、この私の声を彼女へ届けてくれ。
『クワトロ大尉、すみません。父がこんなバカなことを…っ』
「カミーユ君。残念だが、最悪の場合は君のお父さまの身の安全は保証しかねる」
『わかっています。あんな、あんな父親…、いっそ死んでしまったほうが清々します』
「お父さまは良き父ではなかっただろうが、それでも血を分けた肉親だ。そう言う物でもない」
『でも、こうしてご迷惑をお掛けしている上に、エゥーゴの新型を持ち帰って、ティターンズで好きにするつもりです! 若い女を囲って、自分の事しか考えていない。そんな父親、父親だなんて思いたくもありませんよ! このままじゃ、クロエさんだってどんな目に遭うか』
「そうはさせない為に、私のガンダムを使うのさ」
『大尉のガンダム…? Mk-Ⅱや、エゥーゴの新型よりも凄いガンダムがあるんですか?』
「ああ。リック・ディアスよりも、私の肌に合うガンダムだ」
格納庫から昇降機でMSデッキに1機のガンダムが上げられる。
『大尉!! ガンダム・フルバーニアン、いつでも出せます!』
「ああ」
私はガンダムMk-Ⅱのコックピットハッチを蹴って、格納庫からリフトアップされたガンダムGP01フルバーニアンへと飛ぶ。
私を迎え入れるように開いているフルバーニアンのコックピットへ背中を向けながら入ると、モニターの電源を入れる。
全天周囲モニターも便利だが、こうしてメカメカしく死角も多い第一世代のコックピットは、まるで実家に帰ってきた懐かしさを感じさせる。
「各チェック項目、発進シーケンスはすべてスキップ! 緊急発進する!」
『緊急発進だ! 整備班退避急ぐんだよ!!』
『ガンダム・フルバーニアン、カタパルト接続確認っ!』
「カウント省略!」
『整備班退避完了! クワトロ大尉、無事に嫁さんを連れて帰ってきてくださいよ!』
「わかっているさ! クワトロ・バジーナ、ガンダム1号機フルバーニアン、出るぞ!」
フットペダルを踏み、カタパルトで射出されるフルバーニアン。
カタパルトを離れた瞬間からフルスロットルで、私はフルバーニアンを宇宙へと駆けさせる。
ガンダム試作1号機フルバーニアン。
ジェネレーター出力はZガンダムと同等、そして推力重量比はユニコーンガンダムにも比肩する。
武装のビームライフルやビームサーベルはそれ程でもないが、本体スペックはオーバーテクノロジー並みの機体である。
私も現金な男だ。
こうしてガンダムに乗っていると、胸の中の高揚を隠せない。
ただ、今はそれを忘れてクロエ救出に全力を傾ける。
このフルバーニアンを持ち出したのだ。
フランクリン・ビダン、貴様は自身のエゴでこの場にいるすべてのティターンズ兵の命を生贄に捧げたという事を教えてやる。
「急げ、ガンダム」
私はさらに機体を加速させ、Gによって身が軋むのを無視しながら宇宙を駆けた。
◇◇◇◇◇
私は人質に取られたレコア少尉に代わって、カミーユの父と一緒に、クワトロ大尉のリック・ディアスのコックピットに居た。
人質を代わった時に手首を絞められているから、今は様子を見ていた。
『すまないが大人しくしていてもらおう、お嬢さん。君にはこの機体と共にバスクへの手土産になってもらう』
この人から感じるのはカミーユへの愛や、ましてやクワトロ大尉が助けに行った自分の奥さまへの愛でもない。
若い女を下卑た眼で視る、気分の良いものじゃない。
「大人しくアーガマへ戻った方が良いですよ」
『心配は要らないさ、お嬢さん。この機体を持って帰れば、私はティターンズの開発部で好きが出来る。そして、エゥーゴのパイロットも連れ帰れば情報も聞き出せる。君も、素直に話した方が身のためだぞ?』
この人は、自分の命がもうバスクに重要視されていないことを知らないんだ。
このまま戻ったところで、カミーユとガンダムMk-Ⅱが戻ってこなければ処罰されて、多分そのまま闇に葬られる事を分かっていない。
「私はいつでも死ぬ覚悟は出来ています。クワトロ大尉の邪魔になるくらいなら、私は貴方とこの宇宙に散っても構わない」
『ふふ。強がりは良くない。それに、君だって死にたくはないだろう?』
「私は、あのままなら一年戦争で死んでいた。それを、クワトロ大尉がHADESの呪縛から私を救ってくれた。私は、私を救ってくれた人の為にこの命を使うと決めた。だから、ティターンズに渡すくらいなら、私がこのリック・ディアスを自爆させる」
『自爆だと!? 正気か!? いや待て、今HADESと言ったな、お嬢さん。なら君はあのペイルライダー計画の…っ、ふふ、ふはははっ! なるほど、強化人間ともなればなおさらバスクへの良い手土産になるじゃないか!』
「私と貴方はここで死ぬんです」
『余計な真似は辞めてもらおう、操り人形。所詮貴様は機械に使われるだけの哀れな存在だ。その想いも単なる刷り込みだよ。鳥の雛が初めて見た物を親と思い込むのと同じだ』
「例えそうでも、私はクワトロ大尉の為なら」
『ティターンズはペイルライダーも組み上げている。喜べ、またアレに乗るなら命の保証はあるだろうさ』
「私は、もう一度アレに乗るくらいなら」
──早まるなクロエ!
私の頭の中に声が聞こえた。
「クワトロ大尉…?」
漆黒の宇宙──。
そこを、まるで流れ星の様な一筋の光が奔る。
そして、一瞬弧を描く蒼く輝く炎が見えて、リック・ディアスのモニターがオートでその姿をズームした。
「クワトロ大尉!」
『追っ手か!』
それはガンダム──あの時と同じ、私がア・バオア・クーでHADESに取り込まれた時。
あの時も、クワトロ大尉はガンダムで私を救ってくれた。
『あのガンダム、何故アレがここにある! アレに関してはすべて抹消された筈だ!』
ガンダムGP01Fb。
クワトロ大尉がアレに乗っているのなら、クワトロ大尉は本気だということ。
『フランクリン・ビダン大尉、機体を止めてもらおう。さもなければ撃墜する』
『なにをっ、こっちには人質が居るんだぞ!』
『新型の情報をティターンズへ明け渡すくらいならば、人質一人の犠牲は已むを得まい』
『貴様、気でも狂っているのか!』
『私は冷静だよ、フランクリン大尉』
『私はこの機体を持って帰らねばならんのだ! 例えガンダムだろうと4年前の機体だ!!』
リック・ディアスがクレイバズーカを撃つ、けれどもバズーカなんて当たる程、クワトロ大尉は遅くない。
『消えた!? 何処に行った! ぐあっ』
「くっ」
機体が激しく揺れる。
見れば背中のバインダーが斬り落とされていた。
『何処だ、何処へ、うわあっ』
「っ、クワトロ大尉…」
今度はクレイバズーカを持っていた右腕が斬り落とされた。
その一瞬、白い閃光が過ぎ去り、あとには蒼く輝く炎が残るだけ。
『このっ、旧式のガンダムで!』
『私は赤い彗星と呼ばれた事もある男だ。素人技術者に捉まっていては、赤い彗星の名が泣くのでな』
『あ、赤い彗星…、ジオンの、シャア・アズナブルか…っ』
さらに背中のビームピストルも斬り裂かれて、リック・ディアスはもう丸裸になった。
レーダーに反応、ティターンズからのMSが来る。
『あ、あれはガルバルディ。助けが来た…』
赤いガルバルディはルナツーの機体。
でも、今のクワトロ大尉なら。
『赤いガルバルディ、ルナツーのライラ・ミラ・ライラ大尉とお見受けする』
『そうだ。そこのガンダム、知らないな。所属は何処だ?』
『私はエゥーゴのクワトロ・バジーナだ』
『クワトロ? ルナツーの赤い彗星か』
『そうだ。我々は現在、ティターンズとの交渉中である。すまないが手を引いて貰いたい』
『我々はそのティターンズの要請でここに居る。貴様こそ、ルナツーの赤い彗星が地に落ちたものだな』
『スペースノイドならばエゥーゴの活動理念は理解出来ると思いたいが?』
『理解はする。だが我々は地球連邦軍だ。地球圏の治安を乱すエゥーゴを前にしては下がれないと分かるだろう』
『了解した。残念だが、この機体を見られたからには生かして返すわけにはいかないのでな。呪うのならばティターンズに使われた己の時の不運を呪ってくれ』
『ガンダムだからとて!』
そのままクワトロ大尉はガルバルディの部隊と交戦に入った。
でも、3対1でも、ガンダムに乗ったクワトロ大尉を止めるのには数が少な過ぎる。
『ら、ライラ大尉っ』
一瞬で一機のガルバルディが宇宙に散った。
『ライラ大尉! 敵が速すぎて捉えきれませんっ』
『わかっている! なんだあの動きは。まるでバッタじゃないかっ!』
『大尉っ、ぐあ──』
また一機、ガルバルディをクワトロ大尉が撃墜した。
『この一瞬で2機墜とされた? あれが、ア・バオア・クーを生き残ったパイロットの実力か!』
ガルバルディの速さで、クワトロ大尉のガンダムの速さに追いつく事は出来ない。
それに、クワトロ大尉は赤い彗星。
普通のエースパイロットで相手になる人じゃない。
『何故だ。ルナツーのガルバルディは手練れで有名なんだぞ。それが4年前の旧式に、ああも手玉に取られるのか…』
「あの人は赤い彗星です。あの人を止めたければ、ニュータイプを連れてこないと無理です」
『ニュータイプのシャア。やはりあの赤い彗星なのか…!』
◇◇◇◇◇
流石はフルバーニアンだ。
直ぐに私のリック・ディアスに追いついてくれた。
まぁ、フルバーニアンが速すぎるという事なのだが。
しかし、まさかライラ大尉のガルバルディβの部隊と交える事となろうとはな。
説得はしてみたが、今のエゥーゴの方が連邦軍からしても反政府運動組織であるのだ。
それで応じて貰えないのなら、悪いが口封じをしなければならない。
このフルバーニアン、隠し通すことでの使用をアナハイムやゴップ大将から許されているのだ。
とはいえ、記録は抹消されている為にデータベースへの登録はなく、新型ガンダムと思われるが、あのバスクの目に留まるとフルバーニアンの存在からアナハイムへ辿り着かれる。
だからこうしてアレキサンドリアのレンジ外で私のリック・ディアスに追いつけて、あとは穏便に事を運ぼうとしたのだが、間の悪い事だ。
「しかし、流石ライラ大尉。良くやる」
ギレンの野望を参照すれば一年戦争を生き抜いているというべきか。
しかし、マシーンの性能はこちらが圧倒している。
悪く思わないで頂こうか。
────!!
「っ!?」
私は殺気を感じて反射的に機体を翻せば、あのまま突っ込んでいたら直撃コースのビームが過ぎ去っていた。
「なんだ!」
レーダーにこちらへ急速接近する機体がある。
「あの機体……Mk-Ⅱがまだあったのか?」
しかし妙だ。
先程乗ったガンダムMk-Ⅱの加速力と、今接近してくるガンダムMk-Ⅱとは加速性能が違う。
ビームライフルを撃つが、それはいとも容易く避けられてしまう。
反撃のビームを躱すが、さらに回避先に置きビームがあり、私は仕方がなくシールドで防御する。
彼我の距離が縮まり、その全容が見えた。
「確かにMk-Ⅱだが。細部の形状の違い、あれはガンダムMk-Ⅱ試作0号機だ。とすれば、乗っているのはゼロ・ムラサメか?」
しかしなんだこの違和感は。
「私はこのMk-Ⅱを知っている…」
それはガンダムMk-Ⅱ試作0号機を知っているという意味ではない。
その動きを、私は知っている。
「この私がこうまで外すか!」
互いにビームが交差するが、閃光が過ぎ去るだけでどちらも当たりはしない。
「ならば!」
私はドッグファイトを辞め、真正面からガンダムMk-Ⅱ試作0号機へと突っ込む。
それに応えてか、あちらも突っ込んでくる。
互いに撃ち合っても埒が明かないと判って、無駄なビームは撃たない。
そして、ビームサーベルを抜く瞬間──。
「ぐううううっっっ!!!!」
ユニバーサル・ブースター・ポッドと胸部インテークのバックブースターを全開で噴かし、内臓が飛び出しそうなGを感じながら急減速。
あちらのビームサーベルを空振りさせ、さらにこちらはまたフルスロットルで加速しつつ、ビームジュッテを起動し、頭を薙ぎ払おうとしたが、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機は驚異的な反射能力でバレルロールで回避しつつ、私の背後に回ったが、こちらもスラスターとアポジモーターをさらに駆使して宙返りをしてバルカンを撃つが、シールドで防がれてしまう。
しかしそれに目をくれずにバックブースターを全開にして後退。
ビームライフルで牽制しつつ、リック・ディアスへと接触するために近づくが、ガンダムMk-Ⅱ試作0号機の銃口が私のフルバーニアンからリック・ディアスへと向けられる。
「ええい!」
私はビームサーベルで撃たれたビームを弾き、そして出力を絞ったビームサーベルでリック・ディアスの頭部の上面を切り飛ばす。
バルカンファランクス、そしてコックピットの上部を切り裂いて、中に居たクロエが飛び出して来るのをコックピットを開けて迎え入れる。
そして、まだフランクリンの残るリック・ディアスへ、私はその核融合炉へとビームライフルを撃った。
いや、照射時間を長くしたギロチンバーストでリック・ディアスの核融合炉を撃ち抜き、そして核爆発を引き起こした。
その閃光に隠れるように、私はフルバーニアンを離脱させる。
あの核爆発ならばリック・ディアスの部品も回収出来まい。
しかし、あのガンダムMk-Ⅱ0号機。
私の予想が正しければパイロットは──。
「クワトロ大尉…」
「無事だったか、クロエ。怪我は無いな?」
「はい。でも、リック・ディアスが」
「機械の代わりは幾らでも造れる。しかし人間はそうはいかない。リック・ディアスを失うより、クロエを失うことのほうが、私は辛い」
「クワトロ大尉」
そうだ。
こんな良い子を死なせてしまっては、私はシャアを情けないやつだと笑えなくなる。
この子の結婚式を見るまでは、死ぬつもりはないさ。
「アーガマへ帰投する」
「良いんですか?」
「あのガンダムは手強い。それに、ティターンズとは既に開戦状態だ。こうなっては秘密もなにもないさ」
このフルバーニアンの存在の露呈を気にするクロエにそう言って、私は遠ざかるガンダムMk-Ⅱ試作0号機を見やる。
追ってくる気配はないが、この私がああも抑え込まれるとはな。
私も強くなっている実感はあるのだがな。
「所詮、私はオールドタイプか」