なんで先生が死んでるんですか……?   作:ねをんゆう

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39.焼かれた者達は

「……そうですね、これなら2週間ほど様子を見れば大丈夫だと思います。団長と似た傷の治り方をしていますので。目の怪我だけは少しだけ長引きそうですが、1月もしないうちに完治出来ますよ」

 

「そうですか。ありがとうございます、セリナ様」

 

 

 

 

「いやいやいやいや!!流石に早過ぎませんか!?全身ボロボロですよ!?半年くらい休んだ方がいいですよ!」

 

「安心して下さい、ナギサさん。ミネ様との戦闘の後から私の回復力は更に強くなっています。そうでなければ生きてミカさんと向き合うことは出来ませんでした」

 

「サラッととんでもないこと言ってませんか!?ハナコさん!もうミアさんはベッドに縛り付けた方が良いです!トリニティから出すべきではありません!!」

 

「ナギサさん。気持ちは痛いほど分かりますけど、多分そんなことしたらミアさんが爆発します」

 

「爆発!?」

 

「流石にそれはまだ出来ません」

 

「一生出来なくていいです!!」

 

 

 団長のミネが不在であっても救護騎士団の様子はそれほど変わることはなく、治療を終えたセリナはいそいそと次の患者の元へ歩いていく。

 もうなんだか何処へ行く度にこうして大怪我をして入院させられるのが常のような状況になっているミアであるが、その入院期間が徐々に減って来ているのは成長だろう。

 

 ……成長か?

 

 まあとにかく。

 

 今こうして個室を与えて貰い、そこにはハナコとナギサが見舞いに来ていた。もちろん2人とも忙しい立場ではあるものの、これより重要なことも他にはない。何もかも放り出して来ている、というのが真実に近かったり。

 

 

「はぁ……まったく、本当に何があったんですか?ミネ団長に監禁されていたというのは聞きましたが」

 

「私にもよく分かりません」

 

「ど、どういうことですか……」

 

「過程は色々とあったのですが、結果的に一度でもミネ様に勝つことができるまで外には出さないという話になりまして。何度も挑んでは気絶させられて、正直その辺りの記憶が曖昧になっています」

 

「ひ、酷過ぎませんか……?」

 

「最早それはイジメでは……」

 

「ミカさんを止めると発言したのですが、それが原因の可能性があります。少なくともミネ様の技術を身に付ける前の私では、盾にさえなれなかったでしょうから」

 

「……ミネさんなりの愛ということでしょうか」

 

「……そうだとしても、とは思いますが」

 

 

 まあ確かにここに来た時のミアは多くの怪我をしてはいたものの、その治療もまた十分にされていた。最初はそれを彼女が自分でやったものだと思っていたが、もしかすればそれは蒼森ミネが行ったものなのかもしれない。

 

 直して、壊して、治して、壊して。まあいつもの蒼森ミネであると言われればそうなのだが、もう少し加減はできなかったのだろうかと思わざるを得ない。

 

 しかもその張本人はまだ帰って来ないという。

 

 

 

「お二人とも、申し訳ありませんでした」

 

「「!!」」

 

「本件に関して、流石にお任せし過ぎてしまいました。正直どこまで口を出すべきかと戸惑い、迷い、結果的にほぼ全ての負担を押し付けてしまいました。その上で最善の方向に着地させて頂いたことに深い感謝を、そして謝罪を」

 

「「………」」

 

 

 突然にそんな風に頭を下げられて、ナギサとハナコは互いに困ったように顔を見合わせる。確かに今回の件はとても大変だったし、ずっとミアの到着を待ってはいたけれど。……それを謝られるのは、きっと違う。

 

 

「……私こそ、トリニティの生徒会長として情けない姿を見せてしまいました。無実の生徒を疑うだけでなく、ミアさんから任されたにも関わらず諦めてしまって。……ミアさんからも見捨てられたと、そんなことまで、考えて」

 

「いえ、それについては私の配慮不足というのもあります。アズサちゃんが怪しいことについては早々に気付いていたのですが、どのように解決するのが最善なのか。結局スミレさんと話すまで固めることが出来ませんでした。それが結果的にナギサさんの負担を増す要因にもなってしまいましたし……」

 

「……なかなか上手くいかないものですね。もう少し上手くやれるかと思ったのですが、想定外ばかりです」

 

「「ええ、本当に……」」

 

 

 3人とも各々の居場所で出来る限りのことをやって、生じた結果は最善ではない可もなく不可もなし。何もかもが上手くいくなどとは考えていないが、もう少し上手くはやりたいものである。

 未来を知っていても、優れた頭を持っていても、長年の経験を持っていても、先生1人の活躍に敵わないのだから。本当に大変なものである、世の中というのは。

 

 

「幾つか報告がありますが……一先ずは補習授業部のことからですね」

 

「ええ、聞いた話では十分な点数を取れなかった場合には特別クラス送りになるのだとか。私の想定より遥かに優しい待遇のように聞こえますが、どうでしたか?」

 

「見事に落ちました、全員特別クラス送りです」

 

「……」

 

「……」

 

 

 駄目でした。

 

 

「な、なぜ……」

 

「元より必死さが足りないというところはありました。というのも、ミアさんが言ったように罰が優し過ぎましたね。特別クラスになったとしても、単にクラスが変わって隔離されるだけですから」

 

「仲が深まるほど大した問題ではなくなるという点もあったのでしょう……ちなみに採点の結果、ヒフミさんが998点、アズサさんが930点、コハルさんが880点。誰一人として1000点には届かず。余裕と思われていたヒフミさんも解答欄が1つズレていたので壊滅しました」

 

「酷過ぎます……」

 

「……あの一件の直後でしたから、睡眠も足りず集中力が切れてしまったのでしょう。ケアレスミスも多く、文章として成り立っていないものも多々ありました」

 

「容疑が晴れたとはいえ、約束は約束ですからね。ここは素直に特別クラス送りでしょう」

 

「……またルートが」

 

 

 本来であれば全員が90点以上を取って喜び合う筈が……こちらではシャーレの権限が無く、退学を迫るほどナギサが追い詰められて居なかったが故なのか、バッチリ疲れと眠気にやられてしまったらしい。

 

 ……まあ元のルートでも結果的にまた補習授業部に戻って来ていたので、あまり変わらない気もしないでもないが。何れにせよゲーム開発部と同じく、補習授業部も別の道を歩み始めている。ハナコをこちら側に引き入れてしまった時点で、それは今更な話でもあるのだが。

 

 

「で、では、ミカさんはどうなりましたか?」

 

「……ミカさんは、今は地下の部屋に隔離されています。処遇が決まるのは色々と落ち着いた後のことにはなりますが、パテル分派からだけでなく、一般生徒の間でも強い非難が生じているようです」

 

「なるほど、そこはルート通りですか」

 

「ただ……」

 

「ん?」

 

 

「どうにも何処かからその、ミアさんとミカさんがですね……なんというか、お付き合いをしているという噂が同時に蔓延し始めまして」

 

 

 

 

「………………………………………………………………………………?????????????????????????」

 

 

 

「ミアさんがもの凄く珍しい顔をしていますね」

 

「まあ当然の反応ではあります」

 

 

 訳が分からないにも程がある。

 何がどうしたらそんな噂が出来上がるというのか、ほんのカケラも理解することが出来ない。ミアがこんな状態になるのも当然の噂話。

 

 

「あの戦闘中にミアさんはミカさんに"浮気"だとか"私だけを見ろ"というような発言をしていたと思うのですが、壁が壊れていたこともあり多少ながら外に聞こえていたようです」

 

「そこからミカさんがアリウスの生徒に浮気をしてしまい、その結果としてこういった事態に陥ったのではないか……というような憶測が飛び交っています」

 

「理解が出来ません」

 

「ミアさん、結局のところ皆さんも年頃の女性ですから。陰謀渦巻く噂話より、そういった恋愛沙汰の方を好むのです。特にミカさんとミアさんですから、意外性もあったのでしょう」

 

「ミアさんの発言自体は事実ですからね」

 

「まったくです。私のことを守ってくれるという約束だった筈なのに、ミカさんのことばかりなんですから。正直嫉妬しました」

 

「それについては……本当に申し訳ないところなのですが」

 

 

 噂の出所は分かったが、これが良いことなのか悪いことなのかは判断に困るところだ。事態が余計にややこしくなっただけな気もするし、こんな噂が広まってしまったら、なんだか色々なことが変わってしまう気がする。

 

 

「……仕方ありません。怪我が治ったらミカさんの所へ話しに行きます。この噂についてはその際に対応策を決めることにします」

 

「……余計に誤解が広がりそうな気もしますが」

 

「こういったものは放っておくに限りますが、ミカさんの処遇のこともありますし、今は確かに慎重に動くべきですね」

 

 

 正直なところ、ミアとしても既に現状はルートからかなり離れていることを理解している。諦めている。

 元々は自分が先生の代わりになることでなるべく最善のルートに近付けるつもりであったのだが、やはりその過程で生じる小さな歪みが蓄積し、今こうして大きな歪みとなって目の前に現れた。

 

 ここからはアドリブでやって行くことがより多くなるだろうし、その全てを完璧に導けるとは思えない。だからこそ、これまで以上に多くのことに目を向けて、努力をしなければいけない訳で。

 

 

「それにナギサさん、貴女自身は大丈夫なのですか?」

 

「……」

 

「これからどのようにミカさんと接していくのか、これからどのようにしてトリニティを立て直していくのか、悩みは尽きないでしょう。正直なところ、事情と過程を聞いた今では、ティーパーティーを降りる可能性まで危惧しているところです。実際はどうなのでしょう」

 

「……相変わらず、気持ちよく聞いてくれますね。ミアさん」

 

「それしか出来ませんので」

 

 

 ナギサは1つ息を吐くと、けれどその質問に笑みを浮かべて向き合う。まるでそれが大した問題ではないかのように。

 

 

「何があろうと私はミカさんの幼馴染であり友人です。ミカさんが間違った道に進んでしまったのなら、その手を引っ張って引き戻します。……そのためにも、私自身が道を降りるつもりはありません」

 

「……そうですか」

 

「ハナコさんの言っていた通り、世の中が最悪ばかりでは無いということも分かりましたから。真実を知った今、むしろ後悔していることばかりです。ミカさんがアリウスの話をした際に、もう少し向き合っていれば……とか」

 

「本当に大丈夫ですか?」

 

「大丈夫です。なんとかします。……忘れていませんか?ミアさん。私はこれでも3年生なんですよ?」

 

「!」

 

「友人とは言え、いつまでも後輩に心配させるような情けない姿は見せていられません。無理はしていますし、万全でもありませんが、それでも見栄だけは張らせてください。……ミアさんの前でくらい、私は頼れる先輩でありたいんです」

 

「……分かりました」

 

 

 そうしてナギサは時計を見ながら立ち上がる。

 いくらなんでもこれ以上のサボリをしてしまうと、他の業務に支障が出てしまう。本音を言えばもっとここに居たいし、色々な重圧からも逃げてしまいたいし、部屋に引き篭もって自分のことだけを考えたい。

 

 ……だが、それは出来ない。

 

 

 だって知ってしまったから。

 

 

 自分が見捨てられたなどと失礼極まりないことを考えている間にも、目の前の2つも歳下の少女はあれほどボロボロになりながらも必死に、自分を助けるために奮闘していたということを。

 

 蒼森ミネに叩きのめされて、怪我だらけの身体でここまで辿り着いて、疲労困憊になりながらそれでも聖園ミカと戦闘をして。最後にはミカを取り戻して、絶対にもう一度ナギサやセイアと机を囲めるようにするとまで言ってくれた。

 

 その言葉に、ナギサが一体どれほど救われたことか。

 

 先程はミカのことばかりで嫉妬したとは言ってしまったけれど、それは事実ではあったけれど、それでもナギサは救われたのだ。最悪ばかりだと思っていた現実を、実際に塗り替えてくれたのは彼女なのだから。希望を繋いでくれたのは、彼女なのだから。

 

 

「ミアさん」

 

「はい?」

 

「次は必ず、私が貴女を救います」

 

「……!」

 

「力になれることがあれば、遠慮なく言って下さい。私はハナコさんのように調停部に入ってお手伝いをすることは出来ませんが、この立場だからこそ出来るやり方でミアさんをお手伝いしますから。……私はミアさんの味方ですよ、何があろうとも」

 

「……何が、あろうとも」

 

「ええ。それでは、また後日。ハナコさんも行きましょう」

 

「そうですね。……そうだミアさん、もう少しこのシッテムの箱は借りていてもいいですか?戦闘支援システムに慣れておきたいので」

 

「構いませんよ、私では何故か開かないので。ハナコさんが開けられるというのなら、そういうことなのでしょう。……それではお二人とも、お気をつけて」

 

 

 

 ミアに見送られながら、2人は病室を後にする。

 

 少なくともここであれば、ミアも無理をして外に出たりはしないだろう。つまり恐らく、最低でも2週間だけは、ミアはここに居てくれる。いつでも会うことが出来るし、怪我もしない。

 

 その事実に安堵している自分も居る。

 

 ハナコとナギサは肩を並べながら、もう少し話していたかったという思いに後ろ髪を引かれつつ、仕事のために部屋に戻る……ということはせず、予約していた空き部屋へと入っていった。

 

 

 

 手元のシッテムの箱を見つめながら。

 

 

 

 

「……それで。ミアさんには開けないというのはどういうことですか、キリエル」

 

 

【はぁ……あまり怒らないで、2人とも。それは言葉通りの意味よ、私がミアと会うのはまだ早いと思ってる。だから緊急時以外はサポートもしてないし、会話もしてない。解錠も許してない】

 

 

「何故ですか!貴女と彼女は親友だったのでしょう!?何故そこまで彼女を拒絶するのです!」

 

 

【それは違うわ。私を構成した元の記憶データは、ミアと出会ったばかりの頃のものだから。私の親友というより、オリジナルの親友なのよ。姉の親友って表現の方が分かりやすいかな】

 

 

「……っ、言いたいことは分かりますが」

 

 

【いい?私は天音マキリではなく、あくまでキリエルなの。……こういうスレ違いが起きるからこそ、まだミアと会う訳にはいかない。この説明で少しは分かってくれるかしら?】

 

 

「「……それは、まあ」」

 

 

 シッテムの箱に表示された、1人の少女の姿。

 栗色の長い髪と美しい容姿、けれどそれは人間ではない。既に存在しない人間の記憶データを使って作成されたAI。ミアの親友であった天音マキリの作成物。

 

 先程までの会話をずっとシッテムの箱の中で聞いていた彼女は、普通の人間と変わらない感覚で2人と会話をしてくれる。

 

 

「……キリエル、色々と聞きたいことがあります。そのためにミアさんとの会話を早めに切り上げたのです、答えてくれますね?」

 

 

【全てを、とは言えないわ。限られた範囲でなら答えるけど】

 

 

「分かりました。それでは、まずは根本的な話から。そもそも貴女はどういう存在なのですか?」

 

 

【そうね……元々は天音マキリの研究サポート兼、人格分割のために作られた存在。寄生能力は後から付けられた物よ】

 

 

「人格分割?それはどういう意味ですか?」

 

 

 

【……あまり詳しくは言えないのだけど、天音マキリには前世の記憶があったのよ】

 

 

 

「は?前世……?」

 

 

【そう、それ故に彼女は前世と今の自分の境界に悩んでいた。だから、自分をもう1人作ることでそれを分けようとした。前世の自分を私に押し付けた、ってところね】

 

 

「つまり、実際のところ貴女は天音マキリではなく、天音マキリの前世ということですか……?」

 

 

【そう簡単な話だと良いのだけど……人間、それほど単純じゃないから。役割を分けただけで、実際のところは単純に天音マキリが2人居ただけね。ただ私は端末からは出られないから、記憶をコピーした時点からオリジナルとは乖離してる。そういう意味では同一人物じゃない】

 

 

「……ミアさんと親友になった天音マキリと、オリジナル経由でミアさんの話を聞いていた貴女」

 

 

「……確かにこれは、ミアさんでさえ知ったら混乱しますね」

 

 

【ハナコさんなら分かると思うけど、今のキヴォトスにおいて私の存在はオーバーテクノロジーにも程があるから。前世の記憶を利用した技術だし、リオ先輩だってまだ出来ないはず。だから私のことはミアでさえ知らないわ。……妙な期待を残したくもなかったもの】

 

 

「「………」」

 

 

 シッテムの箱の中の彼女は、本当にAIなのかと思うくらいに人間味があって。自分の親友ではないと言いつつも、そこに確かにミアに対する愛情が見えるのがハナコには分かる。

 

 そしてキリエルというこの存在が、あまりにもミアに対して大きなダメージになり得るということも。容易く想像することが出来た。彼女のミアの前に姿を見せないという判断は間違っていないだろう、少なくとも今はまだその余裕は彼女にはない。

 

 

「ではキリエル、貴女の目的を教えて下さい。オリジナルの貴女が病で亡くなったことは知っていますが、貴女はその後も何処かで活動していたということになります。これまで何処で何をしていたのですか?」

 

 

【……その中には話せないことも幾つかあるけれど。これまで私が何処に居たのかと言われれば、ミレニアムね。より正確に言えば、ミレニアム内の全ての情報が集まるシステムの中】

 

 

「様子を伺っていたということですか」

 

 

【ええ、そして私の目的が何かと問われれば……それはシッテムの箱に入り込むこと】

 

 

「「!」」

 

 

【オーパーツであり、キヴォトスにおいても屈指の性能を持つこの端末。所有者の先生が亡くなった後、これをミアが所有する可能性はオリジナルも予想していたから。私はそれに寄生して、ミアをサポートすることを目的にしていた】

 

 

「ま、待ってください!?マキリさんは先生が亡くなることまでご存知だったのですか!?」

 

 

「そ、それではマキリさんがミアさんに授けたルートというのは!?」

 

 

【……ごめんなさい、そこまではまだ話せない。戦闘後にミアに起きた現象と同じように、今はまだ誰にも話せない情報の一つ】

 

 

「っ、ミアさんはそのルートを実現するために必死なんですよ!?それなのに!!」

 

 

【それについては間違っていないわ】

 

 

「ま、間違っていないって……」

 

 

 

【天音マキリはミアにそうさせるために死んだのだから】

 

 

 

「「!?!?」」

 

 

 

【いい?私もオリジナルも望んでいることは1つだけ。……甘使ミアが幸福に生きること。究極的に言えば、それ以外の全ては二の次で良い】

 

 

 

「「………」」

 

 

 

【理解されなくても良い、誤解されたって良い。最後にミアが笑って生きていけるのなら、私達はそうして持っている全てを捨てられる】

 

 

 

「………何がそこまで、貴女"達"を」

 

 

 

 

 

 

【――私達(天音マキリ)を救ってくれたあの子を、今度は私達が救うの。誰よりも優しいあの子を幸せにするまでは、何度死んでも死に切れないのよ】

 

 

 

 

 単なるAIには出せないようなその狂気染みた迫力は、とても知人の親友に向けるような感情ではなくて。直接会話をしたこともないはずのキリエルでさえここまで心を焼かれているという事実に。

 ハナコとナギサは、ただ唇を噛むしかなかった。

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