屍喰部隊がゲコ太の通信機を購入する時にこんな事があったかも?という妄想です。
10月上旬 屍喰部隊のアジト
清ヶとナルハがいつも通り喧嘩をしていた。
大抵はナルハが清ヶにダル絡みをする事が発端である。
「何でそんなに絡んでくるんだよ!」と清ヶが声を荒げると、「清ヶの反応が面白いからだよ~」とナルハが悪戯っぽく笑う。
そんな賑やかな二人を横目に、薬丸は居間の椅子に腰掛けながらタブレットに向き合っていた。
目の前に広がる数字の並びに、思わずため息を漏らす。
チーム降格に伴う任務報酬の減少は、備品調達と会計を担う自分にとって、どうにも頭が痛い問題だった。
「ナルの紙、リーダーの痛み止め、清ヶのセーラー服、ボクの薬品代に…」
薬丸は思わず顔をしかめる。
経費を削減するためにはどこかを切り詰めなければならないが、それで任務を失敗してしまっては元も子もない。次に任務を失敗したらどうなるかなんて、考えたくもなかった。
タブレットの画面を何度も確認し、再計算を繰り返す。
マイカップ入りのコーヒーはすっかり冷めていた。
口をつけると、苦いだけの液体が喉を過ぎていく。
「不味い…」
酷使された通信機もそろそろ買い替え時だ。
選択肢は2つある。
安いが見た目は子供の玩具にしか見えないもの、高いがシンプルな黒いデザインのもの…。
「うーん、経費は削減したいけど、職業柄舐められるとなぁ…」
薬丸が悩んでいると、リタとナルハが寄ってきて肩越しにタブレットを覗き込む。
「通信機で悩んでいるのかい?
ボクはこっちの安いほうがいいと思うけどなぁ。」
「リーダーってば、見た目通りのお子様趣味だぁ!」
「な、何を言っているんだい! この価格差は無視できないものであり、至って合理的な理由があるんだよ!決して、このカエルのデザインが可愛かったからってわけじゃ……!」
こうなったリタの話が長いことを知っている薬丸は、手をひらひらと振って話を遮る。
この間、リタがムキになった際には10分近く話を聞く羽目になった。
あんな事は、もうごめんである。
「あー、ハイハイ、分かった、分かったよ。」
キャラクター型の通信機を5つ、購入リストへと加える。
任務には不測の事態がつきものだ。予備の分も必要であろう。
「次の任務も絶対に成功させなきゃな、ボク達にはもう後が無いんだから…」
そんなリタの呟きに対し、皆が少し暗い顔で頷いた。
薬丸は念入りに購入リストを見直す。
予算配分の選択肢は無数にあるが、未来が見えない彼女達は、今はこの配分が正解だと信じるしかなかった。
その選択が彼女らにとって正解だったと分かるのは、もう少し先の話である。