婚后さんは教える時に感覚派だとおもっています。
10月上旬 学園都市某所にて
「あ!もしもし、婚后さん?
急に連絡してごめんね、お願いがあってさ…
今日って空いてたりする?」
「本当?!ありがとう!実は・・・」
***
「いやー、ごめんね、婚后さん。わざわざ休みの日に付き合わせちゃって」
「お気になさらなくて大丈夫ですわ。佐天さんは私の大事なご友人の一人ですし。なにより、誰かに守られてばかりではいけないと思い特訓するとなれば、手伝うのを断れば婚后光子の名が廃るというものですわ。」
そうだ、守られてばかりではいけないんだ――。
御坂さんにはもちろん、廃工場の時も、ショッピングモールの時も、私は常に守られてばかりだった。
だから、せめて自分の自衛くらいは出来るようになりたかった。
そのためには、同じ能力の婚后さんに教えてもらうのが一番だと思った。
正直、レベル0のアタシがこんな事をしても意味ないんじゃないかって、少し不安もある。でも、ズルは良くない。自分で自分に嘘はつきたくない――だから地道に頑張ろうと決めたんだ。
***
「いやー、婚后さん、本当にごめんね。夕方まで付き合ってもらったのに、結局何の成果も無くて…」
「いえ、気になどしておりませんわ。でも、今日はここまでにしましょうか。根を詰めすぎても良い結果は出ませんし、それに、たった一日で何かが得られるわけではありませんわ。」
「うーん、確かに…」
「――それで、次回はいつにしましょうか?」
「え、次回…?」
思わず、マヌケな声が漏れた。
婚后さんの返事が、あまりにも予想外だったからだ。
「えぇ、たった1日で成果が出なかっただけではありませんか? 一回や二回の特訓でできるようになるわけがないのですから。」
「ア、アハハハハ…」
私は自分でも不思議なくらい、笑いがこみ上げてきた。
「どうしたんですの?」と婚后さんが首をかしげる。その顔を見た瞬間、私はさらに笑いが止まらなくなった。
「いや~、婚后さんはやっぱり婚后さんだなーって思っただけ。」
「よく分かりませんが、佐天さんの表情を見る限り、悪い意味ではないのですね?」
「うん、そうだよ。ありがとう、婚后さん!」
その瞬間、アタシは思った。
そうだ、婚后光子とは、こういう人なんだ――
「それなら良かったですわ!」
「よーし、次回も頑張るぞー!
早速なんだけど、明日もお願い出来るかな?」
「その意気ですわ、佐天さん!」
肌寒さを感じるようになってきた秋空の下、けれど少女の心には熱い火が灯っていた