Blue Mirror Archive ~ぶるぅみらーあぁかいぶ~   作:10級フィクサー

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愚者

 

「ご、ほっ...!」

「アルちゃんっ!」

 

それは、あの店でラーメンを食べてから少し経った時だった。

アビドス襲撃に向けてバイトを集め、さあ突撃だ、と意気込んでいた私たちの元に、仮面を被った謎の人物がやってきた。

ヘイローがあるから、おそらくキヴォトスの生徒。

 

......異常な強さだった。彼女がショットガンの引き金を引くたびに、何人ものバイトが吹き飛ばされていく。

こんなに強い生徒、私は一人しか知らなかったけど、この生徒は勝るとも劣らない実力に見えたわ。

 

 

「は、あっ!」

 

苦し紛れに弾丸を放つ。それでも、なんてことないように紙一重でかわしつつ、鋭く反撃してくる。

怪我を―いえ、もはや死すら―恐れない胆力。そして、呼吸すら難しい程の濃い殺意。

 

私は膝をつき、額に銃口を押し付けられた。

少しでも妙な事をすれば、きっと即座に引き金が引かれる。

 

「アル様アル様アル様...ッ!」「アルっ!」

 

怖い。死が確実に、そこにある。死にたくない。それでも、社長として、何もしないままうずくまるわけにはいかない。

 

「......何が、望みなの。」

「今日の夜、大オアシスで小鳥遊ホシノを殺す。」

「殺―――っ!?」

「協力しろ。さっきの戦いで分かったでしょ、勝ち目はないって。」

「で、でも、人殺しなんて......。」

 

引き金を握る指が力を増していく。

 

「なら殺すけど。」

 

ああ、だめだ、これは。

 

「―――わかったわ。」

「あ、アルちゃん...。」

「......それが終われば、無事に生きて返してくれるってことね。」

「理解が早くて助かるよ。簡単なことでしょ?ただ命令を聞くだけで、命も拾えるし――報酬もあげる。」

 

奥歯を強く噛む。ここまで舐められて、それでもどうしようもできないなんて。

 

「ただ、あくまで小鳥遊ホシノを殺すのは私。」

 

便利屋68には、追ってくるであろう他の委員の足止めを依頼する。生かすも殺すも、任せるよ―――。

......ふざけてるのかしら。追い詰めて、脅して、裏切りを絶対に許さない。

依頼と言うより命令。ああやって私たちを攻撃したのも、こうして恐怖を底まで刻み込むためなんでしょう。

それでも、従うしかない。

私は、小鳥遊ホシノの命を見捨てて、社員3人の命を拾った。

頭の中がうまくまとまらない。いくら考えても納得できない。

でも、でも、でも、やるしかない。

決断をしたのは、私だから。

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

『相手はおそらく、悪名高い便利屋68です!』

『特に地雷に気をつけてください、時限式のようで、直撃すれば気絶は免れません!』

”ふむ。地雷の爆発範囲は私が解析せらるれば、アヤネ嬢はドローンの操縦に集中を。経路は私が指示す。”

『はい!』

 

イサンの指示は的確で、無駄がなく、戦場全体を俯瞰しているようだった。

 

「ドローン、作動開始。」

「いたっ、いたたっ...!」

「ん...全然効いてない。打たれ強すぎ。」

「それでもいつか倒れるはずですよ!」

 

シロコが手榴弾を投擲する。それは辺りの砂を巻き込みつつ爆発し、舞い散る砂粒は視界を遮断した。

 

”今。”

「はい!全弾発射っ!

 

「うわっ...!砂漠だとこういう爆発の使い方もあるんだね!」

 

シロコが手数で牽制し、生まれた隙にノノミが物量を押し付ける。

ただ、タンク的役割のホシノの不在は大きく、強引に前線を押し上げにくくなっており、膠着状態が続いていた。

その点、相手は全員が揃っており、連携は一級品。

特に――

 

「――ぶちのめすわ。」

”――シロコ嬢、大きく避けたまえ!”

 

あのアルという生徒が、凄まじく強い。

狙われたシロコは、膝を抜いて一気に体を横に寄せ、強引に距離を取り避ける。無理な体勢を取りつつもなんとか避けきった、かに思えたが。

 

「残念。」

 

瞬間、シロコを追尾しつつ弾丸が炸裂する。あの体勢から避けられるはずもなく、爆発がシロコに直撃する。

 

「がっ...!」

 

”シロコ嬢!”

『シロコ先輩、回復ドローンが間もなく到着します!』

「ん、助かる。」

”......追尾する爆発は避けきらぬ、か。皆、爆発は無視し、とかく弾丸の回避を最優先にせよ。あれが当たらば致命傷になりかねず。”

「分かりましたっ!」「了解。」

 

 

”......ここより先こそ、間違えず。”

 

イサンはタブレットを握ると、より一層深く集中していく。

潜るように、沈むように。

 

”―――よし、これで行かむや。”

 

”シロコ、ノノミ、何でもよし、とかく注意を、出来るかぎり!”

「注意を引いて、その後はどうすれば?」

”私がハルカ――タンクを仕留む。さすれば、あとは押し切れる。”

「――えっ。」

 

後ろに引いていたイサンが、突如駆けだす。

 

「とにかくやりましょう、シロコちゃん!」

「ん、手榴弾もドローンも全部開放する!」

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

「急に火力が増した。...ここで押し切るつもり?」

「なら、ここを耐えきればもう火力は使い切る......終わりってことだよね!」

「が、頑張りますっ...。」

 

破れかぶれの攻勢、なのかしら。

シャーレの先生が付いている以上、考えなしに突撃してくるとは考えにくいけど......。

ああもう、いくら考えても分からないわよ、そんなの!

 

「とにかくしのぎ切るわよ!カヨコ、動きを止めて!」

「分かった。」

 

カヨコが上空に弾丸を放つと、神秘が破裂し、拡散する。

神秘の影響を受けた敵は威圧され、少しの間だが動きが阻害される。

 

「これで、どうにか―――あれ?」

 

そういえば、シャーレの先生はいったいどこに。

 

「ま、まさか―――」

 

”......ふぅむ。”

 

いつの間にか、シャーレの先生はこちらの背後を取っていた。そしてどこからともなく本を取り出し、ページを破り捨てる。

 

 

人格変更

正義実現委員会 副委員長

00 イサン

 

「―――撃ち抜く。」

 

「ハルカっ!」

 

放たれた弾丸は、正確無比に飛んでいく。

止められない。間に合わない。

―――いや、間に合わ、せる!

 

「アル様っ!!!」

 

「―――あ、これ、やばっ」

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

 

 

 

 

暗闇。どこまでも深くて、暗い場所。孤独で、凍えてしまいそうで、とても耐えられないような。

意識が暗闇に侵食されて行って、それで、無能で、ダメダメな、私は終わる。

失敗した私を、あの魔王が生かすとは思えない。

皆を、道連れにして......。

どこで間違ったんだろう。

アビドスを襲撃する依頼を受けた時?

魔王に従った時?

......そもそも、便利屋を始めた時、なのかしら。

結局、なんにもうまくいかないし。

最後は、人殺しに加担して......私達と同じように頑張ってるあの人たちを、邪魔して。

目指した自分には、なれなくて。

もう、諦めちゃったほうがいいのかしら。

 

”苦しむ必要は、もうないんじゃないかな?”

 

ああ、確かに、そうかも。

 

アルちゃん!

アル!

アル様ぁ!

 

 

―――なんて、思いたいのに。

どうして、思わせてくれないの。

どうして、まだ足掻けるって、思ってしまうの。

 

”足掻いて、何が残るの?”

 

なんとか、耐えるから!

アルちゃん、起きて!

まだ...まだ、終わってないですっ!

 

 

”あの子供たちに勝ったところで、結局元のあなた達には戻れないのよ。”

”なら、いっそのことそのまま落ちて行ったっていいのよ。”

”どんなに深くまで落ちて行っても、私は貴方の事を照らしてあげる。”

 

 

確かに、そうだ。どこまで行っても、結局、罪悪感は私たちを押しつぶすだろうから......

 

 

あれ?

 

 

そもそもなんで勝つ必要があったんだっけ。

魔王に命令されて、従わなくちゃ殺されて、失敗したら殺されて......。

 

 

いや、待って。

―――なんで思いつかなかったんだろう。

そうよ。簡単なことだったのよ。

 

 

私が、あいつを、魔王を、

 

やっつけちゃえばいいのよ!!!

 

そうしたら、アビドスの人たちも助かって、社員たちも助かって、私も助かる!

 

私が強くなれば...!

 

私が、望む道を、つかみ取る力さえあれば!

 

”どうして、立ち向かうの?それは茨の道なのよ。己が間違える度に、苦しみの炎で焼かれながら、過ちに悶える囚人の道なのよ。”

 

それでも、向き合わないと。

囚人になれるだけ、きっと偉いの。だって、自分の罪に向き合おうとするから...罰を受けようとするから、償おうとするから、囚人になるの。

私は、きっと随分と間違えてきたわ。

これからも、間違え続けるんでしょう。

でも、間違えたっていいのよ。

間違える事はカッコイイことなの。ただ、ひたすらに堕ちていくことだけが怖いのよ。

私は間違え続けるわ。

そして、そのたびに悩んで、向き合うの。

大事な社員を守るために......。

私が、私であるために!

 

”......求道者の道を選ぶのね。”

 

だって、私はハードボイルド!真のアウトローになる女よッ!!!!!

 

 

 

 

 

 

 

――――――

 

 

開花E.G.O

愚行権

 

 




囚人が、囚人足り得る理由とはなんなのでしょうか。

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