Blue Mirror Archive ~ぶるぅみらーあぁかいぶ~ 作:10級フィクサー
「――アルちゃん、その姿!」
「炎......?」
「そ、それに、へ、ヘイローが......!」
......自分だけの力ってことか。
アルの下半身が、幾つもの車輪がついた炎の鎧によって包まれた。
私が今まで囚人たちにE.G.Oを着せてきた時のような、突然で、存在感のある変化だった。
そして、最も驚くべき点は......ヘイローが、無くなったこと。
生徒からヘイローが消える条件は、意識の有無。つまり、睡眠、気絶、あるいは死。そういった状況でのみ起こる現象。
しかし、アルは意識を保っているにも関わらず、ヘイローが消えていた。
「大丈夫。......たぶんこれが、自分だけの力ってことなのかしら。」
シロコとノノミは突如起きた変化に困惑しつつも、銃を構え臨戦態勢を取り続けている。
『先生が使う鏡技術にも似ていますが......。』
「いや。これは......E.G.O。」
イサンは本を閉じ、元の人格に戻ると、顎に手を添えながら思案する。
『E.G.O、ですか。』
「ああ、さいはば、皆に使いし試しや無かりし。」
混乱の原因であるアルは、自分の半身を覆う炎を見て驚きつつも、咳ばらいをしながら社員たちを見る。
「皆、私についてきてくれるかしら。」
社員たちは困惑しつつも、確固たる意志で、
「当たり前!」
「今更。」
「一生、ついていきますから...!」
アルは頷くと、対策委員会にこう告げる。
「私たちは降伏するわ。誘拐された人の場所も教えるし、もう貴方達と戦わないと約束する。」
「......目的は、何ですか?」
「魔王が気に入らないのよ。力で私たちを従わせて、こんなことに加担させて......舐められたままじゃいられないの。」
シロコとノノミは顔を見合わせる。
『今まで、私はドローンを使って戦場を俯瞰して見ていました。』
『ずっと、苦しそうな顔をしていました。今は、吹っ切れた感じですけど。』
「ん......今優先すべきはセリカの奪還。」
「それに、ホシノ先輩も助けにいかないとですから。」
「彼女達を信ぜむや。セリカ嬢の元へ向かへる間に、なぜ私らを襲ひしかの理由を聞かせたまえ。」
『私はその間に、ホシノ先輩の居場所を調べてみます!随分動きながら戦っているようで、場所が特定しずらいのですが......やってみせます!』
「うむ。」
便利屋達はほっとした顔をしつつ、
「わかったわ。あっちよ、ついてきて!」
――――――
目を覚ました時、私は暗い場所にいた。
手足は縛られていて、動けなかった。
叫んでも、怒っても、もがいても、どうにもならなかったし、誰も返事なんてしてくれなかった。
だんだん体力もなくなってきて、ああ、もしかしてこのまま死んじゃうのかな、って思ってしまった。
怒りよりも恐怖のほうがずっと大きくなってきて、私は縮こまってひたすら耐えていることにした。
「誰か、助けてよ......死にたく、ない。」
柴関ラーメンで皆と会った時、恥ずかしくってずっと怒ってた。
あれが最後になるって知ってたら、もっといろいろできたのに。
先生にも意地はって、嫌な生徒だって思われたまま、終わるのかな。
「やだ、誰か、助け―――」
光が、射した。
「助けに来しぞ。」
「あ、せ、先生。」
「セリカちゃんっ!」「セリカ!」『セリカちゃん!」
「み、みんな!」
『ああ、本当に良かった......っ!』
「怖かったですよね、もう大丈夫!」
「ん、痛いことされてない?」
「されてない、けど、ずっと、怖かったっ...!」
私、助かったんだ。また生きて、皆の所に帰れるんだ。
あれ、なんでかな。涙が......。
「......ご、」
「ごめんなさああああああああああああああああああああい!!!!!」
「うわあっ!?なんかこの人燃えてる!?」
「こんな酷いことしちゃってごめんなさいっ!くだらないことばっかり考えて、貴方をこんな暗い所に...!」
「え、は、犯人、なの?この人たちが?このなんか燃えてる人が!?」
「うぅむ、犯人に脅されたりし実行者、とにも言ふべしやな?」
「いや。......そんなのただの言い訳じゃん。」
「選んだのは私達だし、力がなかったのも私達。」
「わ、悪いのは、私達なんです......っ!」
「......私、こんなことした奴らに会ったら、何が何でも、噛みついてでも一撃食らわせてやろう、なんて考えてた。」
だから―――。私はそう言いながら、四人の頭を思いっきり、
こつん、と殴ってやった。
「―――え?」
「これで、いいの?」
「誘拐に、監禁までしたのに。」
「......ど、どうして......?」
「あのね!あんた達にこれ以上構ってる時間ないの、私達には!」
さっき気づいたけど、ホシノ先輩が見当たらない。
きっと、まだ一人で戦ってるんだ。
じゃあ、なんかもう、いい。
さっさと終わりにして、それでいい。
「もうこれでチャラにしてあげる!だから、ホシノ先輩の所にさっさと行くわよ!」
「せ、セリカさ――」
「セリカでいい!」
「姉御。」
「は?」
「......ん。」
そうこうしているうちに、アヤネちゃんが急いだ様子で話し始める。
『皆さん、ホシノ先輩の位置が分かりました!ここから北西に10Km地点です!』
「10Km!?」
「ん......自転車、持ってくればよかった。」
「今から走って、追いつけるでしょうか......。」
「私、たぶん何とか出来ると思うわ。」
「一体どうやって―――って、もしかしてその炎で!?」
「私の新しい力で、道を切り開いてみせるわ!」
――――――
―――銃弾一発一発が、凄まじく重い。
圧倒的な戦闘経験、それに裏打ちされた技術と戦術眼。
こちらの行動を全て予測しつつ、最善の行動を選択してくる。
数多の小鳥遊ホシノを殺してきた、と魔王は言っていた。
つまり、対小鳥遊ホシノにおいて、魔王に勝る者は存在しない―――!
「ちぃっ...!」
「小鳥遊ホシノッ!さっさと死んでくれない!?」
防戦一方。こっちにはまともに返答する余裕なんてないのに、あっちは随分と余裕がある。
「全てのユメ先輩は小鳥遊ホシノに殺される!ユメ先輩を殺したくせに、まだ生きながらえようとするの!?」
「私は―――っ!」
ショットガンをリロードしようとした瞬間、魔王は盾を思い切り投げつけてきた。
予想外の衝撃に、対応が一瞬遅れる。
「死ねッ!小鳥遊ホシノ!」
放たれたのはスラッグ弾だった。それは私の腹を思いっきり殴り、衝撃がひたすら全身を貫く。
「カ、ヒュッ――」
強烈な吐き気。呼吸が上手くできない。不味い、なんとか、立たない、と、
「終わりだ、小鳥遊ホシノ。」
「あ。」
終わった。魔王が引き金を引いた瞬間に私は死ぬ。
戦ってる間に随分遠くまで来ちゃったし、皆はまだ来ないかな。
まあ、来ても殺されちゃうか。それだけ、魔王は強い。
「―――やっぱり笑うか。」
「あれ、私、笑ってるの?」
なんでだろう。これから殺されるっていうのに。
「今まで殺してきた小鳥遊ホシノも笑ってたよ。結局、私たちはそういうモノなんだって。」
「―――自分が嫌いで、拒絶したくて、この世で一番、」
「殺したい。だから、今ここで死ねて嬉しい。楽になれるから......。そういうこと。」
ああ、そうだったんだ。そうだったんだよ。
私は結局、どこまで行ってもそういう人間なんだ。
もう、いいや。
”諦めるの?”
だって、足掻いたってしょうがないから。
私は私。どこまでも醜くて、滑稽で、愚かなんだから。
”それでいいのよ。ただ、受け入れるだけで楽になれ――”
「があッ―――!」
......え。
一瞬、辺りが凄まじい熱気に包まれたかと思えば、魔王を炎の弾丸が貫いていた。
空を見上げると、そこには―――燃え盛る流星が、いた。
「あっはははは!命中よぉーっ!」
「さすがですアル様っ!」
「――便利屋ァッ!!!裏切れば殺すって言ったはずだけどッ!!!」
「あんたなんかに殺されてやるわけないでしょ、バーカっ!」
「――ッ!?」
「いい!?アウトローは裏切ってナンボ!最初から従わせる相手を間違えたのよ、あんたは!」
「あっはは、さっすがアルちゃん!」
「......まあ、いいか。私もイラついてるし。」
「恐怖で縛り付けられると思ったら大間違い!私たちはたとえ神でも悪魔でも、邪魔をするならぶちのめしてやるわ!」
”......まあ、またすぐ逢うことになるでしょうし。”
”その時こそ、貴方を救ってあげるわ。”
殺してやるぞ、陸八魔アル。