Blue Mirror Archive ~ぶるぅみらーあぁかいぶ~ 作:10級フィクサー
変わらない
「......変わらない。結局のところ、小鳥遊ホシノという存在は常に同じ結末を迎える。」
「最も愛する人を失い、そうして意味を失い......そうして自分を殺す虚無となる。」
”虚無となったホシノは、あらゆる手を尽くして魔王を―――刺し、撃ち、叩き、割っていく。”
”虚無に浸蝕され、ゆっくりと......しかし一瞬のうちに、あらゆる道を辿ったホシノは気づいたんだろう。”
”何も変わらないのだと。変えられないのだと。届かないのだと。”
「は、ははっ......やっぱり、私は......そういうモノなんだ。」
魔王は笑う。
「そうだ、私を殺せ。私を殺し、お前を殺し、自分を殺せ。そうしていつかお前も私に殺される。そうすることでしか、私たちはきっと救われないから。」
「......私を導いてくれる勇気ある犬はどこにいるの?」
「わかってるでしょ。あらゆる道を......私たちが歩んだ道を、辿った
道化は踊る。
少女は歩く。
「導いてくれる犬がどこにもいないというなら。」
「なら、私は。」
「この苦痛を信じよう。空虚を苦痛で埋めてしまおう。」
「そうして恐怖を消していこう。きっと正しい道には行けないけれど。」
「たとえ崖から身を投げようとも。それでも、それでも、もう怖くないのなら。恐怖という炎に包まれなくていいのなら。それでいいのだから。」
「だから......私を殺そう。私に残る、苦痛以外の全てを忘れてしまおう。」
”道化師の腕を黒い煙が包む。”
「ははっ、ははははははッ!」
”魔王は抵抗することなく、その身を預け。”
そうして道化は貫いた。
「ご、ふっ。」
「......イサン、先生?」
”ホシノが魔王を貫く寸前、イサンはその身を挺して魔王を庇った。”
「......な、んでっ。なんで、なんで、どうしてッ!!」
「......君に、おのれを殺さすべからずと思ひき。」
「私は......ッ!生きていくのが辛い!本当に......本当に怖いんだって!」
「......利己的と言う以外になし。ただ、私が......。」
「ホシノ嬢。君が、もっとよくなれるという希望を抱けなくなりぬるが......。」
「気に入らなかった。」
「......先生。」
どちゃり。
”乾いた砂は、血液をひたすらに飲み込んでいく。”
”倒れ伏したイサンは、もう目を開くことはなかった。”
「あ、ああ......ああああああああああああああっ!!!」
”実体を成した虚無という、矛盾した幻想を間近で捉えた他の生徒たちは、ほとんどが精神を汚染されて動けなくなっていた。”
”ただ、鏡の中で数多の幻想体を見てきたイサンのみが、唯一動いた。”
”そうして、動かなくなった。”
「......なら、私は、どうすればいいの?」
”イサンが放った言葉は、しかしその命の灯が潰えたことで向かうべき先を見失い。”
”こうして、ねじれてホシノを貫いたんだ。”
「......この小さく醜い翼で......ひたすら飛び跳ね......そうして、恐怖しながら、怯え、傷ついて死んでいく事を。」
「......先生は、願うの?」
”ホシノの体は変わっていく。”
”自らを焼き尽くす炎に包まれた、一羽の
”結局、あらゆる枝が辿る結末は同じなんだ。”
”ホシノは変わることができず......そうして、世界は終焉を迎える。”
”たった一つの蕾を開かせるために剪定されていくんだ。”
”それが、結末。”
”変えることのできない、たった一つの。”
「......ダンテ。」
砂の間を駆け巡り、血液は糸となり、そうしてイサンの体をつなぎ戻していく。
地獄の門を開き、巻き戻っていくイサンの目に映るのは、11人の見慣れた囚人と、見慣れぬ金色の狐耳の少女、......そして、それらを、固く、決して最後まで断ち切られることのない鎖で束ねる......
<まだ、君がやるべき仕事は終わってない。>
<このまま終わるのは、あまりに無責任なんじゃないかな?>
私は燃え盛る孤独な鳥を指さす。
<君の言葉は、まだ届いてないよ。>
<イサン。>
「......伝えねば。いま一度.......幾度にも、今度は果てまで。」
<うん。>
<何度でもぶつかっておいで。>
<この鎖が、君と私をつなぐ限り。>
<私が、君を地獄の底から連れ戻してみせるから。>
「......うむ。」
<ファウスト、表象放出機を使って。>
「分かりました、ダンテ。」
ファウストが使用するE.G.O......表象放出機は、傷ついた精神を癒すことができる。
飛び散る図形が、生徒達に入り込んでいく。
「うっ......おええっ......ホシノ、先輩っ。」
「ん......一体、どうなって......?」
「......アヤネちゃん、大丈夫......?」
「あ、りがとう......っ。」
<......目が覚めたみたいだ。あの便利屋って子たちは......目覚めないか。>
特に、一人はE.G.Oを発現してもいたし。ここまでの道のりを考えれば、仕方のないことだろう。
<ムルソー、今から私が話す言葉を彼女たちに伝えてくれ。>
「了解しました。<......私たちは味方だ。何がどうなっているか分からないと思うけど......あの子を助けたいのなら、手を貸すよ。>」
「......分かりました。」
「ん、頼れるものはなんでも頼るべき。」
「......元に戻してやるわ。」
「あんなに苦しんでいる姿は......ホシノ先輩には似合いませんから。」
―――――――――――
私は、この暗き道に燃え盛る炎に突き進む。
”立ち止まった方がいい””変わることはないのだから”、そう聞こえ来る気す。
されど、私は歩みを止むることはあらず。
なぜならば、この鎖がある限り。
私が道を見失うことはなく。
そして、私が......先生である限り。
たどり着くべき
ふと。在りし日の朋たちの声が聞こえ。
そして。
未だしまい込める手鏡の中より、優しき声聞こえき。
ああ。
大丈夫。
いつか。
飛び立ってみせよう。
”......運命から逸脱することはできない。”
”それでもイサン、君が歩み続けるというのなら。”
”今だけは、止めずにいる。”
”もし......もし、何かが変わるというのなら......今度は。”
”君の傍を離れ、相対することになるだろうね。”