理想になってゼロから推しを推したい!それって悪い事じゃねぇよなぁ?~同担拒否の推し狂い過激派TS人間が参ります異世界生活~   作:夕叢白

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第十一話「理想の姿になって同担拒否の過激派が参ります」

暗い、何も視えない。昏い、意識が闇に呑み込まれる。冥い、身体の感覚がない。確実に二度目の死が迫っている。くらい、くらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらいくらい──────────嗚呼、なぁんだ。結局、最初から俺は必要なかったんだ。世界に招かれた原理や正体こそ不明だが、本当に求められていたのは不純物を取り除いた本物の想歌。ナツキ・スバルの心の支えになれる唯一無二の存在。俺というイレギュラーは弾き出されて当然というわけだ。推しの活躍を拝めない事は残念だし、創造主に相応しい姿を想歌に見せられたのかも分からず終い。でも、いいんだ。原作知識は黒耀が得て、想歌はあの過酷な世界で生き延びるに足る実力がある。俺の役割は終わった、決定的に終わってしまった。

 

 

 

 

 

 

 

「......クロ、神様の魂が消えてなくなりそう。」

 

目を覚ました想歌は現状把握に努めつつ、相棒の黒耀に元男の状態を伝える。黒耀は自身の失態を悟り、短く唸る。考え方が甘かった。同化の危険性を創造主に説く以前の問題だった。取り返しのつかないほど、事態は深刻化していたらしい。

 

『小童が斯様な状態にあるは、吾が不徳の致すところ。されど、創造主の持つ原作知識とやらは既に得ておる。ならば、ここは割り切るべきではないかのォ?』

 

黒耀にとって、創造主とは想歌に生を与えた存在でしかない。詰まるところ、黒耀は元男を『世界の創造主』とは認識していない。垣間見た元男の記憶には想歌の背景描写や黒耀の設定はあっても、世界に関する緻密な物語は見出せなかった。想歌と黒耀が生きた世界を構成する要素が元男には欠けている。だからこそ、黒耀は合理的で残酷な宣告を告げた。

 

「クロ、私はもう十二分に割り切ってきたよ。里のみんなを殺めた時も、流浪の身で沢山の人を斬った時も......だからね、取り零したくないの、せめて私の神様だけは。」

 

『お主の我儘は初めて耳にするのォ...。まぁ、よい。であれば、意識の半分を内へ向けよ。そして残る半分で、腸狩りを打倒してみせいッ。』

 

黒耀の言葉と同時に崩れた盗品蔵の壁から物音が響き渡る。スバルはロム爺にフェルトを任せ、その場から二人を退避させた。偽サテラことエミリアは宙に氷柱を再展開、パックと共に想歌の援護に回ろうとしていた。とことんお人好しだな、と呆れ気味に言葉を漏らしたスバルに対してお互い様でしょうと言い返す偽サテラ。暫くすると、心底愉しいとでも言いたげな上機嫌のエルザが埃まみれの姿で暗闇から現れる。

 

「今のは効いたわ、とっても。依頼なんてどうでもいいと思ってしまうくらい、ね。」

 

「そう。次は殺すから、遺言があればお早めに。」

 

「ん、ふふっふふふふ!それが貴女の本性かしら?歪んでいるのね、ご同業さん。」

 

エルザは想歌の雰囲気が変貌した事を即座に見抜く。それが彼女の本性であれ別人であれ、何だって構わなかった。隠す気のない血の香りは大勢を殺めてきた証拠。同業以外に説明がつかない。その上、意図して自分のみに放たれている鋭い殺気は強者の証明でもある。今のエルザには想歌以外の存在が視えていない。

 

 

 

 

 

 

 

あれから、どれくらい経った?一時間か、二時間か。駄目だ、意識が朦朧としていて時間の感覚が掴めない。一体いつになればこの暗闇は終わる。もう覚悟は決まってるんだ。早く、終わらせてくれ。善行を積んで死んだ結果がこれとか、笑えないにも程があるぞ。あぁ、思い出したくないことばかり、浮かんでくる。社会に出て、上司に媚びへつらって、自分を見失って、拠り所はリゼロとナツキ・スバルへの推し活。今思えば、偶像崇拝の域だったな。それでも、楽しかったんだ。

 

『なら、神様はもっと楽しむべき。』

 

いや、無理だろ。中途半端な俺なんかが何か成せる世界じゃない。所詮俺みたいな人間は日本のぬるま湯にしか浸かれない根性なしだ。スバルとは違う。彼は死に戻りを経てもなお、他者を救おうとする英雄だ。物語の主人公だ。俺にそんな精神的強さはない。だから、無理なんだ。

 

『根性なしなら、エルザに立ち向かえたのは何故?スバルを支えようとしたのは何故?それに、神様は中途半端なんかじゃない。』

 

何で、そこまで言える?エルザに立ち向かえたのは、悔しかったからだ。推しを目の前で殺されて、想歌の信頼を裏切ったようで・・・。スバルを支えたのだって、推しだからで、それ以外の理由なんて・・・。

 

『ない、わけない。本当に根性のない人は殺人鬼に立ち向かおうとしないよ?神様はエルザよりも前に、日本でちゃんと立ち向かって、女性を救ってる。スバルを支えたのは、彼を物語上のナツキ・スバルじゃなく、等身大の菜月昴と認識したから。神様は、強いよ。』

 

俺は・・・中途半端で・・・。

 

『神様が中途半端なら、私は創られてない。神様がちゃんとした人だから、私は今ここにいる。私の神様だよ?あなたの事は、あなた以上によく解ってる。神様がどんな気持ちで私を創造したのかも、全部解ってるんだから。』

 

想歌、俺は・・・神様なんて呼ばれるような器じゃない。俺が考えた設定のせいで、お前は死ぬほど辛い目にあったはずだ。なのになんで、お前はそこまで俺を連れ戻そうとする?

 

『私ね、運命を呪ってた。神様がいるなら、いつか斬ってやるって。でも、実際の神様は私の設定を、命を削りながら考えて、愛を注いでくれていた。初めて・・・だったの。こんなに温かい愛をくれた人は。眠ってる間、何もしてなかったわけじゃないんだよ。神様はそうやって自分を否定するけど、スバルだって最初から英雄の器だったわけじゃない。それは神様が一番知ってる、そうでしょう。』

 

・・・参ったな、何も言い返せない。自分の子に言い負かされるなんて、中々ない体験だよな。もう少し、頑張ってみるよ。それでいいか?

 

『うん、それで充分。さ、手を取って。行こう、神様の推しが待つ世界へ私という理想の姿で。』

 

ふ、ははは。言ってくれるなぁ、こう見えて俺は同担拒否の過激派なんだぞ。想歌といえどスバルは渡さんからな─────。

 

暗闇の中、彼女の手を取ると、途端に光が広がっていく。未来に対する不安はもうなかった。想歌と自分なら、この先もどうにかなるのではないか。不思議とそう思えたから。




次回が第一章の最終回となります。
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