理想になってゼロから推しを推したい!それって悪い事じゃねぇよなぁ?~同担拒否の推し狂い過激派TS人間が参ります異世界生活~   作:夕叢白

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第六話「シミュレーション通りに行動しました」

建物の屋上、昼間の平和な街中。主人公の三度目の死に戻りにより、想歌は再びこの地に寸分違わず戻っていた。何処か異なる点があるとすれば、それは彼女の心情と価値観の大いなる変化だろう。想歌の創造主として、最推しに手を差し伸べるため、理由は多々あれど、想歌となった元男は今回の四度目を完璧に遂行しなければならない。第一段階は既に決まっている。一度目の時のように魔力を流出させ、態と『剣聖』を誘導する。彼ならきっと突如街中に現れた異常な気配を見逃せない。

 

「君、何者だい...?」

 

もう悪寒は走らない。あの時のエルザに比べれば、ラインハルトがどれだけ威圧を抑えてくれていたのか、今なら解る。当初の自分は彼の警戒心を敵意と勘違いしていたらしい。

 

「帝国の貴きお方から、依頼を受けてルグニカへ来た。だから、剣聖に挨拶が必要かと思って。」

 

「その為だけにあんな真似を...?些か強引が過ぎるんじゃないかな。」

 

「否定しない。でも、こうでもしないとあなたは現れないと思った。騒ぎを起こさないよう善処する。どうか協力してほしい。」

 

作中最強の存在へ向き直り、丁寧に頭を下げる。転生前の日本で培った社会人生活の基本中の基本スキル、相手へ頼み事をする際の一礼は腰を折って上体を四十五度にキープ。元男の経験上、この姿勢が一番誠意が伝わりやすい。

 

「......事情は理解した。話を聞くよ。」

 

 

 

 

 

 

 

嘘も方便の第一段階を無事通過、クルシュ・カルステンに会ったら一巻の終わりではあるが、現状では仕方がない。しかし、打ち明けた内容は帝国云々以外は概ね真実のため、風見の加護の抜け道に当たるか?

 

第二段階目は想歌の存在、つまり元男自身が鍵となる。名付けて『俺がヒロイン候補になるんだよォ!作戦』だ。この世界にとってのイレギュラーを最大限利用させてもらおう。ラインハルトとの密談の後、足を運んだのは二度目の死に戻りの際に訪れた路地裏付近。元男の読み通りに進めば、此処に現れるのは───。

 

「衛兵さーーーん!!」

 

リゼロの主人公、ナツキ・スバル。最推しの声を瞬時に拾った想歌は音の出処へ一目散に走り出す。そして、再会は叶った。三人組のチンピラ、トン・チン・カンに囲まれている。恐らくスバルの三度目の死に戻りを誘発した愚かな知的生命体は彼らで間違いない。

 

「お前ら、お仕置き。」

 

「「「は───?」」」

 

『加減!加減を忘れるでないぞォ!』

 

黒耀を伝い、本物の想歌の技量が知識として元男へ流れてくる。大太刀なんて振った事すらないど素人だが、せめて峰打ちくらいは今習得しなければ、エルザとは戦えない。未遂とはいえ、推しの命を脅かしたトン・チン・カンの罪も重い。思いの丈を大太刀の背に乗せ、すれ違いざまの無駄に強烈な一閃がチンピラ三人組を壁へ叩きつけた。悪・即・斬、である。

 

「清々した。」

 

『彼奴ら逝っとらんか!?手加減したか!?』

 

「おいおいおい...ミラクルクールビューティーな美少女の登場はもっと後じゃ...。」

 

再会は叶ったものの、問題はこの先だった。スバルが想歌の姿を覚えている前提は今の反応で達成された。焦点は盗品蔵の一件、死に際のスバルの名を叫んでしまった事を覚えているか否か。名乗る前に自分を知られていたら、相手が誰であれ信頼するのは難しい。否であれ、そう願いながら想歌はスバルに話しかけた。

 

「何処かで会った?私達。」

 

「い、いや......会ったっていうか見かけた?それより!助けてくれたんだよな、マジで助かった。えーっと、名前を聞いても...?」

 

「想歌、私の名前。君は?」

 

「ソーカ...ソーカか。俺はナツキ・スバル、天下不滅の無一文!以後ヨロシクゥ!」

 

能天気が過ぎる挨拶に一瞬目を細めた想歌だったが、直ぐに表情を和らげた。独特な例の決めポーズで笑顔を浮かべる姿には、場の緊張を解きたいという意図が見て取れる。無邪気な振る舞いの裏に、彼なりの強い意志や覚悟が隠されている事すら、想歌は既に知っている。

 

「ふ、ははっ...何その口上、格好悪い。」

 

「えぇー、唐突なディスりに俺意気消沈...。」

 

「それで?スバルはこんな裏路地で何をしていたの?」

 

「見事なまでのナチュラルスルー!あー...人探しの途中でさ、ソーカは銀髪の女の子って見かけたりしてない?」

 

待ち望んでいた問いだ。本来ならばラインハルトと出会うところに介入した甲斐があった。推しの友人作りイベントを潰してしまった罪はいつか必ず償おう。想歌はわざと悩ましげな雰囲気を醸し出し、引き続き淡々と告げた。

 

「銀髪...見たけど、スバルの探している人かどうか...。」

 

「ホントか!何処で見たんだ!?教えてくれ!」

 

勢い込んで詰め寄ってくるスバルを両手で制しながら、冷静に思案する。現状、エルザを相手取ってなお有利に立ち回れる都合のいい実力者が目の前にいたら、仮に実力者自ら協力を申し出たとしたなら、ナツキ・スバルは高確率でその手を取る。迷う必要はない。推しのミラクル認定を受けた想歌のスペックは伊達ではないと、今度こそエルザに刻み込んでやるのだ。

 

「落ち着いて。何か困っているなら協力するから、まずはもっと詳しく事情を説明してほしい。」

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