理想になってゼロから推しを推したい!それって悪い事じゃねぇよなぁ?~同担拒否の推し狂い過激派TS人間が参ります異世界生活~   作:夕叢白

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第七話「推しの護衛になりました」

スバルは目を瞬かせ、想歌の申し出に一瞬戸惑った様子を見せた。それも当然か、と元男は内心で思う。前回の盗品蔵で彼の窮地を助けたとはいえ、目の前で人間離れした戦いを繰り広げてしまったのだから。

 

エルザと同様に異常な身体能力を持つ女、そんな危険人物に警戒心を抱かない方がおかしい。重ねて、盗品蔵に現れた時点で何かしら後暗い事情を抱えているのは確定事項だ。そこに考えが及ばないほど、推しは馬鹿ではない。

 

「話したくないなら、無理に......。」

 

「いやいや、すげぇ助かるよ!正直、めちゃくちゃ困ってる。」

 

発言を撤回しようとする想歌の言葉を遮るように、スバルは慌てて手を振り、気さくな笑みを浮かべた。警戒心が全くないわけではないものの、それ以上に現状を打開したいという必死さが滲み出ている。弱みに付け込むようで心苦しいが、申し出に乗ってきたのなら、想歌としても彼の手を離す気はない。

 

「そう...。改めて、詳しい話を聞かせてもらえる?」

 

「んにゃ、詳しい話って言っても、さっき話した事が大体全部でさ。サテ...いや、俺が探してる女の子にただ単に恩返しがしたいってだけなんだ。で、その子の最終的な行き先は多分盗品蔵なわけでして......。」

 

「盗品蔵......言いづらそうにしてた理由はそれ?」

 

彼はバツが悪そうに頬を掻きながら、小さく頷いた。スバルからしてみれば、想歌の存在はエルザに対抗できる唯一無二の切り札。自身の能力をある程度は理解した推しの事だ。恐らく、死に戻りの回数を考慮して不用意に想歌の動きを変えたくなかったのだろう。

 

「スバルはその子を探して止めたいの?それとも、盗品蔵まで護衛してほしい、とか?」

 

「どっちかっつーと...護衛してほしい、だな。」

 

「......分かった。じゃあ、協力する。」

 

「いや、本当に助かるけども...何でそんな協力的なんだ?ついさっきも思ったけど、ソーカと俺ってば初対面だし、特別何か用があるわけじゃないんだよな?」

 

慎重に言葉を選び、スバルは想歌へ疑問を投げかける。言葉の節々から感じられる猜疑心は至極当然のものであり、元男はそれらを非難する立場にない。寧ろ、推しがそういった強かさを有している事に安堵すら覚えていた。しかし、第二段階の成功がかかっている以上はスバルが納得する返答をしなければならない。

 

「まあ、確かに用があるわけじゃないけど......強いて言うなら、困ってる人を見捨てるのは性に合わないから、かな。」

 

スバルは目を丸くした後、気恥ずかしそうに頭を掻く。美少女にじっと目を見詰められ、不意に微笑まれるのは引きこもり体質の彼には心臓に悪い。

 

「そ、そっか......なら、頼む。」

 

友人作りイベント奪取の第二段階は無事に通過、一時はエミリアとエルザの戦闘に直接介入する案も浮かんでいたが、ラインハルトと一悶着ある可能性が高いために却下となった。やはり最初に正体を明かし、幾許かは信用を得なければ想歌の本領は発揮できない。一手一手、確実にエルザを仕留めるつもりで動く必要があった。失敗は許されない。

 

『なァ、創造主よ。何度も申すが、あまり気負いすぎるでないぞ。』

 

「うん...。」

 

黒耀の懸念を振り払うように、想歌は軽く深呼吸をする。そして、意識をスバルへ向けた。

 

「スバル、行こっか。」

 

「先頭は任せとけ!って言いたいとこなんだけど、実は道順に自信が持てないんだよなぁ...。」

 

苦笑いしながら頭を抱える推しを目にして、想歌は小さく溜め息をつく。彼女の創造主として、完璧に想歌の反応を模倣している自信が元男にはあった。それ故か、自らの()()を元男は悟れない。

 

「私が先導する。スバルは後ろをついてきて、絶対に離れないこと。」

 

 

 

 

 

 

 

先頭を歩く華奢な背中を眺めながら、ナツキ・スバルは思考する。銀髪の美少女、偽サテラとは異なり、全体的に凛とした雰囲気を放つ推定戦闘力エルザ並みの美少女剣士、ソーカは一体何者なのだろうか?

 

盗品蔵に現れた事やエルザとの死闘を思い出す限り、衛兵や騎士の類ではなく、フェルトに近しい何かしらの裏稼業に手を染めている人物らしい事は察しがつく。

 

然りとて、彼女の立ち居振る舞いには妙な気品があり、気質は言わずもがな、偽サテラに負けず劣らずのお人好し具合だ。とてもエルザを圧倒していた超人とは思えない。

 

「なぁ、ソーカ。今更なんだけど......その、腕に自信は?」

 

「まあ、それなりに。」

 

「明らかにそれなりとかいうレベルじゃなかったんですが......さっきの奴ら、壁にめり込む一歩手前だったぜ?」

 

「ちゃんと手加減した。」

 

「いや、してアレだったら逆に怖ぇよ!」

 

この通り、戦闘時と平常時の乖離が激しいソーカはスバルにとって謎だらけの警戒すべき存在ではあるものの、一緒に過ごす時間も悪くないと思わせる不思議な魅力が彼女にはあった。出会って数時間しか経っていない関係だが、ソーカとは長い付き合いになる────ナツキ・スバルにはそう思えてならなかった。




ご一読いただき誠にありがとうございます!

『Re.ゼロから始める姉弟生活』
https://syosetu.org/novel/364356/

今回の後書きでは相互紹介として、黎川暁明先生のリゼロ二次創作をご紹介させていただきます♪主人公はエミリアの弟、エリオット────彼は溺愛する姉のため、誰よりも彼女の力になろうと日々を奮闘します。

エリオットのヒロインに「あ〜その人か!予想外!」とつい驚いてしまいました。スバルくんとエリオットの関係にも注目です!描写も非常に丁寧であり、尚且つ文章量が多い。私自身、遅筆で中々長文が書けないので、見習いたいと思いました。

是非ご一読くださいませ(_ _)
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