Blue Archive -数多の未来の追求者-[ブルアカ×LobotomyCorporation]   作:シータさん

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前回のあらすじ:視察のためロボトミー追求学園の自治区に訪れた先生。ハムハムパンパンのサンドイッチを買ってゆっくり観光しようとしたのも束の間、白昼堂々の爆発事件に巻き込まれてしまう。さっそく命の危険に晒されるものの、自治会の1人に救われて一命を取り留める…が、過去の罪を断罪するという名目でその人にすら殺されそうになる。だが、そこで本来案内役として待ち合わせていた生徒「一百 ミゼ」の鶴の一声に救われる。幸か不幸か案内役に早めに出会えた先生は、車に2人で乗り込み雑談をしながらそのまま学園へと向かうのであった。

今回はミゼちゃんのドキドキ学園案内ツアー 〜上層編〜です。いろんな生徒が出てくるのもこの回からなので、楽しんでってくださいね。

Q.時系列ってどの辺なの?
A.特に考えてなかったです(アホ)。そこまで本編のストーリーに絡める要素はないつもりだったのでね…
一応神秘と恐怖、そして色彩に関してはいずれ触れる可能性があるので、最終編の後とだけは定義しておきます。


歓迎いたします、先生。

「駐車場はこのまま進んでいった先にあります。そちらに車をお止めください。」

「"うん…ありがとう。"」

 

無機質な一方通行のトンネルを進んでいく。

ここは、ロボトミー追求学園…の地下駐車場に続く道。

そう、地下。この学園は、どうやら地下にあるらしいのだ。

とにかくこの学園は、私の知らないことが多い…まるで、全く違う世界に来たってくらい新鮮な感覚がする。

…それと同時に、なんだか男のロマンが刺激される感覚もする。

 

「"それにしても、地下ってすごいね…なんだか、本当に研究所って感じ。"」

「はい、この学園が地下にあるのはまさに前身の研究所が地下に拠点を構えていたからなんです。…逆に言うと、それ以外の理由は知らないんですけどね。あはは。」

 

"それ以外の理由は知らない"という言葉にどことなく引っかかる。まるで、地下にあることに別の意味が隠されてるということを知ってるかのようなセリフだ。

自分が疑い深いだけだろうか?

 

「…あ、駐車場に付きましたよ。空きスペースはいっぱいあるので、好きなところに停めてくださいね。」

 

そんな私の疑いを見抜いているかのように、ミゼは唐突に話を変える。

まぁ、あんま深く考えすぎても疲れるだけだ。頭の片隅に押しやっておこう。

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

_ガチャ。

車の扉を開けて、外に出る。

長い運転の疲れを背伸びで誤魔化して、先に降りたミゼの元に向かう。

 

「運転お疲れ様です、先生。では、いきましょうか。」

「"うん。"」

 

車に乗ってた時とは違って、ほとんど何の言葉も交わさないまま学園の元へと一歩一歩進んでいく。

周りの静かさも相まって、すごく緊張する。そして、おそらくそれはミゼにとっても同じなのだろう。

 

「"…ミゼちゃん。"」

「はい、どうされました?」

「"緊張するね。"」

「…そうですね。」

 

少しでも緊張が和らがないかと言ってはみたが、無駄骨だった。

より気まずい空気が流れるだけだった。

 

「…このエレベーターで地下に降りれば、そこからは学園になります。…ちょっと、退屈させてしまいましたが…ここからは、面白い時間になるはずですよ。」

 

そう言うと、ミゼはにこり、という擬音が似合うくらいの綺麗な笑顔を浮かべる。

この子は本当にいい子なんだな、そう心から実感した。

 

「"緊張はしたけど、退屈だとは思わなかったよ。君がいたからね。"」

「っ…!………ふふ、ありがとうございます。では、行きましょうか。ロボトミーに。」

「"そうだね。ミゼちゃん。案内、よろしくね。"」

「はい、もちろん。先生。」

 

エレベーターのドアが開いたので、中に入る。

普通のそれとは違って、すごく広いエレベーターだ。広すぎて、どこに自分の居場所を置こうか迷うくらいには。

ドアが閉まり、どこに立つべきか決めあぐねてると、突然壁に光が走りアナウンスが響く。

 

『………ようこそ、ロボトミー追求学園へ。』

『歓迎いたします。生徒番号O-03-03、一百 ミゼ。連邦捜査部"シャーレ"所属、先生。あなた方の帰還をお待ちしておりました。』

 

無機質な声のアナウンスが、私のことを呼ぶ。まるで、最初から私が来ることを知っていたかのように。

直後、機械の駆動する音と共にエレベーターが下に下がっていく感覚が起こる。

そして、壁に緑色の蛍光が模様を描くように走っていく。搭乗者を退屈にさせないためのギミックだろうか。

 

「"わ、わわ…凄いっ…!カッコいい…!"」

「そう言っていただけると、私も少し嬉しいです。先生、こういうのがお好きなんですね。」

「"あ…ま、まぁね…ロマンとか、追い求めちゃうタイプだからさ。"」

 

あまりの近未来さに、子供みたいにきゃっきゃと騒いでしまった。

これがロボトミーの技術力…思わず、唾を飲み込んでしまう。

本当にSFの世界に来てしまったような感じだ。

 

_ガコンッ

 

『ロボトミー追求学園、エントランスフロアに到着いたしました。ドアが開きます。巻き込まれにご注意ください。良い一日を。』

 

だが、そんな興奮も、重い衝突音と無機質なアナウンスにかき消されてしまう。

どうやら着いたらしい。アナウンス通り、ドアがゆっくりと開いていく。

その先に待ち受けていたのは、暗いエレベーターとは対照的な、まるで会社のオフィスのように明るいエントランスだった。

 

「さぁ先生、こちらですよ。行きましょう。」

「"…うん、そうしよう。"」

 

エレベーターを降りて、さっきまでとは違って賑やかなエントランスを進む。

やはり私のことは知られてるようで、私の姿を見た生徒がザワザワと興味、あるいは怪訝の意を含んだ視線を向ける。

 

「なぁ、あれシャーレの先生…」「男の人ってあんな感じ…」「大人は信用できない…」「面白いことになりそうだね…」

 

やはり知らない相手だからか、全体的な評価は芳しくないようだ。これから少しずつ信用を得られるように頑張ろう。

そう思いながら、受付の前へと行く。

どうやら受付などの類は完全に機械に一任してるらしく、受付に佇んでいるのも人や生徒ではなく、箱型の機械だった。

 

「いらっしゃいませ、本日はどのようなご用件ですか?」

「"シャーレの先生です。本日はお忙しい中…"」

「連邦捜査部"シャーレ"の担当顧問、"先生"ですね。お待ちしておりました。通行証はこちらです。そちらを"LSA認証装置"にかざすことで、一般人立入禁止区域への立ち入りやそのほか様々なサービスを優先して受けることができます。LSA自治区での活動でお役立てください。また、今後学園内に立ち入る際の受付も必要ございませんので、受付横の認証装置にそちらの通行証をかざしてお入りください。本日はお忙しい所、遠方からお越しいただきありがとうございました。」

「"は、はい…"」

 

とりあえず挨拶をしようとしたら、とんでもない数の情報で捲し立てられてしまった。

とにかくこの渡された通行証とやらを使えば学園内とかに自由に出入りできるということでいいらしい。

 

「すみません、受付のこの方は簡潔に仕事をするのを好むタイプですので…とにかく、入りましょう。やっと仕事ができそうで、私もウズウズしてるんです!」

「"ふふ、君は仕事熱心なんだね。偉いよ。"」

「偉いだなんて…でも、その言葉は素直に受け取っておきますよ。ありがとうございます。」

 

_ピッ。

駅の改札のような機械に通行証をかざして、エントランスを通り抜ける。

その横で、ミゼが生徒証をかざして同じくエントランスを通り抜ける。

そして、私の前で姿勢を改めて正し、口を開く。

 

「…では、改めて挨拶させていただきます。

私は、本日先生の案内役を務めさせていただく、ロボトミー追求学園4年2組、一百 ミゼ(イッピャク ミゼ)です。

歓迎いたします、先生。ロボトミー追求学園へ…ようこそ!」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――――――

 

 

ロボトミー追求学園。その学園内部は、主に3つの層と10のエリアで構成されている。

上から上層、中層、下層。それぞれ4つ、3つ、3つのエリアがあり、それぞれのエリアで研究分野が異なる。学年も層で分かれているらしく、上から順に1年、2年、3年、そして最高学年の4年という順番だ。

エリアはそれぞれ、上層が「コントロール」「情報」「教育」「安全」、中層が「中央本部」「懲戒」「福祉」、下層が「抽出」「記録」「設計」。エリアごとに教室や実験室などの部屋があり、研究設備は十分にある。研究内容は多岐に渡るが、ある程度層でコンセプトは決まっているらしく、上層は生徒の育成と様々な分野の研究、中層は戦闘や兵器に関する研究、下層は神秘の研究で大まかに分けられている。

これだけ聞くと、一般的な中学校や高校というよりは大学のような印象を受ける。

また、縦に長い構造をしている影響からこの学園での移動はエレベーターが主になっているらしい。楽ではあるが、移動には時間がかかりそうだと言ったら「この学園のエレベーターは、特殊な技術のおかげで3秒も経たずに移動が完了するんですよ」と教えられた。

 

「それぞれのエリアの詳しい研究内容などは、そのエリアに着き次第説明いたしますね。」

「"うん、ミゼちゃんは案内上手ですね。"」

「はい、私の得意分野なんです。」

 

もちろん学園内ということで、中には生徒がたくさんいる。

他の学園はある程度生徒に統一感が_ゲヘナだったらツノ、トリニティだったら羽、ミレニアムだったら白衣、というようなものが_ある程度あるのだが、この学園は本当に特徴が多種多様で、見ているだけでも面白い。

ゲヘナの子のようにツノが生えていて、よく友達に齧り付くような子もいれば、トリニティの子のように羽が生えていていろんな子について回るような子もいるし、ミレニアムの子のように白衣と眼鏡をつけている綺麗好きな子もいる。かと思えば、どこの学園にも似つかないような子、例えば赤色の綺麗な靴をつけていつも踊るように歩く子だったり、獣耳の生えた黒髪で背が高くて廊下を走り回る子、そしてその子を追いかける赤ずきんのような見た目でこれまた背が高いボーイッシュな子がいたり。

実際に見てみて、すごく賑やかで活気がある学園だな、という印象を受けた。

 

「"この学園も、みんなが楽しそうに過ごしてるみたいでよかったよ。"」

「そうですね。時々騒がしすぎて怖い時もありますけど、みんな好きなことができて好きなように学べて好きなように遊べる、すごく素敵な学園だと私も思います。」

 

そういうとミゼは誇らしげに笑顔を浮かべる。きっとこの学園が大好きなのだろう。

そんな話をしていると、黄色っぽい壁を基調とした大きな部屋に出てきた。

 

「…着きました。ここはコントロールチーム、ロボトミー追求学園の1番最初のエリアです。ここでは、この学園の設備、授業内容などの立案と、研究成果の総括を担当しています。研究内容は歴史学に関する物が主で、アーティファクトの再現や過去の文献の解読を通して、現代技術や神秘の解明の手助けをしています。」

 

どうやら、ここがコントロールチームらしい。周りにはいろんな場所を写しているであろうモニターや、"生命の樹"を模ったであろうポスターなどがある。

また、どうやらコントロールチーム所属の生徒は「M」の字が書かれた腕章をつけているみたいだ。この腕章は各チームにあるみたいで、「それぞれのチームのリーダーの名前の頭文字から取ってるんですよね」と説明を受けた。

すると、ミゼが部屋の中心にいる1人の生徒に声をかけた。

 

「あ、マツカさん!」

「…ん?貴女は…ミゼさんと…お隣は?」

「こちらは先生です。本日は視察に来てくださったんですよ。」

「あら、貴方がシャーレの先生…本日はわざわざ、お忙しい中ありがとうございます。」

 

緑を基調とした長いドレスを身につけた、赤いショートヘアが綺麗な生徒だった。

私たちに気づいたその子は、顔をこちらに向ける。

 

「"いやいや、これも先生としてのお仕事だからね。"」

「ふふ、丁寧なお方…私は3年4組"白雪 マツカ(シラユキ マツカ)"、このコントロールチームの研究リーダーを任命されてますわ。これからもよろしくお願いしますね、先生。」

「"白雪…素敵な名前だね。すごく綺麗で、似合ってるよ。"」

「もう、お上手…そういう言葉、もしかして他の生徒にも言ってはいないですわよね?もし言ってるなら、やめておいた方がいいですわ。ふふふっ」

 

どうやらこういう場には慣れてるらしく、とても品性のある話し方をする子だった。

 

「…それでは、先生も私もまだまだ仕事が残っているでしょうからこの辺りにしておきましょう。お元気で、先生。」

「"うん、私も話せて嬉しかった。ありがとね。"」

「では、次のチームに行きましょう。次は情報チームですよ、先生。」

 

話もほどほどに、ミゼに連れられて次のチームへと向かう。

向かった先は、コントロールと一風変わって紫を基調としたメカメカしい雰囲気の場所だった。

 

「ここは情報チーム、教育道具等の更新や各種手続きが行われる他に、生徒の組み分けや"生徒ランク"の管理を行なっています。」

「"…"生徒ランク"って?"」

「"生徒ランク"とは、生徒の学力や戦闘能力などの様々な成績を総合して生徒たちに定められるランクです。とはいえ学園での行動などにはそこまで関わらないですし、どうやら研究所からの名残である種の伝統みたいなものらしいので、気にしてる生徒はあまりいませんね。」

「"なるほど、格付けのためのものじゃないんだね。安心した。"」

 

どうやら"生徒ランク"には5種類のランクがあるみたいで、下からZAYIN、TETH、HE、WAW、ALEPHと定められているらしい。

名目上は様々な成績を総合して決定されているとは言われているものの、現代ではほとんど戦闘能力のみを基準にしているみたいなので、低ランクだから成績不良とか高ランクだから優等生みたいなことではないということ。

ちなみに、ミゼが参考までに先ほどのマツカの生徒ランクはWAW、と教えてくれた。なら、あんなお淑やかな見た目と言動ですごく強いということになる。人は見かけによらないとはよく言ったものだ。

 

「それでは、説明を続けますね。情報チームの研究内容は機械技術と科学です。受付のあの機械と認証システムも、この情報チームが作ったものなんですよ。」

「"なるほど、じゃあこの学園の安全はある意味情報チームに守られてるということだね。"」

「…あぁ、そうだな。我々がいなければ、この学園は撃つべき者に満ちていたことだろう。」

「"っ…!?"」

 

突然、後ろから殺気にも似た冷たい雰囲気が突き刺さる。

恐る恐る振り返ると、そこには青いコートを着て左腕には「Y」の紋章、背中には大きなライフルを背負った、まるで毒蛇のような目つきの生徒がいた。

 

「あ、ヨルさん。珍しいですね、研究室の外に出るなんて。」

「あぁ、先生とやらが視察に来たとマツカから聞いてな。どれだけの軟弱者なのか見極めに来たところだ。」

「"よ、ヨル、さん…えっと、よろしくね。"」

「敬称は不要だ。」

「ヨルさん、自己紹介をお願いできますか?」

「もちろんだ。私は3年1組『魔仇 ヨル(マガタキ ヨル)』。情報の研究リーダーであり、クレー射撃部の部長でもある。研究分野は『誰にでも当たる弾丸の開発』。自己紹介は以上だ。」

「"…誰にでも当たる、弾丸…!カッコいい!"」

「…え?」

「"しかもすごいクール!まさに百発百中のスナイパーって感じですごくカッコいいよ!他の生徒にモテるんじゃない!?"」

「あ、えっと…あ、あぁ…も、モテる…?それは…」

 

初対面ではびっくりしたが、話を聞いてみると自分のロマンに突き刺さる情報ばかりだ。

ついエレベーターの時みたいにはしゃいでしまったが、ヨルは満足そうだ。

 

「ヨルさん、普段褒められ慣れてないんですよ。だから先生が代わりにいっぱい褒めてあげてください。」

「ちょっ、ミゼっ!?お前まで悪ノリするなっ…」

「"え〜、褒められ慣れてないなんて…他の人は褒めてくれないの?もっと積極的にアピールしなよ!きっとみんな君のことをカッコいいって言ってくれるよ!"」

「ぐ、ぐぬぬ…わ、私は、1人の方が…」

 

最初はあんなに無機質だった顔が真っ赤になっている。

なんだかからかいがいのある生徒だ。

 

「"あ、もしかして…シャイだったりする?それとも一匹狼みたいな!?"」

「あぁぁっ!もういい!研究室に戻る!これ以上そんなことを言われると調子が狂うからなっ!」

「ありゃ、怒らせちゃいましたね。」

「"うーん、本心なんだけどな〜…"」

「ったくっ…まぁいい、その度胸は褒めてやろう。顔くらいは覚えておいてやる。私の弾丸がお前の心臓に向かわないようにせいぜい気をつけるんだな。けっ…」

「"うん、ありがとう。"」

「っっ……くぅ〜〜っっ……」

 

そう言うと、ヨルは走ってどっかに行ってしまった。

 

「…まぁ、気を取り直して次にいきましょうか。残りの2つは情報から枝分かれしてるんですけど…まずは教育の方に行きましょうか。」

「"分かった、案内よろしくね。"」

 

情報を後にして、教育チームへと向かう。

そこはオレンジ色を基調とした、少し暖かな雰囲気のする場所だった。

宙にはブラックホールのようなオブジェが浮かんでいて、ところどころに本棚のような装飾がある。生徒たちの腕章にはHと書いてあった。

 

「ここが教育チームですね。名前の通り、主に新入生徒の授業やミーティングなどを行なっている場所です。他にもカウンセリング室や図書室なんかもあるので、結構いろんな学年の生徒がいる印象ですね。また、ここは特殊で、一つの研究をじっくりやるというよりはいろんな分野の研究を広く浅くやっている感じの方針なんですよね。ここで新入生徒の興味のある研究分野を見つけさせて、そこからそれぞれの研究内容に合ったチームに移動、という流れになっているんです。だから、ここで長い間研究をしている生徒は人に物を教えるのが得意な人が多いんです。」

「"へぇ、じゃあ先生に向いてる子が多いんだ。楽しみだなぁ。"」

 

どうやら名前の通りに教育に重きを向いているチームなようで、ここのリーダーに会うのが楽しみになってくる。

どこにいるかとキョロキョロ探し回ってみると、1人の生徒がこちらに向かってくるのに気がついた。

 

「"あ、もしかして君が教育チームのリーダー?"」

「…分かっちゃいましたか。そうです、私がこの教育チームの研究リーダーです。3年2組、『黒襟 ヒーナ(クロエリ ヒーナ)』、以後お見知りおきを…」

 

その子は黒にところどころ緑のフリルのついたドレスを着ていて、エメラルドみたいに綺麗で真っ直ぐな緑色の瞳をしていた。

まさに、教育者と言えるような見た目だ。

 

「"ヒーナちゃんか、よろしくね。"」

「はい、こちらこそ…」

 

手を差し出して、握手をする。

 

「…」

「"…"」

 

そして、気まずい沈黙。

なんだか、周りの音まで静かになった心地がする。

 

「"…もしかして、会話とか苦手…?"」

「…あ…えっと、はい…お恥ずかしながら…少し、人見知りで…知ってる人が相手なら言葉がすぐ出てくるんですけどぉ…先生とは、その…初対面で…」

「"あぁ、そういうことなら無理しなくてもいいよ。私も正直少し人見知りな部分はあるし、お互い様っていうことでさ?"」

「っ…!先生…!ありがとう、ございます…!」

 

人見知りの子にはあまり深く立ち入らない、先生としての一つの立ち回りだ。

私としては当たり前の対応だったが、その言葉を言った途端にヒーナの目がキラキラと輝く。

 

「先生…私、貴方みたいな先生になります!本日は、ありがとうございました!」

「"えっ、えっ?そ、そんな大層なことは…"」

「いえ…先生がたった今、教えてくださいました。生徒の性格に合わせて、立ち入るべき場所を見極めてコミュニケーションを取る…例えば、先生が人見知りの私に対して無理はしなくていいと言ってくださったように…!私、今日のことは忘れずに胸に刻んでおきます!」

「"…そっか、君はすごく真面目で優しい子だね。どういたしまして。"」

「っ…あぁ…お優しい……うっ、うっ…」

「"ちょっ、ヒーナちゃん!?"」

「ごめんなさい…あまりの感動に、涙が…」

「あはは…ヒーナさん、涙もろくて感動するとすぐ泣いちゃうんですよ。そこまで心配しないであげてください、もっと泣いちゃいますから。」

「"そ、そっか…ヒーナちゃん、今日は会えて嬉しかったよ。これからも、同じ教育者としてよろしくね?"」

「は、はいぃ…よろしぐおねがいじまずぅ…」

 

これ以上心配しなくてもいい、とは言われたがやっぱり気になる。

このまま泣いてる状態で部屋のど真ん中に放置するのは、先生としてほっとけない。どこか落ち着けるような場所まで送ってあげよう。

 

「"とりあえず、ヒーナちゃんが落ち着ける教室まで送ってあげてから次に行くことにしようか。それでいい?ミゼちゃん。"」

「あ、分かりました。それでは私もお手伝いさせていただきますね。」

「"じゃあヒーナちゃん、いつもどこにいるとか教えてくれるかな?そこまで送ってあげるから。"」

「ふ、ふぇ…?お、送るだなんて、そんな悪いですよぉ!私、1人で帰れます…」

「"これは先生としての責任だから。生徒が泣いてるのに放置なんてできない、でしょ?"」

「…ぅ…うぅ…!!!せん、せいぃ…!!!」

 

…送ってあげるとは言ったが、こんな様だと自分の足で歩けるかすら不安だ。

 

「"…歩ける?"」

「だめでずぅ……!!!なみだのあまり、めがみえなくてぇ…!!!!!うっ、うぅっ…!!!」

「"そっか。じゃあ…ちょっと持ち上げるね?"」

「…えっ」

 

_バッ

お姫様抱っこの要領で、ヒーナを持ち上げる。

 

「えっ、えっ…えっ…!?!?」

「"ごめんね、こうした方が安全そうだから。もう一回聞いちゃうけど、どこが1番落ち着くとか、ある?"」

「あ…え、っと……と、図書室…です…」

 

さっきまで泣きじゃくってたヒーナが、途端に口数を減らす。

泣き止んだならよかったけど、もしかして嫌だったかな?けど、たまには嫌われ役になるのも先生の勤めだし仕方ない。

 

「"えっと、図書室…ミゼちゃん、図書室どっち?"」

「あ、えっと…右です。その…先生って…」

「"うん、大胆ってたまに言われる。でも、そんなこと気にしてちゃ先生できないからさ。"」

「…せん、せい……」

 

あまりヒーナに振動が伝わらない様に気をつけながら、図書室へと歩みを進める。

次の道を左に向かうと、図書室が見えるらしい。

 

「"お、ここかな?ミゼちゃん、開けてくれる?"」

「は、はい、どうぞ。」

 

_キィィ…

 

珍しく古風な古びた扉を開けると、そこは木と紙の匂いが立ち込める懐かしい雰囲気のする場所だった。

普段はとても静かな場所の様で、ほとんどの生徒が本を開いていたりレポートを書いたりしていた。

が、少し息を切らした成人男性とその人に抱えられる、顔を耳まで真っ赤にした教育チームのリーダー、そしてその横で心の底まで困惑した顔を浮かべる生徒が図書室に入ってきたのを境に、図書室にいた生徒が全員入り口に目を向ける。

 

「……え、っと…?ここは、図書室で…保健室では、ないのですが…」

「"ごめん、ちょっと急用だから事情は後で説明するね。ヒーナちゃん、お気に入りの席は?"」

「…………図書室2階の…1番奥の席、です…」

「"分かった。行こう。"」

「……はぁ…図書室ではお静かにお願いします…」

 

素早く、それでいてあまりヒーナに負担がかからないくらいの小走りで、ご指定の席へ向かう。

この図書室は2階建てのようで、できるだけ多くの生徒が利用できるようになっているみたいだ。

 

「"ふぅ…じゃあ、ゆっくり座らせるからね。急にお姫様抱っこなんかして、ごめんね?"」

「ぁ、あっ…えっと…」

「"…ん?どうしたの?"」

 

ヒーナが、袖を弱い力で掴む。

 

「…その、もう少し…このままで…」

「"……それは、また今度でいいかな?今はお仕事があるから。"」

「…じゃあ、また今度…ですね…ふふっ」

 

怪我をしない様、ゆっくり慎重に席に座らせる。

 

「…その、先生……ご迷惑、おかけしました。次はこうならないように、気をつけますので…」

「"大丈夫だよ。生徒が困ってたら、先生が助けなきゃいけないから。全然迷惑じゃないし、むしろもっと頼ってね。"」

「……ありがとう、ございます。先生。」

 

席に座れ終わったら、ミゼの方へ向き直る。

そこにはこれまで見たことのない、とてつもなく白い目をしたミゼが立っていた。

 

「……先生…なんですか今の。」

「"別に?いつも通りのことをしただけだよ。"」

「こんなラブコメまがいのことを…?……まぁ、とにかく…ここまで来ちゃいましたし、先に図書室の案内でもしますか…」

 

半分呆れ、半分困惑の感情を浮かべながらも、ミゼは私の案内を再開する。

…前に、2人で図書室の室長を訪ねに行く。

 

「"…えっと、急に騒がしくしてごめんなさい…ちょっと生徒のお願いを聞いてて…"」

「はぁ……そうですか……まぁ、暴れたりはしてないので今回は許します。それにあなた、先生ですよね?」

「"うん、そう。"」

「では、私も自己紹介とここの説明をしなければなりませんね。私は2年2組『巣赤 クモリ(スアカ クモリ)』、この図書室を管理する図書委員会の委員長をしています。」

 

怠そうな顔をしながら、クモリは読んでた本を置いて立ち上がる。

赤と黒を基調としたジャケットとスーツを着ており、眼鏡もつけていてどこか礼儀が正しそうな印象を受けた。

 

「ご覧の通り、ここは図書室。この学園の蔵書はほぼすべてここに集まっており、児童向けの絵本から医療の学術書まで、研究に必要な書物は全てあるといっても過言ではありません。」

「そのため、この図書室を利用する生徒は一日でも100人ほどいます。ピーク時、特に制作発表会の時期にもなると200人を超えて300人まで届くこともあるんですよ!」

「そうですね。私としては仕事が増えて煩わしいことこの上ないのですが…こんな地位に就いてしまった定めでしょうね。」

 

まるで後悔しているかのような口ぶりで文句を言うと、話を続ける。

 

「…もちろん図書室ですので、本の貸与も実施しております。上限冊数は無し、返却期限は基本2週間で申請をすることで延長可能、学園内での研究の論文であればこの図書室でデジタルデータのダウンロードも可能です。私は他の学園を見たことがありませんが…利用者はみんな口を揃えて"他の学園のどれよりも優れた図書室"と言ってくださいます。先生も利用したくなったら、ぜひ。」

「"…ふむふむ、なるほど…クモリはプレゼンが上手だね。"」

「…ありがとうございます。」

 

そう言うとクモリは、やっと言うべきことを言い終えた、というようにため息をつきながら席につく。

 

「はぁ…じゃあ、これで説明は終わりです。ほかに要件がないなら、早くどっかにいってください…これ以上利用者を怒らせると怖いので…」

「"ごめんね、迷惑かけちゃって。じゃあ、またここの資料が必要なときはお世話になりにくるとするよ。ありがとう。"」

「ご利用ありがとうございました……ふぅ…」

 

再びドアを開けて、図書室を出る。

あのお姫様抱っこの目撃例が多かったのか、野次馬がいっぱいいた。

 

「なんかうちのリーダーを…」「ヒーナちゃんに何したの!?…」「なんか泣かせたらしい…」「しかも、お姫様抱っこで…」

「"め、めんどくさいことになったなぁ…"」

「はいはい〜、散ってくださいね〜!さっき先生がしたことは別に変なことじゃないので〜!私が保証しま〜す!」

「…ミゼ先輩が言うなら…」「あいつ、4年生を味方に…」「気に入らねぇなぁ…」「信用できない…」

 

ミゼが手をぱっぱっと払うような仕草をすると、野次馬はしぶしぶといった具合に掃けていく。

 

「"やっぱり、信用されてないなぁ…"」

「まぁ、仕方ないですよ。人はみんな、知らない物を恐れるものですし。…ところで、いつもああいうことをしてるってことは…もしかして、生徒の足を舐めたってのも…」

「"…黙秘権、じゃダメ?"」

「ダメです。ちゃんと懺悔してくださいね。」

「"…はい……"」

 

自分がこれまで生徒にしてきたいろいろをミゼに告白…もとい懺悔をしながら、2人で教育チームを離れる。

次に向かうのは安全チームだ。

 

「"……あと…たまにプライベートで生徒と会ったりもしてて…もちろんやましい事はしてないけどね!?けど…まぁ、うん…そういうことも…"」

「嘘ついたら分かるので大丈夫ですよ。全部言ってくださいね。」

「"…はい……その、この前はミレニアムの、カリンっていう子の…"」

「…あっ、安全チームにつきました。懺悔は一旦終わりにしましょう。」

「"あ、本当だ…ふぅ…"」

 

安全チームに到着して、ようやく地獄の懺悔タイムが中断される。

緑を基調としたフロアで、巨大な水槽がある。水槽の中にはトロフィーのようなものに薔薇が咲いているような見た目のオブジェがあり、魚などは一匹も泳いでいない。

生徒たちの腕章は"N"。

 

「ここは安全チーム、怪我した生徒の処置であったり、医薬品の調達が主な役割です。保健室と医務室もここにあるので、もし怪我をした場合は是非こちらを頼ってくださいね。研究内容も薬学や生命科学をメインにしてます。この水槽に入っているのも、ただの水ではなく"再生液"という薬品なんですよ。」

「"へ〜…もしかして、この再生液って…"K印の再生アンプル"のやつ?"」

「おっ、よくご存知で!そうです、K印の再生アンプルはこの再生液をアンプルに詰めて民間に下ろしているんですよ。なんと、腕が吹き飛んでも数秒で再生するとか!先生も、念のため持っておいたらもしもの時に役立つかもですよ。」

「"腕が吹き飛んでも…す、すごいね。一応一本持っておこうかな…"」

「…あ、でも値段もなかなか張るのでお気をつけて…」

「"…いくらくらい?"」

「…大体、100万は軽く…」

「"100万!?!?"」

 

あまりの高額に目が点になる。

確かにすごい効き目だしその値段になるのも納得ではあるが、それでも一般人が買うには…

 

「おや、再生アンプルのお話ですか!ふむふむ、先生もなかなかお目が高い…」

「"っ!?誰っ!?"」

「おっと失礼、驚かすつもりはなかったんですがね。非礼を、お詫び申し上げます…」

 

突然の後ろからの大声に、思わず体を震わせてしまった。

後ろを振り向くと、そこには白い燕尾服を見にまとった生徒が。

ところどころにある音符の意匠から、オーケストラの指揮者みたいという印象がした。

 

「自己紹介をしましょう。私、3年1組の『奏響価 ナキ(カナヒビカ ナキ)』の申します。安全チームの研究リーダーであり、この学園のオーケストラチーム『静かなオーケストラ』の部長兼指揮者を担当しております!」

「"な、ナキちゃん…えっと、よろしく。"」

 

あまりのハイテンションさに呆気に取られてしまう。

いや、呆気に取られてるだけじゃない。この子にはどこか…威圧感を感じる。

 

「いや〜先生!私、涙が出そうですよ〜!まさかお会いできるなんて、光栄です…!生徒たちを指揮し艶やかに、鮮やかに、美しく戦闘に勝利するお姿、圧巻だとお聞きしまして!指揮者として是非お会いしたかったのですよ!」

「"あ、ありがとう…?"」

 

半ば無理やり手を取られ、両手で握手をする。

まだ分からないが、直感が「この子は強い、間違いなく」と告げている。

 

「…おや?先生…その感情…私に、恐れを抱いてると?ふむふむ…」

「"っ……!?"」

「ふむ、驚愕。それから恐怖に困惑…いや〜、美しい感情の移ろい…素晴らしい…」

「"……なんで、分かったの?"」

「ほう、なぜ分かったか!その秘密を知りたいのですね!?ふふ、ハハハハッ!いいでしょういいでしょう!喜んでお教えいたしますとも!」

 

手をやっと離したかと思うと、芝居掛かった仕草で決めポーズを取る。

なぜか、周りの音が聞こえない。正確には、ナキ以外からの音と声が聞こえない。

 

「そう!私の秘密!!それは、私の神秘にあります!私の神秘は、人々の感情を音楽として私に響かせる力…即ち!観客の感情を読み解く力なのですっ!!!そして、私の使命は私の中で反響する人々の感情を取りまとめ、新たなる音楽として昇華させること!それこそが私の!!!静かなオーケストラの!!!使命っ、なのですっっ!!!!!」

 

耳鳴りが、ソナタのように響いて止まらない。

間違いない。この子は他の生徒とは別格だ。

 

「……んせい……せんせい…!先生!!!」

「"はっ…!"」

 

そこに、ミゼの鶴の一声が再び響く。

まるで、立ったまま気絶していたかのような感覚だ。

 

「おっと、これまた失礼を働いてしまったようで…申し訳ございません。貴方の演奏があまりにも素晴らしかったもので、つい暴れてしまいました…」

「"…いや…だいじょう、ぶ……ふぅ……"」

「…先生、休みますか?」

「"そうした方が、いいかも…ちょっと、寝たい…"」

「…それじゃあ、これから保健室に運びます。ナキ、手伝ってください。」

「もちろんですとも、ミゼさん!私が招いてしまった結果ですから、私が責任を取らなければですねぇ!あ、そうだ。」

 

そう言うと、ナキは自分の目の前に再びゆっくりと近づく。

ポケットから何かを取り出しながら。

 

「先生…先ほど、再生アンプルに興味を持たれていましたねぇ。せっかくお近づきになれたことですし、先ほどの非礼のお詫びついでにこちらを受け取ってください。」

「"これ、は…?"」

「…!!ナキ、これを渡すなんて…!」

「いいんですよ、私の部屋に予備はいくつも残してありますので。先生、それは…貴方が喉から手が出るほど欲しがっていた、再生アンプルです!いつかのために、お役立てくださいね!」

「"…あり、がとう……"」

 

濃い緑の液体が詰まった冷たい金属のアンプルを手渡される。

が、それを掴んだ瞬間に眠気が限界に達してしまった。

視界がワイプアウトしていく。音が遠くなっていく。

 

「…せんせい…?先生!大丈夫ですか!!!だいじょうぶ……」

 

そう叫ぶミゼの声も、やがてフェードアウトしていった。




次回:ドキドキ学園案内ツアー 〜中層編〜の始まり。筆が乗ったら下層までやるかも(99%くらいの確率でない)。

ヴァルプルギスに向けて石は溜まってますか?溜まってないなら私が貴方のために祈ります。アーメン。
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