Blue Archive -数多の未来の追求者-[ブルアカ×LobotomyCorporation]   作:シータさん

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前回のあらすじ:いよいよ案内ツアーが始まり、上層のチームをミゼと共に巡る先生。いろんなチームの研究リーダーとお話をしたり、ラブコメごっこをしたりと、新天地でも先生はやはり先生らしい立ち回りをしていた。そして安全チームに辿り着き、変わらずミゼから案内を受けていると、安全チームの研究リーダー"奏響価 ナキ"に出会う。彼女の話を聞いてると、突如周りの音が聞こえずナキの音だけしか聞こえなくなる怪奇現象が発生。ミゼの声でなんとか現実に帰ってこれたものの、精神を大きく消耗してしまった先生はナキからお詫びの再生アンプルを受け取った瞬間に気絶してしまうのであった。

案内ツアー中層編です。前回とは違って強烈な展開はありません。(登場させるには早い生徒が多すぎるんですよここから)

Q.図書館とか某驚き研究所とかリンバスとかで出たロボトミ本編にいないアブノマはどういう扱いにするの?
A.現状は出さない方向で行きます。理由は2つあって、まずロボトミにいた子と比べて情報量が少ないから解像度が低くなってしまうのと、この学園がロボトミ本社をモチーフにしてるから別支部とかの子を登場させるのは少し辻褄が合わない気がするからです。じゃあ中央とか福祉のリーダーは本編に登場しないけどどうするのかって話になりますが…道化師ちゃんは合体系っぽい+中央は研究はあまりしない方向性にしたいから登場させなくてもあまり問題なさそう、嘘をつく大人も合体系っぽい+懲戒チームと対照的にしたい+分からないことが多すぎるから本編に登場させてもこじれるだけになりそう、という判断をしました。この二体の幻想体が好きな人には申し訳ないです。
代わりにいい感じのストーリーを作るので、ご容赦を…


ニュートラル・デイ

「"うーん…はっ!"」

 

意識が戻ってくる。

目にまず映ったのは、白い壁に大量の医薬品が詰まっている棚、他の怪我人や病人。次に、自分が寝ていたであろうベッド。そして、心配そうな顔で私を見つめるミゼ。

 

「先生!…大丈夫でしたか…?」

「"…ごめん…倒れてからどのくらい経った…?"」

「えっと…そんな時間は経ってないです。30分に満たないくらいには。」

 

よかった、そこまで長い間倒れてはなかったみたいだ。

 

「やはりというか、精神の過負荷が原因だったみたいです。ナキさんの神秘は精神に作用するもので、かつ彼女は神秘の出力がかなり強く…それでいて、扱いにもかなり長けているのです。意図的に、その力を発露させることができるくらいには…なので、特に神秘などによる防御が施されてない先生は彼女の神秘に知らず知らずのうちに侵食されてしまったのでしょう。」

「"…やっぱり、あの子は強いんだね。"」

「……はい。奏響価 ナキ…彼女はこの学園内でも有数のクラス、ALEPHですから。」

 

ALEPH。生徒クラスの中でも、最高のクラス。

ほぼほぼ戦闘能力のみで評価される生徒クラスで、最高位。それも、実力者揃いのロボトミーの中で。

それだけで、彼女が只者じゃないことは察せられる。

 

「"…ちなみに、他のALEPHってどのくらいいるの?"」

「私が知る限り…あと6人いるはずです。…そうですね、せっかくですし…今のうちに、全員教えておきましょう。」

「"うん、そうしてくれると助かる。"」

 

そう言うと、ミゼはスマホを取り出してあるサイトを表示する。

どうやら、学園のとあるページを開いているみたいだ。

 

「これは、歴代のALEPHクラスを付けられた生徒を表示しているサイトです。誰でも見れるので、忘れそうになったら後で先生も検索してみてくださいね。

まずは、3年1組『屍山 クロワラ(シヤマ クロワラ)』。ドカ食い気絶部の部長で、神秘は"全てを腐食し喰らい尽くす力"。普段は抑えているはずですが、それでも触れることはお勧めしません。

2人目は、⬛︎年⬛︎組『⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎⬛︎』…彼女の情報は明かされていません。分かることは、彼女に出会ってしまった人はほとんどが発狂してしまうということだけです。

3人目は、3年3組『蒼光 コウ(アオヒカリ コウ)』。彼女の周りには"信者"と呼ばれる熱狂的なファンがいっぱいいるので、分かりやすいでしょう。神秘は"人々の心を惹きつける力"。こちらも先生に影響があるかもしれません。近づくのは避けた方がいいです。

4人目は、2年1組『桃形 アミ(モモガタ アミ)』。クレー射撃部で、その射撃の腕前はあのヨルさんを超えるほどと言われています。精神侵食はしてこないはずですが…神秘"人々の愛憎の感情を貯蓄し、解放する力"が発動してしまうと、あたりにしばらく被害が出るほどの爆発になってしまいます。

5人目は、2年3組『溺礼愛 メル(オボレメ メル)』。彼女の肌に触れると、彼女の機嫌によっては溶かされてしまうかもしれません。彼女の神秘は"愛した者を眷属にする力"ですから。まだまだ彼女は未熟で、神秘のコントロールが上手くできていません。それにも関わらず、その神秘の危険性だけでALEPHに認定されたのです。

そして、6人目。4年6組『無意刃 ガナ(ナイガタ ガナ)』。彼女の神秘は"完全に擬態する力"。ですが、彼女を本当にALEPHたらしめるのは、その戦闘力。彼女に勝てる生徒は…いません。少なくとも、この学園には。

…これらと、ナキさんを含めた7人。以上が、現状判明しているALEPHクラスの生徒たちです。」

「"……錚々たるメンツ、だね。"」

 

説明を聞くだけでも、正直怖い。

少なくとも言葉だけで考えるなら、あの七囚人よりも強いじゃないか。

でも、私が先生である以上は彼女たちとも向き合わなければならない時が来るのだろう。

 

「"…でも、みんな生徒だからね。拒むようなことはしないよ。私は先生だから。"」

「先生は、お優しい方ですね…でも、自衛も大事ですよ。貴方が死んで悲しむ人が、たくさんいるんです。」

「"まぁ…それは、気をつけるよ。私だけの体じゃないってことはよく分かってるから。"」

 

布団を退けて、ベッドに座り込む。

ミゼは、私が何をしたいのかを察して靴を履きやすい方向に置いてくれた。

 

「"…じゃあ、案内を再開してくれるかな?"」

「ええ、もちろん。」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「次からは中層ですね。まずは中央本部チームへ向かいましょう。情報チームにある大エレベーターが1番早いので、そこから行きましょう。」

 

どうやら私は、あの事件で気絶してから安全チームにある医務室に連れてこられたらしい。

そこで、どうやらナキの力で私の精神がボロボロにされてたことが発覚、精神治療剤の投与をして経過観察をしていたみたいだ。

それにしても、精神治療剤なんてものが存在するとは驚いた。どうやらそれもロボトミーの技術によって作られたものらしい。なんでも"エンケファリン"とかいう薬品をいろんな薬品で希釈したものみたいで、適切な量を投与すれば精神に与えられたダメージはみるみるうちに回復するとか。

そんな便利があるなら他の学園にも流通させてくれればいいのに、そう口に出すとミゼは「適切な量を投与しなかった時のデメリットが大きいですから」と言われた。

…そんなに危ないものでもあるのか?

そんなことを考えていると、エレベーターが停止する。どうやら着いたみたいだ。

外に出ると、そこは豪華絢爛なシャンデリアや装飾で飾られた、黄色…というより、金色に染まった空間だった。

いろんなチームの、いろんな学年の生徒が飛び交っていて、中央本部という名は伊達じゃないな、と感じる。

 

「着きました、ここが中央本部です。名前の通り、この学園全体の管理や行政などを行うチームで、研究はあまり行われていませんね。ここには生徒会やさまざまな組織の会議室があるので、もし用があるなら尋ねてみるといいでしょう。」

 

やっぱり本部とわざわざついてるだけあって、研究にはあまり関わってないみたいだ。

中央本部チームの生徒らしき子の腕章を見てみても、いつも通りのアルファベットの1文字ではなく"CC"という2文字になっている。

 

「"じゃあ、ここに研究リーダーはいないのかな?"」

「はい、そうですね。先ほど言った通り研究は行われていないので、ここには研究リーダーが設けられていません。強いて言うなら、生徒会長がここのリーダー…とでも言いましょうか。」

「"ふーん、なるほど。それじゃあ、その生徒会長さんに会いたいな。"」

「…生徒会長…私もぜひお会いしたいんですけど、実は…生徒会長の情報は誰も知らないんです。」

「"……生徒会長のことを誰も知らない?そんなことがあるの?"」

「…はい。」

 

ミゼがさっきと同じようにスマホでページを見せてくる。

そこには生徒会の情報が書かれていたが…

 

"生徒会長の情報は、安全上の理由から秘匿しています。"

「"……こんな学園、見たことないよ。"」

「私も、変だとは思います。でも…本当に何にも情報がないのでどうしようもなく。申し訳ありません。」

「"まぁ、仕方ないよ。ミゼちゃんは悪くない。"」

「…ありがとうございます。」

 

少し落胆しつつも、気持ちを切り替える。

話を聞いた感じなら、次は懲戒か福祉に行くことになるだろう。

 

「"それじゃあ、次はどこに行く?"」

「…そうですね、次は懲戒に行きますか。こっちです。」

 

どこか気まずい雰囲気のまま、廊下を進んでいく。

こういう、話すべきだけど十分な会話をするには隙間が短すぎる時はどうしたらいいんだろうか?大人になっても、いまだに分からない。

 

「…着きましたよ、懲戒チームです。」

 

幸いなことに、私たちの間に流れる気まずさは懲戒チームに入った途端に消え去った。

そこにあったのは、暴力的なまでの赤で満たされた空間だ。どこかピリついた空気がずっと流れていて、いるだけでも気がソワソワしてくる。まるでブラックマーケットにいる時みたいだ。

生徒たちに目を向けると、腕章には"G"と書かれている。

 

「この懲戒チームは、校則の規定やそれに基づいた罰の執行を行うチームです。また、自治区内でのテロなどが確認された際は懲戒チームに所属する生徒が主に対処をしますね。ロボトミーの武力、と言っても過言ではありません。研究内容は、戦闘や武器に関するものが多いです。新たな兵器の開発などの技術的なものもあれば、神秘を応用した武術の習得などの体術的なものもあります。ここの生徒たちはみんな腕っぷしがあるので、あまり喧嘩は売らないようにしてくださいね。」

「"おっかないなぁ…なんだかブラックマーケットを思い出すよ。"」

「おっ、ブラックマーケットの話をしたか?そこの大人サンよぉ。」

「"ん、君は…"」

 

声をかけられたのでそっちの方向を向いてみると、そこには上層にいた時に見かけた赤ずきんみたいな格好をした生徒がいた。

口には牙の模様がついたバンダナを巻いていて、腰には拳銃と…折りたたみ式の斧?を持っている。まるで傭兵みたいだ。

 

「"君は…もしかして、ここのリーダーだったり?"」

「いいや?リーダーは滅多にこねぇよ、ここには。演劇のアイデアを探すっつって、いっつもどっかほっつき歩いてやがる。アタシはそんなリーダーには全然届きゃしない、ただのチンケな傭兵さ。」

「"なるほどなるほど…じゃあ、そのリーダーの名前は教えてくれる?"」

「あぁ、いいぜ。ウチのリーダーは『無意刃 ガナ』、絶対的武力の象徴であり、"無"の象徴…本気のアイツが通った後には血でできた赤い霧しか残らねぇ…そんな逸話ばっかりの、正真正銘最強のリーダーさ!」

「"…が、ガナが、ここのリーダーなんだ…"」

 

上層の安全チームですらリーダーがALEPHだったから中層以降もALEPHの子はいるだろうとは思っていたけど、まさかあの最強とまで謳われる生徒が懲戒のリーダーだなんて。

まぁ、武力が大事な懲戒チームのリーダーに最強の生徒が就くのはある意味自然の摂理とも言えるかもしれないけど。

 

「ところでアンタ、質問をしてきたってことはアタシの質問にも答えてくれるってことだよな?」

「"あ、うん。もちろん。できることならなんでも答えるよ。"」

「おぉ、そうこなくっちゃ!じゃあ…アンタ、ブラックマーケットってどんなとこか知ってんのか?」

「"うん、知ってるよ。仕事の関係で何回か行ったことがあるからね。"」

「…し、仕事…!それで、それで!?どんな感じなんだ!?」

「"あぁ、えっと…"」

 

…困った。ブラックマーケットについて知ってると言っても、ヘルメット団が根城にしてるとか裏取引や傭兵産業が行われてるとか、そんな表面上のことしか知らないのに。

仕事で何回かっていうのも、アビドスの子たちといろいろ探索したりとかで同行しただけだし…!

シャツの内側で冷や汗をかいている私とは対照的に、目の前の生徒はキラキラと目を輝かせている。どうしたものか。

 

「"…ブラックマーケットは、怖いところだよ。殺さなきゃ殺される、そんな世界。強いものが勝ち弱いものが淘汰される、そんな地獄…いつ傭兵の戦いに巻き込まれて死んじゃうか、いつ通り魔に襲われて全財産を奪われるか、何も分からない。法が機能しない、本物の世紀末だよ。少なくとも、私は好んで行きたくはないな。"」

「……お、おぉ…!」

 

とりあえず、自分がゲームとかで学んだそれっぽい知識をそれっぽく語って、騙すことにした。

実際ブラックマーケットは普通の生徒には危ないところだ。ここの子達なら生きてはいけるかもしれないけど、先生としてはあんな裏社会には指一本たりとも触れさせたくはない。だから、それで怖がって避けるようになってくれれば一石二鳥だったが…

 

「…なぁなぁ!もっと聞かせてくれ!アタシ、そういうの大好きなんだよ!」

 

…ダメだった。まぁ、懲戒チームにいる以上こういう話が性に合うんだろう。

なら、もう満足できるくらいにいろんなお話を聞かせてあげる他にない。

 

「"そうだね〜…これは噂程度の話なんだけど…最近、ブラックマーケットにとてつもない傭兵が出たって話があってね。なんでもその傭兵は、右手にマシンガン、左手にショットガンを持って、まるでカラスのようにスタイリッシュに戦うらしいんだ。最近出てきたばかりなのに、もうリーダーボードの上位に食い込んでるって噂だよ…"」

「おぉ、おぉ…!!!かっ……こいい〜〜っ……!!!」

 

ちょっと前に流行ったゲームの内容を上手く組み替えて話してみたが、上手く信じてくれたみたいだ。

 

「よし、気に入ったぞ!アタシの名前は『赤盛 グレン(アカザカリ グレン)』、コードネーム『赤ずきん』!懲戒チーム一番の腕利きのある傭兵さ。アンタは?」

「"私は先生、シャーレの先生だよ。よろしくね。"」

「おぉ…アンタが、噂に聞くセンセーってやつなのか!ヘナヘナ野郎だと思ってたけど、話を聞く限りだと根性が相当あるみたいだな!はははっ!」

「"ふふ、ありがとね。"」

 

懲戒チームの子とは仲良くなれるか不安だったが、とりあえず1人とは仲良くなれて安心だ。

この子は懲戒チームでもそこそこ名が知れてるようだし、彼女が喧伝してくれれば私のことを信用してくれる子も増えるだろう。なんやかんやで、運が良かった。

 

「センセー、今日はありがとな!次の依頼料はおまけしておいてやるから、いつでも頼ってくれ!あと、ガナ先パイにもよろしく伝えとくから!」

「"本当!?それは嬉しいなぁ。リーダーにも会っておきたいからね。助かるよ。"」

「いいよいいよ、面白い話を聞かせてくれたお礼だ!今度会う時も、面白い話、聞かせてくれよ?」

「"うん、約束するよ。いろいろネタを仕入れておくから。"」

「じゃ、アタシはこれから依頼があるから行くよ!じゃーな!」

 

そう言うと、目にも止まらぬ速度で走り去っていってしまう。

カジュアルでいい子だったが、やはり戦闘能力は一流なのだろう。

 

「…グレンさん…2年1組の子ですね。独立傭兵として依頼を受けている、懲戒チームでもトップクラスの腕の持ち主です。仲良くなれてよかったですね。」

「"うん。ガナって子にも話を通してくれるみたいだし、いい子を仲間につけられたよ。"」

「…ところで、ブラックマーケットのお話って本当なんですか?」

「"いいや?最近やってるゲームがちょうどそれっぽい内容だったから、それっぽく捏造しただけだよ。アーマードコ…"」

「そこまでは聞いてませんから…用事済んだし、次は福祉に行きますよ。」

「"…はい…"」

 

 

――――――――――――――――――――――――――――

 

 

「ここが福祉チームです。学食の管理や公衆衛生の維持など、生徒の生活の過ごしやすさを向上するために存在するチームですね。」

 

長い間歩き続けて、ようやく福祉チームに着いた。

懲戒チームとは反対の、青を基調としたとても落ち着いた雰囲気の場所だ。

生徒たちの腕章には"C"が刻まれている。

 

「研究内容は生命科学と防衛用兵器の開発がメインですね。安全チームと情報チームで業務提携をしていて、福祉チームで立案をして、その案の分野に応じてどちらかのチーム、あるいは両方のチームに実機の開発を行う、という流れが定着しています。普段過ごす上では、1番大切なチームなんですよ。」

「"確かに、普段過ごす学舎が汚かったり普段食べるご飯が不味かったりしたら意欲も下がっちゃうよね。私もそんなところで過ごしたいとは思わないし。"」

「そうですね。特に福祉チームの学食はすごく美味しくて、お昼休憩の1時間前に並び始めないと、自分の番が来る前に売り切れてしまうって言われるほどなんです!」

「"お昼ご飯のためにお昼より前から並ぶって、それはもう本末転倒じゃないかな…"」

 

そんな具合でミゼと談笑してると、1人の生徒が私に気づいたようで近寄ってきた。

灰がかった色のロングウルフで、あちこちに傷がついている。頭のてっぺんの犬のような耳はぺたんと倒れてしまっている。表情と体勢からして気弱そうな子だ。

 

「あ、あの…先生、ですよね…」

「"ん、そうだよ。私はシャーレから来た先生。どうかした?"」

「あ、えっと、えっとぉ…ふ、福祉チームへ、ようこそ!…そのぉ…」

 

もじもじしていて視線があちこちにいってる事から、この子がすごく緊張していることは明白だった。

おそらく、福祉チームの案内役を頑張って務めようとしてくれているのだろうが…残念なことに、案内役はもういる。

でも、せっかく頑張ってくれてるみたいだし少しは付き合ってあげよう。

 

「"もしかして、案内役になりたいのかな?"」

「ふぇっ!?あ、あぅ…その…まぁ、はい…ここのリーダーは今出払っちゃってて…だから僕が、代わりに先生の案内役になろうかと…」

「"そっか、偉いね。じゃあお願いしようかな。"」

「…!いいんですか!?僕、喋るの苦手で…全然上手くできないかもしれないのに…」

「"大丈夫だよ。チャレンジするだけで偉いからね。ミゼちゃんも、いいよね?"」

「…はい。時間には全然余裕がありますから。大丈夫です。」

「"よし、じゃあ決まり!よろしくね。"」

 

手を差し出し、握手を求める。すると、最初は私の顔と手を交互に見て困惑した表情を浮かべたものの、少しして決心したような表情で手を取ってくれた。

 

「…は、はい。僕、頑張ります…!その…僕、『青浪 カーラ(アオナミ カーラ)』です。2年2組で、福祉チームの副研究リーダーです。よろしく、おねがいします。」

「"うん、ありがとうね。"」

 

 

「…ここが、福祉チームの一番の名物…"学食室"です。名前の通り、学食を売ってる場所で、毎日いろんなチームの生徒が、朝昼夜に限らずここを利用しています。お昼の福祉チームは特に人が多いので、僕はいつも他の場所でご飯を食べてるんですけど…」

 

「ここは、福祉チームのメインの研究室…通称"コーヒールーム"です。コーヒーメーカーが10台もあって、いつもコーヒーの匂いがするのでそう呼ばれてます。研究といっても、このチームは立案が主なので…どっちかっていうと、会議室って言った方が正しいのかもしれません。」

 

「ここは園芸室です。自然環境をとことん追求した、学園内で最も大きい自然シミュレーションルームです。実験用の植物を摘んでいく方もいれば、部活の活動でここを拠点にしている方も…もちろん、自然が好きで鑑賞に来ている方もいます。僕も、休みたい時はたまに来るんですよね。」

 

自信が無いと言っていた割に、カーラの説明はとてもハキハキしていて分かりやすかった。

きっと、自分では分かっていないだけでとても真面目で優秀な子なのだろう。

 

「…案内するべきことは、これで終わりです。えっと…ご清聴ありがとうございました…?」

「"うん、こちらこそありがとう。すごく分かりやすかったよ。"」

「わ、わ…!?せんせっ…頭撫でられてっ…!」

 

思わず、犬を相手にするみたいにカーラの頭を撫でてしまう。

 

「わぅ…は、反則ですぅ…僕、撫でられるとっ…」

「"遠慮しなくていいよ。ご褒美だと思って、ね?よしよし。"」

「…く、くぅ〜ん……」

 

最初は遠慮してたカーラも、今ではすりすりと自分で頭を擦り付けている。

なんだか無限に撫でられそうな感じだ。

 

「……はっ!ま、また僕我を忘れてっ…」

「"……はっ。つい撫でるのに集中して…"」

「………」

「"………"」

「…え、えっと…えへへ…その、ありがとうございます。僕、頭撫でられるの好きで…」

 

ぺこり、と丁寧にお辞儀をしてくれる。ただ撫でてただけなのに。

 

「その…えっと、リーダーにも、先生のこと伝えておきます。先生、また来てくださいね。今度はリーダーにも予定を調整してくれると思うので…」

「"ありがとう、カーラちゃん。…そういえば、福祉チームのリーダーのお名前って何かな?"」

「あ…すみません、先に説明しておくべきでしたね…」

「"いや、君のせいじゃないよ。私が先に調べておけばよかっただけだから。"」

「…先生は、お優しいですね…福祉チームの研究リーダーは、3年生の『蒼光 コウ』先輩です。去年は別の方がリーダーをやってて、本来はその方が続投するはずだったんですけど…突然どこかに行ってしまって、代わりに成績が1番良かった蒼光先輩がリーダーになったんです。」

「"なるほど…前のリーダーは、失踪したの?"」

「いや、ちゃんと伝言を残してから行ってしまいました。"家に帰るための旅に出る"…とか。それからは、連絡もついてないです。」

「"…へぇ…とにかく、ありがとう。コウにもよろしくって言っておいて。"」

「…はい、任されました…!」

 

にっこりと、彼女なりの特大の笑顔を浮かべる。

そんな彼女を後にして、福祉チームを去る。

次は下層、説明の通りなら"神秘の研究"をメインにする層。

どんな子に会えるか、楽しみだ。




次回:ドキドキ学園案内ツアー 〜下層編〜。ネタバレ:やっぱり本物のリーダーとは会えない。
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