Blue Archive -数多の未来の追求者-[ブルアカ×LobotomyCorporation] 作:シータさん
大変お待たせしました(3ヶ月ぶり)。受験やら入学準備やら鉄道のターン詰めやらで忙しくて後回しにしているうちにこんなに期間が…待ってくださった方々、申し訳ありません。
これから頑張って更新していきます。目指せ月2更新。
再び中央本部に戻り、次の部室へ。
正確には、中央上部から懲戒上部へ行き、そこから懲戒下部、そして中央下部に来たような形になっている。
上下移動は基本エレベーターなので疲れはそこまでだが、やはり他の学園とは違うせいでなかなか慣れない。高層ビルを回っているような気分だ。
「このあたりには『シアタールーム』があるんです。映画みたいな映像を映し出すためのシアターとしても利用できますし、切り替えることで演劇が見れる劇場にもなるんですよ!たまーに映画の上映会があったり、演劇部さんが演劇を披露したりしてくれます。」
「"演劇部…そんなのもあるんだね。演劇の種類は?普通の劇?それともオペラ?"」
「いろいろやりますね…前回の演劇では、『狂えるオルランド』っていう題目のミュージカルをしてました。暗いお話だったけど、すごく面白かったです。演技力もすごくて…」
「"へぇ、そんなにクオリティ高いんだ。気になるなぁ…タイミングが合ったら見てみようかな。"」
そんな感じで会話していると、私たちを見ていた生徒の1人に声をかけられる。
真っ赤な口紅に真っ赤な靴、豪勢なドレスを着た、お淑やかでどこか狂気も感じるような子だ。
「あなた達…今、演劇部の話をされましたか?」
「"え?あぁ、うん。"」
「フフフッ…ということは、あなたも演劇に興味がおありで?」
「"あ、えっと…その、見てみようかなとは思ってるけど…うわっ!?"」
すると、突然右手を握られ大きく引っ張られる。
急な引力に身体は抵抗できず、その慣性によってそのまま前方へ倒れ込み…
そして、風景が静止する。
「…あら、お上手。その怯えた表情…堪りませんわ。アハハハッ…」
私の身体は彼女によって支えられることで地面に落ちることを阻まれていた。
背中は地面に向き、視線は天井へ。
ほぼ45°ほどの角度を保ったまま、右手を引っ張られ、左手を腰に当てがわれ奇跡的なバランスとともに固定されている。
「"わっ…あ…えっ…?"」
「…自己紹介致しましょう。私の名は『
再び右手を引っ張られて、支えられた状態を解除させられる。
あまりにも突然の出来事に、声がつっかえてしまう。
この学園の子はみんななぜこうも驚かせるのが好きなのだろうか…
「先生、私たちの演劇部にどうやら興味がお有りなら…是非、部室にいらしてください。私を含め数人は今も部室内で練習しておりますので。」
「"そ、そっか…なら、お邪魔しようかな。"」
「ありがとうございます。では、ご案内して差し上げましょう…こちらへ。」
再び手を引かれ、まるでエスコートでもするように部室へと連れていかれる。
所作の一つ一つが丁寧で、育ちが良いのだろうと推測できる。
「どうぞ、お入りください。」
「失礼しま〜す…」
部室の中は、簡易的なステージが奥にありその手前に小道具などを置くスペースがある、まさに劇の練習のために作られたような空間だった。
ある程度明るさは担保されてるものの、やはりステージ側が明るくされていて相対的に手前側は暗くなっている。台本を読み込んでいるであろう生徒の視力が心配だ。
「…デンス。また客を連れてきたんですか?」
すると、バレエの衣装を着た生徒が呆れ顔で奥から歩いてくる。
「ええ。廊下を歩いてたらまた面白そうな方にお会いしたので、せっかくなので招待しましたの。」
「はぁ…すみません、本当にデンスは客を勝手に連れてくるのが好きで。」
「"大丈夫だよ。私も視察で来てるし、生徒たちの生活はできるだけたくさん知っておきたいからね。"」
「…もしかして、貴方はシャーレの…?」
「"うん、先生だよ。"」
そう言うと、目の前の子の顔が少し明るくなる。まるで待ってましたとでも言わんばかりの顔だ。
「あらまぁ…!貴方が先生なのですね…!私、2年9組の『
「"あぁ、そんな改まんなくても大丈夫だよ。お互い気楽に行こう。"」
「あっ…すみません、ちょっと盛り上がっちゃって…」
「レエヴァは感情のコントロールがなってませんわねぇ。そんなようでは、今年のダンスコンクールも私が獲ってしまうかもしれませんわね〜…ウフフ。」
「むっ…デンスは何も分かってません!バレエは感情を突き動かす踊りです、むしろ感情を押し潰して相手ばかりに合わせる社交ダンスを人の心を動かす芸術と果たして呼べるのかどうか…」
議論がヒートアップしていく。どうやら2人はライバルらしい。
本気でぶつかり合える仲間がいるのはいいことだが、今は遠慮願いたいところだ。
「"ま、まぁまぁ…とりあえずレエヴァさん、普段どんなことをしてるか案内してもらえないかな?"」
「あっ、はい!」
「ん…私が連れてきたお客ですのに…」
「デンスは人相が悪いですからね〜。それはそれとして、この演劇部では名前の通り様々な演劇などの練習を行い、定期的に発表などの活動をしております。演劇といっても一口にあれこれと決めるわけではなく、ある日はオペラ、ある日はバレエ、ある日は劇、などなど…一意にジャンルを決めることはなく、ある程度自由にやらせていただいております。発表は不定期ですけど、だいたい1、2ヶ月に一回くらいを目処にさせていただいてます。生徒会様から手厚く補助をいただいているのもあって、毎回高クオリティなものを維持できてます。部員もみんな協力的かつ意欲的ですし…私も身を置かせていただいて、とても楽しい日々を送れています!」
100点満点の部活紹介だ。他の部活もそうだけど、ここの子は紹介も上手い。
「"なるほどね、説明ありがとう。やっぱり結構大規模なんだねぇ。"」
「当然ですわ。学園内でも最大規模の部員数と部費ですし、校外活動も多くやらせていただいておりますので。演技力に関してももはや一流と言っても過言ではないですわ。」
「自分で言うのも恥ずかしいですけど…実際、劇のクオリティはかなり高いと思ってます。部員もみんな一生懸命練習してる生徒が多いですし、何よりリーダーはあの『模倣の天才』ですからね。」
「"…『模倣の天才』?"」
「はい、リーダーは一目見たものであれば仕草や声のトーンも全てコピーできるんです。有名な劇役者さんの動きもそうですし、登場人物のモチーフなどをコピーすることでより演技に説得力を持たせることだって…リーダーにだけは、誰も勝てないと思いますよ。」
レエヴァの目が分かりやすく輝いている。きっとみんなの憧れなんだろうなとひしひしと感じられる。
是非会いたいところだが、いつか会える日は来るのだろうか。
「"ちなみに、名前は?"」
「名前?それは…『無意刃 ガナ』ですよ。」
「"…ガナって、ALEPHの?"」
「?…そうですけど、それがどうか…?」
「"…あぁ…いや…"」
やっぱ会いたくないかもしれない。
「"…それで、他に何か紹介したいこととかはある?"」
「ふむ…特にはございませんわ。見ていただいたものが全てですし、裏方に面白いものなんてあまりありませんもの。」
「そうですね。演劇部の華はやはり本番の劇ですから、お時間があれば是非見にきてください。」
「"うん、そうすることにするよ。じゃあそろそろ行こうかな、またね。"」
「えぇ、またいつか。」
「今日はありがとうございました!」
そうして2人に見送られながら、部屋を出た。
今度時間が空いてたら、演劇も見てみよう。
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演劇部の部室を出て、次に福祉チームへと向かう。
園芸室を拠点にしている部活があると前にカーラに教えてもらえたので、行くことにしたのだ。
今度は落ち着いた子が多い部活だと嬉しいな…と期待しつつ、件の部屋の目の前に立つ。
「"ねぇミゼ、ここにいるっていう部活はどういう子が多いの?"」
「やっぱり植物関連のことが好きな人が多いですね。あとは医療系の活動をしてる生徒が薬用の植物を手に入れるために頻繁に出入りしてます。あまり目立った事件は起こってない…印象なので、変な生徒に関わることはないと思います。」
「"そっか、よかった…ようやくリラックスできそうだね。"」
「そうですね。私もなんだか疲れちゃいました…」
大きな扉のノブに手をかけ、開く。
すると、開いた扉の隙間からほのかに自然の香りが漂ってくる。
そして、開き切った瞬間…
「"…わぁ…!"」
すぐそこに広がっていたのは、まさに大自然。
天井や部屋の狭さをまったく感じられない広大な空間の中を、さまざまな色形の緑が埋め尽くしている。
素人目でもさまざまな種類の草木が生い茂っているのが伺え、その光景はまるでパレット上の絵の具のようだ。
「"すごい…綺麗だ…!"」
「ですよね〜。私もリラックスしたい時はここに来ることも多いです。この春の陽気みたいな心地よい暖かさもまたいいんですよねぇ。」
「"いやぁ、いいところを知っちゃったなぁ…"」
のびのびとした気分で辺りを見回してると、生い茂った木の下に見覚えのある生徒がいるのが見えた。
「"やぁ、マツカ。君もここによく来るのかな?"」
「あら、先生。奇遇ですわね。こんなところでもお会いするなんて。」
白雪 マツカ。コントロールチームでも会った、上品な口調でとても社交が上手い子だ。
バスケットを左腕にかけて木の下にいる姿は、その美麗なドレスも相まってまさに白雪姫のような風貌だ。
「今はこの子の果実を摘んでるところですの。部活で育ててきて、今が実りの時期ですから。」
「"そうなんだ、じゃあ君の部活は植物関連?"」
「ええ。私の所属は『植物・生物研究部』。その名の通り、植物や生物について研究して今後に活かすための部活ですわ。他にも何人かと一緒に来たので、探してみれば他の部員も見つかるかと。」
「"なるほど。本当にいろんな部活があるんだな〜…"」
また一つ、木に成る林檎がもぎ取られる。どれも綺麗な赤一色で、ハリが良い。
「"それにしても、美味しそうな林檎だね。ここまでのものを学校で、しかも室内で作れるなんて、すごいね。"」
「ふふ、そうでしょう?でも、食べてはいけませんよ。この林檎は生まれつき毒を有するのですから。」
「"…毒?どうしてそんなことを…"」
「先生、毒と薬は表裏一体なのですよ。」
そういうと、おもむろにマツカがカゴから林檎を一つ掴み取る。
そして、口元に運ぶと大きく口を開き林檎に齧り付いた。
「"えっ…マツカ!?"」
「んっ、んっ、んっ…」
「"それ、毒なんじゃ…!"」
「…ふふっ、随分慌ててらっしゃる…大丈夫ですよ。上手くいってれば、ですけど。」
「"ど、どういうこと…?"」
「毒とは、悪い方向に転じた薬…たとえトマトでも何トンと食べれば死んでしまいます。なればその逆も然り…毒も用法を守れば薬となるのです。…まぁ、これは普通の人が食べれば死んでしまうものですが。」
「"はぁ…って、え?"」
「この林檎をそのまま食べられるのは私だけですわ。私の神秘の力…『いかなる成分も薬、あるいは毒へと転じさせる力』。それによってこの林檎の毒を薬に変えてます。一度変えれば他の方に投与しても問題はないので、この力を利用して研究に役立てていますの。」
「"な、なるほどねぇ…でも、先に言って欲しかったなそれ…"」
私がそう言うと、マツカがクスリと笑う。
そして、齧りかけの林檎をそこらにほっぽり出してしまう。
「"…捨てちゃうの?"」
「一度でも口を付ければあとは腐っていくのみですわ。そんなことになるくらいなら肥料にした方がマシ…そうではないこと?」
「"そっか…"」
「そんなことより、他の部員も探してみましょう。せっかく来てもらったことですし、私の部活もしっかりとアピールしておかないと。」
「"分かった…じゃあ、案内よろしくね。"」
「ふふ。では、こちらへ…」
林檎の木の側から離れる。
そして、自分たちの前にマツカが立つ。先鋒に立って案内をしてくれるみたいだ。
もちろん、ついていくことにした。
――――――――――――――――――――――――――――
しばらく歩くと、かなり開けた場所に着いた。
真ん中には大きな噴水があり、ベンチも何個かある。ところどころで生徒たちが座って談笑したりちょっとした軽食を食べたりしている。
「今はみんな散らばってしまってますけれど…私が一言アナウンスすればすぐに集まるはずですわ。みんな大人しくていい子ですもの。」
そう言うと、スマホを取り出し何かを打ち込み始める。
そうしてから何分か経つと、人の少なかった広場に続々といろんな生徒が集まり始めた。
おおよそ50人はいる。
「皆さん、集まりが早くて私も嬉しいですわ。突然の呼び出しだというのに…さて、呼んだ理由は分かっていますわよね?シャーレから、先生がはるばるお越しになってくださいましたわ。」
「"えっと…よろしくね、みんな。"」
私が一言挨拶をすると、みんな揃ってお辞儀をしてくれる。
中にはわざわざ言葉で「よろしくお願いします」と言ってくれる子までいる。ここまで礼儀正しい子が揃った部活も珍しい。
「"みんな植物研究部の子なんだよね。ということは、みんな植物が大好きなのかな?"」
そう聞くと、ちらほらと声が上がり始める。声には出さずとも、うなづいてくれる子もおり、結構嬉しい。
やっぱりマツカのいう通り、礼儀のいい子が多いのだろうか。
とにかく、こういうときは質問するに限る。先生らしく、数人ほど指名していこう。
「”じゃあ、そうだなぁ…君!君はどんなことをしてるのかな?”」
「ひゃ、ひゃい!?」
手始めに、八重歯とふわふわのファーが特徴的に生徒を指名して質問してみる。
こうやって大勢の前で注目を浴びるのはあまりないようで、緊張してるみたいだ。
「え、えっと!…ぼくは、食虫植物が好きで、だからここでそういう植物について学んでます。」
「”なるほどなるほど…ありがとうね。じゃあ、君は?”」
次に、桜の模様の着物を身に着けた少し大人びた生徒。
指名をしても、何も動揺せずに妖艶な笑顔を貫いている。
「…わらわは、植物どもへの栄養供給について研究しておる。より効率の善い方法が見つかれば、花もより美しくなるはずだからのう。ふふふっ。」
「”もしかして、桜が好きなのかな?”」
「おお、よく分かったな。やはり、この風貌じゃ丸わかりかのう?」
「”観察力には自信があるからね。それじゃあ、次は君!”」
次に、赤髪に少々特徴的…というか、変?な服装の生徒。
指名すると、待ってましたと言わんばかりに目を輝かせ口角を上げる。
「ほう、私を指名するなんてお目が高い!ウフフっ。私はねぇ…気持ちヨクなれるもの、かな?」
「”…ど、どういうこと?”」
(…戦闘時のアドレナリン量を調整する薬剤の開発が彼女の研究ですわ。ごめんなさいね、彼女いつも誘惑的なこと言って…)
(”ああ、なるほど…”)
マツカが的確に耳打ちしてくれた。
「”…ありがとうね、みんな質問に答えてくれて。少しだけだけど、この部活のことが分かった気がするよ。”」
「こちらこそ、先生と顔合わせができて光栄ですわ。みなさん、先生に多大なる拍手を!」
_パチパチパチパチ!
マツカがそういった途端、部員のみんなが大きな拍手をしてくれる。
うれしいが、少し恥ずかしい。というか、ここでこんなに盛大な歓迎をしてくれた場所も初めてじゃないか?
「”わ、わわ…こんな歓迎してくれるなんて…みんな、ありがとう!”」
「これからも、何か相談があれば…なんなら、お暇なときにだって、いつでもいらしてくださいな。私たちはそこまで活発でもないですし、歓迎する準備はいつだってできてますもの。」
「”それじゃあ、また来ようかな。部活の活動は、ここ以外でもやってるでしょ?他に部室みたいなの、あるかな?”」
「ええ。福祉下部の718教室が主な部室で、放課後はそこに集まっていますわ。隣接している研究室を貸していただいてることもありますけれど…まあ、もし用があればここか、718に行けばたいてい誰かいますわ。」
「”分かった、ありがとう。じゃあ、そろそろ行くよ。”」
「ええ、ではまた逢う日まで…」
そう告げると、みんなが礼をして見送ってくれる。この学園どころか、キヴォトス全域で見ても有数の礼儀正しさだ。
気持ちよく見送られながら、ミゼとともに植物園をあとにした。
次回:ようやく物語が動き出します。多分。
大学はなんやかんやでうまくやっています。前期の間はそこまで忙しくなさそう。
ただ、夏休みを挟んで後期になると少し怪しい。行き帰りとか空いた時間で少しずつ進める形になりそうです。それまでにできるだけ書き上げておきたいですね…
今回も感想や評価などしていただけると参考と励みになります。お時間があればぜひ。