もしもイーサンがクイーン・ゼノビアに乗っていたら   作:秋塚翔

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原作本編でも、ウーズや他クリーチャーの一部は別に正式名称を劇中で明かされている訳ではないので、更に何も知らないイーサンに合わせて「怪物」と表していましたが、ここを機に地の文では名称を正したいと思います。それを了承の上ご覧いただければ幸い。

前回がオリキャラ回なら、今回はオリ〇〇〇〇回。


ブラスター・チャンク

 ソラリウムを後にしたイーサンたちは、ホールへと戻ってきた。

 視覚的に開けていて安全そうなそこで腰を落ち着け、二人は改めて対面する。

 

「あの、ジャケットありがとうございました」

「礼はいいよ。困ったらお互い様だ」

 

 羽織らせていた自身のジャケットを返され、それを受け取るイーサン。プールに飛び込むため邪魔となるので脱いだものだが、お陰で僅かながら役に立った。

 ジャケットを返した少女――シンシアが徐に身だしなみを整える。茶に近い髪を撫で付け、眼鏡を掛けた小顔を細腕で拭う。その所作はいかにも素人な様子であり、これまで遭遇してきた上等そうな乗客や船の関係者とは異なる、至って一般人らしい雰囲気だ。言うまでもなく、件のヴェルトロ構成員とやらでもないだろう。

 お互い落ち着いたところで、それぞれ情報を交換し合うことにする。せっかく出会えた人間だ。この状況下、少しでも分かることが欲しいのは共通の意見であった。

 

 まず改めての自己紹介。

 シンシア・コールマンは有名大学の女学生だという。齢はイーサンと一つ年下の19歳。

 学校の成績優秀者に与えられる褒賞で、このクイーン・ゼノビアの乗船券をもらったらしい。『一人限定』が気になったが、特に誘うようなクラスメイトもいなかったため、後学を兼ねて体験ツアーに参加したけれど、騒動に巻き込まれて今に至っているようだ。

 ――有名校となれば褒賞も豪勢なのだろうが、それがまさか過激なテロ組織の工作活動の一環だと考えたら、なんとも皮肉な話だった。

 

「へえ……生存者を探してるんですか」

「ああ。そうすれば船の通信担当が救難信号を送ってくれる約束をしてくれた。だけど周りはバケモノだらけで、その通信兵長以外はアンタにしか出会えていないんだ……」

 

 イーサンも素性を明かし、これまでに得た情報を伝える。

 このクイーン・ゼノビアに乗っていた乗客は、かなりの人数がいたはずだ。それに加えて船員もその客への応対や、船の制御などで相応の人員がいるはず。あの騒ぎでそれらが広い船内に散り散りとなったため、そう近くにはいないのかもしれないが、無事なら必ず何処かに避難しているだろう。シンシアの存在が、それを証明してくれている。

 そのシンシアは、イーサンの話を聞いてふと考え出す。

 

「……それなら、騒ぎの中で船員の一人が何人かの乗客たちを誘導しているのを見かけました。確か、『カジノから裏道を通って安全な場所に行きましょう』と言ってましたが」

「本当か? ありがたい情報だ」

 

 通信兵長の言葉からも窺えたが、どうやら船員全てがヴェルトロに関係してるのではないのかもしれない。自分も含めた乗客も騙されて連れてこられたことから、船員の一部もまたこの客船を主導しているのがヴェルトロとは知らずに働いているのだろう。……今のこの状況となっては、その事情も意味はなくなっているが、とイーサンは頭を過らせる。

 それはともかく。これからの目標が決まった。

 

「よし、ならそっちに向かってみるか。シンシアも一緒に来るか?」

「い、いえ。私は私で他の乗客を探してみようかと。こういう時は手分けした方が効率がいいですし。……これだけ広い船内では一日じゃ回り切れないかもしれません」

「それはそうだが……俺はともかく、一人で大丈夫なのか?」

 

 純粋な懸念に、しかしシンシアは控えめに微笑んでレディースの拳銃を取り出してみせる。それを軽く構えた様は、素人のイーサンから見ても妙に堂が入っていた。

 

「こう見えて私、大学の先輩の誘いでサバイバルゲームのクラブに所属しているんです。学生の活動だけど結構本格的なところで、それまで高校(ハイスクール)では演劇部の脚本書いてくらいなんですけど、今ではすっかり銃の扱いにも慣れてしまいました」

「……マジかよ」

 

 今の学校って凄いな、と素直に驚くイーサン。

 そうしてシンシアとは一旦別れ、ひとまず話に聞いたカジノに向かうのであった。

 

 

 

 

 

 

 

 

 

 

「――無駄に頭使わせやがって」

 

 カジノに入るまでも少し手間取ったが、その中でもかなり手を焼かされた。

 普通の客船であったなら金の飛び交うギャンブル場になっていたのであろうが、誰一人いない今は豪奢な装飾も逆に寂しいカジノスペース。中央の噴水内で観賞魚が泳いでいるのが、せめてもの名残だろう。

 そこでイーサンは、裏道というものを探し、それが『VIPルーム』にあると突き止める。

 問題はそれで、ただ鍵を見付けて開ければいいものではない、特注の施錠がされていた。しかし、幸いにも同じようにVIPルームに入ろうとした従業員のメモがあり、そこからカジノコインで特定の重さ分をVIPルーム前のカジノガールのパネルに乗せればいいと知る。

 だが都合よく落ちているコインはないので、イーサンは一枚きりのコインを稼働してるスロットで増やすしかなかった。最悪、壊して手に入れることも考えたが、一般社会人の彼には金持ち向きなカジノでそう行動できず、バカ正直にスロットを回す。これを上手くやれる人間はおかしい。

 無事十分なコインの束が手に入り、カジノガールパネルの盆にそれを置く。これも面倒で、単純ながら地味にややこしい計算問題にイーサンは若干辟易。それを解いて先述の悪態だった。

 

「! ここか」

 

 ようやく入室したVIPルーム。その豪華な造りは二の次で、イーサンは大きく開かれた床の鉄扉に視線をくれる。

 恐らくここがシンシアの見た船員が言っていたという『裏道』だろう。ここから避難したのか。

 イーサンは豪華な部屋に反して、そこから通じる冷たい空気の床下に潜り込む。

 

「船員用の通路か……?」

 

 サビの浮いた円筒状の通路を進んでいく。良く見れば、幾つもの真新しい足跡があるのが分かる。確かに乗客が逃げて来たところであるのは間違いなかった。

 しかし既にここにはいないようだ。イーサンは更に奥へと歩いていった。

 そこで、会いたくないものと出くわしてしまう。

 

「っ、あれは……!」

 

 気味の悪い紅白色の上体を膨張させ、ふらつきながら佇む怪物(ウーズ)

 それはカジノスペースに入る『鉄錨の鍵』を探す中で、何度か遭遇したタイプと良く似ていた。近付いたり攻撃を受けたら爆発する、打ち上がったクジラの死骸のようなヤツ。イーサンはそれにかなり手こずらされていた。

 けれど、タネが分かれば問題ない。イーサンは距離を詰めて処理しようとする。

 と、その時だった。

 

 ――ッブバアァァァ!!

 

「ぐあァっ!?」

 

 適切な距離感で銃撃しようとしたその瞬間、突如爆発するウーズが体躯の一点のみを膨らませたと思ったら、こちらに向けてあの爆発を放ってきた。

 油断したイーサンは不覚にもそれを喰らってしまう。ダメージに堪らず倒れ込む。慌てて立ち上がって見ると、これまでは全身炸裂して四散していたはずの爆発ウーズは、体液を噴いた箇所を泡立つように修復させながら、平然とその場で立ち尽くしていた。

 

「くそッ! ふざけやがって!」

 

 すかさずイーサンは銃を構えて発砲。爆発ウーズはそれに対抗するように、フラフラとした足取りで向かってくる。

 しかし最初は甘く見て意表を突かれてしまったが、この爆発ウーズもその攻撃パターン以外は他のそれと変わらないのか、一定の距離を取ったら対処しやすくなった。噴射される指向性爆発も、来ると分かればやはり問題ない。予期して回避し、または腕でガードしてやり過ごし狙いを付けて撃つ。

 やがてこれまでと同じく、数発食らったところでウーズはあえなく爆発四散してしまう。

 

「っく、はあ……ッ」

 

 撃破するも思わぬ負傷を受けた。荒く息を吐き、イーサンはひとまずリロードすると、道中で確保しておいたハーブを取り出す。そして惜しみなく使用。

 

「――よし」

 

 依然読んだことのある『植物学』にあったように、疲労回復と自然治癒能力がある薬草の力に負傷が癒される。

 銃を構え直し、やはり油断ならないバケモノだらけだと再認識したイーサンは、今一度警戒を高めながら先の道を往くのであった。




原作イーサンの「よし」は真相知った後なら納得だけど、これ本人は何も自覚してない時から言ってるんだからやっぱイーサンはおかしいって(今さら)
今作ではまだそうではないので、リベレにおける無調合で全快するハーブの方がおかしい判定。

●ウーズ【ブラスター・チャンク】
ウーズの一種であるチャンクの特殊個体。本来なら外部からの刺激で全身を爆裂させるチャンクだが、この個体はそれを一点での指向性爆発を行うことができるようになっている。それにより損壊は最小限となり、ウーズ固有の再生能力で損傷個所は修復され、また爆発可能になる特性を持つ。
ただしそれ以外は従来のチャンクと変わらず、比較的攻撃性が増しただけで撃破方法は同じ。生体構造上連発回数には限度があり、一定回数以上は体液の減少によって爆発不可となってしまう。

元々は親交のある放仮ごdzさんのバイオ二次作品『BIOHAZARD VILLAGE【EvelineRemnants】』において、「リベレ編にこんなのどうか」と提案したオリジナルクリーチャーの一体でした。しかし採用には至らなかったのでせっかくの機会だから地産地消したものです。
オリジナルエネミーだけど、流石にあちらのようにはできないので、ちょっと異色の雑魚敵くらいの扱いで。思ったより出番作れず、少しばかりタイトルの仰々しさ負けした感じなのは不甲斐ない限りですわ…

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