ゲーム魔女の現代観光   作:龍翠

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17 サキ様のお父さん

 

 この世界、神様たちが住まう神域に来てから、一ヶ月。わたしが大人しくいていたからかテレビでわたしのことが取り上げられる機会もかなり減ってきた……。

 こともなく。

 

『ご覧下さい! 魔女が! 魔女がまた現れました! 遭難していた少年を抱えて現れました!』

 

「ティルエル?」

「すみません……」

 

 夕方のリビング。テレビで流れているのは、朝のニュースの映像。わたしが、山で遭難してしまった神様を助けたところ。

 神様たちが魔法を封じている。だから、何かあった時は、神様といえども命を落とす。それを知ってから、わたしは見て見ぬ振りができなくなってしまった。

 わたしが気付いて、助けられそうなものは助ける。全員は無理だけど、できるだけ。そんなことをしていたからか、未だにテレビでわたしのことが流れてる。

 サキ様の話だと、そのうちみんな飽きるから忘れてしまうはず、とのことだったのに。

 

「普通はね、みんな飽きて報道されなくなるんだよ。でもこんな、頻繁に話題提供なんてしていたらね……」

「で、でも! 無視なんてできなくて……! 助けたくて!」

「うん。それはとてもいいことだと思う。とっても良い子」

「あ……」

 

 サキ様から撫でられる。それがなんだか、とても嬉しくて。むしろこれをしてほしいから、がんばっている、のかもしれない。

 

「目立ちたくない、とはもう言わせないけど」

「あう……」

 

 それはそれとして、もう少し方法は考えるべきかも。確かに、悪目立ちばかりしているような気がするから。

 

「ところで、ティルエル」

「はい」

「ずいぶんと待たせちゃったけど……。ようやく連絡が取れたよ」

「はい?」

「あ、忘れてる」

 

 連絡……。誰にだっけ。そういえば、そもそもここにずっと滞在しているのもそれを待っていたからで……。

 

 あ。

 

「サキ様のお父さん……!」

「そう!」

 

 詳しい理由は分からないけど、サキ様はわたしにお父さんを紹介してくれると言っていた。離れて暮らしている上に今はとても忙しいから連絡すらなかなか取れないとは聞いていたけど……。まさか、一ヶ月かかるなんて。

 あれ、そういえば、サキ様のお父さんに会ったら、わたしはここを追い出される……? いや、でも、そもそもサキ様にずっとお世話になる方がだめなわけで……。で、でも、でも……。できればもう少しここで……。

 

「おーい。ティルエル?」

「はっ!?」

 

 いけない、変なことを考えてしまっていた。落ち着けわたし。

 

「大丈夫?」

「大丈夫です!」

「本当かな……?」

 

 あまり深く気にしないでください。

 サキ様は小さく咳払いを一つ。リビングの椅子に座り直した。わたしもサキ様の対面で姿勢を正す。これから、どんな話がされるのか。ちょっとの期待と不安。

 

「まず……。どうして私がお父さんを紹介したいか」

「はい」

「これね。先に言っちゃうとティルエルが落ち着かないと思って黙っていたんだ」

「はい?」

 

 わたしが……落ち着かない? 確かにこの世界に来てわたしはちょっと落ち着きがなかったという自覚はあるけど、それでもそんな言い方をされるのは心外だ。

 わたしは、魔女だ。冷静沈着が大事。そう、常に落ち着いて……。

 

「私のお父さん、運営の一人なんだよ」

「ウンエイ様!?」

 

 ウンエイ様! わたしの世界を作った神様! す、すごい! まさかサキ様のお父さんがウンエイ様だったなんて! え、紹介、ということは、ウンエイ様に会える!? どどどどうしよう失礼のないように……。

 

「落ち着け阿呆」

「いたい」

 

 サキ様にチョップされてしまった。頭がちょっと痛い。右手でさすりながら、いつの間にか立ち上がっていたので座り直す。

 サキ様は呆れたようなため息を、ものすごく大きくついた。ちょっと恥ずかしい。

 

「まったく……。こうなると思ったよ……」

「す、すみません……」

「予想はしてたけどね。それよりも……。運営についてだけど、ティルエルはどこまで知ってるの?」

「わたしの世界を作った神様です!」

「やっぱりか……。私がそう教えたからね……」

 

 何故かサキ様は頭を抱えて、でもすぐに気を取り直したように言った。

 

「まず……。運営というのは、個人の名前じゃないんだよ。組織の名前」

「組織……。つまり、何人もいる、ということですか?」

「そう。運営って一言で言っても、その中には開発とか企画とかいろいろあって……。たくさんの人がいるってこと」

「そうなんですね……!」

 

 世界を作るだなんていくら神様でも一人でできるとはなかなか思えなかったけど……。なるほど! たくさんの神様が力を合わせて世界を作ってるんだ!

 さすがは、神様。わたしたちの世界だと、魔法の研究を集まってすることすら難しいのに。だって、みんな自分の研究は隠したがるものだから。

 

「サキ様のお父さんはその運営……ですか? その一人ということですね」

「一人というか……。責任者?」

「え?」

「まあ、うん。リーダーとか、そういうの。難しい役職名があったけど、それは忘れちゃった」

 

 責任者? リーダー? つまり……一番、上!? それは、かなりすごいことなのでは……! サキ様のお父さんがわたしの世界を作った、つまりそういうことでは!?

 

「すごいです……! お、お話は……お話はできますか……!?」

「う、うん……。お父さんに説明したら、是非とも会いたいって言われたから……」

「やった……!」

 

 ついにウンエイ様とお話しできるんだ……! これほど嬉しいことが今まであっただろうか! いやない! ないったらない!

 

「い、いつお話しできますか!? 今から、ですか!?」

「落ち着きなさい。お父さんはね、東京で仕事してるの」

「東京……とは?」

「新幹線で二時間ぐらい……?」

 

 新幹線。確か、かなり速い乗り物だったはず。わたしが空を飛ぶよりもずっと速い乗り物だ。あの乗り物を使っても二時間かかるなんて……。サキ様のお父さんはかなり遠くの場所で働いてるみたい。

 

「すぐには会えそうにありませんね……」

 

 会いたい。今すぐ会いに行きたい。でも、それは難しそう。わたし一人でも行きたいところだけど、新幹線の乗り方が分からない上に詳しい場所も分からない。

 わたしがしょんぼりと肩を落とすと、サキ様はどこか楽しそうに微笑んだ。

 

「大丈夫だよ。明日には会えると思う」

「え」

「一緒に行こう。ハナは友達の家にお泊まりに行ってもらうことになったから」

 

 つまり……。ウンエイ様に会える!

 

「よ、よろしくお願いします!」

 

 わたしがサキ様に頭を下げると、サキ様はしっかりと頷いてくれた。

 ああ、楽しみだなあ……!

 




壁|w・)どうして連絡が取れなかったのか。
どこぞの魔女があっちこっちでやりたい放題していたからです。
一応連絡はしていましたが、ティルエルの話題が出る前に忙しくて電話を切っていた、という状態。
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