ゲーム魔女の現代観光 作:龍翠
ウンエイ様とのお話の後は、サキ様が言うところの観光をすることになった。今日は近くの宿に泊まって、明日の朝に新幹線で帰ることになるらしい。
「宿って。いや間違いではないんだけど……。ホテルの方がいい、かな?」
「ホテル、ですね」
訂正、ホテルに泊まることになってる。
そのホテルでウンエイ様ともう一度お話をすることになってる。ウンエイ様は偉い神様に日程の調整を依頼してくれているみたい。
サキ様に任せたとはいえ、来週の土曜日ってかなり近すぎるような気がするんだけど……。大丈夫なのかな。失礼じゃないかな。
「あのね、ティルエル」
「はい」
「私たちは時間を作って付き合ってあげる立場なんだよ。私たちに気を遣えってやつだよ!」
「ええ……」
それで本当にいいのかな。わたしには神様の関係性がまだ分からないから、サキ様を信じるしかない。サキ様ならきっと安心だ。
「さてと……。観光する、なんて言ったけど、あまり時間もないんだよね。もうすぐ夕方だし」
「はい」
「というわけで。分かりやすく、すっごく高い場所に行こう!」
そう言ったサキ様に案内された場所には、信じられないほどに高い建物があった。
周りの建物、ビルも決して低いわけじゃない。それなのに、そんなビルよりもずっとずっと高い建物。
「これがこの国で一番高い建造物……スカイツリーだ!」
「わあ……」
これを、魔法を使わずに建ててしまったらしい。サキ様もどうやって建てたかまではよく分からないらしいけど、それにしてもとんでもない建物だと思う。
「ティルエルでもあんなに高く飛んだことはないんじゃない?」
「そうですね……。高く飛ぶことを目的としたことがないので、あの高さは経験がありません」
わたしの飛行魔法は移動手段だから。わざわざあんなに高い場所まで行こうとは思わない。可能かどうかなら、正直分からない。
多分、可能だとは思うけど……。
「試したくはない、ですね」
「そう? どうして?」
「もしも途中で魔力が切れたりしたら……。何かしらの理由で魔法が途切れたら。間違い無く死んじゃいます」
「…………。そりゃそうだ」
それが必要なことなら命を賭けるぐらいのことは、わたしだってするけれど。さすがに飛べるかどうかの確認程度で命を賭けたくはない、かな。
このスカイツリーという建物だけど、わたしはてっきり選ばれた人しか入れないと思っていた。きっと、それこそウンエイ様よりも偉い神様が住んでいるとか、そんな建物なんだろうなって。
でも違ったみたい。入口を見てみるといろんな人が中に入って、もしくは出てきて……。とてもじゃないけど、限られた人しか入れないようには見えない。
「サキ様。もしかしてここ、誰でも入れるんですか……?」
「え? うん。そうだよ。私たちも今から入って、一番上……はさすがに無理だけど、かなり高い場所に向かうからね」
「は、はい……!」
本当に入れるんだ……! どうしよう。楽しみだけど、ちょっと怖い……!
サキ様と一緒にスカイツリーへと向かう。とても高い建物が近づいてくる……。
「さ、サキ様。サキ様」
「はいはい。どうしたの?」
「た、倒れたりしませんよね……!?」
「まさか最強の魔女からそんな言葉が出てくるとは思わなかったよ……」
だって! 中にいる時に建物が倒れたら、無事で済むとは思えないから……! わたしなら死にはしないとは思うけど、それでも絶対に無事では済まない……!
「はいはい。いいから行こうね」
サキ様に引きずられるような形でスカイツリーに入った。恐怖心が……すごくあります……。
そうして、サキ様に連れられるまま手続きをいくつかして、エレベーターに乗る。
「さささサキ様すごく速いですとても速いです!」
「あははー。速いねえ」
す、すごい! 本当にすごい! 私も横移動なら速く飛べるけど、縦はさすがに無理だ! こんなに速く上がっていくなんて……! しかもこれが魔法じゃない? 神様は本当に……すごい……!
あっという間に、地上三五〇メートルにたどり着いた。怖い。
「はい次はこっちのエレベーターね。まだ上に行くよ」
「まだ上があるんですか!?」
次のエレベーターで、今度は四五〇メートルへ。実際にはちょっと違うらしいけど、ここまで高い場所に来たらもう誤差の範囲だと思う。
「それじゃ、こっちね」
サキ様が通る道。天望回廊、という名前らしい。全体的に丸みを帯びた通路で、外側の壁はガラスで透明になってる。つまり外の景色をはっきりと見れる。
「わあ……」
今まで見たこともないような景色だ。あれだけ高いビルも、ここからだととても低く、小さく見える。地上の神様はもう見ることすらできない。
「すごいでしょ」
「はい……。本当に、すごいです……」
「私たちの技術は魔法にだって負けないと思うよ」
「魔法なんかよりずっとすごいですよ」
ああ、いや。そっか。そういうこと、なのかな。
わたしたちが使う魔法は、神様たちが使う何らかの技術を劣化させてわたしたちでも使えるようにしたもの、なのかも。そう考えると、魔法でできないことを神様たちが色々できることも納得がいく。
サキ様は、それをわたしに教えようとしてくれていたのかもしれない。
「サキ様」
「うん」
「ありがとうございます」
「うん。…………。うん? なんだろう、今とんでもない勘違いをされた気がする……」
スカイツリーからの景色を眺めて、わたしは改めて神様の偉大さを理解した。
壁|w・)てぃるえる、かんこうちゅう。