ゲーム魔女の現代観光   作:龍翠

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24 予定の確認

 

 スカイツリーの見学を終えた後は、ホテルへ。受付でサキ様が手続きをして、サキ様と一緒に部屋に向かう。

 ホテルの部屋は、思っていたよりも広い部屋だ。わたしの世界の宿とは全然違う。大きなベッドが二つ並んで、さらにテーブルや椅子も用意されてる。もちろん、テレビも。

 一日だけ利用する部屋だというのは分かってるけど……。もうここで暮らすこともできるんじゃないかな。

 

「晩ご飯は外食、といきたいところだけど……。ごめんね、お父さんを待たないといけないから」

「い、いえ! 気にしないでください!」

 

 わたしからすれば、ウンエイ様を優先するのは当たり前のことだ。

 サキ様と一緒にテレビを見ながら待っていると、少ししてサキ様のスマホが鳴った。少し出てくる、と言ってサキ様が部屋から出て行って、十分ほどで戻ってきた。

 

「お待たせ」

「う、ウンエイ様!」

 

 そう、ウンエイ様と一緒に、だ。とても驚いてしまった。

 どうしよう、ウンエイ様を迎え入れるような部屋じゃない……気がする! いやでもそうなると、そんな部屋にサキ様をお泊めするのも十分問題……。あ、いや、でもここは神様が作ったホテルだしそんなことを言ったら神様たちに失礼で……。

 

「わあ……。ティルエルがすごい混乱してる」

「ははは……」

 

 サキ様に宥められて、落ち着くことができた。うん。我ながら慌てすぎだよね……。

 ウンエイ様には部屋の椅子に座ってもらって、わたしとサキ様はベッドに腰掛けた。

 

「さて……。日程の件だけれど、来週の土曜日で問題ないそうだよ」

「うわ……。我ながら無茶言ったと思ってたのに、いけちゃったんだ……」

 

 ああ、やっぱり無茶を言ってたんだ。急すぎる、という感覚はやっぱり正しかったみたい。

 

「向こうはそれだけ、ティルエルとの対話を重視しているということだろうね」

「え」

 

 重視? 何を? わたしとの会話を?

 いやいや。いやいやいやいや。何を言ってるの? わたしなんかと話したところであまり意味はないと思うのに、そんなに無理矢理時間を作ってまで……。

 偉い神様は、わたしに何を求めているんだろう。分からない。分からないから、怖い。

 

「まあ、決まったものは仕方ないよ。ティルエル。私も一緒だからさ、安心してよ。頼りないかもしれないけど」

「いえ……。いえ! サキ様が一緒なら安心です!」

「うーむ、謎の信頼感だね!」

 

 わたしにとっては、サキ様は恩人だから。例え他の神様が敵に回ったとしても、わたしはサキ様についていく。それぐらいの覚悟はある。

 

「集合場所だけど……ここになるよ」

 

 ウンエイ様が一枚の紙を見せてくる。そこに書かれていたのは、住所と建物の写真。これは……ホテルみたいなものかな? 受付で紙に書かれている名前を告げれば、偉い神様がいる部屋まで案内してくれるらしい。

 その名前は見たことも聞いたこともないものだったから……。合言葉、みたいなものかな。ちょっとかっこいいかも。

 

「時間は朝の十時から。僕とは九時に駅で集合でどうかな」

「うん。分かった。ティルエルもそれでいいよね?」

「もちろんです!」

 

 そうして、偉い神様と会う日時と場所が決まった。

 話が終わったら、ウンエイ様はさっさと帰っていってしまった。この後もまだ仕事があるらしい。サキ様とハナ様が二人きりで暮らしているから分かっていたけど、とっても忙しい神様みたいだ。

 

「ウンエイ様はずっと忙しそうですね」

「ウンエイ様って呼び続けるんだね……」

 

 わたしにとっては、あの神様がウンエイ様だから。

 

「お父さんはまだまだ次のゲームの準備で忙しいからね」

「次のゲーム、ですか?」

「うん……。私がやっているゲーム……。えっと……。ティルエルのいた世界の次、だよ」

 

 次……。次、というのは、なんだろう。あの世界はもう終わってしまうって聞いたのに。

 

「あのね……。ゲームっていうのは、人気があったら長く続いたり、同じ設定を引き継いだ続編が作られたりするんだよ」

「はあ……」

「それで、ティルエルがいたゲームは、かなり特殊なパターン。人気はあったけど、メインストーリーが終わったとかでゲームそのものを新しく作ることになったみたい」

 

 サキ様が言うには、普通ではあまりないことらしい。人気のあるゲームは、新しいストーリーを作ってでも続けていくもの。設定を引き継いでいるとはいえ、新しいゲームになることは異例中の異例、なんだとか。

 

「特にVRゲームは作成費用がかさむって聞くからね。VRゲームだと初めてなんじゃないかな」

「ぶいあーる……? たまにテレビで見かける言葉ですね……」

「あー……。うん。ヴイアール。ヴァーチャルリアリティ。つまり、仮想現実」

「仮想……現実」

 

 仮想。あまり聞かない言葉だけど、ちゃんと意味は分かる。実際にはない物をある物として考える、みたいなもので……。

 あれ? 仮想現実? じゃあ、わたしの世界って……。

 いや。いや、違う。わたしがあの世界で暮らしていた事実は変わらない。あの世界は、確かにあるもののはずなんだ。

 うん。仮想現実のゲーム。多分あそこでの生活のことだと思う。神様たちからすれば、あそこはあくまで遊ぶ場所みたいだから。

 

「ティルエル?」

「あ、いえ! なんでもありません!」

「うん。まあ、すごく大変だっていうことだよ。新しいゲームを作ってるから」

「つまり……世界を作っている……!」

「あー……。うん。そんなところ」

 

 なるほど、それは忙しくて当たり前だ。世界の創造。すごい。見てみたい。でも、さすがに見せてはもらえない、かな?

 きっと神様の特別な魔法だ。わたしが学んでいいことでもないと思う。聞いてみたい気持ちはあるけど……。いや、でも、聞くだけなら……。

 

「あの、サキ様」

「うん?」

「その、作っているところを、見せてもらうのは……」

「だめだろうね」

「ですよね……」

 

 うん。分かってた。だから、残念でもない。当然だ。当然だけど……。ちょっと、やっぱり残念。

 

「今日はそろそろ寝よっか。明日はお土産を買って帰らないとね。ハナに怒られちゃうよ」

「お土産ですか?」

「そうそう。とりあえず明日ね」

 

 お土産って、なんだろう? 気になるけど、明日になれば分かるみたい。

 サキ様と一緒に寝る用意をして、就寝した。明日もだけど……。一週間後がちょっと怖くて、そして楽しみだ。

 

 

 

 翌日。わたしはサキ様と一緒に大きなお店に来ていた。駅の中にあるお店で、お土産というものを買うらしい。

 お土産。どういうものだろう。わたしの世界にはなかったものだ。

 

「ティルエル。これとかどう?」

「えっと……。何ですか、これ……?」

「見た目バナナのお菓子。東京と言えばこれ、かな」

「はあ……」

 

 えっと……。つまり、どこかに遊びに行った時に、その場所の特産品を買っていくこと、かな? それは、うん。楽しそうな文化だと思う。

 サキ様が手に取ったバナナのお菓子も甘いお菓子らしいから、ハナ様はきっと喜ぶはずだ。

 

「ティルエルは欲しいものある?」

「え? いえ、わたしはここにいますし……」

「いいからいいから」

「はあ……。じゃあ、これ……?」

「なんで疑問系かな……?」

 

 ラングドシャ、というお菓子。東京以外でも食べられるらしいけど……。ちょっと気になってしまった。さくさくしているお菓子なんだって。すごく気になる。

 あとは、新幹線に乗る前に駅弁を買った。今回もお肉がたっぷり入ったお弁当。やっぱり温かいお弁当じゃなかったけど、これも十分に美味しかった。

 そうして、帰宅。

 

「ただいまー」

「戻りました」

「おかえりー!」

 

 お昼過ぎに帰ってきたんだけど、すでにハナ様も帰ってきていた。お友達のお母さんに送ってもらったんだとか。満開の笑み。きっと楽しかったんだろうね。

 こんなことを考えるのは不敬かもしれないけど……。神様は、とても人間らしい。わたしたちの世界の人は、神様をモデルにして作られたのかな。それなら納得だ。

 

「魔女のおねえちゃんもおかえり!」

 

 ハナ様の笑顔が、今はなんだかとても嬉しくて、帰ってきた、という実感がわいた。

 ちょっと、不思議。だってここは、わたしの家というわけではないのに。むしろただの居候なのに。それでも、わたしはここを、自分の家と認識してしまっているのかもしれない。

 不敬、かもしれない。他の神様が知ったら怒るかもしれない。でも、サキ様は。

 

「ほらほら、ティルエル。お土産食べよう」

「はい……!」

 

 わたしを、笑顔で迎え入れてくれる。それがとても嬉しかった。

 




壁|w・)無事に帰宅、なのです。
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