ゲーム魔女の現代観光   作:龍翠

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27 最高神様(首相さん)とのお話

 

 週末、土曜日。

 

「さささサキ様サキ様どうしましょうききき緊張ががががががが」

「あ、あはは、ティルエル、震えすぎ……!」

 

 東京駅の隅っこで、わたしはそれはもう震えていた。

 だって。だって! これからとっても偉い神様に会うんだよ!? ウンエイ様よりもずっと上の神様! 最高神とか、そういうのじゃないかな……。怖い! 楽しみだけど怖い!

 

「心配しなくても、取って食べたりはしないよ」

 

 そう言ってくれるのは、先ほど合流したウンエイ様。ウンエイ様の言葉はもちろん信じたいけど、それでもやっぱり恐怖心はある。

 だって。

 

「わたしを……意志の一つで殺せるような神様ですよ……!」

「サキ。ティルエルは僕たちのことを何と思っているんだい……?」

「実はものすごい魔法がたくさん使える神様と思われてるみたい」

「ええ……」

 

 ああ……。本当に、不安しかない……!

 ウンエイ様の案内に従って、東京駅を進む。そうして乗るのは、ウンエイ様の車。ワゴン車という車らしくて、少し大きい車だ。

 白くて、たくさんの人が乗れそう。それよりも。

 

「サキ様! サキ様!」

「はいはい。どうしたの?」

「車……! 初めてです!」

「あー……。そっか」

 

 ずっと気にはなっていた。電車よりは遅いみたいだけど、その代わりに小回りがきく、みたいなイメージ。電車は駅でないと降りられないけど、車ならどこにだって降りられる。

 よく考えられてるよね。さすがは神様の乗り物だ。

 ともかく。車に乗るのは初めて。

 ウンエイ様が何かのボタンを押すと、目の前のドアが自動で開いていった。後部座席のドアがゆっくりと、勝手に。まさか、こんなドアまで自動だなんて……!

 

「ほらほら、ティルエル」

「は、はい……!」

 

 サキ様に促されて、車の中へ。

 車は、思ったよりも広いような、狭いような……。家の中みたいに広くはないけど、小さい乗り物のわりに狭いと感じることもない。そんなぐらいの大きさ。座っても余裕があるぐらい。

 

「けれど、不便ですね……」

「うん? 何が?」

「制限です。もっと魔法を使って、車の中の空間を広げればいいのに」

「あははー……」

 

 神様たちが魔法を制限しているのはもちろん分かっているけど、これぐらいはいいと思う。もちろん、わたしが勝手にすることもないけど、この広さだとやっぱり不便だと思うから。

 

「あのね、ティルエル」

「はい」

「私たちは魔法を使えないんだよ」

「制限の話ですよね。もちろん知ってます」

「制限ってどこから出てきたんだろ……」

 

 もちろん神様の意志は大事だし、わたしが勝手にやるわけにはいかない。

 車がゆっくりと走り始める。そうして、だんだんと速く……。

 うーん……。やっぱり自分で飛んだ方が速いけど……。でも、大人数を同時に運べることを考えると、やっぱり車もすごいと思う。

 そうして、ウンエイ様の車で運ばれた先は、とても大きなビルだった。

 

「わあ……」

 

 何階建てだろう。もちろんスカイツリーほど高くはないけど、それでもかなり高い建物だ。周りをよく見てみたら、それらもやっぱり高い。

 こういった高い建物を集めている土地、とかだったりするのかな?

 車は地下の駐車場に入って、そこで降りた。エレベーターで一階のエントランスに向かって、そこで受付をするみたい。

 ウンエイ様に案内されるままにエレベーターで一階に上がって。

 

「うわあ……」

「すごい……!」

 

 一階は今まで見てきたビルとは全然違う様子だった。全体的にきらびやかで、揃いの制服を着ている人たちは動きがどことなくきびきびとしてる。

 各所に置かれたソファやテーブルも見ただけで高いものだって分かる。わたしは触れちゃだめだと思う。怒られそう。

 

「サキ様。サキ様。なんだかすごいです……!」

「すごいね! これが、お高いホテル……!」

 

 サキ様ですらこんなホテルは初めてらしい。サキ様も普段は入らないような場所にわたしが入っても大丈夫なのかな……。

 

「少し待っておいてもらえるかな」

 

 ウンエイ様はそう言うと、カウンターの方に向かっていった。受付というものをやるんだと思う。

 

「さ、サキ様! わたしもついて行った方がいいのでは……!」

「え。どうして?」

「わたしのような薄汚い魔女が入りますと伝えた方が……」

「なんでそんな卑屈なのかな? そういうことを言うのはこの口かな?」

「うにゅううう」

 

 や、やめてほしい! わたしのほっぺたはそんなにのびないから! あとまぜまぜしないでほしい! 痛くはないけど! 痛くはないというか、どちらかというとちょっと気持ちいいような……。いやそうじゃなくて!

 

「うりうりうりうり」

「うにゅにゅにゅにゅにゅ」

「…………。なにをやっているのかな……?」

「はっ!?」

 

 サキ様と二人で我に返る。振り返ると、ウンエイ様が苦笑いしていた。サキ様にほっぺたをこねくり回されている間に受付が終わったみたい。

 

「仲が良いのはいいことだよ」

 

 そんな笑顔のウンエイ様のお言葉がちょっと恥ずかしい。でもサキ様はそうでもなかったみたいで、

 

「仲良しだからね! ティルエルのほっぺたはおもちみたいに柔らかくて最高だよ!」

「何言ってるんですか……!?」

 

 時折サキ様の発言の意図が分からない……!

 先方はもう待ってるみたいだから、とウンエイ様に連れられてエレベーターに向かう。そうして、最上階へ。

 最上階は短い廊下にドアが一つあるだけの部屋だった。床は、絨毯。すごくふわふわの絨毯で、絶対にお高いやつだ。

 

「あわわわわ……」

「え、なに? ティルエル、どうしたの?」

「これは……踏んだらだめなやつなのでは……!」

「え」

 

 気付けばサキ様は普通に絨毯の上に立っていた。いや、でも、サキ様も神様だし……。さすがにわたしはだめだと……。

 

「そういうのいいから」

「あ」

 

 サキ様に手を引かれて、絨毯の上に立った。思っていた以上にふわふわだあ……。

 

「い、いいのですか!? 本当にいいんですか!?」

「だめだったとしても、悪いのはこの部屋を指定した人ということで」

「ええ……」

 

 この部屋を指定した神様……。首相、というとっても偉い神様では? そんなことを言えるなんて、やはりサキ様はすごい……!

 ウンエイ様が真っ直ぐドアの前に向かう。ドアの前には黒いスーツを着た男の人が立っていた。そのスーツの人にウンエイ様がカードのようなものを渡して、スーツの人が確認して……。

 

「はい。ありがとうございます。どうぞお入り下さい」

 

 スーツの人が一歩、横に移動した。

 

「さて」

 

 ウンエイ様が振り返る。その視線は、真っ直ぐわたしに。

 

「この先に、首相がいるよ」

「……っ!」

 

 首相。とっても偉い神様。わたしの世界で言うところの王様に近い人、らしい。表現的にはそんな感じで実際は全然違うらしいけど、ともかく、この国の偉い神様。

 つまり……最高神様!

 ついに……ついに最高神様に会うことになるなんて。ああ、とても緊張する。わたしは、何を言われるんだろう。最高神様から会いたいと言ってもらえたみたいだけど、何かの魔法に興味を持ってくれたとか、そういうのかな?

 すごく緊張しながらも、ウンエイ様に頷いてみせる。ウンエイ様も頷きを返してくれて、そしてドアが開かれた。

 

 中はとても広い部屋だ。床はやっぱりふかふかの絨毯。部屋の中央には低めのテーブルがあって、そのテーブルを挟むように大きなソファが設置されてる。

 さらに部屋の奥はとっても大きな窓になっていて、この街の景色を一望することができた。ほとんどの建物がここよりも低い場所にあって、なんだかちょっと特別感を覚えてしまう。

 他にも家具がいくつか置かれているけど、どれも落ち着いた雰囲気の、けれど高級感のある家具ばかり。間違い無く、とてもいい部屋。

 そしてそんな部屋のソファに、初老の男の人が座っていた。

 白い髪を短く切り揃えた男の人。青いスーツを着ていて、わたしの様子を観察しているみたい。

 そう。私の様子を。部屋をきょろきょろと見回していたわたしの様子を。

 とても! 恥ずかしい!

 

「サキ様」

「うん。なに?」

「恥ずかしくて死にそうです」

「本当になに?」

 

 まさかじっと見られるなんて思わなくて、ついつい部屋に興味を持ってしまって……。いや、切り替えよう。切り替えて、最高神様にちゃんと挨拶しよう。

 わたしがそう思ってすぐに、最高神様が立ち上がった。

 

「ようこそ。待っていたよ。私は錦野一(にしきのはじめ)。内閣総理大臣だ」

「は、はい! 魔女のティルエルといいます! よろしくお願いします、最高神様!」

「んん!?」

 

 あれ、最高神様が目を剥いてる。わたし、何か言っちゃったのかな。振り返ってサキ様を見ると、苦笑いだった。

 

「なるほどなあ……。最高神になっちゃうわけだ……。じゃあ、天皇はどうなるんだろう」

「あの……。サキ様……?」

「ああ、うん。えっと……。首相さん、にしておこうか。最高神って呼ぶと、色々面倒なことも出てくるから」

「はあ……」

 

 そういうものらしい。よく分からないけど、サキ様の指示に従っておこうと思う。

 改めて、首相さんは小さくため息をついて、向かい側のソファを手のひらで示してきた。

 

「どうぞ、座って。そこの二人も」

 

 首相さんの対面側に座る。わたしみたいな魔女が向かい側に座るのはだめだと思うけど、むしろお前が座らなくてどうするとばかりに二人に挟まれることになってしまった。

 首相さんの向かい側。すごく、緊張する……!

 

「きょ、今日は、お時間を作っていただいて、えっと、その……」

「ああ、いや。こちらこそ無理を聞いてもらってすまないね。君とはできるだけ早く、一度は会っておかないといけないと思ったんだ」

「はあ……」

「今後のためにもいろいろと聞かせてほしいんだけど……。いいかな?」

「もちろんです!」

 

 わたしとの会話に価値があるとはちょっと思えないけど……。でも、首相さんが求めてくれるのなら、わたしは喜んでお話をしたい。

 だって、神様の頂点、最高神様とお話しできるんだよ? こんなこと……逃せるはずがない!

 

「な、なんだか寒気を感じたような……」

「気にしないであげてください」

「あ、うん……」

 

 サキ様の言葉に、首相さんは困惑しながらも頷いた。

 

「それじゃあ、最初にだけど……。君は魔女ということで、間違いないのかな?」

「はい。神様たちの魔法に比べると児戯みたいなものだと思うんですけど……。魔女です」

 

 世界を作るウンエイ様の魔法。そんなウンエイ様すらも従える最高神の首相さん。きっと、魔法もわたしが想像できるものじゃないんだと思う。

 そんな魔法を使える首相さんにとって、わたしの魔法は児戯にすらならないものなんじゃないかな。恥ずかしい。

 

「何か、証明できるものはあるかい?」

 

 証明? 証明って……。ああ、そっか! わたしの魔法陣を見てくれるっていうことだ!

 

「ありがとうございます! では魔法陣を出しますね!」

「え? あ、えっと……。うん」

「分かるわあ、この反応。会話が成り立ってるようで成り立ってないよね」

 

 サキ様の言葉の意味が分からないけど、とりあえず魔法陣だ。わたしはすぐに空中に魔力で魔法陣を描いていった。

 




壁|w・)最高神とは。
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