ゲーム魔女の現代観光   作:龍翠

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07 魔女はもふもふ

 

「お風呂の時間だおらあ!」

 

 サキ様のそんな宣言。ハナ様が勢いよく立ち上がって、両手を高く上げた。

 

「おー!」

「え、え? なんです?」

 

 お風呂に興味はあったけど……。この勢いはよく分からない。えっと……。わたしも、両手を上げておー、と言った方がいいのかな。

 

「ティルエル!」

「は、はい!」

「犬と猫と狸と狐! どれが好き!?」

「ね、猫……? 黒猫が好きです。魔女と言えば黒猫だと本に書いていました」

「なるほど理解した! でもティルエルが黒猫になっちゃったらそれは違うでしょうがバカ!」

 

 ええ……。前提条件が謎すぎて答えが分からない……。サキ様はわたしに何を求めてるの?

 

「黒猫はあるけど、それはハナだ!」

「くろねこ!」

「ティルエルは……狸だ! 私が決めた!」

 

 まるで意味が分からない! えっと……。狸に変身すればいいのかな? 変身魔法を構築して、軽く杖を掲げて魔法を使う。

 ぽん、と軽い音がして、わたしの姿は狸になった。

 

「これでいいですか?」

「…………」

「…………」

 

 サキ様とハナ様が完全に無言になってしまってる。ちょっと怖い。

 そして、叫んだ。

 

「かああわああいいいいい!」

「もふもふー!」

「みぎゃあああ!?」

 

 さ、サキ様がわたしを抱きしめてきた! ほ、頬ずりされてる! だ、だめですサキ様まだお風呂に入ってないからあああ!

 あ、ハナ様待って撫で回さないでくすぐった……ふわあああ!?

 

「こんな素敵な魔法があるなんて……! ティルエルはかわいいなあ! もふもふだなあ!」

「もふもふ! もふもふ!」

「さ、サキ様! ハナ様! もうちょっと手心をあはははは!」

 

 くすぐったい! うにゃあああ!

 

 

 

「大変失礼いたしました……」

「ごめんなさい……」

「いえ……あの……。大丈夫、です……」

 

 どれぐらい撫でられていたのか分からないけど、ずいぶんと撫で回されていた気がする。サキ様たちが喜んでくれたのなら、まあ、うん。いいんだけど……。

 だからそんなに謝る必要はないから、やめてほしい。また変身してもいいから。

 

「いいの!?」

「た、たまになら……!」

 

 ちなみに今はもう戻ってる。狸に変身するっていう意味じゃなかったみたいだから。

 気を取り直して、お風呂。サキ様が着替えの用意をしてくれる、とのことだったので、ハナ様と先に入ることになった。

 着替えの準備をさせるなんて、と思ったけど、むしろやりたいかららしい。本当に、サキ様はとっても優しい。

 というわけで、お風呂だ。

 

「ここがお風呂!」

「わあ……」

 

 キッチンの裏側にある浴室は、ちょっと広めだった。たっぷりのお湯が入った浴槽は、大人二人でも余裕で入れるぐらいには広い。

 壁にはなんだか変な形の棒が……。なにこれ?

 

「ハナ様。これはなんですか?」

「シャワーだよ?」

「シャワー……」

「これを持って、顔に向けて……」

「はい……」

「えいや」

「ぶふっ」

 

 急に水が……いや、お湯が出てきた!? つまりこれは、お湯を出すための道具! すごい、水を一度出してから温める、とかじゃなくて、そのままお湯が出るなんて……!

 

「あはは。ごめんね?」

「いえ……! すごいです! こんな、お湯が出るなんて……!」

「んぅ?」

 

 ハナ様が首を傾げてる。ああ、そっか。ハナ様にとってこれは当然のものであって、わたしみたいに驚くようなものじゃないんだ。神様の道具はやっぱりすごい。

 

「湯加減はどう?」

 

 サキ様も浴室に入ってきた。服の上からでは分からなかったけど、サキ様はほんのりと女性らしい体つきになってる。神様に対して不敬かもしれないけど、それが少し羨ましい。

 

「ティルエル? どうしたの?」

「いえ……」

 

 自分の体に触れてみる。うん……。子供だ。

 

「あー……。ティルエルも成長したら、変わってくるよ」

「いえ。わたしはこの肉体で固定してしまったので、成長しません」

「こ、固定? そうなんだね……」

 

 あ、これはあまり分かっていないみたい。神様は肉体の固定はしていないのかな。それとも、それをするまでもなく長命だとか。いやそもそも神様に寿命なんてあるのかな? 分からない。

 

「ほらほら。いいからお風呂に入ろう。まずは体を洗ってね」

「あ、はい」

 

 サキ様にやり方を教わりながら、体を洗う。そうしてから、わたしはお風呂にゆっくりと入った。

 

「ほわあ……」

 

 これが……お風呂……! わたしの世界では貴族しか入れない贅沢品だったもの……! ああ、とっても気持ちいい……! こんなに気持ちいいなら、貴族の屋敷に忍び込んで使わせてもらっていたらよかった!

 

「ふふ。気持ちいいでしょ?」

「はい……とても……!」

「この家にいる間は毎日入ってくれていいからね」

「毎日!?」

 

 それは……なんて贅沢な……! これだけの水を出して温めるなんて、結構な魔力を使うはずだけど……。

 いや、そうか。神様に魔力の心配をする方がおかしいんだ。さすがは神様だ!

 

「また何か勘違いされてる気がする……」

「はふぅ……」

「まあ気持ちよさそうだからいっか」

 

 これが毎日入れるなんて……。サキ様はとってもいい神様だなあ……。

 




壁|w・)今作は主人公がもふもふ枠です。
…………。いや、違いますよ……?
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