処女作なのに見切り発車、普通に考えてヤバすぎ。
どうも初めましてバリカン星人です。
スプラ3はまだコンプしてません。もし内容齟齬があれば教えていただけると幸いです。
それではよーいスタート。
「何やこれ」
目が覚めたらイカになってた。
何言ってるか分からないと思うが、俺も分からねぇ。
本当に今起こった事そのまま言ってるだけなんだ、これ以上俺の口から説明できる事はねぇ。
勘弁してくれ。
仕事から帰って、メシ食って風呂入って、明日のスケジュール確認しながら残業出来なかった分の仕事終わらせて、そんで残り少ない1日の時間使って
ゲームやってたら急に画面が光った。かと思えば全く見覚えのない部屋のベッドで寝かされてた。
何やら薬品の匂いがしたからそこが病院のベッドだというのは分かった。まさかゲーム中に脳卒中でも起こしたのかと不安になっていたら、病室に目と目の間が黒い線で繋がった、妙にイカっぽい医者が入ってきた。
あまりにビックリして変な声でた。しかもそいつら見覚えがあるのだ。
俺がさっきまでやってたゲーム『スプラトゥーン』シリーズに出てくるイカくんちゃん達にそっくり、てかそのまんまだった。
俺が呆然としてる間にあれやこれやと診察は終わって、『後一週間くらいで退院出来る』という旨の事を言われて待機している。
因みにナースガールちゃんめちゃんこ可愛いかった。
取り敢えず状況確認終了。次に鏡を見てみる。
後ろで束ねた黒いゲソ。目と目を繋ぐ黒い線、ゲ◯ソーみてぇ。
身長は大体170センチ。日本人の中、高生くらいか? しかしこれは中々……
「……結構イケメンだな」
じゃねぇよ! 誰だよ!! お前は!!!
鏡の中でスカした面してんじゃねぇ! しかもこれ俺の知ってるボーイじゃねぇし、何でこんなガタイ良いの?
てかそもそも何でゲームしてたらゲームのキャラになってんだ可笑しいだろ!! こんなコテコテの導入最近の二次創作でも見ねぇよ!!
……叫んだらちょっと落ち着いた。
改めて状況確認*1。
この体の持ち主の名前、ここ大事。
さっきの医者ボーイから渡された診断書と共に記憶を辿っていく。どうやら俺は一週間以上昏睡状態が続いていたらしく、精神的なケアも兼ねて診断された。俺どんだけヤバかったんだよ……
まぁいいや、気を取り直して。
名前はガンゼキ・バショウ、九歳。
……九歳!?
このモリモリマッチョマンの変態が!? ウッソだろおい…普通に人間の頃の筋肉量と大差ないんだけど。異常発達ってレベルじゃねぇぞオイ。
…なんか色々ツッコミどころはあるけど、キリがないので取り敢えず納得しとこう。こういう九歳児だっていて良い筈だ、うん。
続いて血縁関係、なし。
は?
…ちょっと待て、何か目眩がしてきた。と、取り敢えず身分証、身分証……あった。
何々……この異常発達は胎児の頃から見られ、いざ産まれたは良いものの赤子とは思えない筋肉量に気味悪がり捨てられる。両親は保護責任者遺棄罪でムショ行き。その後児童養護施設に入れらるが、周りとは明らかに異なる見た目から虐められた上に職員からも疎まれ、俺が記憶を取り戻す一週間前に自殺未遂。その期間昏睡状態が続く。
このバショウとか言うイカの記憶情報が頭の中に入ってくる。
……いや、あの
ツッコミどころって言うか……重過ぎんか?
スプラトゥーンの世界ってこんな殺伐としてたっけ。もっと頭空っぽで塗って塗りたくる生活想像してたんだけど。
てかバショウのやつゴツい見た目して繊細なんだな。虐められた時も反撃できる程の胆力なかったんだろう、可哀想に。
…待てよ。という事はつまり、俺はこの身体の持ち主──バショウは既に亡くなってる事になるのか? バトル以外で死んだらどうかるかは知らない。まさかバトル中のように体が弾けたりはしないだろう。
憶測とも言えないような内容だが、今俺はよくある成り変わりのような状況に陥っている。俺は脳外科でも専門家でもないから、この状況を表す言葉をこれしか知らない。
二次創作でよく見る成り代わりでは、その体の持ち主を差し置いて主人格になってしまう描写が多々ある。今の俺はそれに近い状態だ。
──そしてそれらのセオリーは、大概元の人格が目覚める事はない。
「……ごめんな。お前の人生奪っちまったかもしれねぇ」
イカだから人生じゃないって? どうでも良いわそんなこと。
言ったって聞こえない懺悔の言葉を溢す。
既に亡くなってるなんて、俺の罪悪感を減らす為の口実でしかない。本当はまだ昏睡状態で俺が乗っ取っただけかもしれないんだ。
ただ他と違うってだけで差別化されて、生きづらくなる。それこそ九歳という若さで自殺を考えるくらいには。
もっとたくさんの人と出会って、別れて、結ばれて……ありきたりな幸せすら掴めなかった。そうさせたのは周りの環境だが、俺がそれにトドメを刺してしまった。
もうコイツが目を覚ます事はない。直感がそう告げている。一つの体に魂は二つも存在出来ない。その魂が知覚される事も永劫ないだろう。俺はとんでもないことをしでかしてしまったのではないだろうか。
「……マジかよ」
そこに俺の意思はなかったが、結果的にそうなっている。
最初こそ憧れのゲーム世界に入れたと興奮が、成り行きを知った上で無責任に喜べるほど人を捨ててはいない。俺とて好きでこの状況になったじゃないんだ。
しかし現実は変わらない。であれば俺がするべき事は何か。やらなければならないこと、それは単純で"生きる"事だ。
もし俺が死んだとしてもバショウが目覚める保証はない。それこそ確実な死に繋がりかねない。それこそ無駄死という奴だ。
だから俺は
もし万が一目覚めたのなら、その時は潔く身体を明け渡そう。それが俺に出来る最大限だ。
「絶対お前を世界一カッケェ奴にしてやる。何処からでも良いわ、見ててくれや」
正直話が早すぎて、何から何まで完璧に理解できてる訳じゃない。
ただ今俺のやるべき事はハッキリしている。ハイカラシティだかハイカラスクウェアだかバンカラ街だか知らねぇ。全国に名前を轟かせるような、スゲェ奴にならなきゃ申し訳が立たない。
やってやろうじゃねぇか。テッペン獲りに行ってやるよ。
そうするにはまず、やらなきゃいけないことがたる。周りの環境を変える事からだ。先にあのクソ溜めから逃げ出さないといけない。そうしなければ何も始まらない。
先ずはあそこをブッ壊す。
生意気なガキもブッ飛ばす。
覚悟しとけよ、カス共が。
「ひっ」
「あ」
声がした方を向くと、ナースガールちゃんが気味悪そうな顔で見てた。そしたら直ぐにドクターがやってきて鎮静剤みたいの打たれた。
どうやら独り言呟いてニヤニヤしてたのを見られて、障害を来したのだと勘違いされたらしい。
「カ、カッコ付かない……」
俺は薄れ行く意識の中、精一杯に呟いた。
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一週間後、俺は医者の宣言通り退院することになった。
イカは基本的に能天気な性格のせいで鬱病との縁が皆無らしい。だからこの世界には精神科とは名ばかりのカウンセリングくらいしかなく、それも普通病院に併合されている。
施設から自殺未遂が出ても大して話題にならず、寧ろ例外中の例外──はぐれ者としての扱いを受ける。故に施設が批難を受けることのないクソ循環が発生しているのだ。
そめそも刑事事件にすらならなかったから、施設が揉み消した可能性も否定出来ないが。
そして俺は今、施設のイカが運転する車の中で色々詰問された。病院関係者に余計なことを喋っていないか、無駄にドスの効いた声で聞いてくる。
しかしそれならそもそも俺を入院させなければ良かった訳で、そこら辺がイカの元来の性格の能天気さが出ているなと感じる。
しかも大してその脅しも怖くねぇし。
俺なんか会社勤めの時はリアルヤ○ザみたいな部長に毎日絞られてたんだぞ。そんなガキ臭い物腰でビビると思われてるのであれば、心外だ。
因みに部長の人柄自体は滅茶苦茶良くて、時々スプラのプラベとかもしてた。部長鬼強かった*2。
「いでっ」
「着いたぞ、さっさと降りろ」
車が急停止する。鼻打った。
外に出ると、そのまま車庫へ車を回すグラサンボーイ。態度の悪いヤツだ。無駄にデカイグラサンしやがってからに。カチ割るぞ、それ。
「受付で診断書渡してこい。そっから部屋に戻れ」
ケッ、と唾を吐いて窓を閉める。
はいはい分かってますよーだ。一々癪に障るヤツだ。
悪態付きながら施設を見上げると、老朽化の進んだレンガ造りのかなり大きめな施設があった。
「うお……」
なんつーか……施設というより監獄みたいだな。金網も何か物々しい感じだし、てか電線張ってるし。
ここ何地方だよ。車の中からも世紀末みたいな町並みしかなかったし、PVで見たバンカラ街もここまで酷くなかったぞ。
確かチラッと地図見た感じ、ハイカラシティとスクウェアが関東の東京、千葉、横浜くらいで、バンカラ街が静岡らへんだった筈。正確な記憶はないから誰か助けてくれ。
何か自然も少ないし、どことなく乾燥してる気がする。街も閑散としてて、とてもナワバリバトルやってるような雰囲気じゃない。
東から離れれば離れるほど土地が荒れてたから、恐らく関西地方の何処かだと思われる。もしそうだとしたら、バンカラ街すら新幹線使わないと通えない距離になる。とんでもねぇや。
「お邪魔しまーす……」
余計な思考を振り払って扉を開ける。中には受付があって、そこに目付きの悪いガールがいた。他にも数人(匹?)の幼体と思われるイカと職員が散在している。
老朽化が進んだ影響か、ギィィイイ……とバカデカイ音が鳴り、それに反応した彼らが一気にこちらを向く。いや怖いわ。
そのまま歩を進めると、周りの視線も着いてくる。やっぱり自殺未遂は多少施設内で話題になってるらしい。
職員からは無機質な、それでいて気色の悪い物を見るような視線。幼児からは奇異、俺と年が近そうな奴らからは嘲笑と侮蔑が見て取れる。
視線が突き刺さっているのを無視しながら、目付きの悪い受付嬢の所まで進む。
「えっと、ただいま戻りました」
「……」
「これ、診断書です。それでは」
一応挨拶する。けれど無視。
まぁ予想は出来てた。さっさと済まそう。
人は見た目で判断してはいけないと言うが、見た目にはそれなりにその人の性格が出る。
このガールは良く言えばクール系、悪く言えば無愛想。人相の悪さも相まって堅気の雰囲気ではない。流石に部長には負けるが。
そしてやるべき事を終えたので、記憶をたどって部屋に戻ろうと背を向けた時──
「……アンタ、何か変わった?」
話しかけられた。
言葉を咀嚼する。まさか気付かれたというのとはないだろう。そもそも魂が入れ替わるなんていうのが非科学的だ。そんな発想には早々至らない。
このガールが感じているのは、"前"の俺との齟齬。
俺は自分と環境を変えると決意したから、前回の自分を踏襲するつもりはない。違和感を持たれるのは必然的だ。
「……ええ。少し心機一転して頑張ろうかと」
「頑張る?」
俺は態と、出来るだけ前とは違う自分の雰囲気を演出する。
違和感が確信に変わったのか、目を細めて疑問を呈する受付嬢。名前はなんて言ったか……ああ、そうだ。
「実は俺夢が出来まして、サヨリさん。近々上京しようかと」
「…じょうきょう?」
そうか、もうここは日本じゃないから通じないのか。
じゃあなんて言えば良いか……
「ハイカラ地方で夢を追い掛けたいんです。プロになるという夢を」
「アンタ……」
何の、とは聞かなかった。
バショウの記憶を辿っていると解った事。この世界にはナワバリバトルやガチマッチに"プロ"の概念がある。
ゲーム内では国民的スポーツのような位置付けだったバトル。主に俺らプレイヤーが行っていたナワバリバトルやガチマッチA帯くらいがアマチュアによる趣味の範囲で、遊びや小遣い稼ぎ程度のもの。バトルで飯を食っていける奴は、最上位のほんの一握り程度。主にS帯後半からX帯、そこがプロの領域だ。
しかもプロになれたとしても収入はピンキリで、人気度も響いてくる上に一度負ければ大きく降格する事にもなる正に修羅の道。それでもプロ志望の奴がいなくならないのは根強いバトルの文化があってこそだろう。
少なくともプレイヤー時代の感覚、道楽でやっていけるような世界ではない。だがそれでも俺はプロになる。何と言われようとも。
この世界でカッケェ奴──ひいてはイカした奴になるにはバトルで稼ぐのが一番手っ取り早い。この世界はバトルに関してはかなり寛容で、やろうと思えば大概のイカが出来るように社会構造が出来上がっている。何も非現実的な夢ではないのだ。
やれば出来る。それが俺の信条だ。
「おい、ガン坊が何か言ってやがるぞ!」
この声は……あいつらか。
不気味なほど静かだった空気を割くように、嘲笑の混じった声が響き渡る。振り返ると、俺のではない記憶と顔が一致する。
既に変態を終えた児童数人組。いつも
その中でも一際存在感のあるイカ、イオリだ姓は知らない。病的にまで白い肌にエメラルドのような目。見た目に大差ないイカ達の中でも美形に入るボーイだ。正直嫉妬してしまいそうなくらいの恵まれた風貌。
体格こそ少々俺より劣るものの、それを補って余りあるオーラがある。そりゃ悪ガキ共のボスになれるわけだ。少しチャラチャラし過ぎなのが玉に瑕だけど。
全員俺と同じ、白い施設児童の服を着ていて統一感がある。だが俺と彼らには埋めようのない溝があるのが犇々と感じ取れる。
「よお、もう身体は良いのか?」
「頑丈さだけが取り柄なもんで」
軽薄な声で話し掛けるアイツに、至極冷静を努めて言葉を選ぶ。
正直バショウが自殺する一因になった奴だから、気に入らない。だがバショウ本人の感情は兎も角、俺自身は割とどうでも良い。記憶を取り戻した時点で、今のアイツ程度じゃ夢への障壁に成り得ないと考えているし、何なら奴に会った今それは確信に変わっている。
「な、なんだアイツ……」
まさか言葉が返ってくるとは思わなかったのか、取り巻きの数人が怪訝そうな顔をする。
反対にイオリは面白そうに顔を歪めて近付いてくる。
「テメェは図体の割にてんで雑魚だからな。また前みたいに周り助けて貰うんだろ? みっともねぇなァ?」
「アハハハ!! やめてあげなよ、また泣いちゃうでしょ!」
「デケェくせして泣き虫、気色悪ィんだよ!」
凄い言われようだ。口撃で済んでいるだけ、これでもまだ序の口というのが驚きだ。全く恐ろしい事この上ない。
「そんなお前がプロになる? 笑わせんなよ」
──すると突如イオリの目が据わる。
その言葉を聞いてまた周りが囃し立てるが、イオリの目そのものは嘲笑だけでなく、憎悪や何処か羨望めいた感情が見え隠れしていた。
俺は初めて困惑した。
ただのチンピラだと思っていた。きっと典型的な悪ガキに毛が生えたモノだと思っていたが、何故侮蔑の対象たる自分にそんな目を向けるのか。底辺の自分に、格下程度に何故憎悪を抱くのか、何を見出だして羨望といった感情を向けるのか。
分からない。分からないが、これだけは言わせて欲しかった。
「俺はなるぞ、プロに。だって夢だからな」
「テメェ……」
イオリは地面を踏み鳴らして近付いてくる。周りの職員は止める気配すらない。
別に良い、最初から期待なんてしていない。
イオリは俺の胸倉を掴んで睨み上げる。
「あんまり調子乗ってんじゃねぇぞ。また昔みたいに"遊んで"やろうか?」
言葉通りの意味ではないだろう。
目には既に憎悪しか写っていなかった。年の割には凄まじい睨みだ。そこらの無法者達にも負けていない。
──だが、俺には足りない。
「なっ……てめっ」
「イオリ!?」
胸倉を掴んでいる手を、更に掴む。
徐々に力を込めていくと、イオリの顔に苦痛が浮かぶ。
「手、離せや」
「っ!」
そう言うとイオリは自分から乱暴に手を振り払った。
その様子を見て、周りは明らかに動揺する。職員達ですらだ。彼らの認識でも、この保護施設のリーダーはイオリであるという風になっていたのだろう。
それがたった今、一人のいじめられっ子に覆されそうになっている。
「気は済んだか」
「お前……?」
イオリはサヨリと同じように、目を細める。
何処までの考えに至ったかは分からないが、確実に今までの
俺は態と、そんな感情が渦巻いているであろうイオリに対して、至極穏やかに喋りかける。
「悪い、怪我してないか? 馬鹿力だけは昔からの自慢だ。知ってるだろ?」
そしてそのまま、俺がイオリとやりあってから固まっているサヨリの方に向いて、またもにこやかに言う。まるで何事もなかったかのように。
「お騒がせしました。必要書類は提出したので、留意点があれば言ってください」
誰も喋らなかった。元々静かな場所だったが、それとは全く別モノだ。
サヨリは静かに書類を纏めると、部屋の鍵を渡してくれる。
ここの施設はボロいが、一人一部屋を割り当てれるくらいには広い。俺が気に入っているのはそれだけだ。
「お前……誰だ?」
鍵を受け取り、応接間から出る間際に問われる。誰の声かは一々確認しなかった。
また絡まれて、余計な時間を使いたくなかったからというのもある。
それにしても、変なことを聞く奴だ。そんなの最初から決まっている。
だが俺は──
「ガンゼキ・バショウに決まってるだろ」
──元ヒトの、だけど。
※ガンゼキ・バショウ(九歳)
お前九歳とか絶対嘘だろってくらいゴツいイカボーイ。顔の彫りが凄くて十歳は多めに見られる。
モデルは前足異常発達&凶暴さが売りのpktn海洋生物スルメイカ、色々別名あったけど一番名字っぽかったのがガンゼキ。
パワー系主人公なので絶対名前には入れたかった。バショウはアオリイカの別名。カッコいいよね、何か。