片頭痛カードゲーム変更前   作:広所恐怖症

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16話(7639)

 …ぷにょん、…ぷにょん。

 

 ──気の抜ける音を奏でるのは、ドルムが権能から作り上げた音の鳴るボールだ。

 

 アイカちゃんの自宅にやって来た僕は、真っ黒なそれを彼女の部屋の窓に向けて必死にぶつけているものの、それに気付いたアイカちゃんが目を覚まして窓を開けたり……といったことは起こらない。

 

 確かに、時間も時間である。すっかり寝入ってしまっている可能性も考えられなくはない──そんな僕の考えを、現実は非情に嘲笑った。

 

 

『──まずいぞユーキ、日中にあった車が無くなっている!』

 

『こっちも駄目じゃ! アイカの臭いは玄関先ですっかり途絶えておる。ぬうぅっ。これでは、彼奴を追うことが出来ぬではないか…!!』

 

 

 ドルムとナゴラ。2人からの言葉に、僕は自分の心臓が、力任せに握り潰された様な錯覚に陥った。

 

 今し方のドルムたちの発言をまとめれば、アイカちゃんは車でどこかへと移動したと見て間違い無いだろう。

 それは、一体どこにだ……?

 

 言うまでもなく、それが分からないからこうして手を(こまぬ)いてしまっているのだが……くそっ、考えろ。考えるんだっ。

 何かあるはずなんだ、ここまで来て諦めてたまるか……ッ!!

 

 

『こうなれば、(しらみ)潰しに探すしかあるまい。往くぞ、わしの背に乗──っ?』

 

 

 ゴキゴキと鈍い音を立てながら大型の獣へと形態変化を遂げるナゴラ。僕程度の体格の子供なら、まだまだ余裕が有りそうなその背に跨ろうとした直前、彼女は暗い通りへと視線を向ける。

 

 すん、とナゴラは鼻を鳴らす。その動作から、僕とドルムは何者かの匂いを探知したことを察した。

 

 …街灯の明かりが薄く、暗闇の向こうは良く見えない。

 僅かに身構える僕。そうして、姿を現したのは──

 

 

「……? ──お前、あの時の!?」

 

 

 浅葱色の髪。嵐を連想させる荒々しい髪型と、紫電に似た色合いの瞳……。

 

 いつぞやにファイトを行った、〈竜〉デッキの使い手だった少年である。

 ここに来るまでの間にシャドウズと遭遇していた経験から、予想外な──意識外な?──人物の登場に、少々面食らってしまった。

 

 一瞬の間、惚けてしまった僕だったけど、少年がデッキを構えたことで意識を引き戻し、慌てて彼に駆け寄るとその肩を掴んで訊ねる。

 

 

「ね、ねぇ君! アイカちゃんと仲良いだろ? あの子が今何処にいるとか分からない!?」

 

 

 思い出したのは、河川敷の拠点から見た、この少年ともう1人のメガネをかけた少年、そしてアイカちゃんと3人で並んで歩いていた姿だ。

 彼ならば、アイカちゃんの行き先を知っている可能性が──って、くそ。

 

 そう言えばこの少年含めて、アイカちゃんは『ユウカ』として認識される様に、意識に影響を受けてしまっているんだっけ…。

 具体的な規模が分からない現状、出会う人間全てが影響下に晒されていると考えるべきかもしれない。

 

 唐突な僕の行動と質問によって、驚きから動きを固めていた少年。

 すると、

 

 

「………えっ、あ。お前、()()()()()()()()()()()()()()()()…??」

 

 

 ──少年を前で思考を重ねていたところに飛び込んで来たのは、そんな発言だった。今度は僕の方が、驚愕から固まることになる。

 

 道中で遭遇したシャドウズ。あの男の言葉どおりなら、今この街にいる人間のほとんどが、望月博士なる人物によってその意識に影響を受けているはずだ。

 

 …ある少女を、死んだ人間の代わりとして仕立て上げる。

 死者の復活などという大それた(くそくだらない)目的の為に、人々は干渉を受けその認識に誤差を埋め込まれてしまった。

 

 だけど……目の前にいるこの少年は、今なんと言った?

 これではまるで、彼は少女を、アイカであると正しく認識出来ている様な──

 

 

 

 

 

 ◆◀︎▲▶︎▼

 

 

 

 

 

 深夜の住宅街。その一角で出会ったのは、いつかの日にファイトを行った、とあるシャドウズだった。

 

 ファイトの最中にカードを書き換えるという、前代未聞の未知な技術を扱ってきたこいつと出会ったのは、今日みたいな夜だったのを覚えている。

 

 

「──君はあの子を。アイカちゃんが、『ユウカ』じゃないって分かっているのか……?」

 

 

 ──黒い仮面の向こう側から吐き出されたその声は、ゾッとするほど平坦だった。

 

 

「分かっていながらッ。あの子が苦しんでるのを知りながら、もういない人間として扱い続けたのか!?」

 

 

 ぎちり、と。俺の肩に置かれていたシャドウズの手に力が込められたことで、鈍い音が発せられる。

 

 

「泣いてたよ…」

 

 

 一呼吸挟まれる。

 

 

「泣いてたんだ。泣いてたんだぞ! 誰も自分を見てくれないって、無理矢理『ユウカ』として生きさせられるって! それなのにっ、なんで……ッ!!!」

 

 

 …──悲鳴にも近い罵声が、目の前のシャドウズから発せられた。

 どうしてこいつが、アイカの抱えている事情を知っているのかは分からない。普通なら、知っている理由を訊きたいところだったけど…。

 

 

「…──怖かったんだ」

 

 

 まるで、懺悔するみたいな。

 そんな声が……そんな資格、俺には無いのに。喉の奥から溢れ出る。

 

 

「ある日、誰かが…言い始めた。アイカのことを、『ユウカ』って……」

 

 

 1年前に起こった、『消失事件』。

 

 あれに巻き込まれて命を落としたユウカは、アイカと双子だった。

 クラスメイトが──友達が命を落としたことで、俺たちは悲しみにくれていたのを覚えている。

 

 当たり前にいた誰かがいなくなった、もう二度と会えなくなった。心にぽっかりと穴が空いた様な喪失感に、支配されていたんだ。

 

 

「…日が経つにつれて、その人数は増えていった。アイカを『ユウカ』って呼んだやつに、ふざけるなって声を荒げて、泣きながら怒ってたやつも、次の日には()()()なって……」

 

 

 ぶるり、と。その時のことを思い出して、身体が震える。

 

 クラスの皆、担任の先生、近所の、じいさんばあさんたち。

 …毎日毎日、見知った皆が段々とおかしくなっていく。見えないナニカが、彼ら彼女らの中に入り込んで悪さをしているんだと。漠然とそう思っていた俺が、ある日家に帰った時だった。

 

 ──「……?? 何を言っているんだリューガ。お前の友達の名前は、『ユウカ』だろう?」

 

 

 ──父さんが、母さんが。おかしくなった。

 

 何度も何度も声を上げ続けていた。

 こいつはアイカだ、アイカなんだって。

 

 だけど……最愛の2人が『仲間入り』を果たした時、俺は自分の心が潰れる音を確かに聞いた。体の中心から響いた鈍い音に、俺は…。

 

 俺、は……。

 

 

「──俺は、最後までアイカの味方でいられることが出来なかった。怖くなって……逃げた、逃げちまった…。何が正しいのか分からなくなって──」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()()()

 そんな考えが過った瞬間に、俺はもう立ち上がることが出来なくなっていた。周りに合わせ、必死に──必死に、アイカを、友達を。

 ……見殺しに、した。

 

 

「──っ!!」

 

 

 俺の独白を聞いたシャドウズが、握った拳を振り上げる。

 それを見ても俺は、逃げようとはしなかった。……そんな資格は、俺にはない。『消失事件』を引き起こしたシャドウズと何も変わらない、ただの悪人なんだから。

 悪人は、裁きを受ける。当然の道理だ。

 

 

「──ぅっ、ぐ。ぐぐぅ………」

 

 

 ──いつまで経っても、痛みも衝撃もやってこないことを不審に思うと、くぐもった声が発せられる。目の前の、シャドウズからだ。

 

 振り上げた拳を、そいつは力無く、ゆっくりと下ろしていく。

 どうして……と思った直後、下の方から声が発せられる。

 

 日に焼けた肌と、艶のある黒髪。3つの眼を持つそれは、シャドウズのユニットの幻影だった。

 

 

『そうじゃな、ユーキよ。お主には──わしらには、此奴に拳を振るう資格など無い』

 

 

 ……このシャドウズと、アイカの間に、一体どんなやりとりが行われたかは分からない。それを俺は伺い知ることは出来ない。

 だけど、──このシャドウズは、何か訳が有って。

 

 もしかしたら、俺みたいに……。

 

 怒りを抑えられなかったんだと思う。それが俺に対してか、自分に対してかは分からなかったけど、シャドウズは握った拳を自分の仮面に向けてぶつけた。

 

 ごちり、と鈍い音が鳴る。

 

 

「……今は兎に角、アイカちゃんのことが先決だ」

 

「……? アイカに、何かあったのか……っ??」

 

 

 シャドウズの呟く様な言葉に、俺は慌てて先を促す。

 そうして教えられたのは──想像を絶するものだった。

 

 

「ま、待て……望月博士が。だって? な、そんなこと…」

 

「信じられないならそれで良い。信じてくれとも言わない。…でも確実に、何かが起きてる。そして今それに、アイカちゃんが巻き込まれている可能性があるんだ! お願いだ、何か分かることは無いか。どんな些細なことだって構わないから!」

 

 

 1分1秒が惜しい。そんな様子で話すシャドウズ。

 それに俺は、必死に思考を巡らせた。

 

 望月博士が企む、死者の復活という神をも恐れない行為。その為に、これまで様々なことが引き起こされていて。

 …しかし、だ。そも、こいつはシャドウズ。今までこいつが言ったこと、全てが嘘の可能性は十分にある。

 

 考え、考え、考え抜いて。

 俺が出した答えは──

 

 

「──ここから進んだところに、博士の研究所がある」

 

「! そこに行けば……」

 

「先に言っておく。…別に俺は、お前を信用した訳じゃない。敵って解れば、問答無用で倒すつもりだからな」

 

「もちろん、それで構わない!」

 

 

 何が正解かは分からない。…それでも。今ここで動かなかったら、確実に()()()()()と思えた俺は、シャドウズと並んで通りを走り進む。

 

 …その直前。

 

 

「──悪いけれど。先にもどこにも、進ませないわよ」

 

 

 かつり、と暗闇から発せられた音に、俺たちは揃ってそちらを振り向いた。

 

 透き通った水色のポニーテール。パリッとしたスーツに身を包んだ、女の人がそこには立っている。

 

 ……彼女を『普通』ではないと俺が悟れたのは、見た瞬間に、日本刀でも首に突きつけられたかと錯覚するほどの研ぎ澄まされた殺意を放っているのを感じたことと、彼女が1歩こちらに近づく度に、その周囲に()が走って風景が白く染まっていったからだ。

 

 ゆらりと女性の傍で宙を漂うのは、髪も肌も、纏う衣服も含め、全てが純白に染まった、女性の姿を模したユニットの幻影。

 

 なんだアレは。……まさか、ユニットの力が現実に影響を及ぼしている…!?

 

 信じ難い光景を前に、俺は動きを固めてしまった。女性はそれを気にした様子もなく、懐から取り出したデッキを構え、開戦宣言を行う。

 アウェイク、というファイターであれば聞き慣れた単語を鼓膜が拾った。

 

 

「──アウェイクっ!」

 

 

 俺の隣に立っていたシャドウズが、デッキを取り出して女性に応じる。

 

 

「!? お前…」

 

「君は先に行って。多分、あの人の目的は僕だ。──ナゴラ! その男の子と一緒に先に行っててくれ!!」

 

『──仕方なしじゃな。…おい、行くぞ。案内せい!』

 

 

 俺の足元に近づいて来たかと思えば、少女の姿をしていたユニットの見た目が瞬く間に変わり、大型の肉食獣の様な見た目になった。

 ユニットに()()()()()ことに気付いた俺は、その背中に無理矢理乗せられたことで「うわぁっ!?」と情けない声を上げてしまう。

 

 一瞬で加速する巨体。全身にぶつかって来る風に、冷たさを覚えるのは一瞬だった。

 

 

「〜〜〜〜〜…ッ! 博士の研究所は俺たちが闘った公園から北に進んだ先にあるッ! フラスコとドーナツが合体したみてーな見た目の建物だァ──っ!!」

 

 

 凄まじい速度に振り落とされそうになりながら、なんとか伝える。

 

 振り返った視線の先。

 女性とのファイトが始まったことで魔法陣に包まれていくその最中。シャドウズが、立てた親指をこちらに向けたのが見えた。

 

 

 

 

 

 ◆◀︎▲▶︎▼

 

 

 

 

 

 夜の闇に紛れながら、街中を進んで行く。

 博士が運営している、モチヅキ研究所までは、あと少し──というところだった。

 

 

「竜胆 リューガだな。……悪いが、ここから先には進ませんぞ」

 

 

 黒い仮面、黒い衣服。

 格好を統一した人間が、ぞろりぞろりと暗闇から姿を現し、俺たちの前に立ち塞がる。

 

 

「シャドウズ!? くそっ、急いでるってのに……!!」

 

 

 ざっと見ただけでも、10人はいるはずだ。…その上、1人はヘンテコな形状をしたヘルメットを被っている。

 くそったれが、幹部級まで居るのかよ!!

 

 

「あの老人がしようとしていることは、我らにとっても有益な結果をもたらしそうなんでな。すまんが完遂するまで、お前にはここで止まってもらう」

 

「ふざけんじゃねぇ! お前らの都合なんか知ったこっちゃねぇんだよ!!」

 

 

 幹部級のシャドウズの発言に、怒鳴り返しながらデッキを取り出すが……正直、人数が人数だ。勝てる見込みは──

 

 

『…──にゃっはっは。中々どうして、良き威勢じゃのう』

 

 

 …と。

 あのシャドウズのユニット──ナゴラ? だっけ──が声を出した瞬間、俺の視界に飛び込んできたのは、満点の星空だった。

 

 

「──う、うわぁああああ!!?」

 

 

 力任せに放り投げられた。

 …そう気付いた瞬間。迫り来る地面に、俺は全力で体を捻って、なんとか着地する。ゴロゴロと何度も地面を転がり、全身に襲いかかる痛みに悶えながら、なんとか立ち上がった。

 

 

「なッ。ユニットが現実世界に顕現している、だと…? これは、()の…ッ!!」

 

 

 総員構えろ! という幹部の合図と共に、全てのシャドウズがナゴラを取り囲む。

 

 

「おい、お前──」

 

『先に向かえリューガとやら! 此奴らのことはわしに任せぃ!』

 

 

 一呼吸挟み、

 

 

『…──お主もわしも、アイカに手を差し伸べることの出来なかった(むじな)じゃ。じゃからこそ──今度は、今度こそは! 絶対に諦めるな、逃げ出すな!! さぁ行けっ!!』

 

「──ああ!!」

 

 

 シャドウズたちに包囲されながら叫ぶナゴラ。その言葉に、俺は覚悟を決めて駆け出した。

 

 ああそうだ。俺は逃げた、諦めた。

 …だからこそ、今度は──ッ!!

 

 

 

 

 

 ◆◀︎▲▶︎▼

 

 

 

 

 

「──ドロー、オーバーチャージ。〈氷藍(ひあい)の巫女〉*1、〈氷撃(ひげき)の贄〉*2を召喚。……次に呪文、〈氷情(ひじょう)な判断〉*3。効果で2枚手札に加え、〈氷撃の贄〉の効果で、私は1枚手札を捨てる。…今捨てたカード、〈コールドスリープ〉*4発動……」

 

 

 淡々と、まるで作業の様に。

 

 何度も何度も何回も何回も何日も何日も。

 繰り返し続けたことで染み付いて覚えた様な、全く『熱』を感じない、機械じみたプレイング。

 

 

「──投了(サレンダー)は好きなタイミングでどうぞ」

 

 

そんな文言から始めて、

 

 

「…ここ暫く姿を見せていなかったけれど、中々優れた隠密能力を持っているようね。その上、()()()()()ユニットを具現化させているけれど、それは一体どのようにして成功させたのかしら。……そしてそれを使って、何をしようとしているの? あなたたちの人数、拠点の場所。そして目的は?」

 

 

 矢継ぎ早に、機械じみた声音で質問を重ねる女性。ターンを受け渡された僕は、それを無視してフェイズを進める。

 

 ……恐らくだがこの女性は、シャドウズに対抗する為に作られた警察とはまた違った特殊な組織──つまり、一般的観点で言う()()()の人間のはずだ。

 

 常であれば、僕は自身の潔癖を信じてもらおうと、なりふり構わず、シャドウズなる者たちとは無関係であることを訴え続けるだろう。

 …だが今は違う、1分1秒が惜しいこの状況、ファイトに時間をかけられる余裕は無い。

 

 

「あなたたち構成員の人数、拠点の場所、そして目的──」

 

()()()()()()()()()()()()……ッ!!」

 

 

 女性のユニットの能力により、ターン開始時のドローが行えず、加えて1枚、除外されたことで4枚しか手札の無い僕。

 しかしそれに焦ることはなく、彼女の発言を聞き、自分でも驚くほど怒りに満ちた声を発する。

 

 

「…邪魔なんだよ」

 

 

 オーバーチャージ。発生したコスト5点を使い、〈アカツキ〉と〈レッドビースト〉を場に並べる。

 そして、

 

 

退()けェ──ッ!!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()()()()()、〈血の契約〉を発動。

 その効果により僕は──コアエネルギーをコストとして支払い、ユニットを召喚する。

 

 支払ったのは1点のコアエネルギー。その1点で召喚するのは、〈火狩りの虚人〉だ!!

 

 

『でりゃりゃりゃっ!!』

『おらあああああッ!!』

 

 

 〈火狩りの虚人〉、そして〈レッドビースト〉。

 何十回と言う殴り合いを繰り返した両者により、力を受け取った〈アカツキ〉の肉体が、携えた炎の剣と共に、何倍にも膨れ上がる。

 

 

「〈クリムゾン・インパクト〉!!」

 

 

 吹き荒れる紅蓮のエネルギー。火属性以外のユニットは全て焼却され、相手の場がガラ空きとなった。

 

 

「決めろ、〈アカツキ〉ッ!!」

 

『必殺・業炎爆熱斬──っ!!』

 

 

 放たれるは必殺の斬撃。

 

 防ぐ手段を持たなかった相手のコアエネルギーは、欠片も残さず消し飛ばされた。

 

 

 

 

 

 ◆◀︎▲▶︎▼

 

 

 

 

 

 土煙──の、エフェクト──が晴れた頃には、既にそこに先程まで相対していたシャドウズの姿は無い。

 自らファイトを挑み、尚且つ、「どこにも進ませない」などという口上を述べた上での1ターンキルである。意地汚い、と呼ぶべき下卑た笑みを浮かべながら、そのユニットは自身の所有者に向けて声を放り投げた。

 

 

『あ・ら・あ・らぁ〜?? ひぃー、とぉー、みぃー、ちゅわぁ〜ん? なんだか色々言っておいた癖にぃ、メチャクチャ無様に負けちゃった気がするんだけどぉ。アタシの気のせいかしらぁ??』

 

 

 なんて愉快なのだろう。そんな心境から、全力で相手の神経を逆撫でする声音を作り上げ、全開で煽りに煽るそのユニット。

 しかし──待てども待てども、彼女が発する怒りを顕にした返答が飛んでくることはない。

 

 

『…──ヒトミぃ?』

 

 

 普段であれば、1度や2度では終わらない応酬が続くものだ。にも関わらず、それが始まらないことに違和感を覚えたそのユニットは、所有者たる女性・郡山 氷兎美(ヒトミ)の顔を覗き込む。

 

 ──そこには呆然とした表情があるだけだ。

 もしかすれば、そもそも先ほどのユニットの言葉が聞こえていない可能性すらある。

 

 …夜の闇に包まれる中。他に誰も存在しないその場所で、ヒトミは静かに声を溢した。

 消え入りそうな、小さな声を。

 

 

 

「───ユー、キ??」

*1
④ 氷藍の巫女

 氷属性 戦力3000/1

【◀︎】自分のユニットが破壊された時、このユニットは疲弊状態になる。破壊されたのが氷属性のユニットの場合は、フリーズ状態になる。

【◆】このユニットがフリーズ状態の時、相手が手札に加えるカードの枚数は1枚少なくなる。

*2
① 氷撃の贄

 氷属性 戦力1000/0

【◀︎】このユニットをコストとして破壊した時、自分は手札を1枚墓地に送る。

*3
コスト:自分のバトルゾーンのユニット1体を破壊する。

効果:カードを1枚ドローする。コストとして破壊したユニットが氷属性だった場合、更に1枚ドローする。

*4
条件:このカードが墓地に送られた時、自分のバトルゾーンにグレード4以上の氷属性のユニットがいる。

効果:相手は自分の手札を1枚除外する。除外したカードが火属性の場合は、次の自分のターン開始時に、そのカードは手札に戻る。

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