片頭痛カードゲーム変更前   作:広所恐怖症

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17話(3094)

「──らぁッ!」

 

 

 俺の体当たりによって力任せに開かれる、モチヅキ研究所のドア。ばがんっ! と発せられた大きな音を背に、俺は転がる様にして研究所内に飛び込んだ。

 

 

「はぁっ、はぁ…っ」

 

 

 ここに来るまで止まることなく、全力疾走を続けていた俺は、必死に肺に空気を取り込む。

 いつ、何が起きてもすぐ対応出来る様に、デッキに手を掛けながら、不自然に明かりの落ちた研究所の中を進んだ。

 

 受付を過ぎ、一般人向けの為に作られた展示物エリアを抜けて──

 

 

「──リューガくん?」

 

 

 暗闇の中から名前を呼ばれたことで、俺は慌てて飛び退き、デッキを握った手を前方に突き出した。

 相棒のアルマリアも、幻影の姿で俺の隣に現れ、警戒を強めてくれる。

 

 そうして俺たちの前に現れたのは、

 

 

「イクタ、か……??」

 

 

 青色の髪と、丸メガネ。

 見慣れた少年の姿に、俺たちは警戒を解いて彼へと駆け寄った。

 

 

「イクタ! お前も来てたのか!」

 

 

 今この街では、普段ではまず見ない人数のシャドウズたちが暗闇で蠢いている。それを察知したのだろう、イクタもイクタで、行動を取っていた様だ。

 

 ……問題なのは、イクタが望月博士のことを信じてくれるかどうかだ。

 

 

「良いかイクタ。突然だから、信じられないかもだけど……望月博士が、何かを企んでる」

 

「リューガくん」

 

「ああ、俺だってまだ信じられない。でも、その可能性がある──本人に直接会って聞かないと! ユ……()()()も、博士が企んでいることに巻き込まれてる可能性があるんだ。どこにいるか知らな」

 

『リューガ、離れろっ!!』

 

 

 ──アルマリアの声に、一瞬体を固めつつも、必死にその言葉に従って距離を取る。

 

 …天窓から降り注ぐ、僅かな月明かり以外は暗闇に支配された空間。

 その中に浮かび上がるのは、掴んだデッキを突き出し、顔を俯かせているイクタだ。

 

 何か、様子がおかしい。

 そう俺が思考した瞬間。彼の後ろから、ある人物が姿を現した。

 

 灰がかった髪、豊かな髭。簡素なスーツの上から白衣を纏ったその男性の名前は……。

 

 

「望月博士……!!」

 

 

 望月 カイキ。

 とある少女を中心に、この街全体を巨大な実験場に見立て、何かを成そうとしている可能性のある人物。

 

 ──信じたかった。あのシャドウズはやっぱり俺のことを騙そうとしていて。日頃シャドウズと戦う俺たちをサポートしてくれている、あの、頼もしくてなんでも知っている博士こそが、真実なんだって。

 

 …でも。

 

 

「──いかんぞ、イクタ。リューガも既にシャドウズによって操られておる!」

 

「くそっ。リューガくんと戦うことになるだなんて…!!」

 

 

 ()()()()()()()()()()()()と。

 

 イクタの背後で醜悪な笑みを浮かべるその姿を見て、俺は全てを理解する。

 博士は──彼は、今の今までずっと俺たちを騙していた。

 

 街の皆を操ることで、あいつを。

 アイカが苦しむことになった、全ての元凶を作り出した張本人──!!

 

 

「駄目だっ、聞いてくれイクタ! お前は騙されて──ッ」

 

「辛かろうが、聞く耳を持ってはいかんぞイクタ。その甘言に惑わされてしまえば、()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()()??」

 

「──っ!!」

 

 

 アウェイク。

 ……ファイターなら、聞き慣れた開戦宣言を唱えたイクタを見て、アルマリアが叫ぶ。

 

 

『構えろリューガ。こうなったらもう、戦いは避けられない!』

 

「ちくしょう……!」

 

 

 相棒の言葉に、俺はデッキを改めて構えた。

 

 どう考えても、これは博士による時間稼ぎとしか考えられない。

 …速攻で終わらせて、イクタも、そしてアイカも! 絶対に救い出す!!

 

 

「アウェイクッ!!」

 

 

 

 

 

 ◆◀︎▲▶︎▼

 

 

 

 

 

「──〈駆動機士長 (ベルトコン)(ベアー)〉召喚! 【▲】効果で手札をデッキのボトムに戻し、戻した枚数分デッキからカードを捲る。そしてその中の〈駆動〉ユニットを、全てバトルゾーンに出す!」

 

『機士たちよ、我が元に集えぇーっ!!』

 

 

 バトルゾーンに召喚される、イクタの切り札の〈帯・熊〉。

 彼の元に集った〈駆動〉ユニットたちの効果によって、〈帯・熊〉は必殺と呼ぶべき能力と戦力を手に入れることになる。

 

 イクタが得意とする、〈駆動〉シリーズの能力を最大限に活かした必殺のコンボ。

 シャドウズの構成員を何度も返り討ちにして来たそれを前に、しかし俺もただでやられる気なんて毛頭無い。

 

 

「〈帯・熊〉でコアエネルギーにアタック──」

 

「呪文〈撃竜紅閃〉*1発動! イクタの場のユニット全てを破壊するッ!」

 

「っ!? し、しま……っ」

 

「──俺のターン。頼んだ、相棒(アルマ)!!」

 

 

 俺のバトルゾーンに、光の剣を携えながら、純白の翼をはためかせるアルマリアが月光と共に降り立った。

 

 彼女は除外された〈竜〉ユニットの数だけ力を増す能力を有している。これまでのプレイにより、除外されたカードは10枚以上。イクタのバトルゾーンはガラ空きな上、〈帯・熊〉の効果で手札はゼロだ。防ぐ手立ては無い!

 

 

『砕け散るが良いっ!』

 

「そ、そんな──うわぁあああっ!?」

 

 

 放たれた剣戟が直撃したことで、イクタのコアエネルギーがゼロになる。

 ……俺の勝ちだ。

 

 

「う、うう…っ! まだだ! ユウカちゃんは、僕が守るんだ……!!」

 

 

 ファイトに負けた衝撃から体勢を崩したイクタが、呻き声を発しながら起きあがろうとする。

 

 

「はぁっ、はぁっ。…イクタ、違うんだ。俺はシャドウズに操られてなんかいない! 本当は──」

 

 

 負けられない、一瞬たりとも気の抜けなかったファイトが終わったことで、緊張から解放された俺は精一杯息を整えながら、必死にイクタへ言葉を投げかけた。

 

 ……その時。

 

 

「──ふむ。やはりイクタ、お前ではこの辺が限界の様じゃな」

 

 

 ドスっ、と。

 

 鈍い音を立てて、俺の目の前にいたイクタの背中に、何かが突き刺さった。

 注射器と、コンセントプラグが融合した様な見た目の、奇妙な機械。望月博士の片手に装備されたそれは、2つある突起を深々とイクタの背中に食い込ませ、驚愕と混乱から固まるイクタの体から、『何か』を吸い出していく。

 

 

「…──は、かせ…??」

 

「安心するのじゃイクタ。君の犠牲は──君から奪った『エネルギー』は、儂が正しく活用してやろう!!」

 

 

 どさり、と。力のこもっていない手足を投げ出し、青白い顔色となったイクタの体が床に倒れた。受け身も取れず、鈍い音を立てて倒れた友達の姿を前に、俺は怒りに身を任せて叫ぶことになる。

 

 

「望……、月ィいいいいいいっっっ!!!」

 

「クハハハハッ!! 良いぞリューガ! (いか)れ、怒るんじゃ! 君の感情の昂りに合わせ、君に宿る『エネルギー』もまた、純度を増していくのだからなぁ!!」

 

 

 イクタとのファイトの直後で、疲れの溜まった体を無理矢理奮い立たせ、俺はデッキを構え

 

 

「おおっと! リューガ、お前の相手はこの儂ではないぞ?」

 

 

 ──開戦宣言を唱える直前、博士の後ろから小さな影が飛び出し、俺に襲いかかってきた。

 

 ……桃色の髪。ボリュームのある前髪が、まるでハートマークの様になった少女。

 

 

「あ、アイカ──っ!」

 

「リュリュりrrryGあぁくnn!」

 

 

 多種多様。俺にはその効果も目的も分からない、様々な機械を無理矢理取り付けられたアイカは、不自然なほど()()()音声と共に笑いかけてくる。

 

 

「あああAaaWwうぇえkkKkeくく!!」

 

 

 展開された魔法陣が、俺とアイカの2人を包み込んだ。

*1
条件:火属性と光属性の、グレード4以上の〈竜〉ユニットが自分のバトルゾーンにいる。

効果:自分のバトルゾーンにいる、火属性と光属性のグレード4以上の〈竜〉ユニットを選択し、その合計戦力値以下の相手ユニットを全て破壊する。この呪文の発動後、選択した〈竜〉ユニットは除外される。

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