アヤネが校舎南方から大規模な兵力が近づいているのを発見し迎え撃つために出動した。そしてその大規模な兵力を率いている人物と対面するが……。
「……あれ? ラーメン屋さんで会った人たち……?」
やっぱりというかそこにいたのは便利屋68のみんなだった。
「……っ」
アルが一瞬気まずそうに眼をそらした。
「え、ええそうよ。あそこでは世話になったわね」
「あんたたち! ラーメン特盛を無料にしてあげたのに――この恩知らず!」
「おっ、恩しらっ……。おほん。それについては感謝するわ」
「でも、それはそれ、これはこれ。こっちも仕事なんだよねー」
「悪いとは思ってる。でも公私ははっきり区別しないと。こっちも依頼されているわけだからさ」
「なるほど、それなら仕方がない。誰からの依頼なのか話してもらうよ」
シロコが銃を構える。それにつられるようにみんなが戦闘態勢になる。
……できるかどうか不安だけど、やってみよう。
「ちょっといいかな?」
「? どうしたのかしら?」
「このまま撤退する気はない? もちろんタダでとは言わないよ」
「無理ね。私たち便利屋は一度受けた依頼は完全に遂行することをモットーにしているの。いくら積まれたって依頼人を裏切ることはないわ」
「そっか。それじゃあ仕方がないね」
彼女たちが断ることはわかっていた。だから本命はこっち。
「それじゃあそこの君」
「……私?」
適当な位置にいた子を指さし尋ねてみる。
「君は便利屋に雇われてここにいるんだよね。いくらで雇われたの?」
「……3万だけど」
「それじゃあその倍出すからここは引いてくれない?」
「!?」
「ほかの子たちも。見たところ20人はいるみたいだから……全員分で120万ぐらいだね。どう?」
「ちょっ、ちょっと!?」
考え込んでいる傭兵たちとそれを見て明らかに動揺するアル。傭兵たちはそれぞれお互いを見合い、うなずいた。
「……わかった。手を引くよ」
「契約成立だね。それじゃあ、これ」
懐から名刺を取り出し、さっき指さした子に手渡す。
「これが私の連絡先ね。お金の受け渡しについては後日話し合おう」
「みんなー! てっしゅーするぞーー!!」
号令とともに傭兵たちが撤退していく。その様子をアルは茫然と眺めているアルを見てさすがにかわいそうなことをしたかなとは思う。でも、これで無駄な戦闘は避けられた。
「6対4、形勢逆転」
「さっすが先生。状況を一気にひっくり返しちゃうなんて」
「でも、お金は大丈夫ですか?」
「ふっふっふ」
――全然大丈夫じゃない! ヤバい! ただでさえ貯金も少ないのに! そもそもこんな浪費をユウカに知られたら説教どころじゃすまないかもしれない!!
「あのー、先生。すっごく足が震えてるんだけど……ほんとーに大丈夫?」
「だ、大丈夫だよ! 何しろこれがお金の正しい使い方なんだから!」
「あはは、本当に大変なら言ってくださいね。本来私たちがどうにかしないといけない問題だったので」
「アヤネちゃんはやさしいなぁ。でも、さすがにアビドスのみんなからは受け取れないから」
気持ちを切り替えるために便利屋の方を見る。アルはまだ現状に立ち直れていないのか白目をむいたままだった。
「どっ、どうしましょうアル様! 私たちだけでやりましょうか?」
「……いや、さすがに無理だと思うよ。向こうも結構な手練れみたいだし」
「それじゃあ……逃げる?」
「…………こ」
「こ?」
「これで勝ったと思わないことね!」
「あはは! アルちゃん、それ完全に三下のセリフじゃん!」
「う、うるさいわね! 帰るわよみんな!」
そう言い残して便利屋のみんなは走り去ってしまった。
「便利屋、退却していきました」
「うへー、逃げ足早いねー。もう姿が見えなくなっちゃったよ」
「ん、追撃する?」
「いや、別にいいでしょ。もしまた来るならその時にボコしちゃえばいいんだし」
「それにしても、戦わないで勝っちゃうなんてすごいです先生!」
「ふっ、これが大人のやり方だよ」
「その一言がなければかっこよかったのになー」
みんなの冷たい視線が突き刺さってメチャクチャいたい。というか本当にお金どうしよう。いや、払えないわけじゃあないけど。……しばらくはもやし生活になるかな。
キサキのバレンタインやばすぎない?
あれダメじゃない?
そういうのの導入じゃん。
はじまるじゃん。
おっぱじめる前振りじゃん。
叡智が過ぎるよ。
コハルもそう思うよね。
「エ駄死っ!」
やっぱりそうだよね。
でもさ、もし。
もしだよ。
もしおっぱじめちゃいそうになってもさ、病弱と薄いからだのせいでおじけづいちゃいそうだよね。
そんなの関係ねえって言わんばかりにぶっ壊す勢いでやるのもそれはそれでそそるんだけどさ。
でも逆もいいよね。
体が弱いキサキが襲い掛かってきて抵抗しようとする先生っていうのもいいよね。
先生が本気で暴れてもキサキには勝てないけど、キサキのことを考えてあまり力を籠められないとかさ。
その事実に優越感や嗜虐心をくすぐられたりして調子に乗って。
すんでのところで体調を崩してほしいよね。