私に先生は荷が重すぎます!   作:朱汰清家

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逃走

 カヨコに抱きしめられながら爆風で吹き飛ばされる。幸いカヨコとムツキが守ってくれたおかげで爆風や飛び散ってくるがれきにあたるなんていうことはなかったが、地面を激しく転がりいたるところを打ちつけて体中が痛む。

「――っ! 先生っ、無事!?」

「だい、じょーぶ。守ってくれてありがと」

 心配そうに見つめてくるカヨコを安心させるために笑う。そのまま立ち上がろうとするが、足に激痛が走り立ち上がれなかった。

「!? 先生!?」

 もう一度立ち上がろうとしてみるけどやっぱり立ち上がれなかった。どうやら相当強く打ってしまったみたいだった。相当無理をすれば立ち上がることはできるが歩くことはままならないだろう。走るなんてもっての外。これじゃあこの場から離れることができない。そんな私の様相を見てカヨコはすぐに行動を起こした。

「ごめん先生!」

「え? うわッ!?」

 立ち上がれない私の横まで来ると流れるように私を抱き上げる。右手を背中に、左手を両膝の後ろに、いわゆるお姫様抱っこだ。

「急にそんなっ。恥ずかしいっ!」

「ふざける余裕があるなら自分で走る!?」

「ごめんなさい! 無理です! お願いします!」

「くふふ、カヨコちゃんったら照れちゃって」

 カヨコの後ろからひょっこりとムツキが出てきた。服には多少のすす汚れがあるが、本人にはまったくダメージが入っていないのか平然と笑っていた。改めてキヴォトス人の頑丈さがどれほどのものなのかが窺がえることができる。

「ムツキちゃん! 無事だったんだね!」

「そりゃあね。先生よりも丈夫だし」

 残るは至近距離で爆発に巻き込まれ崩壊した柴関ラーメンの下敷きになっているアルとハルカの二人。大丈夫だとは思うけどやっぱり心配になる。

「あ! アルちゃんたち出てきたよ!」

 視線を向ければちょうどがれきの山になった柴関ラーメンから二人が出てきたところだった。二人とも汚れてはいるけれど大したけがもなさそうで安心した。

「先生! 無事!?」

 心配そうに駆け寄ってくる二人にとりあえず無事なことをつたえる。

「走れないだけ! それよりも逃げるよ!」

「逃げるってどこに!? てちょっと待って! それ無事って言わないわよ!」

「そんなことはいいから! とりあえずそこの裏路地に入って!」

 全員が裏路地に向かって走り出す。あたりを見渡せば急な爆発にまだ理解が追い付いていないもの、爆発に巻き込まれたもの、私たちに気付き追いかけようとしているものと様々だ。それにがれきの山からイオリが顔を出していた。

「絶対に逃がすな! 追えーッ!」

 イオリの一言で動揺で動けていなかった者たちが一斉にこっちに向かって追いかけてくる。

「ムツキちゃん! ハルカちゃん! 爆弾はまだあるよね!?」

「はっ、はい!」

「んー? あるけどー。何に使うのー?」

「私たちが裏路地に入ったらそのまま後ろに投げて爆破して! 時間稼ぎにはなる!」

「へぇー。そういうこと。おっけー先生!」

 裏路地に入るまでもう少し! あと10歩! 7歩! 4歩! 1歩!

「――今!」

 号令とともに後方に爆弾が転がっていく。その爆弾はちょうどあと十数メートルほどまで近づいてきていた先頭集団を爆破する。

「このまままっすぐ!」

「先生! 私たちこの道知らないんだけど! 案内は任せていい!?」

「大丈夫!」

 目を閉じアロナに呼びかける。

『アロナ! 周辺のマップ情報を!』

『はい! もう準備してあります!』

『さっすがアロナ! 後でご褒美にイチゴプリン買ってあげるね!』

『本当ですか!? やったー!』

 頭の中に地図が広がる。……よかった。行き止まりではないみたいだ。それにそこまで入り組んでいないし、風紀委員もいない。

「ハルカちゃんは前衛! ムツキちゃんは後方警戒! アルちゃんは空から偵察してくるドローンを撃ち落として!」

「はい!」

「りょーかーい!」

「わかったわ!」

 どうやって逃げる? このままだと結局捕まるのは時間の問題だし。少しずつ倒していく? いや、さすがに数が多すぎるし現実的じゃない。

「先生! 別れ道です! どっちに進めばいいですか!?」

「右! そのあとすぐに左に曲がって!」

「わかりました! 右に行って左ですね!」

 ここはやっぱり正面突破か? 実際戦力は中央に固めていたはず。外側なら練度もそこまで高くないと考えればこのメンバーでもいけるか?

「アルちゃん! ドローン飛んできてるよ!」

「わかっているわ!」

「ひゅー。さっすがアルちゃん! やるねー」

「そんなこと言っている間に追手が来てるわよ!」

「だいじょーぶ! もう手は打ったから。ぽちっとな」

「……いつの間に爆弾なんて仕掛けたのよ」

「私にかかればこんなのちょちょいのチョイってね」

「アル様! 前からもドローンが来ています!」

「あぁんもう! 多いわね!」

 いや、戦っている間に追手に追いつかれちゃう。そうなったら終わりだ。数で押し切られる。

「ハルカちゃん! この先大通りに出る! 風紀委員もいるから気を付けて!」

「突撃してぶっ殺せばいいんですね!」

「え? あぁうんまあそんな感じ! 強行突破するよ! そのあと向かい側に服屋さんがあるからそこの横の裏路地に行って!」

「はい!」 

 なにか……。なにかないのか。現状を打破できる一手が、なにか……。

「来たぞーっ! 便利屋だーっ!」

「絶対に逃がすなーっ!」

「――邪魔です!!!」

「ひゅー! やるねぇハルカちゃん。これは私も負けてられないかな!」

「アル様の道を邪魔する人はみんな死んで――ッ!?」

「――ハルカ!?」

 一発の銃声とともにハルカが大きくよろめいた。カヨコが銃声が聞こえたほうを振り返ることでイオリが銃を構えて立っている姿を見ることができた。

「もう追いつかれた!? いくら何でも早すぎる!」

 まずい。イオリに追いつかれ、次第に風紀委員たちが集まってくるこの状況。さすがにキツい。

「観念しろっ便利屋!」

 逃げこもうと思っていた裏路地までにはまだ距離があり、さすがにイオリに背を向けるわけにはいかない。というかできない。周辺にはほったらかしにされている車などがあり身を隠すことはできそうだがそれだけでどうにかなるような状況でもない。

 一度便利屋のみんなを見渡す。アルはこの状況にどうしたらいいのかとおろおろとしている。ハルカは自分を撃ったイオリに対して相当の敵意を向けていた。ムツキは少しづつ集まりかけてきている風紀委員たちに対して牽制をし時間を稼いでいる。カヨコは私と同じように周囲を見渡し打開策を探しているようだった。 

「せめてイオリがいなければ……っ」

 カヨコがぽつりとつぶやいた言葉が聞こえた。その言葉に私の何かが反応したかのようで口が、脳が、体が勝手に動いていく。

「カヨコちゃん。イオリちゃんさえいなければそれなりに戦えるの?」

「え? ……まぁ、勝てなくはないかな」

 私の質問に一瞬呆けるが一度周りを見渡し、腕の中で抱えられている私を見て答えた。

 つまりイオリさえ何とかすれば勝ち筋が見える。

 …………何とかなるかもしれない。

「みんな、聞いて。作戦を伝える」

「先生……?」

 カヨコの腕の中から降り、地に足をつける。

「ハルカちゃんはイオリちゃんを抑えて、カヨコちゃんはそのサポート、ムツキちゃんは増援に来る風紀委員たちの足止めをお願い」

 私の唐突な発言にみんながあっけにとられる。それはそうだ。便利屋のみんなにとって私はただの大人なんだから。そもそも出会って間もない私の言葉を信頼してもらえるかどうかすら怪しい。けれど、やるしかない。カヨコ、ムツキ、ハルカ、そしてアル。一人一人の目をそれぞれまっすぐに見つめる。

「私がイオリちゃんの隙を作る。アルちゃんはその隙を逃さずに一撃で仕留めて。……できる?」

 アルちゃんが目を伏せ、すぐに開ける。そこにはさっきまでのゆらめいていた瞳とは違い、まっすぐと前だけを見つめている瞳があった。

「私たち便利屋のモットーは一度受けた依頼は必ず遂行することよ。――任せて頂戴! 先生の依頼、確かに承ったわ!」




パジャマユウカの誕生日ボイスヤバかったですね!!!
あんなんダメでしょ!
ずるでしょ!
パジャマ姿であのセリフは破壊力がすごい!!
はぁぁぁぁーーーーーかわいいがすぎる。
準備はできてるんですよねって。
いったい何の準備なんですかねぇ!!
ねえねえ!
いったい何の準備なのかな!
先生ちーっともわからないなぁ!
準備が必要なものって何かなぁ!
ユウカの口からちゃーんとおしえてほしいなぁ!
一つ一つ丁寧に聞かせてほしいなぁ!





おいで、ユウカ
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